らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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3年生編、第2章~旋律達に起こる事件編~
急変の旋律~決まる進路、そして、起こる事件~


みゆきとした約束の為、そして、自分の為に俺は大学を探そうと決意する。

 

だが、俺はその中で、皆もまた同じ大学へと進む道がないだろうか、という事も考えていたので、とりあえずは皆の進路について、後輩組みや同級生組みにも話を聞いた。

 

ある程度進路のはっきりしている者と、そうでない者もいたが、それでも、できる事ならば同じ大学へ行きたいという気持が皆の中にある事が分かり、俺はそんな皆の気持を知って嬉しくなった。

 

皆と行ける大学を探す事を決意してその事に気合を入れていた俺だったが、それと同時にバイト先ではまさかの出世をする事となる。

 

俺は、俺の来れる日のみだが、電気街店を纏める統括主任として動く事となった。

 

そして、そんな事があってから数日、俺は学校探しとバイト先での仕事とをこなす日々を送っていた。

 

「・・・ありがとうございました!またお越しください!」

 

俺は、今日もお客の1人をお見送りしつつ、業務に励んでいた。

 

「・・・ふう。今日も中々繁盛してるよな、この店も。店長の言う通り、何故か俺達が仕事し始めてから売上の伸びが半端ない感じだ・・・。」

 

そう1人呟く俺だったが、店内を巡回して戻って来ていた元、この職場の先輩の立場だった店員の1人が俺に声をかけてきた。

 

「主任。こちらの方は順調です。私はちょっとお客に頼まれた商品の在庫チェックに行って来ます。」

 

次の自分の行動をそう報告してくる元、先輩に俺は

 

「あ、ああ。了解。そちらの方はよろしく頼みます。それと、元々はそちらの方が俺よりも先輩なのですから俺に敬語を使う事はないですよ。」

 

そう言うと、元、先輩は俺を見て

 

「確かに前は私があなたの先輩としてやっていたわ。けど、今の売上を出すほどの実績を叩き出したのは君のおかげでもあり、実力よ。だから、私はそんな君に敬意を払って君を主任と呼ばせてもらってるのよ?それにあなたの方が杉田さんよりもやりやすいのよね。私はあの人よりもあなたに主任としての器を見たからこそ、あなたを主任と認めたからこそなの。だから、何も遠慮する事はないわ。」

 

そう言った後、元、先輩は慌てて

 

「と、とにかくそう言う訳なので、これからもあなたに対する態度はさっきの通りで行かせてもらいますから。では、主任。在庫チェックに行きますので、これで。」

 

そう言う元先輩に俺は複雑な表情をしながら

 

「わ、わかりました。ともあれ、在庫チェックはお願いします。」

 

そう言うと、元先輩は俺にぺこりと頭を下げた後、レジ横の端末へと歩いていった。

 

俺はそんな様子を見ながら1つため息をつくと、他の部署のチェックもしなければと思い、そちらに足を向けようとしたが、そんな俺に。たまたまさっきのやり取りを見ていたらしいかがみが声をかけてきた。

 

「ふふ。見てたわよ?元、先輩であるあの人にもそんな風に声をかけられる程に、皆からも信頼されてるみたいね?主任さん。」

 

俺はそんな風に言うかがみに苦笑しながら

 

「勘弁してくれよ、かがみ。元々はこなたが発端だったんだぞ?伝説の少女とか言われてるのはさ。俺はそんなこなたのたまたま友人だっただけさ。それがいつの間にか伝説の少年Aとか呼ばれるようになって、それで気付いたらこれだもんな・・・。」

 

そんな俺の言葉にかがみもまた苦笑しながら

 

「確かにそうよね。元々はあんたは何の関係もなかったはずだけど、こなたとここに来てから、店長に目をつけられていたものね。」

 

かがみのその言葉に俺はため息を1つつきながら

 

「まあな・・・。おかげで去年の時はバイト代かなり稼げたのはよかったけど、本当に売上とかも伸びたもんな・・・あれには俺も驚きだったよ。」

 

