らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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贖罪の旋律~慶一の咎、みんなの決意と動き始めた事態~

龍也side

 

昨日の慶一達の悲しみを目の当たりにし、さらには、そこに一緒にやって来たこなたちゃんに、瞬坊からの伝言を伝え、皆にこなたちゃんに伝えた真実を伝えてもらい、今後の自分達の身の回りを警戒するように、と忠告をした俺だった。

 

更に、皆の所への戻り際に俺は、こなたちゃんに、慶一にはこの事は伏せて欲しいとその理由も添えて、改めてお願いをした。

 

俺は、慶一を復讐者にはしたくない、そう思っていたからだ。

 

だが、それでも俺は、瞬坊に手を下すように命じた者を見つけ出した時には、そいつのみを慶一の前に引き出してやってもいいかもしれない、とも考えていた。

 

せめて、あだ討ちだけでもさせてやるのもいいかもしれない、しかし、慶一に手を汚させずに置くほうがいいかもしれない、どうするべきかな?俺はそんな2つの相反する思いに揺れてもいた。

 

俺は、その2つの思いに思考を巡らせていたが、どの道それは、そいつを捕らえる時までの課題とすべきだろう、今はそう思考を打ち切り、次の日の朝を迎えた俺は、瞬坊の葬儀を済ます為に道場に寝泊りさせた皆に声をかけ、そして、病院で寝ているであろう、慶一達の様子も見に行くのだった。

 

結論から言うと、慶一は未だにショックを隠しきれず、表情は暗くなり、その目からは光も失われているようだった。

 

俺と共に慶一を迎えにやってきたこなたちゃん達もまた、そんな慶一を辛そうに見つつも、極力慶一の側に居てくれたのが見て取れたので、俺は少しだけ安心したのだった。

 

そんな状況の中で、静かに、そして厳かに瞬坊の葬儀は始まった。

 

慶一side

 

昨日の悪夢と呼んでいい程の出来事を受け、俺は気付けば瞬の傍らで泣きつかれて眠ってしまっていたようだった。

 

その間も俺はずっと夢の中を彷徨っていたが、俺は夢を見ながら、今日あった事もまたただの夢に違いない、目が覚めたらきっと元の日常に戻るだろう、そう思っていた。

 

けど、目が覚めて俺が見上げた天井は、そんな俺の僅かな望みさえも打ち砕くには十分なものだった。

 

「・・・やっぱり・・・夢じゃ・・・ないんだな・・・瞬・・・。」

 

俺は俯きながら親友の名前を呟いたが、俺と一緒に病院に泊まったこうとやまとも何時の間にか起きだしていたみたいで、俺に遠慮がちに声をかけてきたのだった。

 

「・・・先輩、夢じゃ・・・ありませんでしたね・・・。これが、現実なんて・・・これが瞬一先輩の運命だというんでしょうか・・・私は・・・こんなの認めたくないですよ・・・。」

「・・・それは私もよ?こう。こんな形で瞬一先輩と別れる事になるなんて・・・私だって納得いかないわよ・・・。先輩、私、悔しいわ・・・。」

 

そんな2人の言葉を聞いて俺は落ち込みつつ

 

「・・・ああ、そうだな・・・俺も・・・凄く悔しいよ・・・。」

 

そう言って俺達は3人で落ち込んでいた。

 

そこに俺達を迎えに龍兄がやってきた。

 

「・・・起きたか、慶一。行こう。瞬坊の・・・葬儀の準備は出来ている。後はお前達が揃えば始められる。つらいだろうが・・・ちゃんと送ってやれ。それが・・・瞬坊の為だ・・・。」

 

俺達と同じように辛い表情を見せながら、龍兄も俺にそう告げる。

 

俺はその言葉にしばしためらいを見せた後、3人で顔を見合わせて頷いて、俺達は龍兄の後について泊まっていた病室を出て、瞬坊の安置されている葬祭場へと向かった。

 

葬祭場へつくと、そこにはすでにこなた達も待っていて、俺の姿を見つけるなり、小走りでこちらへとやってきた。

 

こなたは俺に心配そうな表情を向けつつ

 

「・・・慶一君、大丈夫?少し顔色悪いね・・・それに、八坂さん達も・・・。」

 

俺にそう言った後、こう達にも心配そうな視線を向けた。

 

俺はそんなこなたに何とか頷いて

 

「大丈夫、とはいい難い、かな・・・はは・・・。」

 

