らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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癒しの旋律達、第4話~みさおとあやのの気遣い~

突然の実家からの呼び出し、そして、親父から受けた謝罪に俺は、困惑しつつも親父の気持を受け止め、自分の気持ちを伝えて俺は、龍兄からの指示で瞬の家へと遺品を受け取りに行く事となった。

 

麗真おじさんとまみえ、瞬の仏壇に線香をあげて、俺は瞬の遺品を受け取り、牧村家を後にする。

 

そして、実家へ戻る途中で出会ったのは、みゆきとみなみの2人だった。

 

2人は学校の帰りだったみたいで、こんな所で俺と出会うとは思っていなかったらしく、かなり驚いていた。

 

俺もまた、そんな出会いに驚きを隠せないでいたのだが、2人は俺に、自分の家へ来て欲しいと言って来る。

 

俺は困惑しつつも、そんな2人の気持に応えて2人の家へとお邪魔する。

 

みなみには音楽を、そして、みゆきには高良家において俺に優しさを暖かさを与えてくれ、俺は更に自分の心の傷が癒されるのを感じていた。

 

翌日、みゆきとみなみを学校に送り出した後、俺は一度実家に戻ってから自宅を目指したのだが、その帰りの電車内で俺は、忘れていた事を思い出して少し焦っていた。

 

「・・・しまった・・・昨日は色々な事があったから、モモとミィの事すっかり忘れてたぞ・・・あやのあたりが気付いていてくれればと思うけど、俺の状況しってるあやのはひょっとしたら来るの遠慮してる可能性あるもんな・・・現にここ数日はあやのは猫達の世話に来てくれてなかったし・・・あいつら、腹空かしてなければいいけどな・・・。」

 

そう呟きつつ家に戻り、俺は、猫の様子を見るために急いで家の中を確認した。

 

そして、キッチンの方へ行ってみた時、テーブルの上に書置きが置いてあるのを見つけ、俺はそれを手にとってみた。

 

【慶ちゃんへ】

 

『高良ちゃんからメールをもらって、慶ちゃん、猫の事忘れちゃってると思ったので今日は学校行く前にいつものように立ち寄らせてもらったわ。

 

ちゃんとやるべき事は済ませてあるから安心してね?それと、後で高良ちゃんにお礼のメール送っておく事。

 

そう言う訳だから、大変かもしれないけど、頑張ってね?慶ちゃん。

 

私達は慶ちゃんが立ち直って元気な姿を見せてくれる日を待ってるからね?

 

byあやの。』

 

俺はその手紙をみて、凄くありがたい気持になって、丁度今日は昼で学校も終わる頃だという事を確認した俺はまず、みゆきに連絡を入れた。

 

数回のコールの後、みゆきが出た。

 

「もしもし?慶一さんですか?」

「ああ、俺だ。みゆき、俺の忘れてた事をあやのに伝えてくれてありがとうな?おかげで助かったよ。」

「い、いえ・・・。慶一さんに心配事があっては家で楽しんでいただけないかも、と思った私の個人的考えによるものですから・・・。もし、ちゃんとお礼をしたいという事であれば、それは私の伝言を実行してくれた峰岸さんにお伝えすべきだと思いますよ?」

「そっか、それもそうだな・・・。分かった、後であやのにもちゃんと連絡いれて礼を言っておくよ。でも、俺の忘れた事に気付いてくれた事にだけは礼を言わせてくれよ?ありがとな、みゆき。」

「それが良いかと思いますよ?それと、その・・・恐縮です。」

 

最後に少し照れているらしいみゆきに俺は

 

「はは、お前らしいな。それじゃみゆき、これで切るぞ?俺も一日も早く立ち直って見せるから、みんなともう少しだけ待っててくれな?」

 

そう返すと、みゆきも

 

「・・・はい。その日をお待ちしています。くれぐれもお大事に、慶一さん。」

 

そう言ってくれたので、俺も努めて明るい声で

 

「ありがとう、みゆき。それじゃな?」

 

そう言うと、電話を切ったのだった。

 

そして、次にあやのへと電話をかけた俺だった。

 