俺の言葉にかがみもうんうんと頷いて

 

「私だってあんたらの事は眉唾物と思ってたわよ。だから、結果出るまでは本当に信じられなかったしね。」

 

そんな俺達の所に何時の間にかみゆきもやってきたようで、話し込んでいる俺達の姿を見つけると

 

「主任、かがみさん。だめですよ?今は仕事中なのですからしっかりとしてもらいませんと。」

 

そんなみゆきに俺は慌てつつ

 

「ちょ、みゆき、いいって、俺の事は普通に呼んでくれればさ。今更改まってその役職名で呼ばれるのは何だかむずがゆい。」

 

そう言うと、みゆきは俺ににっこりと微笑んで

 

「駄目ですよ?仕事中は慶一さんは統括主任なのですからきちんとそう呼んでけじめをつけるべきです。そうしなくては下の者も付いて来てはくれなくなってしまいます。慶一さんにはそれだけの手腕と実績がおありなのですから。」

 

そんな風に言うみゆきの笑顔の中に、遠まわしに(さぼらずに仕事してくださいね?)と言うみゆきの心が見えた気がした俺は、やれやれとジェスチャーをすると

 

「・・・わかったよ、みゆき。とりあえず仕事を再開する。かがみも引き続きよろしくな?」

 

そんな俺の言葉にかがみも思わず吹き出しながら

 

「ぷぷっ!わ、わかったわ。主任さんのお言葉にはちゃんと従わないとね。それじゃね、主任、みゆき。私も仕事に戻るわ。」

 

そう言って俺達に手を振って仕事に戻るかがみを見送って、俺達もまた業務再開と相成ったのだった。

 

かがみを苦笑交じりに見送った後、俺は杉田さんに聞く事があったので、杉田さんの所へと向かった。

 

俺は何だか少し暗くなっている杉田さんを見つけると、側に行って声をかけた。

 

「あの、杉田さん。ちょっとお聞きしたい事が・・・。」

 

そう声をかけた瞬間、杉田さんはその暗い表情を俺の方へと向けると

 

「・・・聞きたい事?今更自分に何を聞くというんだ?業務も人望も、そして、仕事においての腕も自分よりも上な君が何を聞くというんだ?」

 

そして、そこまで言って、杉田さんは何やら抑えていたものが破裂するかのように俺に詰め寄りながら

 

「君はいいよねえ!?伝説の少女Aと共に伝説の少年Aとして店長からの信望も厚い!それに、君よりもずっと長くやってるはずの俺よりも仕事もこなせるし、何よりも、実際に利益を大幅に上げるという実績すら作った!だが、俺は、部下には馬鹿にされ、仕事も君よりも劣る!今回統括主任という任を受けたが、それにおいても部下にすら見向きもされない始末!!そんな俺に君は一体何を聞こうというんだい!?聞く事なんてないよねえ!?聞かなくても出来るよねえ!?だって君は俺よりもう・・・ぐはあっ!!」

 

そこまで言った瞬間、ドグシャアッという物凄い音と共に殴り飛ばされる杉田さん。

 

「い、一体何が・・・。」

 

そう言いながら我に帰る杉田さんと、そして、俺の前には荒い息をつく兄沢店長の姿が。

 

店長は杉田さんをビシッと指差して

 

「頭は冷えたか!?この愚か者がー!!確かに、彼は君以上のやり手だし、実際の売上にも貢献するほどの実績と部下からの信頼も厚い男だ!!だが、君はそれでもこの俺と共に今まで一生懸命に頑張ってきたのではないか!?どんな時でも俺を支えて来てくれたのではないか!?事、それに関しては君は彼にはない実績をもっているのだぞ!?それを忘れたか!!杉田店員!!」

 

その兄沢店長の指摘に、物凄いショックを受けてorzの格好になる杉田さん。

 

「そ、そうでした・・・。すみません、店長。自分は我を失ってしまっていました。おかげで目が覚めました。」

 

その杉田さんの言葉に兄沢店長も大仰に頷いて

 

