らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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集まる旋律~瞬への報告、そして、慶一の誓い~

瞬の亡くなった本当の理由と原因。

 

そして、犯人がわかったものの、その犯人さえも、もはやこの世の人ではなかった。

 

そんな事実に、やり場のない気持に苦悩する俺だったが、こうとやまとの言葉で俺は、この複雑な気持に決着(けり)をつけて、ここからは前を向いて進もうと決意する。

 

そして、その為に、こうとやまとにも自分自身への気合を入れる手伝いをしてもらったが、やまとの一撃で昏倒してしまう。

 

意識を取り戻した俺は、皆に自分の決意を告げて、この激動の昼休みを終えたのだった。

 

そして、教室に戻りがてら、こなた達が先に戻ったのを見送ったみゆきが俺の所に来て声をかけた。

 

「あの、慶一さん。ちょっといいですか?」

 

その言葉に俺はみゆきの方を見て

 

「ん?俺に何か用か?」

 

そう尋ねると、みゆきはおずおずと俺に

 

「は、はい。あの・・・龍也さんから何かうかがっていませんか?」

 

と言うみゆきの言葉に、俺は今朝の電話の事を思い出したが、ちょっとみゆきをからかってみようと思い

 

「んー?龍兄から?さて、どうだったかなあ?」

 

と、軽くとぼけると、みゆきは途端に慌て出して

 

「え?ええっ?た、龍也さんは慶一さんに話しておく事がある、っておっしゃっていましたのに・・・。」

 

と、俺のからかいに涙目で凹むみゆきに俺は(ちょっとからかいすぎたかな?)と心の中で思いつつ、苦笑しながら

 

「あはは。冗談だ冗談。ちゃんと聞いてるよ。明日からの事だよな?」

 

と、軽く笑いながらそう言うと、みゆきは涙目のままではあったが、頬を膨らませて

 

「もう。慶一さん、意地悪ですよ・・・。でも、よかったです。ちゃんと龍也さんは慶一さんに話してくれたのですね?」

 

そう言うみゆきに俺も頷いて

 

「ああ。今朝電話があったよ。向こうも色々とごたごたしてるみたいだな。」

 

俺のその言葉にみゆきも頷きつつ

 

「ええ。どうもそうらしいですね。それで、その・・・今回の事はご迷惑にはなりませんか?龍也さんからのご提案とはいえ、慶一さんも色々あったわけですし、まだ気持ちの整理もつけきれない状況で今度は私達、ですから・・・。」

 

と、瞬の死以降からのごたごたと、俺自身の事をみゆきは気にしているようだった。

 

確かに、色々な事がこの一週間の間にありすぎたかもしれない。

 

そんな俺の事を気遣ってくれるみゆきの気持は嬉しかったが、それでも、俺のみゆきに対する答えは1つだった。

 

「気にするな、みゆき。これは俺が、俺の意思で決めた事だ。だから、遠慮しなくていいぞ?それに・・・今度こそは俺は、大切な者を守りたい。もう誰にも、俺の大切な者を傷つけさせない。だから、俺から頼むよ。お前を、皆を守らせてくれ。」

 

俺はもう誰にも傷ついて欲しくないと思う気持から、みゆきに俺の決意を投げた。

 

そして、そんな俺の決意を聞いたみゆきは、そんな俺の言葉を驚きの表情で聞いていたが、そのうちにその瞳から涙を落としながら

 

「ありがとう、ございます・・・。大切な者を守りたい。大切な人に傷ついて欲しくない。そんな慶一さんの思いがとても嬉しいです。でも、慶一さん、覚えておいて下さいね?その思いは私も、そして、皆さんも一緒なんですから。そして、私達を守ってくれると言う慶一さんも、ご自分の考えに固執しすぎて必要以上のご無理はなさらないで下さいね?お互いに無理をせず、助け合って行きましょう。私達はお互いに1人ではありません。お互いに助け合い、支えあえる仲間がいるんですから・・・。」

 

そんなみゆきの言葉に俺は、その言葉を改めて胸に刻み、みゆきに力強く頷いて

 

「ありがとう、みゆき。その言葉、よく覚えておくよ。心配するな、無茶はしないよ。」

 

そう言ってみゆきのその言葉に応え、そして、そんな俺の頷きに、言葉に、みゆきもまた、強く頷くのだった。

 

