らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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近づく旋律~ゆたかと皆、そして、かがみと俺~

こなた達の悩みの種でもあった身体測定もなんとか終わり、俺達は再び決まったアルバイトへと顔を出しに行く。

 

そこで待っていたのは、殿鬼店長ではなく、なんと、兄沢店長だったのだ。

 

俺達は栄転された殿鬼店長の安否を心配しつつ、電気街店の新たな店長である兄沢さんの元、新たなバイト生活のスタートとなったのだった。

 

色々と不安を残しつつも初日のバイトを終えた俺は、パティと共に帰宅して、部屋でのんびりとしていたが、そこに、かがみからの賭けの件に関するメールが入って来たのだった。

 

俺はかがみからのメールを確認しつつ、明後日の映画鑑賞の事で色々と考えていたのだった。

 

そして、次の日俺は、こなた達の邪魔が入らない所で明日に関する打ち合わせをかがみとする事となった。

 

俺はかがみに言われた通り、こなた達の尾行に気をつけながら屋上の給水タンクの影で待っているかがみの元へと急いだ。

 

タンクの側に着くと、俺を待っていたかがみが俺にこっそりと手招きするのが見えたので、俺は背後に注意を配りつつかがみの側へと行った。

 

『かがみ、遅れてすまん。こなた達を撒くのに時間がかかったよ。』

 

かがみにそう謝りつつ言うと、かがみは苦笑しつつも

 

『ま、まあ、仕方ないわよ。とりあえず来てくれてありがと。それで、明日のことなんだけどさ、学校が終わったら私そのまま慶一くんの家に行くから、そこから出発しましょ?』

 

そのかがみの提案に俺は首を傾げつつ

 

『ん?俺の家に寄るのか?別に構わないが、何か理由あるのか?』

 

そう尋ねると、かがみは頷きながら

 

『うん。折角だから、制服のままで行くより、慶一くんの家に着替え持ち込んでそこで着替えてから行こうかな?って思ったのよね。それに出発場所が一緒なら待ち合わせに遅れるとかは回避できるでしょ?ねえ、どうかな?』

 

そう言うかがみに俺は少し考え込んでいたが、納得して

 

『なるほど、そういう事か。確かにそれならすぐに家を出れるし、待ち合わせうんぬんの心配もないな。ならそれで行くとしよう。』

 

そう言うと、かがみは少しだけ顔を赤くしつつ

 

『う、うん。そ、それとさ・・・その時もできるだけこなた達と出会わないようにしない?うっかり見つかってからかわれるのはなんだか嫌だから・・・。』

 

その言葉に俺も頷きながら

 

『それもそうだな・・・わかった。できるだけ目立たないように学校を抜け出して家まで行こう。抜け出す手順等は俺が考えておくから、当日にそれとなくかがみに伝えるよ。それじゃ、そういう事でいいかな?かがみ。折角だから当日は楽しもうぜ?』

 

最後の俺の言葉にかがみは顔を赤らめながらも少しだけ嬉しそうに

 

『・・・ま、まあ、あんたが楽しみたい、って言うのなら付き合ってあげるわよ。け、けど、勘違いしないでよね?あくまでの賭けの報酬よ?あ、あんたと一緒に映画に行くのが楽しみって訳じゃないんだからね?』

 

そう言い、最後に赤い顔のままそっぽを向くかがみに苦笑しつつ俺は

 

『はは。わかったよ。それじゃ当日にな。そろそろ授業も始まるし、戻ろうぜ?』

 

そう促すと、かがみも頷いて

 

『そ、そうね。慶一くん。先に戻ってくれる?私は後から適当に戻るからさ。』

 

かがみの言葉に頷くと、俺は再度周りをよく確認しながら教室へと戻って行った。

 

その5分後位にかがみもまた教室へと戻ってきたが、その前に教室に着いた俺は、こなた達からこの休み時間に姿をくらましていた理由について色々と追求される事となったが、適当に誤魔化しておいたのだった。

 

