らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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あちこちで奏でられる旋律~慶一とみゆきの思い、ゆたか達の思い、そして、みんなの思い前編~

かがみとの賭けの約束の打ち合わせの後、気分を悪くしていたゆたかを偶然にも見つけた俺は、そんなゆたかを保健室へと送り届ける。

 

そして、その帰りにこう達に出会い、からかわれもしたが、とりあえずゆたかを泉家へと送っていったのだった。

 

そして、その次の日に、いよいよかがみとの約束を果たす事となり、映画館へと出発する俺達。

 

そんな中で、かがみが普段見せないような態度を見せられて俺は、かなり戸惑っていた。

 

そして、約束も果たし終え、今日が終わる頃にかがみは俺に礼を言っていたのだが、その表情はなんだか寂しそうでもあった。

 

そんなかがみの心に気付いた俺は、かがみに俺達が誓いあったあの事をヒントとして告げると、かがみはどうやら元気を取り戻したようで、最後は笑顔で帰って行ったのだった。

 

そして、その翌日から、かがみのテンションはまたもバレンタインの後の時と同じようになり、そんなかがみを見たこなたが「かがみがまた壊れた・・・。」と呟いていたのだった。

 

そんなある日の昼休み、俺は前に皆と話あった進路の事について、色々調べ物をするために図書室へと向かっていた。

 

すると、背後から俺に声がかかったのだった。

 

「・・・先輩、こんにちは・・・。先日はゆたかを助けてくれたそうですね・・・。そんな先輩に私もお礼を言いたくて探していたところでした・・・。」

 

その声に振り向いてみると、そこに立っていたのは、俺に微笑みを浮かべるみなみだった。

 

「お?誰かと思ったらみなみか。いや、あれはたまたま俺が気付いたからであって、ほんと偶然みたいなもんだったんだよ。」

 

みなみのお礼に照れながら答えると、みなみは

 

「・・・それでも・・・私はあの時にゆたかを見てあげる事ができませんでしたから・・・。」

 

少し落ち込むような顔でそう言うみなみに俺は、軽いため息を1つつくと

 

「・・・あのな。俺もお前も四六時中ゆたかの事を見てられる訳じゃない。お前にもお前の事情もあるだろうし、俺もそうだ。そして、ゆたかの体調も俺達の見ていない所で変わる事もある。これは俺達にとっても不可抗力でしかない事だ。だから、俺達が手を貸せない場合があったとしても仕方のない事なのさ。みなみ。お前はゆたかの事を気にしてくれる、それは嬉しい事だけど、それはお前の目の届く範囲で気にしてやればいい。目の届かなかった所は仕方のない事だと割り切らなきゃお前自身もつぶれちまうぞ?それに、自分の事で元気をなくすお前を見たらゆたかだって悲しむだろう?だからお前はゆたかがお前を見ていても安心できる状態でいてやるようにする事だ。わかるな?みなみ。」

 

俺の言葉を聞いて、その言葉について考え込んでいるみなみだったが、ふいに顔を上げて俺を見ると

 

「・・・そうですね・・・先輩の言う通り、少し気にしすぎていた所がありました・・・。これからは先輩の言葉をよく噛み締めながらゆたかと接して行こうと思います・・・。先輩、私にその事を分からせてくれて・・・ありがとうございます・・・。」

 

そんな風に言うみなみに俺は笑いながら

 

「いいさ。ああはいったけど、ゆたかに対するお前の気持はありがたいものだからな。だから、みなみ。これからもゆたかの事、頼むぞ?」

 

そう言うと、みなみは再び微笑みながら短く「・・・はい・・・。」と答えてくれたので俺はそんなみなみに頷くのだった。

 

その後、みなみと別れて俺は改めて図書室を目指していたが、そこにあのテンションのままのかがみがやって来て俺に声をかけてきた。

 

「やっほー、慶一くん。探してたわ。あのさ、今日バイトあるじゃない?その時に時間までちょっとラノベの新刊選びたいから付き合ってくれないかな?」

 

そんなかがみのテンションに俺は、少し引き気味になりながら

 

「あ、ああ。そういう事なら別に構わないぞ。それじゃ後は放課後に、だな。」

 