力なく笑みを浮かべつつそう言うと、こう達もこなたに

 

「・・・私は、先輩よりは少しましですね・・・。」

「・・・私も、こうと似たようなものではあるわ・・・泉先輩、心配してくれてありがとう・・・。」

 

そう言っていたが、それを聞いたこなたも少しだけ緊張を緩めつつ

 

「・・・そっか・・・とりあえず中に行こう?皆待ってるから・・・。」

 

そう言って踵を返し、皆の所へと誘導してくれるこなたの後に付いて俺達も歩き出したのだった。

 

そして、皆の集まってる場所へと着いた時、こなた以外の皆も俺達に気付き、心配そうな顔を向けていた。

 

俺はそんな皆の顔を一瞥すると、瞬のお父さんである麗真おじさんを見つけ、足早に側へ歩み寄ると、俺はその場で麗真おじさんに土下座をした。

 

俺の突然の行動に、一瞬騒がしくなる会場内だったが、麗真さんはいきなり土下座をする俺に困惑しつつも

 

「け、慶一君。一体どうしたんだい?急に土下座なんてして、とりあえず立ちなさい。皆さんも驚いているからね。」

 

そう言ってくれる麗真さんに俺は土下座の姿勢のままで

 

「・・・すみません・・・麗真おじさん・・・今回の事・・・俺が・・・俺が悪いんです・・・俺が、馬鹿な事をしなかったら・・・瞬が、瞬が馬鹿な俺の事を庇って足に怪我さえしてなかったら・・・ひょっとしたら助かってたかもしれない・・・足が万全だったら・・・車を避ける事も出来ていたかも知れない・・・全ては・・・原因を作った俺が悪いんです!すいません!どんなに詫びても詫びたりない!麗真おじさん!俺を!俺を殴ってください!せめて、せめてあいつの受けた痛みの一部でもこの体に受けなければ俺の気が済みません!麗真おじさん!どうか俺を!俺に制裁を!!」

 

最後には再び俺は涙しながら、そう麗真おじさんに訴えた。

 

麗真おじさんは、そんな俺を見下ろしながら少しの間何事か考え込んでいるみたいだったが、やがて膝を折って俺の背中に触れると

 

「・・・顔を、上げてくれないか?慶一君。確かに君の言うように足の怪我さえなければ避けれた事故かもしれない。けどね、私も死んだ瞬一も、もうあの事はすでに終わった事と思っている。だから、今更その事で君を責めるつもりはないよ。そうでなくても龍真さんにはかなりの制裁は受けているはずだしね。今回はただ・・・ただ、瞬一に運がなかった、という事なんだ。」

 

俺は、そんな風に言う麗真おじさんの言葉を受けて俺は、涙でくしゃくしゃの顔を上げ、麗真叔父さんを見つめる。

 

そんな俺に麗真おじさんは

 

「君がこれからも幸せに生きて欲しい、その事を常に息子は願っていた。だから、私から君にお願いだ。息子の願いを・・・聞き届けてくれないか?そして、ちゃんと幸せになったら・・・その時には息子の墓前に訪れてやって欲しい。これは・・・私から君へのお願いだ。いいね?慶一君。」

 

その麗真おじさんの言葉に俺は、再び涙が溢れ出すのを止められなかった。

 

そして、言葉にならず、俺はただ、麗真おじさんに対して何度も首を縦に振っていた。

 

そんな俺の姿を、麗真おじさんは優しい顔で見守ってくれていたのだった。

 

しばらくしてその場から立ち上がると、俺を心配して、こなた達も俺の側に来てくれたのだった。

 

そして、同じように涙を流しながらも、何も言わずそっと俺の側にいてくれたのだった。

 

あれから、告別式も終え、瞬の体が荼毘にふされる時がやってきた。

 

窯にいれられる瞬の棺を見送る俺達。

 

それを涙を流しながら見送りつつ、俺はこなた達にも聞こえるような声で

 

「・・・瞬、俺はお前に言われたように・・・お前が願うように・・・きっと幸せになる・・・ここにいる、皆と一緒に・・・そして・・・もう、誰一人・・・失わせない・・・俺の魂にかけて、ここに誓うよ。だから、瞬、俺を見守っていてくれ。」

 

そう言うと、皆も俺を見た後、正面を見据えて力強く頷くのだった。

 

その後は、こうとやまとも一旦は自宅へと戻って行った。

 