あやのは、みゆきから俺からの電話がある事を教えて置いてくれたのだろう、すぐに電話に出た。

 

「もしもし?慶ちゃん?高良ちゃんから電話かかってくると聞いて待ってたわ。」

「あやの。いつもだけど、今回も世話になっちゃったな、ありがとな。」

「ふふ。どういたしまして、それで?高良ちゃんの所で楽しんできたんでしょ?少しは元気出た?」

 

あやののその言葉に俺は苦笑しつつ

 

「はは・・・楽しんできたって言うか、元気付けてもらって来たっていうか、まあ、そんな感じだけど、確実に元気はもらえたと思ってるよ。」

 

そう返すと、あやのは嬉しそうな声で

 

「そう?それならよかったかな?私も少しは慶ちゃんの役に立たなくっちゃね。」

 

そう言ったのだった。

 

俺はその言葉に感謝を感じつつ

 

「おいおい。お前はちゃんと役に立ってくれてるよ。俺はずっと感謝してるんだぜ?だから、ありがとうな、あやの。」

 

俺の心の中の素直な気持を伝えると、あやのは

 

「ふふ。なんだか照れちゃうわね。どういたしまして。かな?何にしても、早く元気になってね?あ、それと、明日からまたいつものようにお邪魔してもいいかな?」

 

そう言って来たので、俺は

 

「もちろんだ。俺に気を使ってくれる気持は嬉しいけど、やっぱり皆がいつも通りなのが安心できるからな。って、今の俺が言う台詞でもないんだが。」

 

苦笑しながらそう言うと、あやのは笑いながら

 

「そうよね。でも、いいのよ?慶ちゃんには辛い事があったんだから立ち直れるまでは無理しなくてもね。その分、私達が普通にしててあげるから。」

 

そのあやのの言葉に不覚にも涙が出そうになったが、俺は気を取り直して

 

「・・・そうだな、ありがとう。とにかく、お前にも一言礼が言いたかったからさ、電話で悪いんだけどな。」

 

そう言うと、あやのは優しい声で

 

「いいよ。そうやって私達に声がかけれるくらいになってきてるんだものね。あの事件の当日に比べたらかなりの回復だと思うわ。」

 

そう言ってくれた。

 

俺はそんなあやのの気持が嬉しくてありがたくてあやのに

 

「そうだな・・・。でも、もう少しだけ・・・時間が欲しい。悪いな、あやの。」

 

そう返しつつもまだ立ち直りきれていない自分を自覚したのだった。

 

あやのはそんな俺の心の葛藤に気付いているのか、俺に

 

「わかってるわ。だから、ゆっくり傷を癒してね?そろそろ私達も下校だから、これで切るわ。」

 

そう言いながら励ましてくれた。

 

俺はそんなあやのに

 

「ああ。じゃあ、気をつけて帰ってくれな。じゃあ、また明日。」

 

そう言って電話を切ったのだった。

 

あやのside

 

昨日、高良ちゃんからの電話をもらって慶ちゃんが高良ちゃんの家に来ていること、そして、一晩泊まって行く事を聞いた。

 

それと同時に、慶ちゃんが猫ちゃん達の事を忘れているみたいだからと私に、いつものお世話をしてあげて欲しいと高良ちゃんから頼まれたのだった。

 

そういう事ならばと、私はいつも通り慶ちゃんの家に行って、猫ちゃん達の面倒を見てから書置きを残して学校へと行ったのだった。

 

翌日、高良ちゃんの家から帰宅した慶ちゃんは私の書置きに気付いたみたいで、私と高良ちゃんにお礼の電話をしてくれたのだった。

 

久しぶりに聞いた慶ちゃんの声だったけど、徐々に元気を取り戻している事がわかったので、”ほっ”と胸をなでおろしていた私だった。

 

慶ちゃんの様子に少しだけ上機嫌になった私だったけど、そんな私に気付いたみさちゃんが声をかけてきたのだった。

 

「なあ、あやのー。さっき慶一と電話してたんだよな?あいつ、どんな様子だったんだ?」

 

みさちゃんのその言葉に私はにっこりと笑うと

 