そう答えると、かがみは満面の笑みを見せて

 

「ほんと!?やったあ!!それじゃ放課後にね?またあとでね、慶一くんー♪」

 

そう言いながら鼻歌交じりに俺の前から去っていくかがみを見送りつつ、苦笑を浮かべる俺だった。

 

そして、気を取り直して改めて図書室へと向かい、俺は図書室に設置してあるパソコンの前へと行くと、そこから色々と検索を始めるのだった。

 

しばらくパソコンと向き合って検索を続けていると、そんな俺の姿を見つけたみゆきが俺の側にやってきて小声で

 

『あら?慶一さん。教室にいらっしゃらないと思っていたらこちらにいらしたんですね。なにやら熱心になさっているみたいですが、何を調べていらっしゃるのですか?』

 

その言葉に俺はパソコンの画面に向けていた顔を上げて

 

『ああ、みゆきか。いや、ちょっと先日の進路の事について考えていてな。俺が考える大学がないかどうかをネットを使って調べていた所なのさ。』

 

そう答えると、みゆきは俺の横に座って同じように画面を見ながら

 

『・・・なるほど、色々調べられてるのですね・・・。あ、と言う事は、慶一さんはあの時おっしゃられていたやりたい事を探す為に大学へ行くと言う事を考えられている、と言う事なのでしょうか?』

 

そのみゆきの言葉に俺は静かに頷くと

 

『まあ、そういう事だな。もっとも、俺だけの事じゃないんだけどな。みゆき、お前としたあの約束の事覚えてるよな?』

 

そうみゆきに尋ねると、みゆきは俺の言葉にこくりと頷いて

 

『忘れてはいませんよ?皆で一緒に居れるように努力する、そういう事でしたね。』

 

みゆきの答えに俺もこくりと頷いて

 

『そうだ。俺は今回もその事に関して動いている。まだみんなの進路は出きっていない所ではあるけど、俺は皆が習いたいと思う学部の揃ってる大学を探っているのさ。もっとも、見つかるかどうかの確立は相当低いがな・・・。でも、俺はお前と約束したようにその事を最後まで諦めたくないと思ってるからな。』

 

そんな俺の言葉にみゆきは頬に手を当てながら

 

『そ、そうだったんですか・・・。でも、皆さんが習いたいと思う学部が揃っている学校となると、探すのは容易ではないでしょうね・・・。』

 

少し困ったような顔のみゆきに俺は苦笑しながら

 

『確かにな・・・。けど、俺はそれでも最後まで諦めるつもりはないよ。みゆき、お前もそう思ってくれるなら、少し俺に付き合って協力してくれないか?』

 

そう伝えると、みゆきは少し考える仕草を見せた後

 

『私が・・・慶一さんのお役に立てるでしょうか?』

 

そう聞いて来たので、俺はみゆきの言葉を肯定するように頷いて

 

『お前に、その気があるならば、それを望んでくれるならば、俺達で開けない道はないと思うぞ?後は・・・そうだな・・・お前があの約束を果たしたいという気持があるなら、俺達ならきっと・・・。」

 

そう言う俺の顔をしばらく凝視していたみゆきだったが、その顔に優しい微笑みを浮かべると

 

『そうですね。私も慶一さん同様、諦めたくはないですから、私も精一杯頑張ってみようと思います。』

 

そう言ってくれたので俺は笑顔を向けながら

 

『お前なら、そう言ってくれると思ってたよ。それじゃ、みゆき、こうしよう。俺達で定期的に情報を持ち寄ってその上で当たりをつけていくという感じで。』

 

俺のその言葉にみゆきも頷いて

 

『わかりました。では、周期は一週間事に、場所はこの図書室で、時間はお昼休みにしましょうか?』

 

その言葉に俺も頷くと

 

『ああ、それでいいだろう。そして、納得の行く所が見つかったその時には、俺とみゆきで皆に話してみよう。そこまでやっても皆が自分達の望む学校へ行きたいと言うなら・・・。』

 

俺の言葉をみゆきが補足して

 

『・・・その時は、それで私たちも納得するしかないでしょうね・・・それでも・・・結果は出したいですね・・・。』

 