お互いに助けあっていく事を確認し合い、俺達は教室へと戻って行く。

 

そして、午後の授業を終えて、家へと帰る頃に、今度はこうとやまと、そして、みなみにも今回の龍兄の依頼の件について尋ねられ、俺は、4人全員を受け入れると伝えたのだった。

 

家に戻った俺は、道場の方でのごたごたが起きれば、しばらくは向こうに近づく事も難しくなるだろうと思っていた。

 

だから俺は、今日のうちに済ませておきたい事があったので、軽く準備をして、実家に向かう為に家を出た。

 

そして、電車に揺られて俺は実家の最寄駅へと辿り着き、そのまま実家を目指す。

 

門をくぐり、玄関を開け、俺は家へと入って行き、そして、声をかけた。

 

「龍兄、親父、お袋、いるか?ちょっと用事があって帰って来た。」

 

そう言うと、俺に気付いたお袋がやってきて

 

「あら?慶一。こっちに戻ると言う連絡もなかったからびっくりしたわ。何か用だったの?」

 

と言うお袋に俺は頷くと

 

「ああ。何だか今回は色々とごたごたしそうだったからね。ま、親父達に挨拶も兼ねて来たよ。」

 

俺はお袋にそう告げる。

 

お袋は俺の言葉に納得しつつ、俺に

 

「そうだったの。お父さん達なら道場の方にいるわ。声をかけに行くならそっちへ行ってみなさい。」

 

と、親父達の居場所を教えてくれたので、俺はお袋に礼を言うと、早速親父達のいる道場へと向かった。

 

そして、道場に足を踏み入れると、親父に稽古をつけてもらっている龍兄の姿があった。

 

俺はしばらくその様子を伺っていたが、稽古の切れ間を見極めると、親父達に声をかけた。

 

「親父、龍兄、精が出るな。親父に稽古つけてもらってる龍兄は久しぶりに見たよ。」

 

そう声をかけると、親父達は俺に驚いて

 

「慶一?何故お前がここに居るのだ?」

「お前、いつ帰って来たんだ?そんな連絡受けてないぞ?」

 

と言う2人に、俺は苦笑しながら

 

「はは。それはそうだろうな、いきなり押しかけたんだしさ。それと、今日こっちに戻って来たのは、これからしばらくはこっちに寄り付けなくなりそうだったからな。俺がやっておきたい事を済ませたかったから、帰って来たんだよ。」

 

そう説明すると、親父は俺に怪訝な表情で

 

「やっておきたい事?それは一体なんなのだ?」

 

そう聞いて来たので、俺は頷いて

 

「うん。まずは、親父達にみゆき達の御両親の事、よろしく頼むよ。って直接伝えたかったのと、後は瞬の仏前に行って、ちょっとした報告をね。」

 

そう言うと、親父と龍兄は頷いて

 

「うむ。みゆきちゃん達の御両親の事は我々に任せておくがいい。心配せずとも大丈夫だ。」

「こっちは請け負うから心配はいらない。だから、お前はお前の仕事をまっとうしろ。それと、麗真さんの所へ行くなら急いだ方がいいかもな、もう大分いい時間だ。」

 

その言葉に俺も頷いて

 

「ああ。そのつもりだよ。それじゃ、親父、龍兄、またな。今度は平和になったこの街でみゆき達にも安心して暮らしてもらいたいもんだ。」

 

そう言う俺に、親父と龍兄は再び重々しく頷いた。

 

そして、それを確認した俺は踵を返すと、麗真おじさんの家へと足を向けたのだった。

 

龍也side

 

明日からの事等を考えつつ、俺は、親父に久々に稽古をつけてもらいながら体を動かして少しリフレッシュしていた。

 

そして、組み手も一段落つく頃、道場に慶一がいきなり現れた。

 

俺も親父もまったくの想定外の事だったので、内心慌てつつも慶一と言葉を交わす。

 

慶一の目的は、俺達に直接みゆきちゃん達に御両親の事を託す事と、瞬坊の仏前で何やら報告していく事があるのだ、と言う事だった。

 

そして、俺達に最後に言葉をかけて道場を後にする慶一を見送った後、俺は少し考え事をした後に携帯を手に取り、みゆきちゃんの所へと電話をかけたのだった。

 

3回目くらいのコールで電話にでるみゆきちゃん。

 