それを見送って俺達もまた、都内を後にし、自宅へと戻って行く。

 

自宅に付いた後、俺はこの一件の為に告別式も含めて3日学校を休んでしまう事になったので、黒井先生に報告の電話を入れた。

 

「・・・と言う訳なんです。突然学校を休んでしまって申し訳ありませんでした。」

 

俺の報告に少し辛そうな声で先生は

 

「・・・そか・・・それはきつい話やな・・・それで?森村、お前はどうするんや?すぐに学校に出るのが辛かったらもう数日学校を休んでもええよ?」

 

そう言いつつ、先生なりに俺に気をつかってくれたようだった。

 

俺は、先生の言うように、すぐに学校に出れる感じではなかったので、その言葉に甘えさせてもらう事にした。

 

「・・・すいません。今回はお言葉に甘えさせてもらいます。大丈夫です、きっと元気になってみせますから・・・。」

 

俺の言葉に先生は軽くため息をつきながら

 

「・・・わかった。とにかく今は、ゆっくりしいや。残酷な事ではあるけど、こういうのも時が解決してくれるもんやしな。まあ、重要なプリント等は泉らに届けさせるからそっちは心配せんでええよ?」

 

そう言う先生に俺は

 

「わかりました。それじゃしばしの間だけ、すいません。」

 

そう言うと、先生も努めて明るい声で

 

「何、気にせんでええ。ともあれ、元気な姿を見せてくれる事を期待してるでー?それじゃな。」

 

そう言ってくれる先生に俺も

 

「はい。ありがとうございます。それでは。」

 

そう言って電話を切った。

 

その後はバイト先へも連絡を入れて、俺はしばしの休息の為に数日の間学校を休むのだった。

 

かがみside

 

牧村君の突然の死、そして、悲しみに打ちひしがれる慶一くんを見て、私もまた、慶一くんの思いを感じた時、胸が痛くなる思いだった。

 

そして、告別式の会場へと姿を現した慶一くんの取った態度を見て私は、すごく悲しくなり、いまだ苦しみ続ける慶一くんを思い、私もつかさも涙を流していたのだった。

 

最後に牧村君や私達に向けた慶一くんの言葉を聞いて、私達は、牧村君の分まで頑張らなければ、と思いながら、慶一くんと共に火葬場を後にしたのだった。

 

帰りの電車の中で、慶一くんはまだ悲しそうな顔をしていた。

 

慶一くんの降りる駅で慶一くんと別れた私達は、家につくまでの間、2人して少しやり取りを交わしていたのだった。

 

「・・・お別れ、終わったわね・・・。急にこんな事になって私も驚いたけど・・・慶一くん、大丈夫かな・・・?」

「けいちゃん、凄く泣いてたよね・・・わたし、けいちゃんがかわいそうで見てられなかったよ・・・。」

「・・・つかさ、頑張りましょ?」

「ふぇ?おねえちゃん?」

「慶一くんは今、凄く悲しんでる。でも、その悲しみを軽くしてあげられるのは、私達しかいないと思う。これまで私達は慶一くんに色々な面で助けられてきたわ。だから、今度は・・・私達が慶一くんの為に力になってあげなきゃね。」

「・・・そうだね、そうだよね。わたし頑張るよ、おねえちゃん。私の出来る事でけいちゃんを元気にする。だってわたしは・・・。」

「・・・私は、慶一くんの笑顔が、好きなんだから(もん)。」

 

私達は、2人してそう言いあうと、顔を見合わせて笑うのだった。

 

そして、その後家に戻った私達は姉さん達やお父さん、お母さんにも今回の事を聞かれ、それを説明すると、お母さん達も姉さん達も悲しそうな表情を見せつつも、慶一くんの事を心配していたのだった。

 

みゆきside

 

牧村さんの告別式の後、私とみなみちゃんは一度自宅へと戻らねばならなかったので、会場内で解散という事になりました。

 

まだ悲しみの表情を見せながら歩く慶一さんを見ているのは辛かったのですが、私とみなみちゃんは龍神さんの所のお弟子さんに伴われて自宅へと戻ったのでした。

 

そして、私とみなみちゃんは自宅前で今回の事についてやり取りを交わすのでした。

 

