新学期と始業式、新しい1年が始まった。
俺達3年生組みは、あの時の予定通り、全員が同じクラスになれた。
かがみは、1年の頃にこなた達と仲良くなって以来、2年生、3年生と同じクラスになりたいと思って来たようだった。
だからこそ、今回の事は泣くほどに嬉しかったようだ。
俺は、そんなかがみを見てほっとすると共に、皆と一緒になれた事に喜びも感じていた。
更には、今年はゆたか達も受験を成功させて陵桜にやってきた。
それにより、ゆたか達も正式に俺達と同じ学校に通う仲間となった事もまた、俺は喜んでいたのだった。
色々な事が起きそうなこの1年、俺は期待に胸を膨らませていたのだった。
日付も変わって翌日、俺とパティはいつもの時間に起きて学校へ行く準備を済ませてキッチンでくつろいでいた。
以前のデコピンのトラウマも原因なのか、パティはあまり俺に手を煩わせる事なく起きれるようになってきたみたいだ。
そんな事を思いつつパティを見ながら考え事をしていたが、パティがそんな俺に気付いて
「ケイイチ、どうかしまシタカ?ワタシのカオにナニかついてますカ?」
首を傾げてそう尋ねてくるパティに俺は、首を左右に振って
「いや、すまん。ちょっと考え事をしてたんだ。」
そう言うと、パティは軽いため息をつきつつ
「ケイイチ?アサからボーッとしていてはいけませんヨ?これからスクールへイクんですからしっかりしてもらわないとコマリますヨ。」
そう言うパティに俺も苦笑しながら
「はは。わかってるよ。さてと、そろそろかな?」
俺はそう答えつつ時計に目をやると、呼び鈴が鳴ったので俺はすぐに立ち上がり、玄関へと向かう。
そして、玄関の扉をあけて
「はいはいっと。おはよう、あやの。いつもすまないな。」
そう言う俺に、にっこりと笑うあやのは
「ふふ。おはよう、慶ちゃん。もういつもの事なんだからそれは言いっこなしよ?それじゃ、いつもの、やっちゃうからね?」
そう言うあやのに俺も頷いて
「ああ、よろしくな。それと終わったらキッチンな。今日もお茶用意してるからさ。」
俺がそう言うとあやのも頷いて
「ええ、わかってるわ。それじゃキッチンで待っててね?パトリシアさんももう行く準備は出来てるのよね?」
と言うあやのの言葉に頷きながら
「ああ。とりあえずあまり俺の手を煩わせないでいてくれるから助かってるよ。そういうわけだから先にキッチンに戻ってるな?じゃあ後でな、あやの。」
そう答えるとあやのも笑いながら頷いて
「うん。それじゃ後でね?」
そう言ってモモとミィの世話をしに行ってくれた。
あの時からずっと、あやのはほとんど毎日モモとミィに世話に来てくれるようになった。
そして、今ではこれも俺の日常の風景の1つとなりかけていた。
当時を思い出しながら俺は、懐かしい気分に浸りつつキッチンへ戻ったのだった。
キッチンへ戻るとパティが
「ケイイチ、アヤノはキョウもキテくれたのですネ?ケイイチもちゃんとアヤノにカンシャしなきゃイケマせんヨ?」
人差し指を立ててそう言うパティに俺は笑いながら
「ははは。お前に言われるまでもないさ。俺はずっと感謝してる。ありがたいって思ってるからな。だから、そんな心配は無用だ、パティ。とりあえずあやのの分のお茶準備するからカップとソーサーを出してくれ。」
俺がそう言うとパティは満面の笑みで頷いて
「オマカセですヨ?アヤノのブンはワタシがウケオイました。」
そう言うと、パティは早速あやのの分のカップとソーサーを用意してくれた。
そして、それに俺が用意した紅茶を注ぐと、その頃にあやのが猫の世話から戻ってきた。
「お待たせ、慶ちゃん、パトリシアさん。」
そう声をかけてくるあやのに俺は頷いて