「もしもし?みゆきちゃんかい?俺だ、龍也だ。」

「こんばんは、龍也さん。突然のお電話のようですが、なにかありましたか?」

「うん。実は今こっちに慶一がいきなり現れてね。みゆきちゃんも明日から慶一の家へと行く予定だったろうけど、予定を繰り上げて今日から行ったらどうだろうか?って思ってね。準備はできてはいるんだろう?」

「え?慶一さんが、ですか?え、ええ。確かに慶一さんの家に行く準備は済ませてありますけど・・・。」

「なら、慶一が牧村さんの所から戻るかもしれない時間を見計らって慶一をこっちに寄らせるよ。それと同時に、俺も君等を迎えに行く。だから、ここに集合して慶一にエスコートしてもらって行くといいだろう。」

「わかりました。それではお迎えの方をお待ちしています。あ、それと、この事はみなみちゃんにも伝えた方がいいですよね?」

「うん。出来ればそうしてくれるとありがたい。俺はこうちゃんとやまとちゃんに連絡を取るから。」

「わかりました。では、そのようにしますので。」

「そっちは任せるよ。それじゃ俺も2人に連絡してすぐに家を出るから。」

「はい。くれぐれも夜道には気をつけていらしてください。」

「はは。ありがとう。それじゃ。」

「はい、それでは。」

 

そう言って電話を切った後、俺はこうちゃんとやまとちゃんの方に連絡を入れた。

 

こうちゃんは大分慌てていたが、やまとちゃんは少し驚いていたようではあったけれど、すぐにこの召集に応じてくれたので、俺は先にみゆきちゃん達を迎えに行ってからすぐにこうちゃん達も迎えに行き、その途中で慶一に連絡を入れたのだった。

 

慶一side

 

親父達に言うべき事を言った後、俺は麗真おじさんの家へと向かっていた。

 

そして、家の門をくぐると、そのまま本宅へと歩いていく。

 

玄関のドアの前で軽く深呼吸をすると、俺は呼び鈴を押したのだった。

 

しばらくして、俺を出迎えてくれたのは麗真おじさんだった。

 

おじさんは突然の俺の来訪に驚きつつも

 

「おや?これは誰かと思えば。どうしたんだい?慶一君。いきなり尋ねてきたりして。」

 

俺はそんな麗真おじさんに

 

「こんばんは。麗真おじさん。実は、ちょっとこの辺りがしばらくごたごたする、という話を聞いたものですから、俺もしばらくはこちらに戻る事はできなくなりそうでしたので、その前に瞬に報告したい事があってやってきたんです。夜分にご迷惑とは思いましたが、瞬の仏前にお邪魔しても構いませんか?」

 

そう言うと、麗真おじさんは微笑みながら頷いて

 

「そうか。確かにこれからこの辺りは物騒になるからね。さあ、あがりなさい。瞬の仏前へ案内しよう。」

 

そう言って俺を家にあがるように促す麗真おじさんの後に俺はついて行くのだった。

 

そして、仏前にたどり着くと、麗真おじさんは俺に

 

「さあ、ここだ。君の気の済むようにするといい。私は居間の方へ戻っているから、すべき事が済んだなら声をかけてくれるかい?」

 

そう言ったので、俺は頷いて

 

「はい。ありがとうございます。では、後ほど。」

 

麗真おじさんにそう言うと、麗真おじさんは1つ頷くと、踵を返し、居間の方へと戻って行ったのだった。

 

俺はそれを見送った後、瞬坊の仏前に来て線香をつけ、蝋燭を灯して仏壇に手を合わせるとそのまま瞑想のように目をつぶって心の中で瞬に語りかけた。

 

(・・・瞬。お前の命を奪った犯人がわかったよ。成神章・・・俺達とは因縁のある奴だった。しかし、犯人はわかったけど、もう、そいつにもお前に対する罪を償わせる事ができない。すまないな・・・けど、きっとお前の元へと奴が向かってるはずだから、あの世でボコボコにでもしてやれ。と、まあ、とにかくだ、話がそれちまったけど、俺はこの事件、犯人も判明してもう終わったものと割り切る事にしたよ。そして、俺はお前の分までこれからも皆と一緒に生きる事を誓った。これからしばらくこちらに来れなくなるからな、報告だけは今日のうちにしておきたかったんだ。これから俺は、みゆき達を守る。心配せずとももうこれ以上は俺は、俺の仲間達、大事な人達を傷つけさせはしない。改めてお前の前で誓わせてもらう。だから、いつかまた、俺がそっちに行った時には・・・そっちでも・・・親友になろうぜ。それまでは、遠い空から俺達を見守っていてくれ。今日はお前に、その事を報告に来させてもらったよ。じゃあな、瞬。いずれまた会う時に・・・・・・。)