「突然のこととはいえ、今回の事は驚きましたね・・・。まさか、牧村さんがあのような事になってしまうとは・・・考えもしませんでしたからね・・・。」

「・・・そうですね・・・それに・・・あんなに悲しそうな先輩は見ていられませんでした・・・。」

「・・・私もです・・・。慶一さんにとっては唯一の親友なのですし、慶一さんの悲しみの深さを思い知りましたね・・・。」

「・・・先輩きっと、落ち込んでいますよね・・・。みゆきさん、私達に出来ることって、ないのでしょうか・・・。」

「難しい所ですね、けど・・・2つ程はありますよ。私達に出来ることが・・・。」

「・・・教えてください、みゆきさん。その2つの出来る事というのを・・・。」

「・・・1つは・・・慶一さんに心配かけないように私達が元気でいること。そして、もう1つは、今までお世話になってきた慶一さんの為に、私達が元気付けてあげる事、ですね。それは、私達だからこそ、いえ、私達でなければ出来ない事です。慶一さんと深い絆で繋がっている私達でなければ・・・。」

「・・・わかりました・・・。みゆきさん、一緒に頑張りましょう・・・。私達で先輩を元気付けてあげましょう・・・。今こそ先輩にご恩返しをする時ですよね・・・。」

「そのとおりです。みなみちゃん、頑張りましょう。慶一さんの為に。」

「・・・はい・・・。」

 

私達はお互いに頷きあい、これからの事に対する決意を固めると、それぞれの自宅へと戻って行くのでした。

 

そして、家についた私をお母さんが出迎えてくれて、お母さんも慶一さんの事が気になっていたみたいで、色々と私に聞いて来たので、一通りの説明をしたのでした。

 

そうして一旦落ち着いて、自分の部屋へと戻った時、龍也さんから私の携帯へと連絡が入ったのでした。

 

私はその事に驚きつつもとりあえず電話をとります。

 

「もしもし、龍也さんですか?突然お電話いただいたので驚きました。私に何か御用ですか?」

「すまないね、みゆきちゃん。急に電話をして。実はね、君の所とみなみちゃんの所のご両親にも相談して欲しい事があってね。それで電話したんだ。」

「相談、ですか?私は何をすればいいのでしょう?」

「うん。こなたちゃんから今回の事に関して聞いているよね?それで、これから2.3ヶ月の間はこのあたりは相当物騒になると思う。だから、みゆきちゃんとみなみちゃんは慶一の所へ、みゆきちゃんのご両親。そして、みなみちゃんのご両親に安全の為にうちへと移って欲しいという事なんだ。」

「えっ?私とみなみちゃんが慶一さんの所、そして、お父さんやお母さん、それにみなみちゃんの所のご両親が龍神さんの所へ、ですか?」

「そうだ。君達は慶一にとっても関係の深い人達だ。それに、これからの事は下手をすれば君らのご両親もこのごたごたに巻き込む事になるだろう。そうなった時、また慶一は悲しい思いをする事になる。それこそ、痛烈に自分を責める程にね。今回の事があったんだ。これ以上はあいつに重荷を背負って欲しくないからな。なあに、慶一には上手く俺から説明しとくさ。だから、みゆきちゃんはご両親の説得と、みなみちゃんへこの事を伝えて欲しい。頼めるかな?」

 

そう説明する龍也さんの言葉に私は、しばし考え込んでいましたが、私は考えを素早く纏めると、龍也さんに

 

「わかりました。両親の説得とみなみちゃんの所への伝言はお任せください。それで、慶一さんの所へはいつ頃お伺いすればいいのでしょうか?」

 

そう返すと、龍也さんは少し電話口で考え込んでいるようだったので、私は龍也さんの言葉を待ったのでした。

 

そして、龍也さんは

 

「一週間、時間をもらえるかな。たぶん、いきなり慶一にみゆきちゃん達の事を話しても今のあいつの状態じゃ事情は受け入れられないかもしれないからね。一週間の間にあいつと話ができるほどのなれば、その時に話すようにするよ。で、話が決まったらすぐにみゆきちゃんの方へと連絡するようにするから。」

 

その答えを聞いて私は

 

「わかりました。ご連絡、お待ちしています。それと、龍也さん・・・。」

 

龍也さんに対する返事をした後、一旦言葉を切って、私は龍也さんに伝えるべき事を伝える為に声を出しました。

 

「くれぐれも、ご無理はなさらないで下さい。牧村さんもそうですが・・・龍也さんもまた慶一さんにとっては大事な人なのですから・・・。」

 

