らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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3年生編、第4章~旋律の復活と日常編~
再び奏でる旋律~慶一の復帰と事件の胎動~


瞬の事があって、この一週間色々あったのだが、皆からの励ましをもらった俺は、ようやく立ち直る事が出来た。

 

最後にやまと達と会った次の日の朝、俺は新たな決意を胸に制服に身を包んで、そして、朝食の準備にとりかかった。

 

一通りの準備を済ませると、俺はパティを起こす為に部屋へと赴く。

 

一応部屋のノックはしたのだけれど、結局返事は返ってこなかったので、俺はパティに部屋に入ることわりを入れると、そっと部屋の中へと入っていった。

 

そして、ベットを覗くと、だらしない格好で眠っているパティがいたので、俺は軽いため息を1つつくと、パティを起こしにかかった。

 

「ほら、パティ、起きろ。もう朝だぞ?朝食の準備もすでに出来ているんだから、さっさと起きて準備済ませちゃえよ。」

 

そう言いながらパティを揺するが、起こそうとする俺がうっとうしいかのように俺を手で払いつつ、唸っているのが見えたので、俺は仕方なく強硬手段を取った。

 

そして、目覚ましのデコピンをかますと、パティは額を押さえて起き上がり、寝ぼけ眼で周りをキョロキョロ見回しながら

 

「・・・イタイです・・・イッタイナニゴトですか?」

 

そう言っていたが、俺の姿を見つけると、パティは俺が制服姿である事に気付いたようで

 

「グッモーニン、ケイイチ。キョウはセイフクをキているみたいデスが、ナニかアリマシタか?」

 

そう聞いてくるパティに俺は呆れつつ

 

「あのなあ・・・ここ一週間、学校を休んではいたが、俺もお前同様に陵桜の生徒だぞ?それに、今日から俺も復帰しようって思ったから制服着ただけだ。何もおかしな所などないだろう?」

 

そう言うと、パティはしばし呆けたような顔で俺を見ていたが、やがて満面の笑顔になると

 

「オウ!!ついにケイイチフッカツなのですネ?マッテました!マッテいましたよ!?このトキを!!それをシったからにはこうしちゃイラレマセン!!ワタシもキガエてしまいますからケイイチはシタでマッテいてクダさい!!」

 

そう言いながら俺を部屋から追い出すパティに俺も苦笑しながら

 

「はは。あんまり慌てずにな?朝食の準備も出来てるから、準備できたら下に来いよ?」

 

そう言って俺はキッチンへと戻って行ったのだった。

 

程なくしてパティも着替えを終えて降りてきたのが見えたので、俺達は久々に2人で顔をつき合わせての朝食となった。

 

朝食を終えてパティと2人、お茶の準備をしていると、いつものようにいつもの時間に家の呼び鈴が鳴る。

 

パティがそれを聞いてあやのを出迎えに行こうとしたが、俺はそれを制すると、あやのを迎えに行く為にキッチンを出た。

 

そして、玄関に行って「今開けるよ。」と声をかけて玄関を開くと、やはりいつもと同じようにあやのが立っていたのだが、ここの所パティに出迎えてもらっていた事もあり、玄関にいる俺の姿を見たあやのは驚きの表情を俺に見せながら

 

「おはよう、慶ちゃん。ここ最近はパトリシアさんが出迎えてくれていたからびっくりしたわ。それに、その制服は、ひょっとして?」

 

そう、俺に言いながら、俺の服装に気付いたあやのがそう尋ねて来たので、俺は照れながら

 

「・・・あはは。ま、まあ・・・そう言う訳だ。ここ一週間心配かけちゃってすまなかったな、あやの。」

 

視線をそらしつつ、そう言う俺に、あやのはにっこりと笑って

 

「ふふ。そっか。いいのよ、慶ちゃん。あんな事があったんだもの。それでも立ち直ってくれたなら嬉しいわ。皆もきっと喜ぶわね。あ、それと、いつもの奴やっちゃうわね?」

 