 

そこまで考えた後、俺はそっと目を開く。

 

そして、もう一度仏壇に手を合わせてから俺は、仏間を後にした。

 

俺は、居間にいるであろう麗真おじさんに声をかけた。

 

「麗真おじさん、もう済みました。俺の我侭を聞いていただけでありがとうございます。今日はこれで失礼しますね。またこちらのごたごたが収まった頃には寄らせてもらいますから。」

 

そう言うと、麗真おじさんも居間から顔を出して俺に

 

「もういいのかい?ごたごたの方は私も龍真さんらと共に事にあたるつもりさ、だから心配はいらないよ。最近はこの辺りも物騒になってきてるからね、気をつけて帰りなさい。まあ、君なら余程の相手じゃないと危険とは言えないかもしれないがね。」

 

そう言って、一応の心配をしてくれる麗真おじさんに俺は笑いながら

 

「わかっていますよ。とはいえ、ご忠告、ありがたく受け取っておきます。それではまたいずれ。」

 

俺はそう言って、麗真おじさんに一礼してから家を出たのだった。

 

そして、家を出て少ししてから俺の携帯が鳴ったので、電話に出る。

 

電話の相手は龍兄だった。

 

「もしもし?龍兄?」

「慶一か、今どこだ?」

「今は牧村道場を出た所だよ。」

「そうか。これからお前は家へ戻るのか?」

「ああ。やる事も済ませたし、明日にも備えたいからね。」

「なるほど。慶一、とりあえず帰る前に一度道場に寄って行け。お前に頼んでおきたい事があるからな。」

「ん?だったら、さっき俺が道場出る時に言ってくれればよかったのに。」

「すまんな、お前が道場を出て少ししてから気付いたからな。お前に言いそびれたんだよ。」

「そうだったのか。まあ、いいか。わかったよ。このまま道場へ向かうから。」

「ああ。面倒かけてすまないな。」

「いいって。もののついでだしな。それじゃそっちで。」

「ああ、それじゃ。」

 

そう言って俺は電話を切ると、一度うちの道場へ寄る為に足を向けたのだった。

 

そして、俺は道場に着くと、そのまま道場内へと足を踏み入れた。

 

「龍兄、言われたとおり立ち寄ったぞ?って、あれ?みゆき?みなみ?こう?やまと?何でお前等がここに?」

 

道場内に入って俺は、龍兄に声をかけたのだが、そこにみゆき達の姿を見つけて驚いた俺は、思わずそう言っていた。

 

「慶一さん、こんばんは。」

「・・・先輩、こんばんは・・・。」

「先輩、お邪魔してますよー。」

「龍也さんに呼ばれて来たわ。まさかこっちに戻って来てるとは思わなかったけどね。」

 

俺の姿を見てそう挨拶してくる4人。

 

俺はそんな4人に

 

「ちょっとやっておきたい事があって今日、こっちに来てたんだ。お前等こそなんでここに来てるんだ?」

 

と、不思議そうな顔で俺は皆にそう尋ねたのだが、みんなの変わりに龍兄が

 

「来たな?慶一。お前への頼みはこれだ。お前が丁度こっちに来ていたからな。明日からお前の家に世話になる、との事だったが、お前が来ているならそのままエスコートさせて今日、連れて行ってもらう方がより安全だろうと考えたのさ。」

 

そう言って俺に事情を説明してくれた。

 

俺はその言葉に苦笑しつつ

 

「はは。そういう事か、龍兄も結構用意がいいよな。わかったよ。確かにそうの方が安全か。まあ、急遽こんな事になったけども、お前等、準備とかは大丈夫なのか?」

 

そう4人に訪ねると、4人は頷いて

 

「はい。龍也さんから一週間程前にその事に関する連絡はいただいていましたから、準備だけは済ませてあったんですよ。」

「・・・事前の準備は済ませていたけれど、突然龍也さんからの連絡をもらうとは思っていませんでしたが・・・。」

「そうですね。でも、慌ててですが、何とか準備は出来てますから。」

「こうは直前まで何もやってなかったみたいだものね・・・まったく・・・でも、何とか全員準備は済ませているから、すぐにでも動けるわ。」

 