「ああ、待ってたよ。丁度準備も出来たから少しくつろいでくれ。」
そう言うと、あやのも微笑みながらお茶の用意してある席へついた。
そして、時間ぎりぎりまでのんびりと談笑してからいつものように家を出る俺達。
パティが家にやってきてからも続いている俺達の日常なのだった。
かがみたちと合流して、電車に揺られる俺達だったが、ここにまた1つ新たな日常が加わる事になった。
それは、いつもこなたと合流するのだけど、そこにゆたかの姿も加わった事だった。
初日は早めに行きたかったらしく、俺達とは会わなかったゆたかだったが、今日からは一緒に通いたいとゆたかが言い出したとの事、俺達もまた、その気持を尊重するために、ゆたかに応えようと思ったのだった。
「おはよう、こなた、ゆたか。今日からは一緒に行く事になるのか?」
「グッモーニン、コナタ、ユタカ。キョウからはイッショですネ!」
「おはよう、こなた、ゆたかちゃん。今日からよろしくね?」
「おはよ~。こなちゃん、ゆたかちゃん。また登校が楽しくなりそうだよ~。」
「おはよう、泉ちゃん、小早川ちゃん。何かあったら遠慮なく言ってね?それと、気分が悪くなったりした時もよ?」
そんな俺達の挨拶にこなたとゆたかは
「おはよー慶一君、パティ、かがみ、つかさ、あやのさん。今日からゆーちゃんも一緒に行きたいって言うからさ、これからよろしくね?」
「おはようございます、慶一先輩、パティちゃん、かがみ先輩、つかさ先輩、峰岸先輩。私こなたおねーちゃんの家に居候させてもらっていますから、登校するときは一緒なんですよ?今日からは私も皆さんと一緒にいきたいですから、よろしくお願いしますね。」
そう言い、俺達も笑顔でそれに頷いて応えると、2人とも喜んでくれたようだった。
そして、俺達は今日もまた学校へと辿り着く。
そこでは俺達が来るのを待っていたみゆきやみなみ、こうややまと、ひよりとも合流し、それぞれの教室へと向かったのだが、その際にゆたかが俺に
「あ、先輩。今日の放課後に暇ありましたら、校内の案内をお願いしたいですが、いいでしょうか?」
そう言って来たので、俺は今日は特に用事がなかったので
「ああ、構わないぞ?そういや、校内案内もまだだったな。俺も知らない所もまだあるし、皆で回ってみるか?」
そう言うと、皆もそれぞれに
「いいね。この際だから私も改めて学校の事を知ろうかな?」
「それもいいかもね。私も入ったことのない所とかまだあるしね。」
「わたしもかな?自分の学校なのにまだまだ知らない所あるよ。」
「中々回る機会もなさそうですし、丁度いいかもですね。」
「ごめんね?今日はちょっと用事あるから一緒には回れないわ。」
「私も部活あるからちょっと無理だなー。わりい、小早川。」
「まあ、そういう事なら仕方ないですね。私はお付き合いしますよ?」
「私もまだ知らない所もあるから回っておきたいわ。」
そう言うのだった。
そんな俺達の言葉を聞いて1年組は
「・・・私も一緒に行かせて貰っても構いませんか・・・?」
「私もこの機会に回っておきたいっス。」
「ケイイチにはヤクソクをハタしてもらいマスヨ?オトコに二ゴンはユルされませんデスからネ?」
という言葉に俺は苦笑しつつ
「行くつもりなら一緒に行こう。それとパティ、言われなくてもわかってるよ。忘れちゃいないから心配すんな。」
そう言うと1年組みもほっとしているようだった。
とりあえず放課後の約束を交わした俺達は、それぞれの教室に行って授業を受ける。
そして、その日の昼休みの事、俺はみんなとアニ研の部室にて昼食をとっていたのだが、飲み物を忘れた事を思い出して、外に買いに出ることにした。