「そうね、あの一件の時よりは大分声は元気そうだったわ。だから、私も少し安心してたんだけどね。」

 

みさちゃんにそう言うのだった。

 

みさちゃんはそんな私の言葉に笑顔を見せながら

 

「そっかー。それはよかった。あいつの落ち込んでる姿って見てて辛かったかんな。昨年の時も似たような顔してた時あったけどさ、今回の比じゃなかったからなあ・・・。」

 

そう言うみさちゃんに私も頷きながら

 

「そうね。あんな悲しい顔はもう見たくないかも、って思えるしね。」

 

そう言う私にみさちゃんも頷いて

 

「ああ。やっぱあいつは笑ってなくっちゃなー。私はあいつの笑顔が大好きだかんな。それに仲間だしな。」

 

そう言うみさちゃんに私は頷きながら

 

「うん。大切なお友達。そんなお友達だから、元気になって欲しいって思うもの。」

 

そう答えると、みさちゃんは何事か考え込み始めたようだった。

 

しばらく考え事をしているみさちゃんだったけど、ふいに私の方を向くと

 

「なあ、あやの。これから午後は時間あるよな?だからさ、これから慶一の家行かねえか?ちびっ子や柊も行ってるんだし、私らもあいつを元気付けてやりてえよ。」

 

そう言ってくるみさちゃんに私は、どう返事をすべきか悩んでいた。

 

慶ちゃんは確かに元気になってきたけど、それでもまだ心に傷を残している。

 

そんな状況の慶ちゃんに、私達が会いに行って本当にいいのだろうか?と。

 

そうして悩んでいると、みさちゃんが私に

 

「あやのー。何を悩んでるのか知んねえけどさ、こういう時は悩むより行動してみるべきだと私は思うゼ?それでだめだったんなら、仕方ねえよ。けどさ、余計な事考えてるよりはいいと思うゼ?」

 

そんなみさちゃんの言葉が私の背中を押した気がした。

 

私はみさちゃんの顔を見て1つ頷くと

 

「そうね。みさちゃんの言う通りかもしれないわ。どうなるかはわからないけど、当たってみましょ?」

 

そうみさちゃんに言う私だった。

 

そんな私の答えに満足げに頷いたみさちゃんは

 

「おっし、それじゃいっちょ慶一の家に行ってみっか。私としては慶一をそのまま家から連れ出してやりたいけどなー。」

 

そう言って、にかっと笑いながら言うみさちゃんに私も頷くと

 

「外、か・・・。みさちゃんの言う通りかも。部屋に篭って落ち込んでばかりいたって精神衛生上としてもよくないわよね。何にしても慶ちゃんの所へいきましょ?」

 

みさちゃんにそう言うと、みさちゃんも頷いて

 

「そうだな。そうと決まったら行くか、あやの。」

 

私にそう言って走り出すみさちゃんに驚きつつ

 

「み、みさちゃん、待ってー!?」

 

そう言いながら私は、みさちゃんの後に付いて走って行くのだった。

 

慶一side

 

あれから俺は、家の中の掃除をしたり、本を読んだりしながらゆっくりと心を落ち着けていた。

 

そして、昼食を済ませてから2時間くらい経った頃、家の呼び鈴が鳴るのが聞こえて、俺は玄関にお客さんの相手をする為に足を向けた。

 

そして、「どちら様ですか?」と声をかけながら玄関を開けると、そこには笑顔のみさおと息切れしてつらそうなあやのの2人が立っていた。

 

俺はそんな2人の姿に驚いて

 

「みさお?あやのもどうしたんだ?急に家になんか来てさ。」

 

その俺の言葉にみさおは笑いながら

 

「おっす、久しぶりじゃん、慶一。あやのからもお前の様子を聞いてさ、お前を元気付けてやりたいと思ってさー、あやのと一緒にお前の家に来たんだよ。」

 

そう言うみさおの後に、ようやく息を整えたあやのが俺に

 

「ふう・・・そういう事なの。泉ちゃんや柊ちゃん、高良ちゃんも慶ちゃんの事を心配して元気付けに来てたでしょ?だから、私達もそうしてあげたいって思って来たのよ。」

 

