らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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思い出作りの旋律~箱根温泉旅行3日目後編~

こなた達の山での遭難騒ぎを解決して、俺達は無事旅館へと戻る事ができた。

 

その後は、こなた達も大分皆に心配かけた事で絞られたりしていたけど、俺は、それでも皆が無事だった事に安堵していた。

 

しかしながら、その時にした色々な無茶がたたり、俺の体はかなりがたがたになっていた。

 

けれど、それはこなた達遭難組みも同じだったようで、山を歩き続けていたこなた達は筋肉痛等で苦しむ事となった。

 

そんな俺達の状態を慮ってか、叔父は俺達にもう1日の滞在を許可してくれた。

 

その好意に感謝しつつ、俺達は今日は、昨晩の疲れを癒す温泉巡りをしようと言う事になったのだが、その日の朝から4人に、命を救われたお礼と称して、俺はこなた達にキスをされると言う事になったのだった。

 

突然の事で色々と混乱する事も多々あったが、今回のこなた発見の真実をこなたに伝えた俺は、とりあえず、温泉巡りの準備をすべく一度部屋へと戻って行くのだった。

 

そして、その途中・・・・・・

 

「あ、いたいた。森村くーん!。」

 

その声に振り向いてみると、そこにはまつりさんといのりさんの2人が居た。

 

「おはようございます。まつりさん、いのりさん。あれ?龍兄と一緒じゃなかったんですか?」

 

そう訪ねると、まつりさんは

 

「龍也さんなら温泉巡りの準備しに行くからって部屋へ戻ったわよ?それよりも、昨日はありがとね、森村君。かがみ達を見つけてくれて本当に感謝してるわ。」

 

そんな風に言ってくれたのだが、俺はそんなまつりさんに恐縮しながら

 

「いえ、俺は大切な仲間のピンチに動いただけですから。自分がそうしたいと思ってやった事ですから改まってお礼を言われると照れますね。」

 

そう言うと、いのりさんも

 

「ふふ。流石は森村君だね。でも、色々あったみたいね、その体の怪我、かがみ達を探しにでた時にはなかったものよね。ごめんね?森村君。痛い思いさせちゃって・・・。」

 

俺の体の怪我を見ながらそう言ういのりさんに俺は、照れながらももう1つ、こなた達を救えた理由を2人に話す。

 

「この程度なんて事ないですよ。それ以上に俺が痛い思いしても4人を救えた事にこそ意味があるんですから。それとですね、実は・・・・・・と言う事なんですよ、だから、もしまつりさん達がお礼をしたいと言う事であれば、お墓参り、一緒に行きませんか?」

 

その俺の言葉に驚きの表情を見せながらも2人は

 

「そっかー・・・こなたちゃんのお母さんがね・・・森村君。後で私も一緒に行かせて貰うわね?そういう事ならきちんとお礼しなくっちゃね。」

「私も行くわ。妹達の恩人とあってはご挨拶しないわけにはいかないものね。」

 

そんな2人に俺は頭を下げて

 

「ありがとうございます。それじゃ、旅行から戻った時にまたこの件に関しては連絡させてもらいますので。それじゃ俺も温泉巡りの準備してきちゃいますので。後でロビーでお会いしましょう。それではー。」

 

そう言って俺は自分の部屋に戻って行く。

 

部屋に戻ると、龍兄が丁度準備を終えてそろそろ部屋を出ようとしていた所だった。

 

俺は龍兄に

 

「おはよう、龍兄。もう準備できたみたいだな。俺も準備していくから先に出てていいよ?」

 

そう言うと、龍兄は

 

「分かった。鍵の件はお前に任せるよ。それと・・・俺もこなたちゃんのお母さんのお墓参りはさせてもらうぞ?慶一。さっき、まつりさんといのりさんと廊下で話してる声が聞こえたからな。あの4人を助けるきっかけになったのがこなたちゃんのお母さんと言う事なら、俺も捜索に加わった人間として、挨拶をしておきたいからな。」

 

その言葉に俺は頷きながら

 

「わかったよ。じゃあ、旅行から戻ったら、と言う事で。後でロビーで落ち合おう。」

 

俺の言葉に頷いて龍兄は先に部屋を出て行った。

 

そして、俺も程なくして出かける準備を終えると、部屋を出て行き、こなたの部屋へさっきの言葉どおり迎えにいくのだった。

 

部屋の呼び鈴を押すと、中から「どうぞー。」というこなたの声が聞こえたので

 

「こなた、約束どおり迎えに来たぞ?準備は済んだか?」

 

そう言うと、すぐに部屋のドアをあけてこなたが出てきた。

 

「このとおりばっちりだよ。それじゃロビーへいこっかー。」

 

