らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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悲しみの旋律~瞬一の死、そして、告げられた真実と龍也の覚悟~

進路の摸索、バイトの出世、それを続けていくうちに目指すべき学校を見つける事が出来た。

 

俺達は新たなる場所へ向けて、一致団結で挑んでいこうとこれからの事に気合を入れようとしていた。

 

確実に俺は、その先の幸せに向かって進み始めている、そう思った矢先に悲劇は起こった。

 

パティの誕生日パーティを開き、ひよりのプレゼントのDVDを再生する為にテレビの入力切替をするために電源を入れた時、そこにたまたま流れたニュースは俺達に多大なショックを与えた。

 

それは、俺自身も信じられない事だった。

 

誰が想像するだろうか・・・いきなり親友を失うなどと・・・。

 

俺は混乱した頭で龍兄へと連絡を取り、事の真意を確かめるべく連絡を取った。

 

そして、そこで聞かされた事実は、もはやその事を否定できないものだった。

 

俺は急いで親友の、瞬一の居る病院へと向かおうとした。

 

そんな俺に、瞬一と係わったこなた達や事情をよく飲み込めていない毒島さん達も一緒に行くと言った。

 

そんな皆の気持をありがたく思うと共に、俺はとるものもとりあえず、こなた達を連れて電車へと乗り込んだのだった。

 

向こうに行く間、俺達は終始無言だった。

 

お互いに気を使いあい、共に目的地を目指す。

 

そして、目的の病院に着いた俺達は、龍兄達のいる霊安室へと足を向けた。

 

俺は霊安室を目の前にするまでも、心のどこかで瞬一が死んだという事実を信じずにいた。

 

そんな状態のままで俺は、霊安室のドアをノックする。

 

すると、中から龍兄が姿を現して俺に

 

「・・・来たか、慶一。さあ、中へ入れ。瞬坊が・・・待っている・・・。」

 

俺にそう言う龍兄は、かなり辛そうな顔をしていた。

 

俺はそんな龍兄の言葉に頷いて、室内へと足を踏み入れる。

 

その時、俺以外にこなた達が来ていることに驚いた龍兄は

 

「こ、こなたちゃん?それに、皆も・・・どうして、君達がここに?」

 

龍兄の問いにこなたは暗い表情で

 

「・・・この事を知った時・・・私達も慶一君と一緒に居たんです。それに、私達も・・・牧村君とは係わりがありましたから・・・慶一君を救う手助けをしてくれた事もあったくらいですし・・・。」

 

そう答えるこなたに、皆もゆっくりと頷いていた。

 

そんなこなた達の姿を見た龍兄は、1つ頷くと

 

「・・・わかった。君達も入れ。きっと・・・瞬坊も喜ぶだろうさ・・・。」

 

そう言い、こなた達に中に入るよう促すと、こなた達も俺に続いて室内に入ってきた。

 

そして、こうとやまとが俺の横へと並び、台の上で顔に白い布を被せられて横たわる瞬一の姿を見ていた。

 

俺は、そっと、瞬一の顔にかかる白い布を取って顔を見る。

 

その顔には、轢き逃げによるものと思われる傷らしきものが少し残っていたが、その顔にはこころなしか無念さが浮かんでいるように見えた。

 

俺は瞬一の顔に触れながら

 

「おい、何寝てんだよ・・・急に俺をこんな所に呼びつけたと思ったら、性質の悪い冗談やってんじゃねえよ・・・起きろ、起きろよ・・・瞬・・・目えあけろよっ!!てめえ!ふざけんなっ!!俺達やっとまた親友に戻れたんじゃねえか!!これから失ってきた4年間を取り戻すんじゃねえか!!なのに、死にました、だ!?くだらねえ真似してんじゃねえ!!起きろ!起きろよ!!起きてくれよ!!!瞬ーーーーーー!!!!」

 

そう言って俺は瞬の亡骸にすがり付いて大声で泣いた。

 

俺の後ろでこうとやまとも

 

「先輩っ!!瞬一先輩っ!!こんなのってないじゃないですか!!」

「私は・・・まだ先輩に返してない恩があるのよ?あんまりよ・・・こんなのって・・・。」

 

そう言いながら俯いて涙を零していた。

 