俺はそんな2人の言葉を聞いて、驚きつつ

 

「そ、そうだったのか。悪いな、2人とも。わざわざ俺の為にさ。」

 

俺のその言葉にみさおは笑顔で

 

「気にすんなって。いつもは私がお前に宿題とかの事で世話になってんだ。こういう時位、私だって役立ちてえよ。」

 

そう俺に言う。

 

そして、あやのも俺に

 

「みさちゃんの事もそうだけど、私も慶ちゃんには色々と助けられてきたからね。命を救ってもらった事だってあったくらいだもの。こういう時こそ私達が頑張らなきゃって思ったの。」

 

ニコニコと笑いながら言うあやの。

 

俺はそんな2人の気持が嬉しくて照れ笑いしながら

 

「ベ、別に俺は大事な仲間の為に何かをする事は苦なわけじゃないさ。それでお前らの役に立ってたんならそれでいいんだよ。」

 

そう言った後、更に

 

「それで?家に上がってのんびりして行くのか?それならそれで、こっちもお茶とか出させてもらうけど?」

 

俺の言葉にみさおは首を振って

 

「いや、それも惜しいけど、それはまた今度でいいや。その代わりといっちゃなんだけどよ、私らと外に遊びに行かねえか?うじうじ家に篭ってちゃ、元気になるものもなりゃしないと思うゼ?」

 

そう提案してきた。

 

そして、あやのも俺に

 

「この事はみさちゃんと私で決めた事なの。でも慶ちゃんが無理だって言うなら・・・私達は無理強いはしないつもりよ?」

 

俺を外に連れ出す経緯を説明しつつ、俺に選択権を与えてくれたあやの。

 

俺はそんな2人を見て少し考え込んでいたが、やがて腹を決めると

 

「・・・なら、2人のその提案に乗せてもらうとしようか。」

 

そう2人に答える俺だったが、その答えに驚きの表情を見せつつ、あやのがおそるおそる俺に

 

「・・・いいの?慶ちゃん。無理してるんだったら、断ってくれても構わないのよ?」

 

そう聞いて来たので、俺はその言葉に首を振って

 

「・・・正直まだ、はしゃぎまわれるほどな訳じゃない。でも、2人の言う通り、このまま家に篭っているのも良いという訳じゃない。だから、俺も思い切って2人の提案に乗ってみようと思ったんだ。これは俺の意思でもあるんだから、心配はないよ。」

 

そう言うと、2人ともほっとしたような表情を見せた。

 

そして、俺はそんな2人に微笑みを向けてから

 

「それじゃ、ちょっと用意してきちゃうからキッチンで待っててくれないか?」

 

そう言って2人にとりあえず家に上がるように促した。

 

「わかった。それじゃ、待ってるぞ?慶一。」

「急がなくていいわよ?ゆっくり準備してきてね?」

 

そう言って2人とも家に上がりつつ、俺にそう促したのを聞いて、俺も頷いて自分の部屋へと戻っていった。

 

そして、2人のそんな気持をありがたく思いつつ、俺は出かける準備を済ませて2人の所へと戻った。

 

「ただいま、2人とも。それで、外に出かけるという事だけど、どこへ行こうと考えてるんだ?」

 

キッチンにいる2人に俺は目的地について尋ねると、みさおが俺に

 

「それなんだけどよー。今からの時間じゃ遠い所は無理じゃん?でも、幸い、私らの近所にいい所があるからそこへ行こうか、ってあやのと話してたんだってヴァ。」

 

そう言うと、あやのも頷いて

 

「ふふ。そうなのよ。慶ちゃんも知ってるでしょ?糖部動物公園よ。」

 

その言葉に俺も、自分の通う学校に行く際に通り過ぎてる駅の名前を思い出して

 

「あ、そうか、確かにあそこは少し小さいけど立派に外遊びができる遊園地だったな。」

 

と、掌をポンと打ちながらそう言うと、みさおは笑いながら

 

「そうそう。わかってんじゃん、慶一。そう言う訳だから、今からそこへ出発だ!」

 