だが、何故かかがみだけは追求されていなかったので、その事に俺は、少しだけ理不尽さを感じながらも苦笑していたのだった。

 

そして、その日の学校は無事に、とはいい難いが、終わろうとしていた。

 

だが、1年生教室のエリアの廊下を歩いていた時、俺は廊下にうずくまる人影を見つけたのだった。

 

その人影に見覚えのあった俺は、すぐにその場所へ駆け寄ってその子に声をかけたのだった。

 

「おい、ゆたか。大丈夫か?また気分悪くなったのか?」

 

俺がそう声をかけると、苦しそうにしつつも俺に顔を向けて

 

「・・・あ、先輩・・・はい・・・ちょっと気分が悪くなっちゃって・・・みなみちゃんも今日は用事があったみたいでもう・・・帰ってしまっていますから・・・うっ・・・。」

 

そこまで話してまた気分が悪くなってきたみたいで、ゆたかは顔をしかめた。

 

俺はそんなゆたかの様子を見ておもむろにお姫様抱っこで抱え上げると、ゆたかに無理させないようにゆっくりと保健室へ向かって歩き始めた。

 

そんな俺の行為に、気分を悪くしつつも顔を赤くしつつ慌てながら

 

「・・・せ、先輩、あの・・・。」

 

そう声をかけようとしてきたゆたかの言葉を遮って俺は、ゆたかの説得を行う。

 

「いいから何も言うな。お前は具合を悪くしてるんだから、黙って大人しくしてればいい。それと、くれぐれも言っておくが、迷惑な事じゃないからな?俺が俺の意思でやってる事だ。そこの所は勘違いするなよ?それと、遠慮もするな。気分が悪くなった時はこれからもみなみが居ない時、俺がお前を見つけるような事になった時には遠慮なく頼れ、いいな?ゆたか。」

 

ゆたかは遠慮しすぎる所があるから、俺がそう言いおくと、ゆたかは少し躊躇してる部分もまだあったが、そんな俺の言葉に頷いてくれて

 

「・・・わかりました。先輩の言うとおりにしますね?それと、私を見つけてくれてありがとうございます。」

 

少し顔を赤くしながらそうお礼を言うゆたかに俺も笑って

 

「気にすんな。友達の、仲間のピンチだからな。」

 

そう言うと、ゆたかもちょっと驚きの表情を見せつつも俺に

 

「あ、ありがとうございます・・・。」

 

と言うゆたかに俺も頷きで応えたのだった。

 

そして、ゆたかを保健室へ連れて行くと、そんな俺達をみた天原先生が

 

「まあ、小早川さん。ひょっとしてまた気分を悪くしてしまったのかしら?森村君。悪いけど、小早川さんを奥のベットに寝かせてあげてくれない?」

 

そう言って来たので、俺は頷いてゆたかを奥のベットへと連れて行った。

 

そして、ゆたかをゆっくりとベットに寝かせると、俺はとりあえずゆたかの回復を待つために、このまま保健室に居残ったのだった。

 

「森村、ご苦労だったな。ふゆきに聞いたが、小早川は保健室の常連だそうだな?小早川もあまり体は丈夫な方ではなさそうだし、その苦労には同情するよ。」

 

そう俺に声をかけてきたのは、かつてのクラスの担任でもあり、今は俺達が立ち上げたアニ研の顧問でもある桜庭先生だった。

 

「確かに本人にしてみればしんどい所でしょうね。けど、そうであっても俺達がゆたかの面倒を見れる限りはあいつを助けるつもりです。」

 

その俺の答えに天原先生と桜庭先生は感心しつつ

 

「ふふ。流石は森村君ね。君のような生徒が居てくれれば小早川さんも安心できるわね。」

「義理と人情に厚いのがお前のいい所でもあるな。これからもその気持は大事にする事だ。」

 

そう言ってくれる先生2人に俺は、照れながらも頷いたのだった。

 