「・・・牧村君・・・どうして・・・まだ・・・終わってない・・・まだ私達がやる事は終わってないよ?それなのになんでさ!牧村君!!」

 

そう叫ぶこなたの後ろで他の皆も泣いていた。

 

そんな俺達の様子に、事情を知らない4人もこの辛い空気を感じ取ったようで、俺達と一緒に涙を流していたのだった。

 

瞬一の遺体にすがり付いて泣く俺に龍兄は俺の側に来て

 

「慶一・・・瞬坊からの伝言だ。すまない、そう伝えて欲しいと・・・あいつは言っていた。あいつ自身もお前とまた親友に戻れた事を凄く喜んでいた。その無念さは・・・言葉に出来ないものだろうな・・・。」

 

瞬一の最後の言葉を龍兄から聞いた俺は

 

「っ!!・・・うう・・・うおおおおおおおお!!うわああああああ!!」

 

更に大きな悲しみにさっき以上の声をあげ、涙を流した。

 

こうややまとも、そして、こなた達も龍兄のその言葉を聞いて、凄く悔しそうな顔をしていたらしいという事を後から龍兄に聞いた。

 

そして、俺とこうとやまととこなたの4人を残し、かがみ達は一旦霊安室を出た。

 

龍也side

 

瞬坊の事故の件を俺は、真実を伏せたままで慶一に伝える事となった。

 

俺にとっても中々に辛い所だが、瞬坊とした約束でもあるので、俺は毅然とした態度で事に臨んだ。

 

ある程度の予想はしていたものの、やはり慶一の態度は予想通りで、俺としてもかなり堪えた。

 

だが、俺にとっての予想外もあった。

 

それが、慶一と一緒に付いて来たこなたちゃん達の存在だった。

 

話を聞くと、偶然にも慶一と一緒にいたらしいとの事。

 

俺はさらにもう1つ、こなたちゃんにも瞬坊から託された約束を果たさねばならないと思い、様子を見ていたが、慶一ややまとちゃん達と共に霊安室に残ったので、とりあえず俺と一緒に部屋から出てきたかがみちゃん達と話す事にしたのだった。

 

「かがみちゃん、それに皆も。突然の事で驚いただろう・・・。俺も瞬坊とは幼い頃から交流もあったからね、やっぱりこういうのは辛いよ。」

 

少し沈みがちに俺はそう声をかけると、とりあえず涙を拭いたかがみちゃんが

 

「・・・はい。事件の事はニュースで見ましたが、私は今でも信じられません。あの時の牧村くんは元気そうにしていましたからね・・・。」

 

暗い表情でそう言い、そして、そんなかがみちゃんの言葉の後につかさちゃんも悲しそうな顔で

 

「けいちゃん、やっとわたし達と一緒に行きたい大学を見つけた所だったんです。けいちゃんは、出来る事なら瞬ちゃんを誘ってみたい、って言ってたんですよ?」

 

そんな2人の言葉に俺は

 

「そうか、あいつ、そんな事を考えていたのか・・・。」

 

そう呟くと、悲しそうな表情のみゆきちゃんが

 

「元々、それを考えようと思ったのは私と慶一さんがした約束からだったんです・・・。私は皆さんと出来る事ならこれから先も一緒にいられたら、と望みました。そして、慶一さんも私としてくれた約束の為に動いてくれたんです・・・。そして、ようやく・・・道が見えたと思ったのに・・・。」

 

そう言いながら、最後は悔しそうな表情で俯くみゆきちゃん。

 

そんな3人を見ながらあやのちゃんは俺に

 

「・・・龍也さん、今回のこれは轢き逃げだと聞いています。あれから何か犯人に係わる情報なんかはでていないんですか?」

 

堅い表情でそう言ってくるあやのちゃん。

 

それをさらに後押しするようにみさおちゃんも

 

「そうだゼ?龍也さん。私らもそこが気になってるんだ。私は牧村をあんな目にあわせた奴が許せない。あいつの為にも犯人を捕まえてやらなきゃあいつもうかばれねーよ。」

 

俺はそんなみさおちゃんの言葉に大きなため息を1つつくと

 