そう言ってくれたあやのに俺は頷きながら

 

「そう言ってもらえるなら何よりだよ。それと、そっちが済んだらいつものようにお茶準備してるからな。」

 

そう言うと、あやのもそれに頷いて、猫達の方へ向かうのを見届けて、俺はパティの待つキッチンへと戻って行ったのだった。

 

程なくして、猫の世話を終えたあやのとパティの3人で軽くお茶をした後、俺達は戸締りを済ませて家を出た。

 

そして、いつもの時間に電車に乗り込む俺達だったが、今回はかがみ達が乗ってくるドアより1つずらして乗り込む事にしたのだった。

 

パティとあやのは俺のこの行動に首を傾げていたが、2人を脅かしてやりたいから、と事情を説明すると、少し苦笑を浮かべつつも、2人はいつもの場所で待機してくれ、俺のやろうとしている事に協力してくれる事になった。

 

そして、いつものようにかがみ達と合流する時間に、2人は時間どおり電車に乗り込んできたので、俺は少し離れた位置からかがみ達の様子を見ていると、あやのとパティは2人にいつも通り朝の挨拶をしていた。

 

あやのside

 

朝のいつもの時間にいつも通り電車を待ち、乗り込む私たちだったけど、慶ちゃんは柊ちゃん達を脅かしたいという事を考えているみたいで、いつもとは違う場所から電車へと乗り込んだ。

 

そして、私達はそんな慶ちゃんの思惑に乗る事にして、私達だけいつも通りの場所へと移動をし、柊ちゃん達が乗り込んでくるのを待っていたのだった。

 

そして、時間どおりに電車に乗り込んできた柊ちゃん達に私達も声をかける。

 

「おはよう、柊ちゃん、妹ちゃん。」

「グッモーニン!カガミ、ツカサ。キョウもキモチのいいアサですネ!」

 

と言う私たちの言葉に柊ちゃん達もいつものように

 

「おはよう。峰岸、パトリシアさん。あんたたちはいつも遅れてこなくて助かるわね。まったく、誰かさんも見習って欲しいものよね・・・。」

「あはは。おはよう、峰岸さん、パトリシアさん。わたしも朝は結構苦手だよ~。」

 

そう言って挨拶してくる2人に、私達も苦笑を交えつつ、いつものように談笑を始める。

 

そんな最中に、2人に気付かれないようにそーっと近くまで来て様子を伺っていた慶ちゃんが、おもむろに2人に声をかけた。

 

「よっ!おはよう、2人とも。今日も元気そうだな。」

 

その言葉にはじかれたように声のした方を見る2人。

 

私は事の成り行きを、固唾を飲んで見守っていたのだった。

 

慶一side

 

あやのとパティと結託してかがみ達を脅かそうという事を考えた俺だったが、上手い具合に2人がかがみ達の注意をひきつけてくれているのを見て、俺は2人に気付かれないように側へと寄って行き、タイミングを見計らって声をかけた。

 

「よっ!おはよう、2人とも。今日も元気そうだな。」

 

そう声をかけると、2人は俺の声にはじかれたようにこちらを向き、そして、俺の姿を見て驚きの表情を見せて呆けていたが、やがて我に帰ると、俺の側にやって来て俺の顔を見ながら

 

「・・・おはよう・・・慶一くん・・・。えっと、その・・・もう、大丈夫なの?」

「けいちゃん・・・びっくりしちゃったよ・・・まさかこの電車に乗ってるって思わなかったから・・・。それと・・・無理はして、ないよね?」

 

おそるおそるそう尋ねる2人に俺は、大きく頷くと

 

「ああ。2人とも散々心配かけちゃったけど、この通り俺はもう大丈夫さ。今日からまた復帰するからよろしくな。ま、一応どっきりは大成功って事かな?」

 

そう言って俺はいたずらっぽく笑う。

 