私がそう言うと、龍也さんは電話口で軽くため息をついて

 

「・・・ありがとう。みゆきちゃん。大丈夫、あいつの為にも、そして、君達の為にも俺は無茶はしないよ。それは約束する。だから、安心してくれ。」

 

そう答える龍也さんに私は、ほっと胸をなでおろしながら

 

「わかりました。そう言っていただけてほっとしました。それではこれで、ご連絡、お待ちしています。」

 

そう伝えると、龍也さんも電話口で軽く笑いながら

 

「うん。それじゃまた連絡するから、そっちの方は頼んだよ?みゆきちゃん。」

 

そう言う龍也さんに私も電話口で頷きつつ

 

「はい。こちらはお任せください。それでは。」

 

そう言うと、龍也さんとの通話を終わらせるのでした。

 

その後、私はお母さんやお父さんへの説得と、みなみちゃんの所への伝言をしに走ったのでした。

 

みなみちゃんとそのご両親もこの事を聞いて、少し不安がっているようでしたが、ごたごたが解決するまでは、という事で、この相談を受け入れてもらえたのでした。

 

あやのside

 

慶ちゃんの親友である牧村君に起きた突然の出来事で私達は、真実の確認と牧村君の見送りをする事になった。

 

あんなに悲しそうな慶ちゃんを見たのは、去年にあった織部さん事件以来だったけれど、今回はあの時以上だと思えた。

 

牧村君との最後のお別れをして、慶ちゃんは私達や牧村君に対して改めて自分の誓いを口にした。

 

それを聞いた私達も慶ちゃん同様、牧村君に心の中で誓いをしたのだった。

 

牧村君の分まで皆で幸せになるのだ、と。

 

そして、私達は一旦、会場内で解散する事となった。

 

私達は慶ちゃん達とも別れてみさちゃんと2人で、今回の事を話していた。

 

「大変だったわね・・・今回はいきなり辛い事になっちゃったし・・・。」

「・・・だよな。あんな辛そうな慶一の顔見るのは、あん時以来だもんな、いや、あん時よりひでえか・・・。」

「そうだね・・・。私も辛かったし・・・。」

「・・・なあ、あやの。私、あの慶一の牧村に対する、そして私達に対する最後の言葉を聞いたとき、私はあいつの決意みたいなものを知った気がするよ。でも、それはあいつ1人だけに背負わせちゃいけないんじゃねえかな?って思った。それと同時に私らが今すべき事も、だけどな。」

「・・・うん。私達のすべき事、それは・・・・・・。」

「ああ・・・。あいつに心配かけずに、そして、あいつを元気にしてやる事、だよな。」

「みさちゃん、私、がんばるわ。慶ちゃんは私達の大切なお友達だもんね。」

「私もだゼ?あやの。そんで、元気なあいつの顔をまたみてえかんな。」

 

最後のみさちゃんの言葉を聞いて私は、みさちゃんと顔を見合わせて笑顔で頷きあった。

 

そして、これからの事に思いを巡らせながら、今回の一件の終結を願う私達だった。

 

ひよりside

 

パティの過ぎ去ってしまっていたけど、とりあえず誕生日会を開いていたその日に起きたこの悲劇、私も大いに混乱していた。

 

私は一度、牧村さんと会ったことがある程度で、そんなには面識もない人ではあったけれど、先輩との過去の話をあの時に聞いてから、牧村さんの事は色々と想像して漫画のネタを考える事もあった。

 

今回の一件でこんな事になり、私は先輩と一緒に牧村さんに会った。

 

もう、何も話さない、話せなくなった牧村さんを見て、そして、その事で涙を流し、悲しむ先輩を見て、いつしか使おうと思っていた漫画のネタをここで封印する事を決めた。

 

そして、会場で解散となってから私はパティと一緒に自宅へと戻って行ったのだけど、その時にパティは先輩に気を使ったのか、少し間を置いてから帰るつもりだったようで、一度私の家に立ち寄って行こうとしていた。

 

私はそんなパティを伴い、自宅へと向かう道すがら、今回の事でパティと色々とやりとりをしていたのだった。

 

「なんか大変な事になってしまったっスね・・・。私も一度しかお目にかかったことはないけれど、優しそうないい人だったよ。先輩が親友と呼んでた気持もなんかわかるなー・・・。」