それからしばらくしてゆたかも回復したみたいで、俺は念のためにゆたかを家まで送り届ける任を天原先生から受けて、俺とゆたかは一緒に保健室を出て昇降口へ向かっていた。

 

「・・・先輩。迷惑かけちゃってごめんなさい。先輩の家と私の家は方向違うのに・・・。」

 

申し訳なさそうにそう言うゆたかの頭に手を置いて頭を軽く撫でると

 

「さっきも言ったけど、俺がそうしたい、って思ってやることだ。だから、お前は何も気にする必要はないぞ?」

 

そう笑いながら言う俺に、ゆたかも俺を見て少し顔を赤らめると

 

「先輩は・・・優しいですね・・・。とりあえず今日のところは先輩の言う事を聞いておきますね?」

 

俺の言葉に甘える事に決めたらしいゆたかからそんな言葉を聞いた俺は、その言葉に満足気に頷くと

 

「そうそう。それでいいんだ。ゆたか、覚えておけよ?お前は決して1人じゃない。お前の姉さんや親友のみなみ、そして、その周りにいるみんなに、後、俺も。お前の周りにはお前を気にかけてくれる、助けようとしてくれる人がいる。けど、その人達はな、お前の事を思っているからこそお前に手を差し伸べてくれるんだ。だから、相手の事を思うなら、差し出された手になるべく応えてやれ。時にはそういう事もやり難い事もあるかもしれないが、それは決して恥ずかしい事じゃないんだからな?」

 

そんな風に言う俺をしばらく凝視していたゆたかだったが、俺の言葉に何か感じるものがあったのだろう、力強く俺に頷いて見せてくれた。

 

そんなゆたかの体調を気にかけつつ昇降口まで来た時、丁度部活を終えたこう達と鉢合わせる事となった。

 

俺達に気付いたこうが

 

「あ、先輩。いまお帰りですか?てっきり先に帰ったものかと思っていましたよ。」

 

そう言うと、さらにやまとが

 

「小早川さんと一緒なんて珍しい組み合わせね?」

 

そう言って来て、そこに毒島さんや山辺さん、ひより、パティの4人も

 

「そう言えばそうですね・・・ひょっとして先輩、そっちの気が?」

「先輩も墨にはおけませんねー。」

「先輩がまさかのロリ・・・・・・へぶっ!!」

「ケイイチ?サスガにジチョウすべきだとオモイマスよ?アウチ!!」

 

そんな6人のうち2人に制裁を与えつつ俺は

 

「お前らこそ今帰りか?実はちょっとゆたかの奴が気分を悪くしてな。俺が丁度ゆたかを見つけたから保健室に連れて行って様子を見てた所だったんだ。それで、具合もよくなったからゆたかを家まで送ろうと思ってな。はいいが、毒島さん、山辺さん、勘違いはしないでくれよ?俺にその気はないんだからな?それと、ひより!パティ!お前らこそ自重しろ!!」

 

事情を説明すると、ひよりとパティは涙目に、その他の連中は苦笑しながら

 

「なるほど、そういう事でしたか。」

「今回も先輩のお人好しだって事ね?まあ、今回は人助けみたいだからいいけど・・・。」

「いやあ、早とちりしてしまってすいません。」

「そういう事だったんですね?なるほど、お人好し、納得です。」

 

そう言い、ひよりとパティは

 

「うう・・・すんませんっした・・・自重します・・・。」

「ケイイチ、ボウリョクハンタイネ!」

 

片方は謝り、片方はそう抗議してきたが、俺はパティに睨みを効かせて大人しくさせたのだった。

 

そして、いつまでもここでこうしていても仕方ないと思った俺は皆に

 

「ま、とにかくそういう事だから俺はこれからゆたかを家に送り届ける。お前らも気をつけて帰るんだぞ?それじゃ、行くぞ?ゆたか。」

 

皆に挨拶をしつつゆたかにそう言うと、ゆたかも「はい!」と返事をした後、皆にも挨拶をして学校を出るのだった。

 