と、それぞれに事情を説明しつつ、準備が出来ている事を伝えてくれたので、俺はそれに頷いて

 

「わかった。それじゃ、早速行くとするか。時間も大分遅くなってるしな。龍兄、改めて頼むけど、みゆき達の御両親の事、よろしく頼むな。」

 

俺の言葉に4人とも頷き、そして、4人は龍兄に

 

「龍也さん、お父さんとお母さんの事、よろしくお願いします。」

「・・・お任せする事になってしまいますが、よろしくお願いしますね・・・?」

「ちょっと心配はあるけど、お任せする方が安心ですし、よろしくです。」

「お世話になるわね?龍也さん。」

 

そう言うと、龍兄も頷いて

 

「ああ。こっちは任せてくれ、皆もくれぐれも危険な事がないように、と祈っているよ。それと慶一、しっかりと皆の安全を守れよ?」

 

最後に俺にそう言う龍兄に俺は力強く頷いて

 

「わかってる。皆は俺がきっと守る。よし、行こうか、皆。」

 

俺の言葉に皆も頷き、そして、俺達は道場を後にする。

 

だが、その時、龍兄はみゆきを呼び止めて、何事かを話しているようだった。

 

俺は、2人の話が終わるのを、少し離れた場所でこう達と待っていたのだった。

 

龍也side

 

慶一にみゆきちゃん達のエスコートを頼む為に道場に立ち寄ってもらい、みゆきちゃん達を託す俺。

 

そして、その時に俺は慶一に皆をちゃんと守れ、と再度釘をさした。

 

慶一の決意の言葉を聞いて、俺は安心して皆を送り出そうとしたのだが、俺はみゆきちゃんに話しておきたい事があったので呼び止めたのだった。

 

「みゆきちゃん、ちょっといいかな?」

 

と、皆の後について最後に出て行こうとするみゆきちゃんに声をかけると、みゆきちゃんは俺の方に向き直って

 

「はい?なんでしょう、龍也さん。」

 

そう尋ねて来たので俺はみゆきちゃんに

 

「みゆきちゃん、後で皆にも話しておいて欲しいんだけどさ、慶一の事、くれぐれもよろしく頼むよ。瞬坊が亡くなってからあいつは、君達を守るという事に少し気負いすぎている感じもある。だから、あいつが無茶しないように、そして、あいつの心の拠り所としてあいつの側についていてやって欲しいんだ。」

 

俺の言葉を真剣に聞くみゆきちゃんは、ふっと微笑むと

 

「わかりました。でも龍也さんのご心配には及びませんよ?何故なら私達はお互いに支えあい、助け合う、そのつもりですから。ですから、慶一さんにもあまり無茶はさせませんし、なるべく慶一さんの側についていてあげようと考えています。他の皆さんもまた、私と同じ考えみたいですから、大丈夫です。」

 

そんなみゆきちゃんの言葉に俺は、慶一の皆に対する、そして、皆の慶一に対する信頼感に軽く驚いていたが

 

「そうか。どうやら、余計な忠告だったかな?つくづく慶一が羨ましいね。」

 

苦笑しながら俺は、みゆきちゃんにそう言うと、みゆきちゃんも笑って

 

「いえ、そんな事はありません。龍也さんのご忠告、とてもありがたかったです。そのご忠告もまた、心にとどめさせてもらいますから。」

 

と言うみゆきちゃんに俺は頷いて

 

「はは、そう言ってくれるなら立つ瀬もあるというもんだね。それじゃくれぐれも注意して?何かあれば俺の方にも連絡を入れてくれ。」

 

そう言うと、みゆきちゃんも頷いて

 

「わかりました。でも、出来ることなら、あまり龍也さんのお手を煩わせる事はないようにしたいですね。」

 

その言葉に俺も頷いて

 

「まあ、それが一番いいんだけどな・・・。ま、とにかく、気をつけてね。」

 

そう言うと、みゆきちゃんは頷いて

 

「はい。それでは。」

 

と、俺に一礼してから慶一達の方へと歩いていくみゆきちゃんを見送ったのだった。

 

慶一side

 

龍兄と何事かを話すみゆきが、龍兄との話を終えて戻ってきた。

 

俺はみゆきに

 