だが、そんな俺の行動に気付いたこなた達はそれに便乗して
「慶一君、私は烏龍茶お願いー。」
「なら、私はアクエリアスを。」
「こら!こなた!日下部!あんたら何ちゃっかり頼んでるのよ!?」
そう突っ込みを入れるかがみに俺は苦笑しつつ
「ったく、しょうがないな。いいよ、かがみ。皆も欲しい物あるなら言ってくれ。ついでだから行って来る。」
という言葉にかがみは
「・・・え?いいの?でも、なんだかあんたにも悪いわよ・・・。」
そう言いにくそうにいうかがみに俺は
「何、この程度の事はお安い御用だよ。それで?どうするんだ?」
俺がそう言うと、かがみは言いにくそうに
「そ、それじゃ・・・コーヒー牛乳を・・・。」
そう言うと、こなたとみさおが
「ぶー!なんだよかがみん、私達にあんな事言っておいて結局かがみも頼むんじゃん。」
「だよなー。どっちがちゃっかりしてるんだよって感じだよなー。」
そんな風に言う2人にかがみは顔を赤くしつつも
「う、うっさい!!慶一くんが気を使ってくれるって言うんだからその気持を汲んであげなきゃ、って思っただけよ!!あんたらはただ、便乗しただけでしょ!?」
そう突っ込みを入れると、2人はまだなにやらぶつぶつと文句言ってたようだったけど、そんな3人を見て苦笑しながら俺は他のみんなにも一応聞いてみた。
「とりあえず、他の皆はどうする?」
そう尋ねると皆はそれぞれに
「わたしは今持ってきてるのがあるから大丈夫だよ~?」
「えっと・・・慶一さん。お茶をお願いしても構いませんか?」
「私も午後の紅茶のストレートティーをお願いできるかな?」
「私はカルピスウォーターをよろしくです。」
「こう、あなたもなの?まったく・・・先輩、1人じゃ大変だろうから私も一緒に行ってあげるわ。」
「私も家から持ってきてますから大丈夫ですよ?」
「・・・私も、先輩のお手伝いをします・・・。」
「私も持ってきてるのがあるから大丈夫っスよ?」
「ケイイチ。コーラをよろしくデス!」
そう言ったので俺は注文を反芻しつつ
「了解だ。それと、やまと、みなみ。手伝ってくれるというなら手を借りてもいいかな?」
そう言うと、2人は頷いて
「ええ。任せて。結構量がありそうだし、抱えきれないなら持つ人が多い方がいいでしょう?」
「・・・それに、皆で運べば楽ですよ・・・。」
そう言ってくれたので俺は頷いて
「ありがとな、2人とも。それじゃさくっと行って来よう。んじゃ皆待っててくれよな。」
そう言い残して俺とやまと、みなみは、部室を出て自動販売機のある星桜の樹のある裏庭へと向かった。
そして、俺達が自分の分も含めて飲み物を購入してる時に、俺は背後から声をかけられた。
「あ、あの・・・森村先輩ですよね?覚えていますか?若瀬いずみです。」
その言葉に俺とやまととみなみも振り返り
「お?若瀬さん。久しぶり、になるのかな?ともあれ陵桜には無事に合格できたみたいだね。おめでとう。」
「あなたは確か、去年の冬コミで出会った人よね?」
「・・・あ、委員長・・・先輩達とも知り合いだったの・・・?」
そう言うと、若瀬さんは驚きながら
「お、覚えていてくださったんですね?よかった。お祝いの言葉、ありがとうございます。それと、岩崎さん。私は去年の文化祭の時に森村先輩と初めて出会ったのよ。」
その言葉に俺は笑って
「そういう事さ、みなみ。あの日に若瀬さんはお兄さんと一緒に桜藤祭に来ていたんだよ。そして、アニ研部室前でぶつかって若瀬さんが落とした学生証を俺が拾った事がきっかけだな。」
そう言うと、みなみとやまとは
「・・・そうだったんですか・・・先輩、若瀬さんはうちのクラスで学級委員を任されているんです・・・。」