「ワタシはマキムラのコトをゼンゼンシリません・・・レイアンシツでカオをミタのがハジめてでしタ・・・ヒヨリ、イエについたらヒヨリのシっているコト、オシエてクダさい。コンカイこうしてヒヨリのイエにヨろうとオモったのはケイイチにキをツカったコトもありますガ、ワタシのシラないマキムラのコトをヒヨリにキキたかったというのもリユウです。ケイイチがあれホドにオチコムくらいデス、マキムラがケイイチにとって、どれホドタイセツなフレンドだったのかはミテいてワカりましタ。ヒヨリからハナシをキクことは、ダイジナコトだとオモえましたカラ・・・。」

「わかったよ、パティ。家についたら私が取っていたメモと一緒に話してあげる。」

「サンキューです、ヒヨリ。」

「どういたしまして。でも、大丈夫かな、先輩・・・ちゃんと立ち直れるかな・・・それだけがちょっと心配だね。」

「ダイジョウブですヨ、ヒヨリ!ワタシタチにデキルコトはきっとありマス!ケイイチをゲンキにするタメに、これからガンバッテいきマスヨ!?」

「・・・そうだね、それに・・・そうしてあげる事が先輩対する恩返しでもあるっスから・・・。」

「コンドはワタシタチがケイイチのタメにガンバルバンです!さあ、イキマショウ!ヒヨリ!!」

 

最後のパティの台詞に頷くと、私は先輩の為に何ができるだろう?と考えながら、パティと一緒に家に戻って牧村先輩の事をパティに聞かせたのだった。

 

これから先、先輩に私たちのしてあげられる事を考えながら、パティと色々話し合うのだった。

 

みくside

 

私たちの後輩でもあり、留学生でもあるパティの誕生日会をやっている時に事件は起こった。

 

先輩達の慌てている様子から、それは、先輩の知り合いでもあり、親友でもある人らしかった。

 

先輩は、私達が事情を知らない事を考慮して私達に今日はお開きにする、と言う事を伝えてくれたが、私達もまた、お世話になった先輩の一大事だという事で、何が出来るかわからなかったけれど、とりあえず先輩達に付いて行くことにしたのだった。

 

霊安室で先輩の親友と対面し、先輩の悲しみを知り、私達3人は言葉もなかった。

 

火葬場で先輩の、私達や牧村さんに対する先輩の最後の言葉を聞くまで、私は今後自分達はこれから何が出来るだろう、その事をずっと考えていた。

 

そして、とりあえず解散したその帰り道、私はたまきやいずみさんと今回の件について色々と話したのだった。

 

「・・・なんか、大変な事になっちゃったね。先輩、大丈夫かな?」

「先輩にとっては親友だった人みたいだもんね。先輩、酷く落ち込むんじゃないかな・・・。」

「悲しそうだったよね、先輩・・・。」

「そうだね・・・。先輩が涙もろい事はやさこ達からも聞いて知ってはいたけど・・・あれは見てられなかったよね・・・。」

「それに、葬祭場での土下座も驚きだったね・・・。先輩が過去に牧村さんにしでかしてしまった事はやさこからも聞いていたけど・・・先輩、自分を責めてるみたいだったよね・・・。」

「聞けば先輩は牧村先輩も自分達が目指そうとしている大学に誘いたかったみたいだし・・・。」

「「「やりきれないね・・・。」」」

 

3人揃ってため息をつきながらそう言う私達。

 

でも、そんな中で私は、先輩のあの言葉を聞いてからずっと考えていた事があったので、皆にその考えを聞いてもらおうと思い、声をかけた。

 

「ねえ、たまき、いずみさん。私、あの時から考えていたんだけどさ、先輩には色々とお世話にもなっているから、私達の出来る事で先輩を励ましてあげたいな、って思うけど、みんなはどう?」

「・・・そうね。私も同じこと考えてた。私たちがアニ研に入れたのも先輩のとりなしのおかげでもあるし、それに、便りになりそうな後輩や新しい友人も先輩は作ってくれたしね。」

「・・・私も・・・先輩のコミケでのあの言葉を聞いたから、少しだけ自分の好きな事に誇りを持てるようになったのよね・・・。だから、私に大事な事を気付かせてくれた先輩の為に何かしてあげたいね・・・。」

 

いずみさんの言葉を聞いて私は、皆も同じ気持でいてくれたのだという事を改めて知り、とても嬉しくなった。

 

「なら、私達も先輩が元気になってくれるように、私達のやれる事で先輩を元気づけよう。そのために協力しようよ、たまき、いずみさん。」

 