そう力強く宣言するみさおに、俺も頷きで答えるのだった。

 

そして、俺達は糖部動物公園へと出発したのだった。

 

電車で移動し、糖部動物公園へとたどり着いた俺達は、入園券を買って中に入り、俺はみさおに

 

「とりあえず、どうするんだ?ここは動物園と遊園地がいっしょの場所だからな。」

 

そう尋ねると、みさおは少し考え込んでいたが、とりあえず考えが纏まったみたいで、俺の方を見て

 

「時間的には動物園は回ってられる余裕なさそうだから、今日は遊園地の方だけにしとこうゼ?」

 

そう言ってあやのにも同意を求めていたが、あやのもその考えに頷くと、それを見た俺も同じように頷いて

 

「じゃあ、それで行くか。遊園地は奥の方だし、早速行くか。」

 

そう言うと、みさおは満面の笑みを浮かべて

 

「おっしゃ、行こうゼ?慶一、あやのー!」

 

そう言って俺とあやのの手を取ると、俺達を引っ張って走り出した。

 

俺とあやのは苦笑しつつ慌てながら、引っ張られるままに付いて行く。

 

「おいおい、みさお、慌てなくっても乗り物は逃げたりしないぞ?」

「そうよ?みさちゃん。楽しみなのはわかるけど、私達にはちゃんと目的って物がある事を忘れてないわよね?」

 

そう俺達が言うと、みさおは前を向いたままで

 

「わかってるよー!けど、楽しい時間は待っちゃくれないんだゼ?それにここ何日かは慶一とも会えず、皆も気を使って遊んだりも出来なかったんだから、その分は付き合ってもらわねえとなー。」

 

そのみさおの言葉にあやのは慌てながら

 

「み、みさちゃん!!」

 

とみさおに激しく叱咤し、俺もまた心にグサリと針が刺さるような感じになって、俺は思わず

 

「・・・悪い、みさお。俺のせいだよな・・・ほんとにすまん・・・。」

 

みさおに詫びなきゃ気がすまなくなった俺は、そう言葉を発した。

 

そんな俺の言葉を聞いて、みさおはビクリとしながら

 

「わ、わりい、慶一・・・お前も辛かったって事わかってたはずなのに無神経な事言っちまった・・・。悪気はなかったんだ、慶一、ほんとにごめん・・・。」

 

そのみさおの謝罪を受けながら俺は、複雑な心境のまま、みさおに言うべき言葉を探っていたが、とりあえず

 

「・・・いいよ。それでもお前は俺を元気付けたいと思ったから、俺をここに連れて来てくれたんだろ?お前のその気持は嬉しいし、嘘はない言葉だとわかってるから、だからもういいよ、みさお。」

 

そう言うと、みさおは相変わらず前を向いたままだったが、少し元気を無くしたような感じだった。

 

そんな感じで少しだけ空気が重くなってしまったのだが、俺はこのままじゃいけない、と思い逆にみさおとあやのの手を取って、俺が先頭に立って2人を引っ張りながら

 

「おいおい、俺を元気付けてくれる為に俺を誘ってくれたんだろ?そんな辛気臭い顔してないで元気出せよ?今度は俺がお前らを引っ張っていくからな?それっ!!」

 

そう言って走り出す俺に、2人は困惑しながらも、それでも俺の意図を察してくれたようで

 

「・・・よっし、気を取り直して行くぞー!!慶一、さっきの詫びも含めて今日は飲み物とか奢るゼ!?」

「そうね。せっかく楽しむ為に来たんだから、暗い顔はしてられないわ。さあ、見えて来たわよ?まずはどれから乗るの?」

 

あやののその言葉にみさおは、まずコーヒーカップを指差して

 

「おっし、まずは一番近い、あれからだ、行くゼ!?」

 

そう言って俺達2人の手を引いて更に走る。

 

俺も苦笑しつつも、さっきまでの嫌な空気を吹き飛ばすつもりで、みさおに引かれるままにコーヒーカップに乗った。

 