「そういう事があの日にあったのね?あの日騒いでいた姉妹以外にも出会ってる人がいたなんてね。」
納得しながらそう教えてくれ、やまとはどこか不機嫌になりつつそう言った。
俺はそんな2人に
「へえ?そうだったんだ。まあ、やまと。そういう事だな。けど、これも結局人助けの一環だっただけさ。」
その言葉に若瀬さんも照れながら
「そういう事ですね。あの時は本当に助かりましたけど・・・。それと、コ○ケで先輩に言われた言葉もまだ覚えていますよ?」
その言葉に俺も微笑みながら
「お?そうか。ちょっと余計な事言ったかな?と思ったけど、覚えていてくれたなら何よりかな。」
俺の言葉に若瀬さんも笑ってくれて
「あの言葉は心に染みましたからね。それと同時に今先輩に声をかけたのもあの時のお礼をしたかったからなんですよ。それで、色々と考えてみましたが、結局これを渡したいと思いまして・・・。」
そう言いながら、持っていたバックから何かを取り出して俺に渡してくれた。
「これ、私が作ったものなんですが、良かったら食べてください。」
そう言って渡してくれたものはケーキだった。
俺は若瀬さんに
「ありがとう。後でいただかせてもらうよ。それと、若瀬さん。あの時も言ったけど、君さえ望むなら俺達は君の友達になってあげるよ。それに、君の趣味の事を話せる奴も俺の仲間達の中にはいるからさ、そんな話をしたいと思ったら、俺達を訪ねて来てくれればいいよ。」
そう言うと、若瀬さんは少し驚いたような表情を見せたが、すぐに嬉しそうな笑顔になって
「お気遣い、ありがとうございます。でも、本当にいいんですか?」
そう聞いてくる若瀬さんに俺は力強く頷いて
「構わないさ。君もまた、俺達の仲間なんだから。同じ学校に通う、そして、秘密を共有する、ね?」
俺の言葉に若瀬さんは一瞬顔を赤くすると
「そ、その事は・・・あの・・・確かに・・・そうですよね・・・でも、ありがとうございます。私の趣味の事も理解してくれて・・・。」
その言葉に俺は笑いながら
「俺の仲間にはもっと凄い趣味の奴がいるからね。そいつの事も受け入れられたんだから問題はないさ。それに、君の方がまだ可愛げがあると思えるほどに濃い奴がいるからな。」
俺のその言葉に驚く若瀬さんは
「・・・先輩のお友達は色々な人がいるんですね・・・。」
そう言う若瀬さんに、俺や、やまとは苦笑するしかなかった。
みなみだけは俺達の話す事に少し理解が追いつかない感じで、不思議そうな顔でこっちを見ていたが。
「とにかく、以前にアニ研の部室に来た事もあるみたいだし、場所は分かるよね?俺達はここの所はお昼はそこで集まって食べてるから、もし、若瀬さんさえよかったら訪ねておいで。」
そう言うと、若瀬さんはにっこりと笑って
「ありがとうございます。それじゃその折にはお邪魔させてもらいますから。それじゃ今日はこれで。」
そう言って俺達に頭を下げて去っていく若瀬さんを見送りつつ
「ちょっと驚いたけど、まあ、無事に合格できたのならよかったかな?」
そう俺が呟くと、俺達の様子を伺っていたやまとが少し不機嫌そうに
「それはいいけど、先輩。そろそろ戻らないと皆待ってるわよ?」
やまとにそう言われて俺は、当初の目的を思い出して
「そうだった。やまと、みなみ。急いで戻ろう。」
俺の言葉に2人も頷くと、頼まれた物を手にして部室へと戻ったのだった。
そして、帰ってくるのが遅かった事に対して皆から問い詰められたのだが、俺は適当に誤魔化そうとしたのだけど、やまとに遅れた理由を告げ口されて皆から質問攻めにあったのだった。
それでも、皆は若瀬さんを友人として迎える事には賛成してくれたので、俺も少しだけほっとしていた。