私の提案に2人も頷いてくれて

 

「もちろん。少しでも先輩に恩返ししなくちゃね。」

「私も。頑張ってみるよ。」

 

そう言ってくれたのを聞いて、私もまた決意を新たにしたのだった。

 

それから私達はあれこれと今後の事を相談しつつ、自宅へと戻ったのだった。

 

こうside

 

パティの誕生日を祝っている時に起きた突然の悲劇、私とやまと、そして先輩はこの事実が真実とは認めたくはなかった。

 

けれど、龍也さんからの連絡、そして、実際にもはや私達に話し掛ける事もなくなってしまった瞬一先輩の姿を目の当たりにして、この事が現実だと知らされた。

 

私や、やまとはもちろん、先輩も瞬一先輩との付き合いの長さもあったから、この事実にとても悲しみ、そして、悔しく思った。

 

結局、私達3人は瞬一先輩の眠る霊安室で泣きつかれて眠る事となったのだが、私達に気を使ってくれた人のおかげで、病院ではあったけどベットで眠る事ができたのだった。

 

そんな中でも先輩同様、私達も目が覚めたら何事もなく元にもどっているだろう、という夢落ちを期待したが、結果は、そんな私達の淡い期待を打ち砕く現実だった。

 

私達は、精神的にも相当に参っていたが、龍也さんの瞬一先輩を送ってやれ、の言葉に悔しさと悲しみを滲ませながらもその言葉に従った。

 

葬祭場で瞬一先輩のお父さんに土下座する先輩を見て、私達もまたも泣く事となったけど、そんな思いをしつつも、何とか瞬一先輩を最後まで見送れた事に、少しだけ安堵していたのだった。

 

火葬場で先輩が、私達や瞬一先輩に対して呟いた言葉は先輩の決意を示すものでもあったけれど、私達は、そんな先輩の為に出来ることを探していた。

 

そして、火葬場で一旦解散となり、私達はとりあえず自宅へと戻っていたが、その帰る際に龍也さんからしばらくの間慶一の家へと移ってくれ、君達のご両親はうちの来てくれるように説得して欲しい、事件が解決するまでの間、慶一の所とうちで匿わせてもらうから、と言われた私達はその説得もする事となった。

 

帰り道に私とやまとは今回の事で色々とやりとりをするのだった。

 

「・・・はあ・・・何か大変な事になっちゃったね・・・。瞬一先輩の事もそうだけど、まさか龍也さん達があんな危ない事に係わっているなんてね・・・。」

「そうね・・・。龍也さん、よっぽど先輩を巻き込みたくなかったみたいだし、それに・・・先輩を復讐者にはしたくない、って言ってたわね・・・。」

「・・・それは、私も賛成かな・・・いくら瞬一先輩の為とはいえ、鬼の形相で仇を探す慶一先輩の姿は私も想像したくないし、見たくないもんね・・・。」

「・・・こう、約束して?この一件、先輩の家でお世話になる事になっても絶対に先輩には本当の事を言わないと・・・。」

「わかってる。先輩の為にも私は絶対に言わないよ。それと同時に、やまと。」

「ええ・・・。瞬一先輩の分まで私達で先輩を元気付けてあげないとね・・・。」

「・・・だね。私達は牧村先輩の次だけど、慶一先輩の親友なんだから。」

「○○中からの縁の力、やわじゃない事を先輩にもわからせてあげなきゃね・・・。」

 

私達はお互いに頷きあうと、お互いの家に戻って両親の説得をするのだった。

 

そして、後は慶一先輩と龍也さんとの話し合いが済むまでは、様子を見る事にした私達だった。

 

こなたside

 

パティの誕生日会の時にたまたま飛び込んで来たニュースは慶一君のみならず、八坂さんや永森さん、そして、あの時、慶一君を助ける為に情報を共有した皆よりもちょっとだけ付き合いの深かった私にもかなりのショックを与える事となった。

 

いずれ、慶一君の過去の脅威を取り除くつもりでいた私はその事を知り、そして、霊安室で牧村君の姿を見た時、私はまだやるべき事を終えきらずに途中退場した牧村君にその悔しさをぶつけていた。

 

そして、冷静になった時、私は自分の思わず口走ってしまった事に、慶一君に何かを気付かせるきっかけになっちゃっただろうか?と焦りもしたが、悲しみの大きい慶一君は私のうっかり口にした言葉にも気付いてはいないようで、少しほっとしていた。