そんな俺の言葉にかがみとつかさはほっとしたような顔をした後、すぐに俺のいたずらに対するツッコミを入れてきた。

 

「・・・まったく。復帰するなら普通にしなさいよ!いきなり現れるからびっくりしちゃったじゃない!!」

「ほんとだよ~。わたし、一瞬何が起きたのかわからなかったもん。」

 

そんな2人に俺は、脅かした事に対する詫びを入れて謝り倒していた。

 

「いや、ほんとすまん。復帰するなら劇的に、って思っててさ。この通り、頭下げるから許してくれ。」

 

そんな風に謝る俺の姿を見た2人は、俺のいたずらに怒りつつも、凄く安心したようなそんな笑みを見せていたのがその顔に見て取れたのを感じて、俺も心の中で”ほっ”としていたのだった。

 

そのうちにこなたとゆたかとも合流する駅に辿り着き、電車に乗り込んできたこなたとゆたかを驚かせる事になったのだが、それもそのはずで、ここ最近居ない筈の人間が突然いたのだから、やはり2人ともその事に驚いていた。

 

そして、そんな2人にも俺は復帰の意思を告げると、2人とも満面の笑顔を俺に見せてくれ、そんな顔を見る俺の心も何となく嬉しい気分になった。

 

その後も、色々な事を話しながら学校へ向かう俺達だったが、昇降口で靴を履き替えている時、俺は皆に

 

「皆、俺はちょっと職員室へ寄ってから行くよ。だから、先に教室へ行っていてくれないか?」

 

そんな俺の言葉にこなたが

 

「おっけー。黒井先生に報告だね?それと、みゆきさん達へは話しちゃっていいの?」

 

そう聞いて来たので、俺は少し考えてから

 

「どのみちクラスに行けば確実に分かっちゃうんだから、普通に話してくれていいぞ?」

 

そう伝えると、こなたは「わかったー。」と言ってかがみ達と共に教室へと向かったのでそれを見届けてから俺も職員室へと足を向けた。

 

こなたside

 

昇降口の所で慶一君に「職員室に寄るから先に教室へ行っててくれ。」、と言われ、私達は慶一君の言葉どおりに先に教室へと向かう事にしたのだが、その際に慶一君の復帰の件をみゆきさん達に伝えなくていいのかどうかを聞いてみたところ、「教室に戻ればわかる事だから話してもいい。」と言われたので、最初は言われた通りにしようと思ったのだけど、ここで私のいたずら心が働き、教室に向かう途中でかがみ達に声をかけたのだった。

 

「ねえ、かがみ、つかさ、峰岸さん。慶一君の復帰の事、慶一君が教室に現れるまで黙っていようよ。」

 

そう切り出すと、かがみは少し呆れたような表情になって

 

「なんでよ?別に伝えちゃっても構わないじゃない。」

 

そう言って来たので、私はにやりとしながら

 

「だって、その方が面白いじゃん?だから、つかさと峰岸さんも”これ”って事で。」

 

そう言って私は、自分の口元に人差し指を立てて”しーっ”というジェスチャーをすると、つかさと峰岸さんも苦笑しながら「わかったよ、こなちゃん。」「泉ちゃんの言う通りにすればいいのね?」

 

そう言って来たので、私もその2人の答えに満面の笑みを浮かべて頷いた。

 

そんな私たちの様子を見ながらかがみは、呆れたような視線を私に送りつづけていたけれど。

 

そんな訳で、みゆきさん達にはまだ、慶一君復帰の件に関しては伏せておく事にしたのだった。

 

慶一side

 

こなたに教室に居るであろう、みゆき達に俺の復帰の事を話してもいいか?聞かれ、どのみち教室へ行けば俺の事もわかっちゃうんだろうからと思った俺は、こなたに俺の事は話してもいいと伝えてから職員室へとやってきた。

 

ドアの前で一度軽く深呼吸をすると、ドアをノックして「失礼します。」と一声かけた後入室する。

 