そして、無事にゆたかを家に送り届けて、俺のミッションは終了となるはずだったのだが、ゆたかを気にかけてくれた事を感謝してくれたそうじろうさん達に捕まってお茶をご馳走になる事となった。

 

そうして、少し遅くなりつつも家に戻ると、今晩の夕食はパティが準備をしてくれていたようだったので、俺は

 

「パティ、今日はちょっと遅くなってしまったけど、準備任せちゃって悪いな。」

 

そう言うとパティは手を振って

 

「ノープロブレム、ですヨ?ケイイチ。ケイイチはいつもワタシイジョウにカジをやってくれてマス。トキにはワタシもケイイチのタメにコウケンしなくてはバチがアタリますからネ。」

 

そう言ってくれるパティに俺も感謝の言葉を改めて言いつつ、今日の夕食となったのだった。

 

そして、次の日、いよいよ賭けの約束の実行の日がやってきた。

 

いつものように授業を終えた俺は、かがみと示し合わせた通り、こなた達に気付かれないように用事があるから先に帰るといいおいて学校を出て、最終的に俺の家で待ち合わせる事にした。

 

その際にはこなた達には気取られる事もなく、上手く誤魔化す事が出来たようで俺もかがみもほっとしていた。

 

やがて、お昼を用意している頃にかがみが時間差で到着した。

 

「お待たせ、慶一くん。すぐに私着替えてきちゃうから、お昼の準備よろしくね?」

 

俺にそう言って、いつもの部屋へと荷物を置きに行くと同時に着替えに行くかがみを見送って俺は、お昼の準備を済ませた。

 

やがて、着替え終わったかがみがキッチンにやって来た。

 

「準備は出来たわ。それじゃお昼食べて出かけましょ?それと・・・その・・・えっと・・・。」

 

そう言いながら、なんだか少しだけ顔を赤くしながらもじもじとしているかがみを見て俺は

 

「ん?どうしたんだ?かがみ。なんかそわそわしてるみたいだが。あ、それと、その服似合ってるぞ?」

 

とりあえず素直に、今かがみが着ている服がそう思えたので褒めると、かがみはさらに顔を真っ赤にして

 

「・・・え?あ、えっと・・・その・・・あ、ありがと・・・。」

 

そう言って俯くかがみに俺は苦笑しつつ

 

「はは。とりあえず、食べよう。時間なくなるからな。」

 

そう言うと、かがみもどうにか立ち直ったみたいで俺の声に

 

「そ、そうね。それじゃいただきまーす。」

 

そう応えると、2人でお昼を済ませて映画鑑賞へと出かけることにした。

 

「それじゃ、出発するか。かがみ、忘れ物はないか?」

 

一応確認の為にかがみに聞いてみると、かがみは一応自分の荷物を確かめて

 

「うん。大丈夫みたい。それじゃいこっか。」

 

その言葉に俺も頷いて、駅まで向かう為に自転車をだした。

 

俺が、かがみに後ろに乗るように促すと、かがみはかなり照れながら

 

「わ、わかったわ。慶一くん、安全運転でお願いね?」

 

そう言うかがみに俺も頷いて

 

「ああ。任せろ。それじゃしっかり捕まってろよ?」

 

俺がそう言うと、かがみはおそるおそる俺の腰のあたりに腕を回して

 

「こ、こうでいいかしら?」

 

そう聞いて来たので俺は

 

「うん。それでいい。それじゃ行くぞー?」

 

そう言うと、俺は自転車を漕ぎ出した。

 

その後ろで真っ赤になって俺にしがみつくかがみに気付かないまま、俺は駅まで自転車をとばした。

 

駅に着いて自転車を置く時にかがみの赤い顔に気付いて俺は、一応かがみに「大丈夫か?」と聞いてみたが、かがみは赤い顔のまま「大丈夫よ。」と俺に言って来たので、俺はその言葉に一応納得して電車へと乗り込んだ。

 