そんな風に言うみゆきに俺は重々しく頷くと

 

『・・・ああ。そうだな・・・せめて悔いのない結果を・・・。』

 

そう、短く言うと同時に時間が来たので俺は調べ物を中断して

 

『みゆき、今はここまでのようだ。そろそろ教室に戻ろうぜ?』

 

そう、声をかけるとみゆきも頷いて

 

『そうですね。それでは、今日から始めていきましょう。私も家に帰ってからも調べていってみますから。』

 

そう言ってくれるみゆきの肩を軽くぽんと叩くと俺とみゆきはお互いに頷きあった後、午後の授業の待つ教室へと帰って行くのだった。

 

教室に戻った時、俺とみゆきだけが教室に居なかった事をこなた達に追求されもしたが、それぞれに調べ物があったから図書室に行っていたんだと伝えると俺はともかく、みゆきは納得されたみたいで、またも理不尽さを感じつつ苦笑していた。

 

そして、その日の放課後、俺は皆とバイトに行く為に校門前で待ち合わせをしていたのだが、教室に忘れ物を思い出して、皆には先に校門前へ行っていてもらって俺は一人、教室へと戻っていた。

 

その帰りにゆたか達と出会った俺は、3人に声をかけてみる事にしたのだった。

 

「よう、ゆたか、みなみ、ひより。今帰りか?」

 

そう声をかけると、3人は俺に気付いて

 

「あ、先輩。はい、今日は田村さんも部活はないみたいなので一緒に帰る事にしたんです。」

「・・・今日は3人で帰れそうだったので・・・それで、一緒に・・・。」

「先輩達がバイトに行く日は大概こうなるっスね。」

 

そんな風に言う3人に俺は、聞いてみたい事があったので質問をぶつけてみる事にした。

 

「なあ、ちょっとお前らに聞きたいんだけど、お前らの進路ってどう考えてるんだ?」

 

そう尋ねると、3人は少し考えながら

 

「私は、まだ具体的には決めていません。やってみたいな、って事はあるんですが、それが続くかどうかを考えると、まだはっきりと決めきれない所があるんです。」

「・・・私は・・・ちょっと悩んでいる事があります・・・。」

「私はプロの漫画家を目指したいと思ってるっス。」

 

そう答える3人のうち、ゆたかとみなみの事が気になった俺は2人に

 

「ひよりの事はよくわかった。ゆたか、みなみ。お前ら2人の悩んでいる事っていうのをよければ俺に教えてくれないか?」

 

そう尋ねると、2人は少し悩む素振りを見せた後

 

「・・・わかりました。実は私は絵本を作るのが好きなんです。なので、その作家さんにあこがれているんですけど、私のこの体じゃないですか。続けることができるのかどうかが不安なんですよね・・・。」

 

そう、ゆたかが答え、そして、みなみも

 

「・・・私は最初は家にチェリーもいますし、動物を助けられる獣医を目指そうかと思っていました・・・。しかし、最近ゆたかと友達になって、ゆたかの体を心配するうちに・・・みゆきさんの目指す人間相手の医者の道も考えるようになったんです・・・。なので、今、その2つの道で揺れているんです・・・。」

 

俺はその答えを聞いて、少し考える仕草をすると

 

「そうか・・・ゆたかは絵本作家・・・みなみは人間相手か動物相手かの医者の道で悩んでいると言う事なんだな?」

 

そんな俺の言葉に頷く2人。

 

俺はまず、ゆたかとみなみに

 

「ゆたか、みなみ。お前らはまだここに入学してそんなに時間も経っていない。だから、まだ考える時間はあるだろう。後2年の間、じっくりと悩んで結論を出すといいさ。」

 

そう言うと、2人は頷き、そして、さらに俺はひよりに

 

「ひよりはすでに目標を持っているみたいだな。その目標に揺るぎがないのであれば、これからもその道にまい進して行けばいい。」

 

そう言うと、ひよりも頷いて

 

「ええ。これからも私は頑張って行く所存っスよ!」

 

そう言ってガッツポーズをとるひよりに俺は、微笑ましさを感じた。

 

そんな3人に俺は、一応話しておくべきかもしれないと思い、3人に声をかけた。

 