俺は黒井先生のいる机へ歩いていく。

 

その途中で俺の存在に気付いた桜庭先生が、俺に声をかけてきたのだった。

 

「おや?森村じゃないか。黒井先生から聞いてるぞ?かなり大変なだったらしいな。その事でしばらくは学校を休んでいたようだが、もう大丈夫なのか?」

 

そう声をかけてくれる桜場先生に俺は頷いて

 

「はい。少しの間休む事になってご心配をおかけしましたが、もう大丈夫です。今日から復帰する旨を黒井先生に報告しにきました。いい機会ですし、桜庭先生も元は自分のクラスの担任ですしね。桜庭先生にも今、報告して行きますよ。」

 

その言葉に桜庭先生も1つ頷くと

 

「そうか。それはよかったな。森村、その一週間の間にお前の仲間達もお前の様子を見に行っただろうな。せいぜい感謝する事だ。お前を立ち直らせる為に奮闘した仲間に。そして、そんな仲間達がいるお前自身はかなり幸せな人間なのだという事に。そんな環境に身を置ける幸運にな。」

 

そんな風に言う桜庭先生の言葉の一つ一つを噛み締めつつ、俺も力強く頷くと

 

「はい。もちろんです。俺はこれからも感謝を忘れず生きていきますよ。そして、そんな風に心配してくれる先生もいる、という事の幸せも。」

 

そう答える俺に、桜庭先生は顔に微笑みを浮かべて大きく頷いた。

 

俺はそんな桜庭先生にぺこりと頭を下げると、本来の目的である黒井先生のいる机へと足を向けた。

 

先生の机に近づく俺に気付いた黒井先生が、俺に声をかけてきた。

 

「お?なんや聞き覚えのある声がしてると思ったら森村やないか。久しぶりやなー。制服を着てここに来たっちゅう事は、もう・・・ええんか?」

 

俺の様子を伺いつつ、俺にそう声をかけてくる黒井先生に俺は頷いて

 

「はい。色々ありましたが、何とか。それで、今日から復帰したいと思いましたので、その報告も兼ねてこちらに立ち寄らせてもらいました。」

 

俺の言葉に表情に安心した様子をたたえつつ、先生は

 

「そっか。それなら何よりや。今まで休んどった分、これからきっちり行かしてもらうからな?まあ、覚悟しとけよ?森村。それと・・・よう戻ったな。」

 

俺に厳しい言葉をかけつつ、最後には俺を気遣ってくれる言葉をかけてくれる先生に、俺も嬉しくなり

 

「わかってますよ。これからもまた、よろしくお願いします。それと、ありがとうございます、と同時にご迷惑をおかけしました。」

 

そんな風にお礼をいいつつ謝る俺に、先生も満面の笑顔で頷いてくれたのだった。

 

そして、俺は復帰の報告をした後、職員室を後にして教室へ向かった。

 

みゆきside

 

私は、いつも通り泉さん達よりも早く学校にたどり着いていたので、先に教室にいて、泉さん達の来るのを、学級委員長の任をこなしながら待っていました。

 

日下部さんもまた、部活の朝練だったらしく、泉さん達よりも早くに教室に来ていたので、結果的に日下部さんと私が先に揃う事になりました。

 

私は日下部さんに挨拶をした後、一緒に泉さん達が来るのを待っていましたが、程なくして泉さん達も教室に現れたので、私と日下部さんは泉さん達に朝のご挨拶をしたのでした。

 

その後でふと気付いたのですが、泉さん達は何やらいつもよりも嬉しそうな、そんな表情をしているのが見て取れたので、私は泉さん達に何かあったのだろうか?と思い、尋ねてみたのですが、泉さんはそんな私の質問にも適当にはぐらかす感じで、結局の所、よく分からずじまいとなりました。

 