「そうだな・・・。けど、安心してくれ。家の者、それに牧村家、さらには氷室君率いる”紅”も犯人探しに動いてくれてる。後はもう1つ掛け合ってみたい所もあるからそこにも連絡してみるつもりさ。」

 

俺の言葉にかがみちゃんが

 

「掛け合ってみたい所、ですか?それは一体どこに、なんですか?」

 

そう聞いて来たので俺は頷いて

 

「慶一からも聞いたんだが、こなたちゃんの義姉で交通課の婦警さんをやってる人がいるんだよね?事件が起きたのは都内だけど、犯人が埼玉に逃げ込んでるとも考えられるからね。埼玉県警の方にも協力を仰ごうかと思ってるよ。」

 

その俺の言葉にみゆきちゃんが心配そうな顔で

 

「で、でも、大丈夫なんですか?成美さんだけでは心許なくはありませんか?」

 

そんな風に言うみゆきちゃんに俺は

 

「その辺は心配ないよ。俺の親父、龍神龍真は県警のお偉いさんともつながりをもっているんだ。だから、親父にそのお偉いさんに働きかけてもらって動かしてもらえばそう時間もかからずに犯人の足取りも掴めるはずだからね。」

 

自信あり、と言うように俺が答えると、皆は目を丸くして驚きながら

 

「つ、つくづく凄いですね・・・龍神さんの所は・・・。」

「なんだかびっくりだよ~・・・。」

「あれだけの力のある道場だから背後の繋がりも何かしらあるのでは、と思っていましたが・・・まさかその方面にも顔が利くとは思いませんでした・・・。」

「でも、警察に協力してもらえれば早く見つけられるかもしれないわね・・・。」

「だな。龍也さん。そっちの方はよろしく頼むゼ!」

「ゆいお姉ちゃんなら、きっと頑張ってくれるよ!」

「・・・牧村さんや先輩の為にも・・・犯人はつかまえなくてはいけませんね・・・。」

「そうっスよ!そして、牧村さんの前で、慶一先輩の前できっちり謝罪してもらわなきゃけじめもつけられないっスからね!!」

 

そう言い、そして、事の成り行きを見守っていた毒島さん達も

 

「私達は今回の事について、先輩やそのご友人の事も私はあまり知りません。けど、こんな事が起きてしまっている以上は、一刻も早い犯人の逮捕がなされる事を祈るばかりですね。」

「先輩、可愛そうだもんね・・・。犯人見つかればいいね・・・。あんな風に泣く先輩は見てられないよ。」

「何か、私達にも出来る事はないでしょうか?先輩や皆さんの為に、何か・・・。」

「コノママじゃケイイチがカワイソウです!ハンニンはゼッタイユルシマせんヨ!!」

 

そんな風に慶一を心配してくれる皆の気持が、今はとてもありがたく感じ、俺は皆に感謝を伝える。

 

「ありがとう。毒島さん、山辺さん、若瀬さん、それにパティちゃん。君達の気持はとてもありがたい。なら、君達にもお願いしようかな。願わくば、慶一の側についていてやって欲しい。今のあいつは相当に不安定になるだろうし、それに、かなり凹むだろう。出来るだけ1人きりでいさせたくないからね。」

 

そう皆に言うと、皆は俺に

 

「わかりました。今は先輩にそうするのが良いと言うのであれば、私は協力します。」

「私もやるよ。こういう時こそ頑張って恩返しもしたいもんね。」

「私も頑張ってみようと思います。私に道を開いてくれた先輩のご恩に少しでも報いる事が出来るのなら・・・。」

「トウゼン、ワタシもデス!!ワタシはケイイチとはファミリーのようなものですから!イッショにクらすケイイチのヤクにタってミせます!!」

 

まず4人がそう答え、そして、かがみちゃん達も

 

「ちょっと待ちなさいよ。あんた達だけにその役目を押し付ける訳には行かないわ。こういう時の為の仲間なんだから私もやるわよ?」

「わたしも!けいちゃんを元気付けてあげたいもん。」

「私もです。これまで慶一さんに助けられてきたんですから、ここで私も頑張らないと。」

「慶ちゃんは大事なお友達よ?私だって力になる!」

「私もやるゼ?それが仲間ってもんだかんな!」

「私も、いつも先輩に元気をもらってばかりですから、今私に出来る事があるのなら頑張ってみたいです。」

「・・・私に色々してくれた先輩の為に・・・今度は私が力になります・・・。」

「今回で少しでも先輩にご恩返ししたいっスね・・・。私も何か自分にできる事をするっスよ。」

 