「みゆき、龍兄と何を話してたんだ?」

 

と尋ねると、みゆきは微笑みを向けながら

 

「いえ、大した事ではありませんよ?くれぐれも気をつけて欲しい、と言う事と、慶一さんの事をよろしく、と言われただけですから。」

 

そのみゆきの言葉に俺は苦笑しながら

 

「気をつけろ、って言うのはわかるけど、俺の事をよろしくってのはどういう事なんだかなあ・・・。」

 

と、思わず軽いため息をつきながらそう言う俺に、みゆきはいつものような穏やかな笑みを浮かべながら

 

「ふふ。慶一さんは無茶をする事があるから、そうなり過ぎないように見ていてやってくれ、と言う事みたいですよ?」

 

そう言うみゆきのその言葉に俺は、少し凹みながら

 

「むう・・・反論しずらいところがなんとも、だなあ・・・。でも、わかったよ。龍兄の忠告でもあるし、心にとどめておくさ。」

 

みゆきにそう言うと、みゆきはにっこりと笑って

 

「心にとどめておく、そう誓ったのですから、その言葉、ちゃんと守って下さいね?」

 

そう俺に釘を刺すみゆきに俺は苦笑しながら頷くと

 

「はは、手厳しいな。よし、じゃあ、俺がその誓いを破ったら罰ゲームでもするか?」

 

と、ちょっと冗談を交えつつ言う俺だったが、そんな俺の言葉にみゆきは、何やら真剣に考え込んでいるようだった。

 

そして、俺とみゆきのやり取りを聞いていた他の皆もまた、何かを考えていたようだが、ふいにこうが

 

「なら、その誓いを破ったら先輩に何か奢ってもらいましょうかね?」

 

と言うこうのことばをきっかけに、みなみややまとまでもが

 

「・・・レゾンの特製チーズケーキが食べたいです・・・。」

「私の欲しがってるアクセサリーでもプレゼントしてもらおうかしら?」

 

と言い、その言葉にたじたじとなっていた俺だったが、そんな俺の事など構わずにみゆきも

 

「そうですね・・・。誓いを破った時には、1日私の言う事を聞いていただきましょうか。」

 

と、にっこりと笑いながらそう言うと、その言葉にこうとみなみは、みゆきをからかうように

 

「おお!?高良先輩も言いますねー。」

「・・・みゆきさん、大胆ですね・・・。」

 

ニヤニヤしつつ、顔を赤らめつつそう言い、やまとも顔を少し赤くしながら

 

「せ、先輩の案、私も考えようかしら・・・。」

 

と言っているのを、俺は顔を引きつらせながら聞いていた。

 

そして、疲れを滲ませながら

 

「・・・4人とも、お手柔らかにな・・・。」

 

と言うと、4人ともクスクスと笑っているのを、俺は軽いため息をつきながら見ていた。

 

その後、何事もなく、自宅の最寄駅へと到着し、自宅へ5人連れ立って向かう時、俺はふいに皆の方に向き直った。

 

俺の突然の行動に皆も驚きつつその場に止まる。

 

そして、俺は皆に決意の眼差しを向けながら

 

「皆、これからしばらくの共同生活に入るけど、改めて言うよ。俺は皆を守る。何があっても傷つけさせない。それを改めてここに誓うよ。」

 

そう言って、俺の決意を改めて皆に告げると、皆はそんな俺の顔を見て頬を赤らめながら少しぼーっとしているようだったが、やがて我に返ると

 

「ご、ご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします。」

「・・・先輩が居てくれるなら、安心ですね・・・。」

「あ、あはは。何だか先輩かっこいいです。ちょっと感動しちゃいましたよ。」

「・・・頼りに、させてもらうわよ?先輩。」

 

と、それぞれに俺に言葉をかけてくれたのだった。

 

俺もそんな皆の言葉に照れつつも、改めて皆の言葉に力強く頷くと

 

「ああ。任せてくれ。さてと、それじゃ帰ろうぜ?もう結構遅い時間だし、明日も学校あるし、更にはパティも待たせてるもんな。皆、今日からしばらく、よろしくな。」

 

その俺の言葉に皆もまた、笑顔で頷いてくれたのだった。

 

そして、俺達は俺の家へと歩き出す。

 

俺は、明日からの共同生活に思いを馳せつつ、自ら立てた誓いを通そうと、改めて気を引き締めるのだった。

 


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