「うむ!分かればよろしい!!杉田君。君もこの店にとってはなくてはならない人員なのだ!そこの所をわかってくれたまえ!そして、伝説の少年Aと手を取り合い、この店の為に尽くしてくれたまえ!!」

 

兄沢店長の言葉に杉田さんは

 

「はい!店長!申し訳ありませんでした!さあ、森村君、いや伝説の少年A、自分に聞きたい事とは一体何かな?」

 

気を取り直しながら俺に改めて聞いてくる杉田さんに俺は、2人の熱いやり取りに疲れたような表情を向けながら

 

「え?あ、えーとですね、実は、あの商品に関しての事なんですが・・・・・。」

 

そう聞いて、俺は杉田さんからある商品に関しての事を相談したのだった。

 

そうして、とりあえず、あの2人の対処を終えた俺の所に店内を巡回していたこなたがやってきて

 

「いやあ、大変だったねえ、慶一君。いつもながらの熱血ぶりだしね、あの店長も。」

 

そう言うこなたに俺も疲れたような顔を向けて

 

「まあな。悪い人達じゃないんだが、どうにもやりすぎな所があるのが玉に傷だしなあ。そのたんびに殴られる杉田さんが少し不憫に思えてならないよ・・・。」

 

そんな風に言う俺を慰めるようにこなたは笑いながら

 

「まあまあ。それでも出世なんかも出来たんだし、私たちもそんなに長くは今年はバイトもできないかもなんだから、あまり深くは考えなくてもいいんじゃない?」

 

そう言うこなたに俺は再びため息を1つつきながら

 

「まあ、それもそうか。それに、仕事が辛いって訳でもないんだしな。お前や皆がいるから楽しくもやれるよ。」

 

半ば諦めも混じったような感情でそう言いながらこなたに笑いかけると、こなたはそんな俺を見て少し顔を赤らめながら

 

「・・・まったく・・・慶一君は本当に無自覚でそんな事言ってるんだから性質悪いよねえ・・・。」

 

そんな風に言うこなたに俺は、頭にハテナマークを飛ばしつつ

 

「ん?こなた、それってどういう意味だ?」

 

そう尋ねると、こなたは何かを諦めるように重くため息を1つつくと

 

「わかんないならいいよ。でもね、慶一君。あんまり鈍いとそのうち誰かに愛想つかされちゃうから注意した方がいいよー?とにかく、私は仕事に戻るから。それじゃね、主任。」

 

そう言って俺に手を振って、こなたは仕事へと戻って行った。

 

そんなこなたを見送りながら、俺はこなたの言った事の意味についてあれこれと考えを巡らせていたのだが、どうにも納得のいく答えに辿り着けなかった俺は、仕方なくその問題を保留にして業務へと戻って行くのだった。

 

こなたを見送って一瞬後、再び大きな音が聞こえた。

 

「こおの!大馬鹿者どもがー!!」

 

という叫び声と共にグシャアッ!!という何かが殴り飛ばされて叩きつけられる音を聞いた俺は、慌てて音のした方に走っていく。

 

そして、そこにはそれなりの年齢で威風を放つ見慣れないお客がいて、その人が店長達を殴り飛ばしているのがわかった。

 

俺がその状況に慌てて店長達の所へと近づいていくと、そのお客は店長達にビシッと指をつきつけると

 

「君達のお客に対するサービス精神、そして、熱い思いは大いに結構!そして、お客様を満足させる為に君達の考えるお勧め商品を紹介する君達の気概も感服した!しかしながら、そのために不人気キャラ商品をお客様に押し付けようとする君達のさもしい精神は見過ごせん!!」

 

そう言うと、店長と杉田さんは自分達がそれぞれに手に持っていた商品をそのお客に見せて

 

「「いえ、どっちも主人公なんですけど・・・。」」

 

何だか落ち込みつつもそう言っていた。

 

とりあえずそれで何とかその場が収まったのだが、俺は先ほど店長達を殴り飛ばし、店長達に演説をしていたお客の側へ行って

 