そんな風に言ってくれたのだった。

 

俺はそんなみんなの気持が嬉しくて、そして、そこまでに慶一と皆との繋がりが強いのだという事に、少しだけ羨ましくも思ったのだった。

 

そして、俺は皆にここで待っていて欲しいという旨を伝えて、慶一達のいる霊安室へと足を向けた。

 

霊安室の前に着いた俺は、ドアをノックする。

 

俺のノックに気付いたらしい、こなたちゃんがドアを開けてくれた。

 

俺はドア越しにこなたちゃんの顔をちらりと見たが、慶一と一緒に今まで泣いていたようで、その目にはまだ涙が光っていた。

 

『龍也さん、何か用事ですか?』

 

こなたちゃんが慶一達を刺激しないように小声で聞いて来たので、俺はこなたちゃんのその言葉に頷きつつ

 

『うん、ちょっとこなたちゃんに話があるんだ。俺と一緒に来てくれないか?』

 

そう言うと、こなたちゃんはちらりと慶一達の方を見てから俺に向き直り

 

『・・・わかりました。それじゃ、そっと出ましょうか。』

 

そう言うと、慶一達を霊安室に残して出て来てくれた。

 

俺はこなたちゃんに

 

「ここじゃ話しにくいから屋上へ出ようか。」

 

そう言うと、こなたちゃんも頷いて

 

「わかりました。それじゃ、ついて行きますね?」

 

そう言ってくれたので、俺も頷いてこなたちゃんと一緒に屋上へと向かった。

 

屋上の扉を開けると、ちょっと強めの風が吹いていたが、俺は人気のない所を見つけて

 

「よし、あそこで話そう。こなたちゃん、こっちへ。」

 

俺がこなたちゃんに促すと、こなたちゃんは「はい。」と言って、俺に付いてきてくれた。

 

そして、再度人気がない事を確認してこなたちゃんに向き直った時、こなたちゃんは

 

「それで、私に話って一体何ですか?」

 

そう聞いて来たので、俺はその問いかけに頷くと

 

「うん。実はね、瞬坊が亡くなるちょっと前に、あいつは君への伝言も残したんだ。俺は君にそれを伝えなきゃならない。」

 

そう切り出すと、こなたちゃんの表情が真剣になったのが見て取れた。

 

そして、俺にその表情を向けて

 

「伝言、ですか?かなり大事な事、みたいですね?その様子だと・・・。」

 

そう返してくるこなたちゃんに俺も頷くと

 

「そうだね、かなり大事だ。何故なら瞬坊はね、君には今回の一件の真実を伝えて欲しいと俺に言い残したからなんだ。」

 

その言葉にこなたちゃんの表情が驚きに変わる。

 

そして、複雑な表情で「真実、ですか?」

 

そう聞いて来たので俺は

 

「そうだ。だが、その事を話す前に君には俺が何故今回になって武者修行から帰ってきたのか、何故慶一に会いにきていたのか、そこから説明する必要があるな。」

 

そう言うと、こなたちゃんは無言で頷いてくれ、そして短く「お願いします。」と言ったのでさらに話を続ける。

 

「俺が今回、武者修行の旅から戻ったその理由は、先代の龍神流当主が係わったある犯罪組織の事が関係しているんだ。」

 

俺の言葉にこなたちゃんは「犯罪組織?」と返してきたので、俺は頷いて

 

「そうだ。龍神流は昔、この辺を荒らしまわるある犯罪組織を粛正するために牧村君の所や氷室君の前の組織の暴走族と手を組み、これを潰した。けど、連中は完全には息の根は止まっていなかったんだ。その犯罪組織にいた幹部の1人が上手く逃げ延び、もう一度昔のような犯罪組織を立ち上げ、俺達龍神流の連合に復讐をしようと企てている。」

 

俺の言葉に驚きつつ頷くこなたちゃん。

 

俺はさらに続ける。

 