車内は意外と込んでいて、俺とかがみは窓際に押しやられたのだが、かがみの負担を減らす為にドアに両腕をついてかがみをガードするように立って、かがみを俺の腕の中に出来た空間に立たせて目的の駅まで耐えていた。

 

そして、かがみは俺のそんな行為に俺の顔を見上げながら顔を赤らめてぼーっと俺を見ていたのだが、俺もそんなかがみの視線に照れくさくなって、少し顔を赤くしながらかがみの視線を外したのだった。

 

そんな俺の様子を見てかがみは赤い顔をしながらもクスッと笑っていたようなそんな気がしたが、照れくささで視線をそらしている俺にはその表情を見る事ができなかった。

 

やがて、目的地の最寄駅に辿り着くと俺達は揃って電車を降りて映画館を目指した。

 

そして、そんな最中に自然とかがみが俺の手を握ってきた。

 

それを意識し、かがみを見た瞬間、俺は照れで顔を赤くしながら

 

「あ、あの、かがみ?これは・・・?」

 

思わず聞き返すと、かがみもまた顔を赤くしながらも

 

「・・・今日は2人だけだから、こうするのもいいかな?って思ってね。もしかして迷惑だったかな?」

 

最後の方は少しだけ落ち込む表情を見せるかがみだったが、そんなかがみの顔を見た俺は

 

「い、いや、そんな事はないけど・・・でも、いいのか?その・・・そんな風にする相手が俺なんかで・・・。」

 

そう、かがみに言うと、かがみは少し呆れたような表情をしつつ

 

「・・・しょうがないわね、あんたは・・・。いい?一度しか言わないからよく聞いてよ?私はね、えっと・・・その・・・あ、あんただからいいの。そうしたい相手があんただから出来るの。わかった?」

 

上目使いで俺を見ながらそう言って来るかがみに俺は、くらくらとしながら

 

「そ、そうか・・・わ、わかったよ。ありがとう、かがみ。」

 

なんだかしどろもどろになりながらかがみにそう応える俺だったが、かがみはそんな俺に赤い顔を向けながらにっこり笑って

 

「わかればいいのよ。それじゃ、いこっか。」

 

そう言うかがみの言葉にしたがって、結局そのまま映画館まで歩く俺達。

 

俺は、かがみを意識しないように冷静でいようとして必死だった。

 

かがみはというと、俺と手をつなぎながら上機嫌な様子だった。

 

そして、映画館に着いた俺達はチケットを購入する事となったのだが、俺は、見る映画の種類は私が決めるから、と言っていたかがみの言葉を思い出して

 

「かがみ、見る映画はお前が決めるって言ってたよな?結局何を見るんだ?」

 

そう尋ねると、かがみは新作のアクション映画を指差して

 

「あれよ。以前から面白そうだな、って思ってたのよね。それとも慶一くんは他に見たい映画あった?」

 

そう聞いてくるかがみに俺は

 

「いや、とりあえず見る映画はお前に一任するという事だったしな。俺はその決定に従うまでだよ。それに、お前が選んだ映画は俺も少し興味があったんだよな。」

 

と正直な所をかがみに伝えると、かがみは満面の笑顔で

 

「そう?ならよかったかな。それじゃ、チケット買って中に入りましょ?」

 

そう言うと、かがみは映画のチケットを買いに窓口へと向かった。

 

それを見た俺は慌ててかがみの後を追い、チケットの購入代金を出そうとしたのだが、それをかがみが遮った。

 

俺はそんなかがみに不思議そうな顔を向けて

 

「おい、料金は俺が持つ事になってたんじゃないのか?」

 

そう言うと、かがみは俺に

 

「まあね。最初はそのつもりだったわ。でも、あんたが私の願いを叶えてくれた事を知ったからさ。だから、そのお礼の意味も兼ねてここは私が出したい、そう思ったの。いいでしょ?それでもさ。」

 

そんな風に少しだけ嬉しそうな表情で言うかがみを見て俺は、その好意に遠慮しちゃいけないと思い

 

「そ、そうか・・・ならかがみのお言葉に甘えさせてもらうかな。」

 