「あの、何があったかは分かりませんが、店長達が何かお気に触る事をしてしまったのであれば自分からもお詫びします。」

 

そう言って頭を下げると、そのお客は俺を少しの間厳しい表情で俺の顔を凝視していたのだが、ふいに表情を緩めると

 

「ふふ。成る程、君が店長達の噂する伝説の少年Aなのだな?君の事は店長達からも聞いているよ。バイトの身ではありながらも中々のやり手だという事だそうじゃないか。」

 

そんな風に自分を褒めてくれるそのお客の言葉に驚いて、俺は

 

「え?あの、俺の事を知ってるんですか?というか、あなたは一体・・・?」

 

そう尋ねる俺に、そのお客は自分の懐から名詞を取り出して俺に手渡しながら

 

「おっと、自己紹介が遅れたね。私はこのア○メ○トの代表取締役をやっている高橋という者だ。去年は君達がバイトに来てくれた時には今までに類を見ない売上を記録したと聞いている。そして、そんな実績を持つ君が再びこの店にバイトに来てくれたという事で私も君に興味を持ってね。どんな人間なのかを見に来させて貰ったと言う訳だ。」

 

俺はそのお客から出た言葉に驚きながら

 

「え?あなたは社長、なんですか?こ、これは飛んだ失礼を。改めまして、森村慶一です。こちらのお店には去年からお世話になっています。」

 

そう、改めて自己紹介すると、高橋社長はおもむろに俺に手を差し出して

 

「そうかそうか。それは何よりだ。今日は君やその仲間達の行動を見させてもらったが、その年で中々に上手く人員を纏めているみたいだな。成る程、兄沢が君を統括主任に推した理由も頷ける。」

 

そう言い、俺はそんな社長に思わず自分も手を出して、社長と握手を交わしたのだった。

 

「いえ、俺なんてまだまだ経験も浅いですし、まだまだです。毎回のバイトの時にはいつも勉強させてもらっている立場ですから。」

 

恐縮しながら俺がそう言うと、社長は俺を見てニヤリとしながら

 

「ふふ。その謙虚な態度、いつでも自分を厳しく律している所も好感が持てるな。どうかな?君さえよければいずれはどこかの支店の店長を任せてみたいと思うが。」

 

その申し出に俺はかなり驚きつつも

 

「そ、そんな。俺はまだ高校も出ていませんし、これから受験もあります。ですから、その申し出はありがたいですが、今はとてもお受けできる状況ではありません。」

 

今の現状と、これからの事を考えて俺は社長にそう言うと、社長は笑いながら

 

「ふむ。成る程。確かに君にも君の事情と言うものがあるな。ともあれ、話半分で聞いてもらえればいい。そして、もしもいつかこの申し出を受けてもいいと思ったならば、また私の前に来てくれたまえ。とりあえず今日は君の顔も見れたことだし、この辺でお暇するとしよう。兄沢君!杉田君!彼と彼らを今後ともよろしく頼むぞ!?それではな、森村君、いや、伝説の少年A!!」

 

そう言って豪快に笑いながら、俺の事を店長や杉田さんに託した社長は、嵐のように去っていったのだった。

 

半ば呆然と社長を見送った俺だったが、そこにこうやあやのが来て俺に

 

「先輩、なんかすごい事になりかけてませんか?」

「慶ちゃんが店長か・・・確かに凄いわね。もしそんなお店が出来たら私達も雇ってほしいわね。」

 

と言う2人に俺は苦笑しながら

 

「あはは・・・俺達の進路はこれからな訳だし、選択肢の1つに入れといてもいいかもしれないが、今はまだその事も考えられないよ。」

 

複雑な表情でそう言う俺に、2人とも笑って俺を見ていたが、すぐにまたレジに戻って業務を再開した。

 

それ以降は特に大きな問題も無く、今日のバイトを終えた俺は、帰り道に皆と話してる時に今日の社長の言葉を話すと、みんなそれぞれに驚きながら

 