「そして、俺が呼び戻される事となった今回、その犯罪組織がついに復活を果たしたらしいんだ。俺達と牧村流、そして、氷室君達と再び連合を組み、今度こそこの組織を完全に叩き潰す。それが俺に課せられた役割だったのさ。そしてそれは、この1年の間で決着をつける、その予定だった。それからは時折慶一の所に顔を出しつつも、その犯罪組織と戦い続けていた、という訳だ。」

 

俺の話を黙って聞いていたこなたちゃんは俺に

 

「・・・なるほど、そういう事だったんですね?でも、龍神さんの所で起きたごたごたなら、どうして慶一君にもお呼びがかからなかったんですか?慶一君も龍也さん同様、龍神さんとは血は繋がっていなくても一応は関係者でもある訳ですよね?」

 

そう聞いて来たので、俺はその質問に軽いため息をついて

 

「・・・確かにこなたちゃんの言う通り、あいつも血は繋がっていなくても龍神流の関係者だ。中学時代に慶一が荒れていて、結局そのまま友人すら作らず、1人のままでいるようだったら親父も慶一を頼ろうと思った事もあったようだ。けど、それを頼もうとした時の慶一にはもはや、協力してくれ、とは言えなかったのさ。」

 

俺の言葉にこなたちゃんは、いまいち的を得ないという顔で「どうしてです?」と聞いて来たので、俺は

 

「・・・その理由は、こなたちゃん。君達だよ。」

 

そう言うと、こなたちゃんは驚いたような表情で

 

「え?わ、私達、ですか?それってどういう事なんですか?」

 

そう聞いて来たので俺は

 

「あいつが1人のままなら何の問題もなく、今回の事もあいつに一任出来た。けど、今のあいつはあいつにとって守るべき者が出来てしまった。それが・・・君達なんだよ・・・。」

 

そう答えると、こなたちゃんはその言葉に少しだけ顔を赤くしつつ

 

「慶一君の守るべき者・・・それが・・・私達・・・なんというか、照れますねえ・・・。」

 

頬をぽりぽりと掻いて照れるこなたちゃんに俺は頷いて

 

「そういう事さ。そして君達という友人を得て変わったあいつに、あの頃のような苦しみを味わわせたくはないと思った親父は、慶一の代わりに俺を呼び戻した。あいつに、そして君達に迷惑をかけないように、あいつを2度と不幸な目に合わせないように、慶一に気付かれずに俺達だけでこの問題を解決しようとしたのさ。」

 

俺の言葉にこなたちゃんは、またしても驚きの表情を見せながら

 

「・・・そ、そうだったんですか・・・。あ、1つ気になったんですが、龍也さんはうちの学校に忍び込んで来た事がありましたよね?それで、その時に龍也さんは慶一君に「守るべき者達の顔を拝みに来た。」と、そう言っていましたよね?あれはどういう理由があったんですか?」

 

そう聞いて来るこなたちゃんに俺は、真剣な表情を向けると

 

「・・・それは、慶一が俺達との繋がりを持っていると連中に気付かれた時、君達にも奴らの攻撃の矛先が向くかもしれない事を親父も俺も恐れたから、だな。そうなった時、俺達が人員を割いて君達を守らなければ、とそう考えていたからね。慶一の為にも、そして、君達に怖い思いをさせない為にも事前に食い止める為の布陣を敷きたかったから。その為には君達を守るためのボディガードに君達を認識してもらわなきゃならなかった。という事さ。」

 

俺の言葉にこなたちゃんの表情が硬くなるのが見て取れた。

 

そして、こなたちゃんはおそるおそる俺に

 

「そう、だったんですか・・・。龍也さん、今の私達に危険が及ぶ可能性はまだあるんですか?」

 

その言葉に俺は腕組みをして考え込みつつ

 

「・・・ない、と断言は出来ない。最近の奴らは目的の為に手段を選ばない動きをするようになってきている。俺達との戦いを有利にする為に君らの事に奴らが気付けば、君らをを人質に取ろうと考えないとも限らない。けど、安心して欲しい。君達にはちゃんとしたボディガードを俺達の仲間の中から信頼できる人間を選んでつかせるつもりだ。ただ、それでもあからさまには守らせない。それこそ奴らに感づかれても困るからね。つかず離れずだが、君達を影から見守る形でついてもらうつもりだから安心してくれ。それに、おそらくもうすぐ決着もつくだろう。俺達の調査もかなり深いところへ届いているからね。今しばらくは不自由になるかもだけど、後もう何ヶ月もなくそれも済ませる事が出来ると思う。それまでは我慢して欲しい。」