照れながらもそう言うと、かがみも笑顔で頷いて俺の分のチケットを買い込んで俺に渡すと

 

「それじゃ早い所席とっちゃいましょ?この映画結構人気みたいだし込みそうな気もするしね。」

 

そう言って俺の手を引くかがみに俺は

 

「そうだな。手っ取り早く席を決めちゃうか。それと、館内で席を決めたら今度は俺が飲み物とかの代金出させてもらうからな。飲みたいものとかあったら俺に言ってくれ。すぐに買いに行って来るよ。」

 

そう言うと、かがみは1つ頷いて

 

「わかったわ。それじゃ、そっちは任せるから。」

 

そう言うかがみに俺も頷きで返すと、席を確保する為に館内へ入って行くのだった。

 

そして、2人が座れる席を見つけて俺達は隣り合わせで席につく。

 

席を決めてから俺は、かがみに言われた通りの飲み物とポップコーンを買いに売店へと行くのだった。

 

そして、飲み物などを買って席に戻り、かがみに買って来た物を渡して、ようやく映画鑑賞の準備も済んだので後は上映開始を待つ俺達だった。

 

「うーん・・・内容はCMなんかで少しは知ってるけど、どういう話になるのかが楽しみね。」

 

俺にそう話し掛けてくるかがみに俺も

 

「そうだな。でも、映画館で真実を知るのも映画鑑賞の楽しみでもあるしな。とりあえず期待しよう。」

 

俺の言葉にかがみも頷いてそして、上映開始のブザーが鳴ると、いよいよ映画の上映が開始された。

 

映画を見ながらしばらくすると、俺の肩に何かが乗る感触を感じてかがみの方を向くと、かがみは俺の肩に頭を預けてなおかつ俺の手を握ってきた。

 

俺はそんなかがみの行動にドギマギしつつ

 

『お、おい、かがみ。一体どうした?突然肩に頭乗せて来たから少し驚いたぞ?それに手も・・・』

 

小声でかがみにそう言うと、かがみは俺に視線を向けながら

 

『・・・お願い・・・今日だけ・・・今日だけでいいから・・・私のしたいようにさせてくれない?それとも慶一くんには迷惑な事だったかな?』

 

そう言ってくるかがみに俺は、はっきりと

 

『そんな事はないぞ?かがみがそうしたい、って言うのなら俺は構わない。迷惑って事はないからそれだけははっきり言っておくぞ?そこだけは勘違いしないで欲しい。』

 

そう言うと、かがみはほっとしたようになって

 

『・・・ありがと。やっぱりあんたは優しいね・・・。でも、ごめんね。私の我侭に付き合ってもらってるし・・・。』

 

そんな風に言うかがみの頭を軽く撫でてやりながら

 

『いいさ。それでかがみが満足するならどうって事ないよ。』

 

そんな俺の言葉にかがみは嬉しそうな顔で

 

『ふふ。ありがとう、慶一くん。』

 

そう言うかがみに俺も頷いたのだった。

 

そうこうしているうちに映画も佳境に入り、いつしか俺達は映画の世界に見入り、ハラハラドキドキしながらクライマックスまで楽しんだ。

 

結果から言うと、映画はとても面白く、評判通りのものだと言えた。

 

映画を終えて帰りながら俺とかがみは、さっき見た映画の事で興奮しながら話しをしまくっていた。

 

そして、柊家に戻る途中に、森村家に着替えを取りに戻り、俺はかがみを送って柊家へと向かった。

 

帰りも俺はかがみを自転車に乗せて送っていったのだった。

 

そして、鷹宮神社の前で俺達は今日の最後の挨拶をしようとしていた。

 

「ふう、到着だ。ようやく着いたな。」

 

自転車を止めてかがみを降ろしながら俺はかがみにそう言うと、かがみは俺に笑顔を向けながら

 

「ふふ。お疲れ様、慶一くん。今日は付き合ってくれてありがとう。慶一くんは楽しめた?」

 