少しだけその状況に落ち込みつつも、とりあえずはそれ以上の事は聞かずに、HRの始まる時間を待っていたのですが、そこに少し遅れて教室のドアを開けて入ってくる人の姿を見て、私は凄く驚いたのでした。

 

そして、私も驚いたのだから、他の皆さんもそうだろうと思ってこっそり様子を伺ってみると、何故か日下部さん以外はこの事が分かっていたようなそんな感じで、にこにこと笑いながらその人を出迎えていたのでした。

 

こなたside

 

慶一君の事を内緒にして教室に来た私たちだったけど、慶一君復帰はやっぱり嬉しかったみたいで、みゆきさん達にこの事を内緒にしようとしていたにもかかわらず、私たちの表情に喜びの色があったのをみゆきさんに察知されて、その理由を尋ねられてしまった。

 

私は内心慌てつつも、適当に答えをはぐらかしてみゆきさんの追及を逃れたのだけど、そのうちに慶一君が職員室での用事を済ませて戻って来て、教室に入ってきた瞬間のみゆきさん達の驚きの顔を見て、何とか作戦が成功したと内心でほくそえんでいたのだった。

 

そして、慌てて慶一君にかけよるみゆきさんとみさきちの姿をにこにこしながら見守っている私たちだった。

 

慶一side

 

職員室での用事も済ませ、俺は自分の教室へと向かった。

 

その途中で、俺の事に気付いて声をかけてくれるほかのクラスメートや女生徒らにも声をかけられたりしたのだが、俺はそんな皆の声に照れながら答えつつ、教室まで急いだ。

 

そして、自分の教室に入って行くと、俺の事に気付いたみゆきとみさおが俺が教室にきた事に驚いて、慌てて俺の側にかけよってきた。

 

「お、おはようございます。慶一さん。もう大丈夫なのですか?今日復帰なされる事を全然知りませんでしたので、驚きました。」

「おはよ、慶一!今日からもう来ても大丈夫なんか?お前が来ること、全然しんなかったから驚いたゼ!?」

 

そう声をかけてきた2人に俺も驚きつつ

 

「おはよう、みゆき、みさお。はいいんだが、俺はこなた達に俺の事話してくれていい、って言っといたはずなんだけどな。こなた達から何も聞いてないのか?」

 

そう尋ねると、2人とも首を振って

 

「いえ、泉さんが何か嬉しそうだったって言う事は分かったのですが、それが何なのかも結局わからずじまい、でしたので・・・まさか、この事だとは気づきもしませんでした。泉さん達も結局教えてはくれませんでしたから・・・。」

「私もそうだぞ?ったく、あいつら人がわりいよなー。」

 

そう言う2人に俺は、大きくため息をついてこなた達の方を見る。

 

俺の視線に気付いたみんなは苦笑しながら、そして、こなたは冷や汗を流しながら

 

「あ、あはは。こういう時は驚かせる方が楽しいと思ったからさー・・・だから、許して?」

 

両手を合わせて俺に謝ってくるこなたに俺は、またもため息をつくと

 

「まったく、相変わらずで安心するよ。もういいよ。ともあれ、今日から俺も学校に復帰だ。改めてよろしくな?皆。」

 

そんな俺の言葉にみゆきとみさおは

 

「はい!それにしても安心しました。復帰の早かった事もそうですけど、それ以上に・・・凄くお元気そうでしたから・・・。」

「私もだゼ?でも、お前を励ましに行った甲斐はあったから、よかったゼ!」

 

そう言って笑顔で俺に言い、そして皆もまた、改めて俺を迎えてくれた事を俺は心の中で喜んでいた。

 

そして、この時の俺は、皆からまだある一言をもらっていない事に気付かなかった。

 

それに気付いたのはその日の昼休み、久々にアニ研部室にて皆でお昼を食べる事になった時だった。

 

およそ一週間ぶりに俺は、その前までは頻繁にここに通って皆とお昼休みを過ごしていた事を思い出した。

 