 

そう言うと、こなたちゃんは色々と考えを巡らせていたようだったけど、俺に顔を向けて

 

「・・・わかりました。少しの間不自由にはなりそうですが、自分達の身の安全の為、そして、慶一君に迷惑をかけないために、そちらの件は龍也さんにお任せします。」

 

そう言うと、俺はそんなこなたちゃんに頷いた。

 

そして、俺は顔写真入りのボディガードの名簿を、こなたちゃんに今の友人の人数分手渡して

 

「これを渡しておくからかがみちゃん達にも配ってやって、そして、伝えて欲しい。今しばらくは警戒して欲しいという事と、そして、真実を。君の仲間達は信頼できる人間達だよね?」

 

俺の問いかけにこなたちゃんは胸を張って

 

「当然ですよ!私達はそんな柔な信頼関係ではないですからねー。」

 

そう言うこなたちゃんを見て俺もにこりと笑うと

 

「それなら安心だな。それと最後に、君に伝えておきたい事実がある。」

 

最後の言葉で再び真剣な表情を作ると、こなたちゃんもまた真剣な表情に戻って頷いたのを見て、俺は伝えるべき辛い事実をこなたちゃんに話し始めた。

 

「今回の瞬坊の轢き逃げは・・・奴らの仕業だ・・・。」

 

その俺の言葉にこなたちゃんは、かなりショックを隠せない表情で

 

「・・・え?そ、それってどういう事なんですか?牧村君の件は事故ではない、って言うんですか!?」

 

そう聞いてくるこなたちゃんに俺は、重い頷きで返しつつ続きを話す。

 

「その通りさ。瞬坊はうちの連合の中では腕利きの情報収集能力を持っていたんだ。そして、今まで奴らを追い詰める事ができたのも瞬坊の力による所が大きい。そして、その能力は奴らの最深部にまで調査が届こうとしていた。最深部を調べられ、俺達と戦えなくなる事を恐れた連中はこれ以上深入りされないように・・・瞬坊を・・・始末する為に動いたんだ・・・。」

 

俺の言葉を信じられない、とでも言いたげなこなたちゃんは「・・・ひどい・・・そんなのって・・・。」と悔しそうに呟いた。

 

俺はそんなこなたちゃんに、さらにもう1つ重要な情報を渡しておこうと思い、さらに言葉を続けた。

 

「後もう1つ君に伝えたい事がある。君も慶一の過去を知ってるんだったよな?」

 

俺がこなたちゃんに問い掛けると、こなたちゃんは頷いて

 

「はい。慶一君から、そして、牧村君からも聞きましたから、大体は・・・。」

 

俺はその答えに頷いてさらに言葉を続ける。

 

「その中に<成神章>の名前が出てくるけど、その事は?」

 

俺の言葉にこなたちゃんも頷いて

 

「はい。知っています。慶一君とは何かしら因縁を持っているって言う事も。それに、去年の10月頃に慶一君を苦しめたのもその名前でしたからね。忘れようって言ったって忘れられるもんじゃないです。」

 

その言葉に俺は、去年に慶一にそんな事があった事に驚きつつも

 

「その<成神章>が、俺達の追っている犯罪組織に所属しているらしいという情報が入っている。」

 

そう伝えると、こなたちゃんはそれに驚いて

 

「え!?それって本当なんですか!?」

 

そう返してくるこなたちゃんに頷く俺。

 

そして、こなたちゃんは俺に不快感を思わせる表情を見せて

 

「どうして・・・あいつはその犯罪組織にいたんですか?まさか、慶一君を今でも狙ってるんですか?」

 

そう聞いて来たので、俺はその問いに首を振って

 

「慶一に対していまだ恨みは持っているようだというのは情報を集めているうちに知った事だ。けど、あいつが犯罪組織に所属しているという事はまったくの偶然だったんだ。今ではあいつは組織の中堅どころへと登っているというのが、瞬坊から伝えられた最後の情報だった。」