「3人とも、ちょっと聞いて欲しい。俺は今みゆきと共に皆の進路を聞いて、そして、学びたい学科の揃っている学校を探して奮闘している所だ。何故そうしたのか、なんだが、俺とみゆきで約束をした事があったからだ。」

 

そこまで話すと、3人は俺に

 

「「「約束(ですか?)(っスか?)?」」」

 

そう聞き返してきたので俺は頷いて

 

「ああ。出来る事ならば、大学へ行く時まででも俺達は一緒に居たい。そのためにできる努力は最後までやりたい、そういう事なんだ。そんな学校を探す事も難しいし、万が一見つかったとしてもそこが皆の学びたい事に対するレベルがあるかどうかも怪しい。けど、それでも、俺達は共に歩む道を摸索したかったんだ。だから今、その為に頑張っている。」

 

そこまで言ってから一息ついて、そして更に俺は言葉を続ける。

 

「もし・・・もしもだ。そんな学校が見つかったとしたら、ゆたかやみなみやひよりはどうする?俺は・・・俺の望みはみんなと大学でも一緒に過ごせたらと思ってる・・・けど・・・俺にはそれを強要する気も権利もないし、それが無理で皆がそれぞれの意思があるなら・・・俺は皆の意思を尊重しようと思ってる。俺は・・・この事をいずれこなた達にも持ちかけてみるつもりだ。こなた達がどういう反応をするかはわからないけど・・・それでこなた達も自分の意思を貫くつもりならそれでもいいとも思ってる。ゆたか達にはまだ時間もあるしな。俺の言う事も頭の墨にでも置いてもらってその上でじっくりと考えて行って欲しいんだ。とりあえず今は、俺とみゆきがそんな事を考えているって事だけでも知っておいて欲しい、って事かな。」

 

そんな俺の言葉をゆたか達は、反芻しながら考え込んでいるようだった。

 

そこまで話し終えてから俺は、皆を待たせてる事を思い出して

 

「おっといかん・・・みんなが待ってるんだった・・・ごめんな、俺は先に行くから。とりあえず、話だけでも覚えておいてくれな?それじゃな、3人とも。」

 

俺は3人にそう言いながら手を振ってその場を後にした。

 

3人もそんな俺に手を振り返してくれたのを視界の隅に捕らえつつ、校門前へと急いだ。

 

そして、皆を待たせた事に対するお詫びとして、ジュースを奢るように言われた俺だった。

 

ゆたかside

 

みなみちゃんや田村さんと一緒に帰ろうと廊下を歩いていた時、ふいに慶一先輩から声をかけられて私たちは先輩に挨拶をした。

 

その時に先輩は私たちの進路について聞いてきたので、田村さんは明確に進路を考えているみたいだったけど、私とみなみちゃんはまだ悩んでいる事があったので、その事を先輩に伝えた。

 

すると、先輩は、高良先輩と一緒にある事をしようとしている、その事を私たちに伝えてくれた。

 

それは、私たちも思いもしない、実現は限りなく難しい難問だった。

 

先輩に難問に関して考えて欲しいと言われ、私達は先輩の思いを感じつつも内心複雑な心境だった。

 

「なんか、すごい事聞いちゃったね、みなみちゃん、田村さん。」

 

そう2人に話を振ると、2人は頷きながら

 

「・・・そうだね・・・先輩やみゆきさんがそこまで考えているなんて思いもしなかった・・・。」

「私達が学ぶ教科のある、それでいてそれなりのレベルの学校かー・・・でも、本当にそんな場所があるなら、私、乗ってもいいって思うかなあ・・・。」

 

そんな風に言う田村さんに私は

 

「田村さんは先輩の話を考えるつもりなの?」

 

そう尋ねると、田村さんは苦笑しながら

 

「もしも、本当にそんな学校があるなら、だね。それに、なんだかんだで先輩は私達との繋がりも大事にしたいんだな、って思ってる事が嬉しくもあったり。」

 

その言葉にみなみちゃんも頷いて

 

「・・・先輩のその思いは・・・本物だな、とは思えるね・・・私も・・・そんな先輩の絆を重んじる気持に応えてもいいかな?って思う・・・。ゆたかは、どう・・・?」

 