 

けれど、今回の事を私は凄く悔しく思っていたので、犯人は絶対に捕まえたいとも思っていた。

 

そんな折、少し落ち着いた頃に龍也さんから私に話しがあるとの事だったので、私は龍也さんの話を聞くために病院の屋上へと移動する。

 

そこで聞かされた話は、龍也さんが急に今回戻って来た理由と犯罪組織の事、そして、牧村君の死亡の真実だった。

 

そこで話に出てきた人物に私は憤りを覚えつつ、今後は龍也さんとの情報のやりとりをする事となった。

 

その後、葬祭場での慶一君土下座や火葬場での慶一君の決意を聞き、私達は一旦それぞれの自宅へと帰って行く事となった。

 

自宅に向かいながら私はゆーちゃんと今回の事に関してやりとりをしたのだった。

 

「・・・何か大変な事になっちゃったね、こなたおねーちゃん・・・。」

「そうだねー・・・。慶一君も辛そうだったけど、私も慶一君が困ってる時に慶一君を助ける為に力を貸してくれた人がこんな事になったからね。彼とは今後とも仲良くしていきたいと思っていただけに、残念だよ。」

「こなたおねーちゃん。それは慶一先輩の為にも、って言う事だよね?」

「そうだね。私は、牧村君と2人で慶一君の過去の脅威を取り除きたかった。それがある限りは私もゆーちゃんも・・・そして、他の皆の身にも危険が及ぶ可能性をはらんでいたからね・・・。それが除かれるまでは・・・協力していきたかったんだよね。」

「私もこなたおねーちゃんから今回の事の真実を聞いたよ?ねえ、こなたおねーちゃん。私は今後どうすればいいかな?先輩には本当の事、話せないよね?」

「・・・そうだね・・・。もし話してしまえば慶一君、きっと復讐者になってしまう。それこそ、龍也さんの懸念してる通りになっちゃうだろうね・・・。だから、ゆーちゃん。慶一君には絶対にこの事は言っちゃダメだよ?」

「・・・うん。わかったよ。こなたおねーちゃん。先輩の為にも私、絶対に黙っておくから。」

「まあ、ゆーちゃんなら心配ないかな?後でちょっと口が軽そうなのには改めて口止めしとかないとね・・・。それと・・・。」

「先輩の為に私達が出来る事、だよね?」

「うん。今しばらくは慶一君も落ち込むだろうからね、そんな慶一君を私達の出来る事で励ましてあげたいからね。」

「ねえ、こなたおねーちゃん。私に出来る事あるなら言ってね?私も先輩の為に頑張りたいから。」

「了解だよ、ゆーちゃん。私も慶一君を元気付けてあげたいからね。だから、頑張っていこう、ゆーちゃん。」

「うん!頑張ろう、こなたおねーちゃん。」

 

そう言いながら私達は、頷きあって決意を新たにすると、自宅を目指して歩き始めた。

 

家に着いてからは、おとーさんが今回の事で色々と私に聞いて来たので、一通りの説明をすると、おとーさんも慶一君の事を少しだけ心配しているようだったので、私もそんなおとーさんの気持が少しだけ嬉しかった。

 

それから数日、慶一君はバイトも学校も休んでいたが、バイトの方は私が慶一君の代わりに慶一君の分まで頑張ったのだった。

 

それと同時に、今回の事を聞きつけた兄沢店長も慶一君の事を気にしてくれ、私に慶一君へのお見舞いも持たせてくれたのだった。

 

慶一side

 

あの日のショックから俺は数日学校を休み、バイトさえも休んでしまった。

 

でも、店長も先生もそんな俺を責めるどころか、優しい言葉すらかけてくれた事が俺にはとてもありがたかった。

 

俺の休んでいる間、こなたもバイトを頑張ってくれ、他の皆も俺を心配してかわるがわるに俺の家へと訪れてくれた。

 

パティもまた、俺に気をつかってくれたみたいで他の皆が居ない時は黙って俺の側にいてくれた。

 

その間にも俺は、少しずつ瞬一への思いも整理していった。

 

そんな事をしながらも、俺はまだ自分が立ち直るまでは時間がかかるかもしれないと思うのだった。

 

それから一週間ちょっとが過ぎた頃、俺の元に龍兄からの電話がかかってきたのだった。

 


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