そして、そんな思いを胸に秘めつつ、部室のドアを開けると、俺の事に気付いたこなた達以外の皆が

 

「あ、先輩。泉先輩から聞きましたよ?今日から復帰なんですね?」

 

と、俺に言って来るこう。

 

「・・・ゆたかから聞きました・・・。先輩、無事に戻って来てくれてよかったです・・・。」

 

そう言って笑顔を向けるみなみ。

 

「お久しぶりですね。お元気そうで何よりですよ。たまき達も先輩のこと心配してましたからね。」

 

と、照れくさそうな顔を俺に向けながら言うみく。

 

そして、そんな3人と一緒に俺に笑顔を向けてくれるやまと、ひより、いずみ、たまきらに、俺も笑顔を返しながら

 

「皆にはこの一週間、心配をかけてしまって本当にすまなかった。今日からまた俺も復帰して頑張っていくから、改めてよろしく頼むよ。」

 

そう言うと、こなたたちは揃って俺を見て、そして、「「「「「「「「「「「「「「「おかえりなさい」」」」」」」」」」」」」」」と改めてそう言ってくれるのを見て、俺はすごく嬉しい気持ちと、そして、目頭が熱くなる思いを同時に味わいながら、改めて皆に「ただいま、みんな。」とそう答える俺だった。

 

そして、お互いににっこり笑って、いつもの俺達のお昼休みが始まったのだった。

 

皆は、ここ一週間に学校等であった事等を俺に話して聞かせてくれた。

 

俺もまた、そんなみんなの話を聞きながら、改めてこの日常に戻ってこれた事を実感したのだった。

 

そして、その日の放課後、俺は今日、もう1つの場所に復帰報告をするために、こなた達と一緒にその場所へ向かった。

 

こなた達はそこへの復帰に関しては、まだ少し心配してくれていたのだが、俺もいつまでも休んで迷惑をかけるわけには行かなかったから、こなた達にも大丈夫だから、と言って聞かせて、そこへと向かうのだった。

 

その際にこなたは、どこかにメールを飛ばしていたようだったのを俺は見ていたのだが、それが何なのかまでは俺は気にはしていなかった。

 

そして、俺は一週間ぶりのバイト先へとやってきた。

 

そして、店長室へと赴いて、ノックをして、俺は店長室に入ったのだが、そこで驚かされる事事となった。

 

「失礼します。」

 

そう言って俺は店長室に入ると、俺を見て、店長と杉田店員、そして、主だった部署の人がそこにいてくれて、そして、俺に花束を渡してくれた。

 

「伝説の少年Aよ。伝説の少女Aよりメールはもらって、事情は知っている。今回の事は相当に大変な出来事だったみたいだが、何とか乗り越える事が出来たみたいだな。そして、今日から復帰しようとしてくれてもいるらしいじゃないか。それを知った我々は君にこれを用意させてもらった。受け取ってくれたまえ。」

 

そう言う店長から花束を受け取り、そして、杉田店員も

 

「いやあ、君が大変な事になっていると聞いてこちらも心を痛めていたよ。でも、復帰がかなってなによりだ。君がいない間は結構大変だったからね。これからもよろしく頼むよ。」

 

そう言って俺にさらに花束を渡してくれ、そして、その他の人からもまた、復帰に関してのお祝いの言葉をもらった。

 

そんな状況に驚きつつ、そして嬉しい気持になりつつ、俺は店長達に

 

「ご心配おかけしましたが、今日からまたしっかりとやっていきますので、これからもよろしくお願いします。早速着替えて現場に入りますので、それでは。」

 

そう言って店長達に一礼をすると、俺は着替える為にロッカールームへと足を運んだ。

 

そして、リハビリも兼ねての復帰後の初仕事が始まった。

 

俺の事を知ってくれているお客や、その他の店員さんにも声をかけられ、俺は恐縮しつつも仕事をこなしていった。

 