そして、午後の授業を終えた俺達は、ゆたか達と待ち合わせをしていた。
朝に言っていた校内案内兼、施設再確認をするために。
「お待たせしました。先輩達。少し遅れてしまいましたが、HRも終わりましたので。」
「・・・こちらに来る時に委員長にも声をかけてみました・・・。」
「委員長、皆が行くなら行ってみたいと言ってたっスから一緒に来ましたっス。」
「ニューメンバーのイズミもイッショにイキマスですヨ?」
「今日再会したばかりですみません、ご無理を言って。」
ゆたか達と同じようにやってきた若瀬さんに俺達は
「いやいや。俺達も今日は自分の学校の再確認をするつもりだったんだし、構わないよ。」
「そうだね。この際一人増えても一緒だよね?」
「そうね。校内の事知らないという事ではゆたかちゃん達とも一緒なんだし、なら、まとめて面倒みちゃいましょ?」
「また1人お友達が増えそうだから、なんだか嬉しいな~。」
「私たちもまだ完全には校内の事は把握しきれているわけではありませんが、ある程度は分かるかと思います。ですから、ある程度の質問もお答えできるかと思いますよ?」
「部室練の方もまだまだ分からない所もありますしね。この機会におさらいしないと。」
「とりあえず、校内の案内図を探してきたわ。これを参考にしつつ、回りましょう。」
やまとの言葉に頷いて、俺達は早速校内めぐりを始めた。
「先輩。最初に教えてもらいたい所があるんですが。」
歩き始める時にゆたかが俺にそう聞いて来たので、俺は
「ん?どこが知りたいんだ?ゆたか。」
そう言うと、ゆたかは俺に
「私、体が弱いので保健室はよく利用する事になるかと思います。だから、保健室の場所を最初に知っておきたくて・・・。」
そう言うゆたかに俺は頷いて
「わかった。まずはそこからだな。って、どうした?こなた。」
俺とゆたかのやり取りに、腕組みをしながら考え込んでいるこなたに尋ねてみると、こなたは
「いやー・・・保健室ってどこだったっけ?って思ってさー。」
と言い、俺達はそれを聞いて脱力した。
「・・・あのな・・・お前が身体測定やった所や去年の文化祭で倒れたかがみを運び込んだ所はなんだよ?お前、あの時も俺の後についてきてドアまで開けたよな?」
そう突っ込むとこなたは焦りつつ
「そ、そういえばそうだったね・・・。自分でも保健室に行った事すっかり忘れてたよ。」
後頭部を掻きながらそう言うこなたに、俺達は苦笑していたのだった。
ともあれ、気を取り直して俺達はまず保健室へと向かった。
そして、保健室の前に着いてから俺はゆたかに
「ここが保健室だ。部屋の周りにあるものとかをよーく記憶しとくといい。それが目印になるからな。」
そう言うと、ゆたかとみなみが俺に
「ありがとうございます。場所をよく覚えておきますね?」
「・・・ここがそうなんですね?よかった・・・これでゆたかが気分を悪くしてもすぐに連れて来れます・・・。」
そう言うみなみに俺は
「ん?お前がゆたかの面倒見てくれてるのか?」
そう尋ねると、みなみの代わりにゆたかが
「そうなんですよ。みなみちゃん、私の為に保健委員を引き受けてくれたんです。私それがとっても嬉しかったんですよね。」
そう言うと、みなみは真っ赤になって
「・・・ゆたかは・・・私の大切な友達だから・・・。」
照れながらそう言っていた。
俺も、そんなみなみに微笑みながら
「そっか。みなみ、これからもゆたかの事頼むな?」
そう言うと、照れながらもみなみはコクリと頷いてくれたのだった。
そんな様子を見ていたひよりが、背後でなにやら騒いでいるのが聞こえたので、そっちに耳を傾けてみると
「・・・来た来た来たーっ!これはいいネタが手にはいりそうっス!次の原稿はこれで決まりっスね!」