 

俺の言葉にこなたちゃんは苦しそうな顔で

 

「そんな・・・最悪ですね・・・あいつは、まだ慶一君を苦しめるつもりなのかな・・・?ねえ、龍也さん。成神の足取りは掴めていないんですか?」

 

そう聞いてくるこなたちゃんに俺は、ため息を1つつくと

 

「瞬坊の事件以降、あいつの足取りが何故か掴めなくなった。あいつが何を企んでいるのかは俺にもわからないが、ろくでもないことを画策してる可能性はあるな。」

 

俺のその答えにこなたちゃんも短く「そう、ですか・・・。」と言うのだった。

 

俺は、とりあえずこなたちゃんに大体の事を伝え終えたので

 

「今の所、君に伝える事はこの位だな。こなたちゃん。君とはこれからも情報交換をしていこうと思ってる。間接的に君を巻き込む事になってしまうけど、協力してくれるかな?」

 

俺の言葉にこなたちゃんは苦笑しながら

 

「ここまでの事を聞いておいて協力しない、なんて言えませんよ。それに、皆と、慶一君と、龍也さんの橋渡しになれるのは私ぐらいしかいないでしょうからね。」

 

その言葉に俺は安堵しつつ

 

「すまない。そして、ありがとう。慶一の事、そして、これからの事、皆の事、よろしく頼む。任せてくれ。なるべく早く終わらせるようにするから。」

 

そう言うと、こなたちゃんも笑みを浮かべつつ

 

「了解です。龍也さん、くれぐれも無理はしないで下さいね?龍也さんが倒れたら泣く人がいるって事は覚えておいて貰わないとね。」

 

その言葉に俺も笑いながら

 

「わかってるさ。無理はしないよ。慶一や親父達の為にもね。」

 

そういう俺に、こなたちゃんはニマニマとした表情で

 

「えー?まつりさんやいのりさんの為にも、じゃないんですかー?」

 

そう言って来たので、俺はその言葉に顔を赤くして慌てながら

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ、なんでそこでまつりさんといのりさんの名前が出てくるんだ。」

 

その言葉にこなたちゃんはニヤつきながら

 

「だって、龍也さん2人にあれほど好かれてるじゃないですかー。龍也さんだって満更じゃなさそうに見えましたけど?」

 

と言うこなたちゃんに俺は、ふいに真剣な顔になって

 

「・・・否定は・・・出来ないかなー・・・でも、2人もまた、俺が死んだりしたら、泣くよな・・・。ありがとう、こなたちゃん。改めて下手な真似はしない覚悟ができたよ。こなたちゃん。慶一はしばらく落ち込むかもしれない。だから、慶一の事を見てやって欲しい。」

 

その俺の言葉にこなたちゃんも真剣な表情で頷いて

 

「わかってます。心配しないで下さい。慶一君は私達で支えてみせますから。」

 

そんな風に言ってくれるこなたちゃんに、俺はほっとしながら

 

「ありがとう。こなたちゃん。」

 

そう言うと、こなたちゃんも笑みを浮かべながら頷いてくれたのだった。

 

その後は、組織に関する事を少しこなたちゃんに話して、ボディガードの面々の名簿を手渡し、一応の話は済ませたのだった。

 

こなたちゃんは待合室にいるかがみちゃん達の所に戻り、事情を説明して名簿を配っていた。

 

それを見ながら俺は、いくつか取るべき対策を講じようと考えていたのだった。

 

あれから大分時間も経ち、霊安室にいる3人の事が気になった俺達は3人の様子を見にいったのだが、3人は泣きつかれてその場で眠ってしまっていたのだった。

 

俺はとりあえず、3人を霊安室から起こさないように連れ出すと、病院側が用意してくれたベットに3人を寝かせて俺達も瞬坊の葬式の準備を頼んだのだった。

 

他のメンバーも今からの時間では帰る事は出来なかったので、うちの道場へ連れて行き、道場内に布団を敷かせて寝てもらう事にした。

 

俺は慶一達の事、瞬坊の事、こなたちゃん達の事を考えながら、迫る戦いの予感を感じ取りつつ、これ以上の被害を出さない事を強く心に誓ったのだった。

 


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