流石にブランクもあり、復帰初日の今日は、自分の仕事の再確認と他の部署の改めての見回りで費やす事となったが、何とか仕事を終えることが出来た。

 

そうして心地よい疲れと共に今日の業務を終えて、俺達は帰路についた。

 

みゆき達都内組と別れ、帰りの電車の中でこなたたちとやり取りをする俺。

 

「ふう、1日色々あったけど、何とか終わったな。」

 

そう俺が言うと、こなた達も

 

「お疲れ様、慶一君。でも、無事に復帰してくれて嬉しいよ。私たちも君を励ましに行った甲斐があったね。」

「そうね。今日1日を振り返って思ったけど、やっぱり慶一くんが居る方がより楽しい、そう思えるわ。あんたの存在って結構大事になってきてるって思えるわね。」

「うん。わたしもそう思うな。やっぱりけいちゃんがいないと寂しいね。」

「もうすっかり慶ちゃんも私たちにとっても居てあたりまえの存在になってきてるね。」

「だよなー。お前が居ねえとなんか物足りねえって思えたかんなー。」

 

そう言っていたが、それを聞いたパティが顎に手を当てながら

 

「フム。ミナさんのナカではケイイチはトクベツなソンザイになっているのデスね?」

 

そう分析するパティに俺は、照れで顔を赤らめ、あやの以外の皆も顔を赤くして慌てながら

 

「あはは、ま、まあ、大切な友達ではあるよね?」

「わ、私は別に、そんな風には・・・」

「そ、そうだよ、パトリシアさん。」

「そ、そりゃ大事な友達ではあっけどさ、仲間なんだし心配して当然じゃん?」

 

そんな風に言う皆をあやのは苦笑しながら見守り、パティはニヤニヤとしながら皆を見つめ、俺はそんなパティにデコピンを食らわせて

 

「・・・まったく、お前は突然に皆が答えに窮するような事を言うな。皆困ってるじゃないか。」

 

そう言うと、パティは額を押さえて涙目になりながら

 

「ヒドイですケイイチ。ワタシはただジブンのオモったコトをイっただけデスよ・・・。」

 

その言葉に俺は呆れつつ

 

「それは時と場合によるもんだ。お前もそこらへんは分かってくれよ、頼むから。」

 

という、俺の言葉に皆もうんうんと頷き、そしてパティはそんな俺にまだ不満気だった。

 

結局その後、家に帰る前にパティに飲み物を奢ってやって、機嫌を直してもらい、さらに夕食で頑張る事でパティの機嫌も直ったようだった。

 

俺は部屋に戻り、今日の事、そして、今までの事を思い出しながら、改めて先へと向かう決意を固めたのだった。

 

そして、そんな考え事をしている時にこなたからの電話があり、俺は電話を取った。

 

「もしもし?こなたか?こんな時間にどうしたんだ?」

「あ、慶一君?大変だよ!ちょっとテレビのニュースをつけてみて!?」

「ん?ニュース?何かあったのか?」

「いいから早く!!」

「わ、分かったよ。ちょっと待ってろ。」

 

そう言ってから、俺は居間まで行って、テレビをつけると、そこにはニュースが写し出されていた。

 

『・・・・・・のアパートで、成神章さんのものと思われる遺体が発見されました。遺体は丁度、布団に入って眠っているような形で発見され、部屋からは遺書らしき物が見つかったとの事です。警察は、これは自殺であるだろうと、断定し、現在、遺書を分析し、その原因を探っているとの事・・・・・・』

 

俺は、そのニュースを見て、衝撃を受けた。

 

そして、再び電話口のこなたとやり取りを再開する。

 