そして、コーヒーカップが動き出すと、みさおはこれでもかというくらいにぐるぐるとハンドルを回し始めた。

 

俺とあやのはその様子を見て慌ててみさおを止めようと声をかける。

 

「こ、こら!やめろ、みさお!やりすぎだ!!うわわわっ!」

「み、みさちゃん、やめて!き、気持悪くなるよ・・・。」

 

そんな俺達の静止の声もなんのそので

 

「わはははは!そら、まわれまわれー!!」

 

そう言いながらぐるんぐるんとハンドルを回しつづけたのだった。

 

そして、俺達もそうだが、やった本人すらふらふらになりながらコーヒーカップを降りると、俺は無言でみさおの額にデコピン(強)を叩きこんだ。

 

「ヴァっ!?い、痛い・・・ごめんよ、慶一、あやのー・・・」

 

涙目になりながら俺達に謝っていたみさおだったが、あやのもすっかり機嫌を悪くしてしまい、みさおの謝罪も届いていないようだった。

 

「もう、みさちゃんたら。知らないっ!」

 

そうやってそっぽを向くあやのの態度に凹むみさおを見ていたが、俺は軽いため息を1つついて

 

「とりあえず、しっかり反省するんだな、みさお。それじゃ、次行くか。あれなんてどうだ?」

 

そう言って俺が指差したのはミラーハウスだった。

 

「お?ミラーハウスかー。面白そうじゃん?」

「そうね。行ってみましょうか。」

 

そう言って2人も同意してくれたので、俺は2人を伴ってミラーハウスへと入っていった。

 

ここで、みさおは1つの提案をしてきたのだった。

 

「なあ、慶一、あやの。3人で勝負しねえか?」

 

その言葉に俺とあやのは首を傾げながら「「勝負?」」と2人して聞き返すとみさおは頷いて

 

「ああ。3人で誰が一番早くこのミラーハウスから出られるかの勝負だ。負けた人は勝った人に飲み物を奢るって事でどうだ?」

 

その言葉に、俺とあやのも顔を見合わせて軽いため息を1つついたが、俺はみさおに

 

「よっし、その勝負、受けるぞ?あやのはどうする?」

 

そう応え、そんな俺の言葉にあやのはちょっと考えていたみたいだけど、すぐに頷いて

 

「2人がやるのなら私もやってみようかな?」

 

そう言ったので、俺達も頷いて

 

「おーっし、そんじゃ行くぞ?3.2.1でスタートと合図したら飛び出す。いいな?2人とも。」

 

そう言うと、2人も頷いて

 

「それでいいゼ!」

「慶ちゃん、合図お願いね?」

 

そう言ったので、俺も2人に頷くとカウントダウンを開始した。

 

「よし、行くぞ?3!2!1!スタートっ!!」

 

そのスタートの合図で飛び出す俺達だったが、次の瞬間”ガンッ!!”という音が響いたかと思うと、頭を抱えてうずくまる俺達3人の姿があった。

 

「・・・痛たた・・・いきなりミラーかよ・・・。」

「すげえ痛かったってヴァ・・・。」

「あうう・・・。」

 

いきなり出鼻を挫かれる展開になったが、気を取り直して再び競争が始まった。

 

そして、そのつど鏡に幻惑されつつもなんとか出口までたどり着いたが、結果はあやのの1人勝ちになったようだった。

 

「むう、やるな、あやの。」

「まさか負けると思わなかったってヴァ・・・。」

 

俺達2人の言葉にあやのはクスクスと笑いながら

 

「最初は慌てちゃったけど、その後はじっくりと行ったのが良かったんだと思うわ。それじゃ、2人には何かジュースを奢ってもらわなくちゃね?」

 

と言うあやのの言葉に、俺達2人は顔を見合わせながら苦笑したのだった。

 

そして、次に行ったのはお化け屋敷。

 

ここは、俺が別段怖がる事ももなく、だったのだが、以外にもみさおもこれにはちょっと弱いみたいで

 

「うひゃう!怖えよう、慶一・・・。」

「きゃあ!慶ちゃん!怖い!!」

 