「へー?主任だけでなく、店長か、凄く見込まれてるねえ、慶一君。」

「あんたが経営する店、ねえ・・・。ま、まあ、あんたがいるのなら覗きに行ってあげてもいいかしらね。」

「わたしも~。もしそういう事になったらわたしも遊びにいかせてもらうね?」

「慶一さんのお店なら、時折バイトさせてもらうのもいいかもしれませんね。」

「ふふ。私もお小遣い稼ぎさせてもらうかしら?」

「慶一ー、私らが行ったらお前、ちゃんと雇ってくれるよな?断ったりしねえよな?」

「先輩のサポートをするのもいいかもしれませんね。ついでに資金も稼ぐのもいいかも。」

「私も手伝いに行こうかしら・・・?先輩?優秀な人材は必要じゃない?」

「ケイイチのショップというならトクベツワリビキをオネガイしたいデスね。」

 

そう言っているのを聞いて俺は、重いため息を1つつきながら

 

「おいおい、あくまでも選択肢の1つと言ったろう?決定と言うわけじゃないんだからそう期待されてもだな・・・。」

 

そんな風に言う俺の言葉など意にも介さないように、みんなは帰るまでこの話題で盛り上がっていたのを見て、俺は再度ため息をついていたのだった。

 

そして、そんな事があってから一週間が過ぎた頃、いつものように俺は図書室に大学検索の為に向かおうとしてた時の事だった。

 

いつものように廊下を歩く俺に、背後から黒井先生が俺に声をかけてきた。

 

「お?森村。お前、最近大学を探して図書室に通いづめているそうやないか。それも、あいつらと一緒に行ける大学をな。」

 

その言葉に俺は驚きつつ

 

「え?何で先生がその事をご存じなんです?」

 

と聞き返すと、黒井先生は笑いながら

 

「教室で泉達が嬉しそうに話しているのを聞いた事があってなー。それで知ったんや。それで?お前の探す大学は見つかったんか?」

 

そう聞いて来たので俺は苦笑しながら

 

「いやあ、実は結構探しているんですが、中々条件に合ったところがなくて苦戦していますよ。」

 

そう言うと、黒井先生は少し考える仕草をした後

 

「なあ、森村。あいつらの大体の進路ってきまっとるんか?」

 

俺にそう尋ねる黒井先生に俺は少し考えてから

 

「俺やこなたはまだ完全には・・・ですが、他の連中は大体決まってるみたいです。えーっとですね・・・・・・という感じです。」

 

俺が簡単に皆の進路について説明をすると、それを聞いた黒井先生はしばらく考え込んでいたが、やがて、何かを思い出したようで

 

「森村、後で職員室に来い。お前の役に立てる資料を渡せるかもしれん。それを見てどうするかはお前次第や。それでも決まらん場合はもう少しお前もがんばらなあかんやろけどな。」

 

そう言う黒井先生の言葉に俺も頷いて

 

「そうですね、わかりました。後で職員室へ伺います。では後ほど。」

 

そう言うと、黒井先生もニカッと笑って

 

「おう、せいぜいきばりやー!それじゃ後でなー。」

 

そう言って手を振って歩いて行く黒井先生を見送って俺は、図書室を改めて目指した。

 

散々今回も検索をして、成果が得られずに少し落ち込んでいたが、気を取り直すと、先ほど先生に言われた通りに職員室へと足を向ける。

 

そして、職員室のドアをノックして俺は中に入ると、黒井先生を探した。

 

「失礼します。黒井先生はいらっしゃいますか?」

 

近くにいた桜庭先生に声をかけて、黒井先生がいるかどうかを尋ねてみた。

 

「桜庭先生、黒井先生はいますか?先生にここへ来いと言われたので来てみたんですが。」

 

そう声をかけると、桜庭先生は

 

「黒井さんなら向こうだ。行ってみるといい。」

 

そう言いながら黒井先生のいる方向を指差してくれたので、俺はそっちを確認して移動する。

 

そして、黒井先生を見つけた俺は、机で何やら資料をだしていた先生に声をかけた。

 