「・・・・・・こなた、これは一体どういう事なんだろう?」

「私にもわからないよ。ねえ、慶一君。このニュースに出て来た成神章ってやっぱりあの成神章、なのかな?」

「写真は公開されていなかったみたいだから良くは分からないな、でも、俺としては別人であって欲しいが・・・」

「うーん・・・今はまだ、なんとも言えないよねえ・・・この事件のあった場所はゆいねーさんの管轄だし、ちょっと聞いてみようかな?」

「ん?でも、ゆいさんは交通課だろ?こういう事件に関する情報なんてもらえるものかな?部署的に。」

「まあ、確かにね。でも、当たって砕けて見ないとなんとも言えないよ。やるだけやってみる。何か分かったら慶一君にも連絡いれるからー。」

「わかった。期待はせずに待ってるよ。それじゃまたな。」

「うん。それじゃねー。」

 

そう言って俺達は電話でのやり取りを終えた。

 

俺は、電話口でこなたには別人であって欲しいとそう言ったが、内心では本人かもしれないと言う妙な確信があった。

 

ともあれ、今の状況ではこれ以上の事は探れないと思ったので、俺は続報を待つしかなかったのだった。

 

今回のニュースを気にしつつ、その日を終える。

 

そして、次の日の夕方に、龍兄からの電話をもらう事となったのだった。

 

こなたside

 

慶一君の復帰もあって、今日は楽しい1日になった。

 

バイトを終えて、久々に慶一君を交えての楽しい会話をした事が嬉しくて、私は上機嫌になりながら食事を終えた後、ゆーちゃんと一緒にテレビを見ていた。

 

そして、ゆーちゃんがチャンネルを変えて欲しいと言って来たので、私はチャンネルの変更をやったのだけど、その際にたまたま押したチャンネルがニュースだったのだが、そのニュースを見て私は驚いた。

 

そこには私の、そして慶一君の知ってる人物の名前があったからだった。

 

私は、すぐに慶一君の携帯に電話を入れてニュースを見るように伝えた。

 

そして、ニュースを見終わった慶一君とさっきのニュースの内容について話す私だった。

 

慶一君は、それが本人でなければいい、とはいっていたけれど、私には何となくわかった。

 

慶一君は口でそう言いながらも、このニュースに出て来た人物はおそらく本人だろうと思ってることが。

 

そして、私もまた、これが成神本人である事を、何となくだけど確信できた。

 

慶一君にはゆいねーさんに、事件について聞いてみると言ってはみたものの、この一件を聞くのは龍也さん達の方がいいかもと思っていた。

 

だから、慶一君との電話を終えた後に私は、すぐに龍也さんの所へと電話をかけたのだった。

 

「もしもし、龍也さんですか?私です。」

「こなたちゃんかい?ひょっとして今日の電話の理由はあのニュースかい?」

「やっぱり龍也さんにもわかりましたか?それで、あのニュースの人物ってやっぱり本人なんですか?」

「うちの方で警察に掛け合ってもらって得た情報によると、本人で間違いないようだ。」

「・・・やっぱりそうですか・・・。龍也さん、教えてください。今、一体どういう事になっているんですか?」

「どういう事になっているのか、そこらへんの細かい所は今調べている所さ。だから、何かわかり次第君に連絡をするよ。それまでは、君もこの事に関してはあまり慶一には意識させないように気をつけていてくれ。」

「・・・わかりました。それじゃ、何か分かりましたらよろしくお願いします。」

「うん。とりあえず今はこれで。また連絡するよ。」

「はい。それじゃ龍也さんも気をつけてくださいね?」

「ありがとう。こなたちゃん。君の忠告は胸に刻んでおくよ。」

「はい。それじゃお休みなさい。」

「うん。お休み。」

 

そう言って私は龍也さんとの電話を終えた。

 

私や慶一君の推測どおり、ニュースの人物は成神本人であるようだ。

 

その後、私は龍也さんからもう一度電話をもらい、今、どのような事になっているのかを教えられた。

 

その状況を知り、私はまだまだこの事件は色々と面倒な事になりそうかも、と思いながら今日は体を休める事にしたのだった。

 

この先の日常に少しだけ不安を感じながら・・・・・・。

 


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