等と口走っているひよりの元へ行って
「ひより、ネタ探しはいいが、仲間や友人を漫画のネタにするのは自重しろよ?もし、おかしなものを作ろうものなら・・・俺が裁くからそのつもりでな?」
にっこり笑いながら圧力をかけてやると、ひよりは途端に我に帰って「わ、わかりましたっス・・・すみません・・・」
と言って凹んでいた。
俺達は、そんなひよりに軽いため息をつきつつ、こうにも原稿のチェックを厳しくするように、と言いおいて、更に別の場所へと向かったのだった。
「へえ?茶室なんてものがあるとはね?」
いくつかの特別教室等を歩き回って部室練を見回っていたとき、たまたま見つけた茶室を俺達は覗いていた。
「こんなのあるなんて知らなかったねー。」
「茶道部ってあったかしらね?永森さん、校内案内に書いてある?」
「ええ。一応は乗ってるわよ?」
「こうしてみると、部活もいろいろあるんだね~。」
「それに一昨年に私達で立ち上げた部活もありますし、あれからも別のものが増えていたとしても不思議はないかもしれませんね。」
「そうですね。そこも含めてもう少し回ってみましょうよ。」
そう言うこうの言葉に俺達も頷いて、さらに校内を見回って行く。
以前に肝試しで回った理科室や音楽室、さらには美術室や視聴覚室も見つかった。
「ここは、自習室か。俺達はテスト勉強の時には図書室をよく利用してたからあまり来た事なかったな。」
「私はここにはよく来るよ?」
「意外ね、あんなに勉強が嫌いって言ってるあんたがさ。」
「だって、静かだから寝るのに丁度いいんだよねー。」
「「勉強する所なんだから、勉強で使え!!」」
と、思わず俺とかがみとのダブルのツッコミが炸裂するも、こなたはさほど堪えてはいないようだった。
そんな俺達を見て苦笑する他の皆。
そして、俺達はまた移動をしていく。
「ここは家庭科室ですね。家庭科の授業があるんでしょうけど、私、少し自信ないなあ・・・。」
と言うゆたかに俺は
「ゆたかは、料理とかは苦手か?」
と尋ねると、ゆたかは苦笑しながら
「経験が少ないって言うのもあるんですが、まだこなたおねえちゃんみたいには出来ないので。もう少し出来るようにはなりたいですけど・・・。」
そう言うゆたかにかがみが
「大丈夫よ、ゆたかちゃん。最初から上手い人なんていないんだから、ゆたかちゃんもゆっくりと経験を積んでいけばいいのよ。」
そうやって励ますと、ゆかたも少し驚いたような表情を見せていたが、すぐに笑顔になって
「そうですね。ありがとうございます、かがみ先輩。少しだけ気が楽になりました。」
そう言うゆたかとかがみの様子を伺っていたこなたはニヤニヤとしながら
「ねえ、かがみ?それって慶一君の言ってた台詞だよねえ?それに、自分の事を棚に上げてゆーちゃんに言うとかなかなかちゃっかりしてるじゃん?」
そう言うと、かがみは途端に顔を真っ赤にして
「う、うっさい!!家事がまだ上手くないって事は自覚してるわよ!!いいじゃない!これだってアドバイスなんだから!」
そう言うかがみにこなたはなおも
「はいはい。そうですねー。もう少し説得力あるならましだったかもだけど。」
というこなたの言葉にかがみは「こ、こなたー!!」
と叫んでこなたを追い掛け回し始めたのを見て、若瀬さん以外の面々は苦笑していた。
「・・・森村先輩・・・あの2人っていつもああなんですか?」
呆然としながらそう尋ねてくる若瀬さんに俺もまた、苦笑しながら頷いていた。
「そういえば若瀬さんは俺にケーキ作ってくれたよね?若瀬さんは家事とかはある程度できるの?」
そう尋ねると若瀬さんは少し顔を赤くしつつ