「先生、言われた通りに来ましたが、先生の言う資料とはどういうものなんです?」

 

そう聞くと、黒井先生は俺に資料を渡しながら

 

「おう、来たか森村、これだこれ。そら、目をとおしてみい。」

 

そう言ってくれたので俺は、渡された資料に目を通すとそこには、今年の夏ごろに完成予定の新設校の事が載っていた。

 

俺はその資料に載っている学部を一つ一つチェックしていく。

 

そして、一通りチェックし終わった時には、俺はかなりの驚きに包まれていた。

 

それは、まさしく俺が理想としていた学部の揃った学校だった。

 

更に驚いたのは、それが俺達の住む場所に近い所に出来る学校であった事、更にその名前には俺達の今通うこの陵桜の名前が入っていた事だった。

 

そう、その大学は、陵桜の姉妹校として現在建設中であるという事だったのだ。

 

大学の名前は陵桜学園総合大学、といった。

 

そんな俺の驚き様を見て、黒井先生は

 

「うちもちょっと前までうっかりわすれとったんやが、うちの学校の近所に新設の大学を作る事になったそうなんや。ちょっと前に大学の資料が届いておったんやが、お前が大学を探しているっていう事でその事を思い出したんや。うちから見てもこの大学はレベルもここ以上やし、お前らが望むには問題ないところや、思うで?」

 

そんな風に説明する先生に俺は、満面の笑みを浮かべながら

 

「ありがとうございます!確かにこれは、俺の理想とする学校です!今年中に完成なら受験も十分間に合いますよね?俺、ここも視野に入れてみようと思います!先生、本当にありがとうございました!」

 

弾むような思いで俺は先生にそうお礼を言うと、その資料を持って職員室を出た。

 

そして、みゆきと合流して今回の黒井先生から貰った資料に2人で目を通し直して改めて3つ上がった候補のうちの1つとして組み込むことにしたのだが、俺はおそらくここが最有力だろうと考えていた。

 

その次の日に皆でアニ研の部室に集まって、大体纏まった資料を皆に見せながら説明をした。

 

皆も俺達の探した学校が気に入ったみたいで、目標とする大学はこの時点でほぼ固まる事となり、俺達は改めてそこを目指しての受験勉強をしていく事で合意したのだった。

 

学校が始まってからの忙しさですっかり忘れていたパティの誕生日を、日にちは過ぎてしまったが、みんなでやろう、という事になり、俺の家でパーティを行った。

 

「パティ、遅くなったが、これが俺からのプレゼントだ。」

「パティ、誕生日おめでとうー。これは私からー。」

「パトリシアさん、これは私からよ。おめでとう。」

「パトリシアさん、わたしはケーキをプレゼントだよ~?」

「パトリシアさん、これを、お役に立てば嬉しいです。」

「パトリシアさん、私からはこれを送るわ。」

「パトリシアー。私はこれをお前にやるよー。」

「パティ、これは私からだよ?後で楽しんでね。」

「パトリシアさん、私はこれを送るわ。きっと役立つと思うわよ?」

「パティ、おめでとう。私はこれ持ってきたよ?」

「パティ、誕生日おめでとう。これをあなたに送るわ。」

「パティちゃん、おめでとう。これは私からだよー?」

「・・・パトリシアさん、私からはこれを・・・。」

「パティ、おめでとうっス。私はパティの好きだって言ってたアニメDVDを進呈するっスよ?」

「パトリシアさん、おめでとう。何にするか迷ったけど、これでどうかな?」

 

そう言って、全員がパティにプレゼントを渡すと、パティも満面の笑みで

 

「ミナさん、サンキューです!二ポンにキてデキタナカマとハジメテのバースディですが、とてもウレシイです!ハッピーデス!キョウのコト、ワタシはゼッタイワスレません!!」

 

そう言ってお礼を言うパティに皆も笑顔で頷いていた。

 

そして、パティがひよりから貰ったDVDを皆で見ようと提案し、俺はその準備をする為にDVDプレイヤーの準備をして、テレビの電源を入れた。

 