そんな風に問い掛けてくるみなみちゃんに私は、少し考えてから

 

「・・・私も、かな?そこにやっぱりみなみちゃんや田村さんが居てくれるなら、すごく心強いな、って思うよ?それが甘えてるって言われちゃうかもしれないけどね。でも、甘くても・・・一緒に居たいって思うのは我侭かなあ?」

 

そんな風に言う私にみなみちゃんは

 

「・・・いいんじゃないかな・・・そんな我侭言えるのは学生の間だけかもしれないけど・・・それでも・・・今の私達はやりたいように学生時代を過ごすのがいいんじゃないかな?って思える・・・。」

 

そんなみなみちゃんに田村さんも頷いて

 

「そうだね。だったら学生の時にしか出来ない事やってみようよ。その中に先輩の言っていた事も含めるのも悪くないよね。」

 

その言葉に私も頷いて

 

「そうだね。それも先輩が示してくれた道の1つだもんね。それに、先輩も言ってくれたけど、私達にはまだ考える時間もあるんだしね。」

 

私の言葉にみなみちゃんも薄く笑って頷いてくれた。

 

そんなみなみちゃんを見ながら田村さんは

 

「・・・でも、みなりんはひょっとしたら先輩に付いて行く道を選ぶかもしれないね。」

 

少しニヤニヤとしながらそう言う田村さんに私とみなみちゃんは「どうして?」「・・・?」と頭にハテナマークを浮かべていたが、そんな私達に田村さんは人差し指を立てながら

 

「みなりんは高良先輩にあこがれていて、それで目標にもする人だよね?」

 

その言葉にこくりと頷くみなみちゃん。

 

田村さんはそれを確認してから更に言葉を続けて

 

「たぶん、いや、ほぼ確定事項だと思うんだけどさ、高良先輩は慶一先輩が選んだ所に付いて行くと思うんだよね。そうなるとさ、高良先輩を目標としているみなりんとしては後を追いたい、と思うんじゃないかな、ってね。」

 

そんな田村さんの言葉にみなみちゃんは少し慌てつつ

 

「・・・確かに私は・・・みゆきさんを追いたいと思っているけど・・・田村さんはどうしてみゆきさんが慶一先輩に付いて行くって思うの・・・?」

 

その言葉に田村さんは少し驚きの表情を見せてから、またニヤニヤとして

 

「・・・みなりん、それ、本気で言ってる?と言うか、気付かない?」

 

その言葉に私もみなみちゃんも頭にハテナマークを飛ばしていたけど、そんな私達に少し呆れつつも田村さんは

 

「・・・はあ・・・ゆーちゃんはともかくみなりんは気付いてると思ったけどなあ・・・。それはね?高良先輩は慶一先輩に惚れてるから、って事だよー?」

 

そんな田村さんの言葉に私とみなみちゃんはしばし呆然としていたが、田村さんの言った言葉に気付くと途端に顔を赤くして慌てながら

 

「えっ?ええっ!?そ、そうだったのー?」

「・・・気付かなかった・・・今考えてみたらそんな素振りもあったような・・・。」

 

そんな私達の姿を見ながら苦笑を浮かべつつ、田村さんは

 

「いやあ、ゆーちゃんとみなりんも以外にこういう部分では疎い所があるみたいだねえ。まあ、もっとも、泉先輩達もまた、慶一先輩に付いていきそうな感じだけどね。先輩達もまた、慶一先輩に対しては好意を持ってるみたいだしね。」

 

そんな田村さんの言葉に私たちは”ほう”とため息をつきつつも

 

「・・・はー・・・こなたお姉ちゃん達もそうだったんだね・・・。」

「・・・でも、田村さん、よく見てるね・・・先輩達の事・・・。」

 

そんな私達の言葉に田村さんは笑いながら

 

「いやあ、漫画を描いたりする事をしているとね、ネタを探して色々な物を見るようになるからさー。特に先輩達は結構いいネタを提供してくれたりするからね。そんな先輩達を見ているうちに気がついたってとこかな。」

 

そんな田村さんに私たちは感心したような目を向けていた。

 

そんな中で、みなみちゃんがふと気になった事があったみたいで田村さんに質問をしていた。

 