「お菓子作りは何とかできますが、料理とかとなると、まだ私もまだまだでして・・・。」
という言葉にパティとひよりが
「まだまだイズミもシュギョウがタりんということですネ。」
「でも、委員長のお弁当見たことあるっスけど結構美味しそうでしたよ?」
そう言うと、若瀬さんも複雑な表情で
「あはは・・・そういう事ね、パトリシアさん。田村さん、それでも冷凍食品がほとんどだから、まだまだかな?」
そう答えると、俺はそんな若瀬さんに
「さっきかがみが言ったように、何事も経験だから、色々やってみるのが一番さ。だから、頑張りなよ?若瀬さん。」
そう言うと、若瀬さんも頷いてくれて
「そうですね。私も頑張ってみます。アドバイス、ありがとうございます。」
そう言う若瀬さんに俺も頷きで答えるのだった。
そして、いい加減2人を止めないと、回り終えられないと思った俺は何とか2人を止めると、まだ回っていない施設を目指すのだった。
それからしばらく施設を見回って、大体を把握した俺達は時間も時間だったので、下校時間前には学校を出たのだった。
その際に、学校案内をしてくれた事に対する礼をゆたか達から言われたが、お互い様だからと俺もゆたか達に伝えたのだった。
そうして今日の学校案内は幕を閉じる。
そして、パティと一緒に家に向かっている時にパティが俺に
「ケイイチ、タノミたいことがあるのデスガ。」
そう言って来たので、俺はパティに
「頼みたい事?一体なんだ?」
そう言うと、パティは1つ頷いて
「ジツはこれからケイイチのイエにオセワになるにアタリ、ジブンのコトイガイでツカウオカネがタリないかもしれまセン。ですから、よいアルバイトがないかとオモイましてケイイチにキいてみたかったのですヨ。」
そう説明するパティに俺は少し考え込んでいたが
「アルバイトねえ・・・ん?そういえば1つ良さそうなのあるな。」
そう言うと、パティは俺の方に身を乗り出して
「ホントウですか?そのアルバイトとはどうイウモノなのですカ?」
俺はそんなパティに笑いかけながら
「パティにとっては仕事しやすいかもしれないな。とりあえず俺が電話を入れておくから後で結果を教えるよ。」
そう言うと、パティは嬉しそうに頷いて
「サンキューです!ケイイチ!いいケッカをキタイしていますヨ?」
そう言うパティに俺も頷いて
「わかった。結果が出たらお前に伝えに行くから部屋で待っててくれ。とりあえずは家に帰って飯の準備もしなきゃ、だからな。」
その言葉にパティも頷いてくれ、俺達は急いで家に戻ったのだった。
そして、夕食の準備をしつつ、俺はパティのバイトの件であの人の所へ電話を入れてみた。
そして、その結果を持って俺はパティの部屋へ行く。
部屋のドアをノックしてパティを呼ぶと、パティはドアを開けてくれたので俺はさっきのバイトの件の結果を伝えた。
「パティ、とりあえず採用してくれるようだ。場所は秋葉の・・・・・・。」
俺の言葉に目を輝かせてパティは喜びながら
「ホントウですか!?まさかケイイチにそんなコネがあったなんて・・・ワカリマシタ!アシタにはメンセツにイキますデス!ガンバってハタラきますのでキタイしててクダサイね?ケイイチ。」
俺はそんなパティに笑いながら
「ああ。でも、くれぐれも、無茶はしないようにな。それと何かあったら俺に連絡をきちんと入れること、いいな?パティ。」
そう言うと、パティも満面の笑みで頷いたのだった。
学校案内、若瀬さんとの再会、そして、ふいに決まったパティのバイト。
けれど、この時にはまだ俺は、再びあの店でバイトする事になろうとは思いもしなかったのだった。
そうなるのはまだまだ先だったけど、あの店をパティに紹介した時から小さな予感を感じた俺だった。