テレビにはニュースが映っていたのだが、俺は映像切り替えをしようとリモコンのボタンを押そうとしたが、次に映ったニュースを見た瞬間、その手が止まった。

 

『・・・続きまして、次のニュースです。本日午前3時頃、都内に住む牧村瞬一さん、(17)が夜道を歩いている時に背後から来た車に轢き逃げされ、それを発見した人が救急隊に通報し、病院に運び込まれましたが、その数時間後に亡くなるという事故がありました。警察は現在、逃げた犯人の捜索に全力を・・・・・・。』

 

俺は、このニュースを見て、本人じゃない、きっと同姓同名の誰かだろうと思っていたが、その後映像にでてきた写真は、他人の空似であり、ただの同姓同名だろうと頭の片隅で思っていた俺の希望を崩す物だった。

 

俺は、ショックのあまり言葉を発する事が出来なかった。

 

事情を知らない、毒島さん、山辺さん、若瀬さん、パティの4人以外はこのニュースを見て固まってしまっていた。

 

だが、こなたはその映像を見て

 

「・・・何、これ・・・どういう事?嘘だよ・・・こんなの・・・嘘だ・・・慶一君!!」

 

叫ぶようなこなたの言葉に我に返った俺は、震える手で実家へと連絡を取る。

 

だが、実家には誰も居ないみたいで、連絡がつかない。

 

どうしたものかと焦っている俺に、ふいに入った着信は龍兄からのもので、俺は電話に出てさっきのニュースの真意について龍兄に尋ねてみた。

 

「もしもし!?龍兄!さっきテレビでニュースを見たんだが、あれは事実なのか!?」

 

俺は、あの事は嘘であって欲しいと心の中で願っていたが、龍兄は俺に、残酷な現実を突きつけてきた。

 

「・・・慶一、落ち着いて聞くんだ。あのニュースは事実だ。そして今俺は瞬坊の眠る病院に居る。お前にも知らせなきゃと思ってたところだった。すぐにこっちに来れるか?病院の場所は・・・・・・だ。気持を少し落ちつけてから駆けつけて来い。」

 

悲しそうな声で龍兄は俺にそう告げた。

 

俺はしばし呆然としながら電話を切ると、皆の方に向き直って

 

「・・・みんな・・・あのニュースは・・・事実だそうだ・・・。俺はこれから、病院へ行く。皆、悪いけど今日はこれで・・・。」

 

そこまで言った時、こなたが代表で声を上げた。

 

「私達も行くよ!牧村君とは友達だったもん。行ってあげたいから、いいよね!?慶一君!!」

 

そのこなたの言葉に頷く、事情を知らない4人以外の皆。

 

そんな皆に俺は苦しげな顔で

 

「・・・ありがとう。それじゃ行くとしよう。毒島さん、山辺さん、若瀬さん、パティ、済まない、突然こんな事なってしまって・・・悪いけど今日はこれで解散にしよう・・・。」

 

そう言うと、4人は俺に

 

「私もご一緒させてもらってもいいですか?私も一応は先輩の関係者でもありますし。」

「こんな時に私たちだけ、はい、さよなら、なんて言えませんよ。私たちも行きます。」

「私も先輩に認めてもらえた仲間ですからね。仲間が大変な事になっているなら私も何か力になりたいですから。」

「ケイイチ!ワタシもイキます!!こんなトキにミズクサイですヨ?ワタシだってイマはケイイチのファミリーなんですカラ!!」

 

そう言ってくれたので俺は、その気持ちをありがたく思いつつ

 

「・・・ありがとう。それじゃ悪いけど、一緒に来てくれるかな。病院の場所までは俺が案内するから。」

 

そう言うと、皆も頷いて、そして、俺達は家を飛び出して龍兄達の待つ病院へと急いだのだった。

 

幸せを積み上げていくその日常だったが、その矢先に突然起こった事件、俺は、纏まらない頭の中で、先行きに妙な不安を感じていたのだった。

 


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