悲鳴をあげていたのだが、あやのは元々怖がり立ったのもあって、みさおの悲鳴に感化されて同じように悲鳴をあげて俺に抱きついて来た。

 

俺はそんな2人を苦笑しつつも受け止めてやりながら、みさおに

 

「みさお、お前、前回の肝試しの時はあんまり怖がってなかったのに、どうして今回のは駄目なんだ?」

 

そう尋ねると、みさおは涙目の顔を俺に向けて

 

「わ、私はああいうのよりもこうやって脅かされる方のが怖えんだよ!ああいうのは何かいるかも、っていう心の準備がある程度あるからいけるけどさ・・・こういうのはそういうの一切なしでどこから脅かされるかわからねえんだもん・・・。」

 

俺にそう言うみさおの言葉に俺は、何となく納得できたのだった。

 

「ま、確かにお前の言う事もわかるな。こういうのは予測が出来ない事の方に恐怖を感じるものだしなあ・・・。」

 

俺の言葉にあやのもうんうんと頷いて

 

「そうよね・・・私も苦手よ・・・。」

 

そう言ってやっぱりみさお同様、涙目な顔を俺に向けていうあやの。

 

俺は2人に

 

「でも、そうやって我慢しないで大声出す方が良いんだぞ?前にそんな実験をテレビでやってたのをみた事あったからな。叫び声を我慢する事でより恐怖を感じるようになるらしいんだよな。」

 

そう説明したのだが、そうこうしているうちに出口へと辿り付く俺達だった。

 

そして、俺の説明に2人は感心して、俺に尊敬の眼差しを向けていたのを、俺は照れつつも視線をそらしたのだった。

 

その後、お化け屋敷を後にした俺達は、次は絶叫マシンに乗ろうという事になり

 

「さあて、次はここの名物とも言える木製コースターレジーナに乗ろうゼー!」

 

と言う、みさおの提案により、俺達はジェットコースターへと向かったのだった。

 

「木製ってのがまた珍しいよな。俺も興味はあったんだが。」

 

コースターを見上げながら俺がそう言うと、あやのは

 

「私は何回か乗った事があるかな?みさちゃんともここは結構来てた所だから。」

 

そう言ってにっこり笑っていた。

 

そうこうしているうちに俺達の番が来たのでコースターに乗り込む。

 

俺を真中に両隣にみさおとあやのの2人が並ぶ格好となった。

 

そして、諸準備を終えていよいよスタートしたのだった。

 

高いところまでゆっくりと上っていくコースター。

 

俺は動くコースターから周りを見渡してみた。

 

そこからの眺めもまたいい感じで、俺はしばらくそんな景色に見入っていたのだった。

 

そして、ぼーっとしていたらしく、頂上にたどり着いた事に気付かなかった俺は、身構えが一瞬遅れた。

 

一気に加速しだすコースターに思わず驚いて

 

「う、うぉわっ!!」

 

と情けない悲鳴を上げていたのだった。

 

そんな俺の失態を見て笑うみさおとあやの。

 

それを苦笑しながら俺も見つつ、コースターのスピードを楽しんだのだった。

 

そして、コースターを降りてから、さっきの事でみさおとあやのに

 

「慶一、お前、情けなかったぞ?『うぉわっ!』とか言っちゃってさ。」

「くすくす。あの顔は本当に面白かったわね。」

 

そう言って笑われた俺は、軽いため息を1つついて

 

「情けないのは認めるから、勘弁してくれよ・・・はあ・・・。」

 

そう言って凹んでいたのだった。

 

その後も色々、時間近くまで乗り物に乗って楽しんだ俺達だったが、最後に観覧車に乗ろう、と言う事になった。

 

「最後の〆でこれに乗ってこーゼ?」

 

と言うみさおの言葉に俺達も同意して観覧車へと乗り込んだのだった。

 

ゆっくりと上がっていく観覧車から、夕焼けに染まる外の景色を俺達はしばらく無言で眺めていたが、俺はふいに2人に向き直ると

 

「・・・みさお、あやの。今日はありがとうな。あの時からずっと家に閉じこもりがちだった俺だったけど、2人のおかげでいい気晴らしができたよ。」

 