「・・・先輩達の事はわかったけど・・・田村さんはどうなの・・・?先輩の話に乗ってみようって考えたのは、田村さん自身も先輩に対して何か思うところがあるから・・・?」

 

そんなみなみちゃんの質問に途端に慌て出す田村さん。

 

「え?あ、えっと、その・・・わ、私も確かに先輩は嫌いじゃないけど・・・どっちかっていうと憧れみたいなものもありましてー・・・恋愛感情的なものとはちょっと違うかもって・・・って私何言っちゃってるっスかー!!」

 

何だか自爆っぽい事を言ってしまってる田村さんに、私とみなみちゃんは苦笑していたが、そんな私達に田村さんも反撃の質問をぶつけてきたのだった。

 

「そ、そういうゆーちゃんやみなりんはどうなんスか?私もうっかりとはいえ言ってしまったんだから答えて欲しいなあ。」

 

少し顔を赤くしつつそう言う田村さんに、私たちは再度慌てながら

 

「え?あ、わ、私は、その・・・どっちかというと先輩は私のお兄ちゃん的な感じかなあ?って思って・・・はっ!?」

「・・・私は・・・まだ良くは分からないかな・・・先輩は優しくて頼りになって・・・私達に色々と良くしてくれる・・・先輩の事嫌いじゃないし・・・人としては好きになれる人だって思ってるのは変わらない・・・かな・・・?・・・あ・・・!?」

 

そんな風に馬鹿正直に質問に答えてしまった後で、2人して顔を真っ赤にして慌てる私達だった。

 

その後で田村さんが「いいネタいただきー!」と言っているのを聞いて、私達はそんな田村さんを苦笑を浮かべながら見ていたけど、その時私の心の中にあったのは、私もひょっとしたら先輩に付いて行くかもしれないな、というどこか確信にも満ちた気持だった。

 

慶一side

 

ゆたか達が俺と別れた後でそう言う話題で盛り上がっていることなど露知らず、俺はゆたか達と話し込んで集合場所に遅れてしまった事を焦りながらみんなの元へと急いだ。

 

そして、集合場所に着くと、こなたが第一声で

 

「遅い!罰金!!」

 

とハ○ヒネタで俺にそう突っ込みをいれていたのだった。

 

その後は、遅くなった理由を皆に話して、こなたの罰金の件を受け入れつつも打ち合わせをしながら俺達はバイト先へと向かった。

 

「・・・とまあ、今日はこんな感じかな?」

 

そう俺が、打ち合わせの締めをすると、皆も再度打ち合わせの内容を噛み締めるようにしてから

 

「了解ー。それじゃ後は時間まで暇潰しだねー。」

「慶一くん。約束、忘れないでよ?」

「こなちゃん。わたしの探し物も手伝ってくれると嬉しいな。」

「私はかがみさん達の方にお付き合いさせてもらいましょうか。」

「私も一緒に回ってみたいわ。」

「んじゃ私はちびっ子らに付き合うゼ?」

「私も泉先輩達に付き合いますよー?」

「私は慶一先輩達の方へ行くわ。」

「ワタシはコナタ達とイッショにイきまース。」

 

と、それぞれに分かれる事となった。

 

その際に俺は、ゆたか達に話したように、こなた達にも”あの話”を伝えた。

 

「みんな聞いてくれるか?実はな・・・・・・と言う訳で俺は今そんな大学を探している所だ。ゆたか達にも言ったんだが、もしもそんな大学が見つかった時には皆にも話はしたいけど、それでも自分の選ぶ大学がいいと言う事ならその意思は尊重するつもりだ。そのあたりはみんなの判断に任せるよ。まあ、じっくりと考えて結論を出して欲しい、そういう事だ。」

 

その事を伝えた後、皆は色々と考えているのが見て取れた。

 

とりあえずは種を撒く、それを終えておきたかったのもあって俺は、皆にこの話をした。

 

後は、その種から芽を出す事ができるかどうか、それが俺とみゆきの手腕にかかっている、改めて俺は自分がしようとしている事に対する困難さを理解すると共に、それでも最後まで悔いは残さないと心に誓う俺だった。

 


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