俺にそう確認するように聞いてくるかがみに俺は笑顔で

 

「ああ。楽しかったよ。映画も当たりだったし、お前の意外な一面も見れた気がするしな。」

 

そう言うと、かがみは途端に顔を赤くして

 

「あ、あれは、普段出来ないような事をやってみたいと思っただけよ・・・ベ、別に特別な意味なんてないんだからね!」

 

そっぽを向きながらそう言うかがみに俺は苦笑しつつ

 

「そ、そうか・・・。まあ、俺は楽しめたけど、かがみはどうだったんだ?」

 

そう尋ねると、かがみはまだ赤い顔のままそっぽを向いた状態で

 

「・・・ま、まあ、一応は楽しめたかしらね。」

 

その答えを聞いた俺はとりあえずほっとしながら

 

「そうか。それならよかった。ま、とりあえずこれで賭けの約束は果たしたわけだな。」

 

そう言うと、かがみは俺の方を見て表情に寂しさを浮かべながら

 

「そ、そうね・・・。もう、こういう事も出来ないかもしれないわよね・・・今回のはあくまでも賭けでの約束だったものね・・・。」

 

そう言うかがみに俺は

 

「・・・そうだな、その結果した約束にすぎないよな・・・だけど・・・。」

 

俺はそこまで言って1度言葉を切る。

 

そんな俺の言葉にかがみも

 

「・・・だけど・・・慶一くん、私・・・私は・・・これが最後になんてしたくない・・・。」

 

そんな風に言うかがみに俺は

 

「・・・なら、やる事はわかるよな?かがみ。」

 

そう言うと、かがみは俺の言葉の意味を少し考えていたようだったが、”その事”に思い当たった時、かがみは俺に決意のような眼差しを向けて

 

「・・・そうね。ありがとう、慶一くん。それと・・・」

 

そう言うと、かがみは俺の側に寄って来て俺の唇に軽くキスをすると

 

「これは今日付き合ってくれた事に対する私のお礼よ?今日はこれで帰るわね?でも、”また今度”付き合ってよね?」

 

そう言って赤い顔の笑顔を俺に向けながら、俺に手を振って帰っていくかがみを俺は呆然としながら見送ったが、それからしばらくしてかがみの最後の言葉を思い出した俺は

 

(・・・あー・・・びっくりした・・・。でも、かがみ、俺のいいたかった事、気付いてくれたみたいだな。)

 

そう心の中で考えると、俺は今日のかがみとの事を思い出しながら家へと帰ったのだった。

 

かがみside

 

慶一くんとの賭けの約束で、今日は一緒に映画へと行った私だったけど、慶一くんは私の服装を褒めてくれたり、私の我侭にも付き合ってくれたりと優しい所をまた見せてもらった。

 

そして、帰ってきて今回のこれが賭けの約束で行った事だったという事を感じた時、今後はもうこういう事も出来ないかも知れないと思った時、私は凄く寂しい気持になった。

 

けれど、最後の最後で慶一くんが私に言ってくれた言葉は、私達が誓い合ったあの言葉を思い出させてくれるものだった。

 

私は慶一くんに言われた言葉を改めて反芻しつつ、心の中で

 

(今日は色々な事しちゃったな・・・でも、慶一くんも特に迷惑だとは思っていないみたいだったからよかったかも・・・そして、今日の最後に言ってくれた事、私の心にも響いたわ。でも、私にそれを言ったっていう事は、私はまた、それを望んでもいいのよね?だって私は・・・楽しかったから・・・慶一くんに強がってああ言ったけど、本当は楽しかったから・・・だから、もう1度、私は慶一くんと一緒に・・・また一緒に出かけたりしたいから・・・あいつと一緒に居たいから・・・私は・・・あいつが・・・)

 

そこまで考えた時私は、あいつへの自分の気持が少しだけ分かったような気がした。

 

私達のこれからの時間の中で、私はこの気持についてじっくりと考えて行こうと思うのだった。

 


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