そう言って2人に頭を下げた俺だった。

 

そんな俺に2人は笑顔を向けながら

 

「あはは。ちょっと強引にお前を外に連れ出すことになっちまったけど、少しでも元気になってくれたんなら私らも嬉しいからな。」

「そうね。ある意味賭けだったんだけど、上手くいったから良かったわ。また1つ慶ちゃんの為にしてあげる事ができたものね。」

 

そんな2人の言葉に俺も、感謝の気持で胸を一杯にしながら

 

「ありがとう。2人とも。また少し俺は2人にも元気をもらえた。おかげでもう少し時間がかかるかもだけど、立ち直りのきっかけにできそうだよ。頑張って立ち直ってまたみんなのいる学校へ戻るから、それまではもう少しだけ、待っていて欲しい。そして、また普通に過ごせるようになったその時には・・・今度はもっと大きい遊園地に皆で行こう。その事を今日はここで2人に約束させて欲しい。」

 

そう伝えると、2人とも頷いてくれて

 

「わかったゼ。私らはお前が学校に戻るのを待ってるから、また元気な姿を見せてくれよな。そして、今言った約束を忘れんなよ?」

「ちゃんと心の整理をつけられるその時まで、頑張ってね?慶ちゃん。そして、忘れないで?あなたの側には私達がいるんだから。」

 

そう言ってくれる2人に俺も頷いて

 

「ああ。わかってる。それもまた、俺の励ましになってるのは事実だからな。俺にとって物凄く心強いよ。」

 

そう言うと、2人も笑顔で頷いてくれたのだった。

 

今日もまた、俺の心を癒してくれる為に2人の旋律が俺の側に来てくれた。

 

その2つの旋律の優しさに俺は、更に心が元気になるのを感じながら、遊園地を後にしたのだった。

 

そして、きっと立ち直ろう。

 

みんなの前に戻ろう、そう改めて誓う俺だった。

 

あやのside

 

今回の慶ちゃんからの電話、そして、みさちゃんの行動が今日の私達の行動につながり、そして、慶ちゃんを更に元気付けてあげる事につながったようだった。

 

私は今日の事を思い出しながら心の中で

 

(慶ちゃんの為に泉ちゃん達が行動を起こしていた事は知っていたけど、私も今回は思い切っちゃたわよね。でも、結果として慶ちゃんの為になったからよかったかな?慶ちゃんはあの時に比べて大分元気になってきてるのも感じられたしね。明日からはまた普通に慶ちゃんの家に行って猫ちゃん達のお世話もしてあげなきゃね。慶ちゃん、学校に出てくる日を私は待ってるよ?それまでは心の傷をゆっくりと癒してね?)

 

そう考えながら家へとみさちゃんと一緒に帰る私だった。

 

みさおside

 

あやのと慶一との電話でのやり取りの様子を見てて私は何だかいても立ってもいられなくなった。

 

そして、綾乃を焚きつけて私は、思い切って慶一を外に連れだして気分転換させてやろうと思ったのだった。

 

結果は、慶一が私らの話しに乗ってくれた事で上手くいった。

 

(ちびっ子達も慶一の為に元気を取り戻させてやる為に行動を起こした。私はあいつみたいに思い切れなかったけど、今日のあやのと慶一の電話のやり取りを聞いていて何だか行けそうかも、って思って思わず行動しちまったなー・・・。でも、あいつは私らの誘いに乗ってくれた。作戦としてはおおむね成功だよなー・・・。でも、ちょっとあいつに対して無神経な事も言っちまったよな・・・それはちゃんと反省しねえとな・・・。でも、あいつは少し元気を取り戻してくれたみたいだから良かったゼ。最後にした約束もちゃんと果たしてもらうためにはあいつには早いとこ元気になってもらわねえとな。待ってるぜ?慶一、もう一度元気な姿で私らの前に帰って来てくれよな。)

 

1部、自分の軽率な発言を反省しつつも、私はあいつがまた元気な顔を見せてくれる事を、学校に出てきてくれる事を望みながら、あやのと一緒に家へと戻ったのだった。

 


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