そう言って俺の手を引いてロビーへ歩き出すこなたについて俺も一緒に移動する。

 

ロビー付近でこなたは俺から手を離すと、かがみ達の所へと走っていく。

 

俺はそんなこなたを見送りながら他のメンバーの到着を待っていたが、そんな俺にゆたか達が声をかけてきた。

 

「おはようございます、先輩。昨日はお疲れ様でした。それと、ありがとうございます。こなたおねえちゃん達を見つけてくれて・・・それに、その所為で怪我もしてしまったんですよね?」

「・・・先輩、私からもお礼を言わせて下さい・・・みゆきさんを救ってくれてありがとうございます・・・私は昨日は気が気ではありませんでした・・・。」

「先輩、お疲れ様っス。今日は存分に体を癒しましょうよ。」

「やはりケイイチはタヨリになりますネ。キョウはイチニチのんびりしまショウ。」

 

そんな4人に俺も頷きつつ

 

「はは。お前らにも走り回ってもらったからな。お疲れ様はお互い様さ。それとさ、ゆたか。こなた達を見つけられたのは・・・・・・と言う事があったからなんだ。だから、俺は旅行から戻ったらかなたさんのお墓参りに行くつもりなんだよ。ゆたか達も一緒にいかないか?」

 

そう持ちかけると、ゆたかは驚いたような顔をしながらも

 

「かなた叔母さんが、こなたおねえちゃんを・・・先輩!私も行きます!かなた叔母さんにお礼言わなくっちゃ!」

 

そう元気に言ってくれたので俺も頷きながら

 

「なら、そうしようか。」

 

そう言うと、みなみやひより達も

 

「・・・私も一緒に行かせて下さい・・・みゆきさんの恩人であるなら・・・私もお礼をしたいです・・・。」

「泉先輩のお母さんには感謝っスね。私も一緒に行きます。」

「コナタをスクったのはハハオヤのアイジョウなのですネ。ワタシもダイジなフレンドをタスケてくれたおレイをしたいデス!」

 

そんな3人の気持が嬉しくて、俺は笑顔で頷くのだった。

 

そして、そんな俺達の会話を何時の間にか来て聞いていたこうとやまとも

 

「なるほど、泉先輩達救出劇の裏側にそんな事があったんですねえ・・・。」

「そういう事があったなんて知らなかったわ・・・でも、大事な仲間を助けてくれたのなら、私もそのお礼をしに行きたいわね。」

 

俺はそんな突然の2人の言葉に驚きつつも、嬉しそうな顔で

 

「なら、旅行が終わったら一緒に行くか。きっと喜んでくれるさ。かなたさんもさ。」

 

そう言う俺に、2人とも笑顔で頷いてくれた。

 

そうして俺はロビーでみんなと合流すると、頃合を見計らい、温泉巡りへと出発するのだった。

 

まず俺達が向かったのは、足湯を使える場所だった。

 

「筋肉痛で足には結構ダメージあるから、まずはこれで行こう。」

 

俺のその提案もあって、まずはそこを目指した。

 

そして、少し歩いて俺達はそこに辿り着き、さっそく足湯に浸かる事にしたのだった。

 

「流石に色々あるもんだね。温泉の種類って物もさ。」

「そうねー。でも、だからこそ楽しい気もするわ。」

「だよね。わたしものんびりしようっと。」

「特に足には負担がありましたからね。こういうのもありがたい物ですね。」

 

そんなこなた達にゆたか達も

 

「おねえちゃん達は特にそうするのがいいんじゃないかな?昨日の今日だもんね。」

「・・・ゆたかの言う通りです・・・ゆっくりしてください・・・。」

「私達もついでにお付き合いさせてもらいますけどね。」

「二ポンのオンセンはスバらしいですからネ。ワタシもキョウはタノシませてもまいマース!」

 

そう言ってこなた達に気を使いつつも自分たちも楽しんでいた。

 

「温泉1つとっても色々ありますよねえ。まあ、退屈はしなさそうなのでいいですが。」

「日本の誇るべき文化の1つよね。私は好きよ?こういうのって。」

 

そんな風に言うやまとはそれなりに楽しそうだった。

 

俺もまた、そんなみんなを見ながら楽しい気持になりつつも一緒に足湯に浸かってのんびりとしようと思うのだった。

 

「しかし、結構気持のいいものだな。」

 

そう呟く俺に龍兄は

 

「まあ、あれだけ走り回った後の足には丁度いいだろうな。特にお前やこなたちゃん達はな。けど、その原因の1つもお前が最近稽古をサボリ気味だという所にもあるようだけどな。」

 

そう言いながら苦笑している龍兄に俺は

 

「はは・・・耳が痛いね。確かに最近は稽古もする機会はかなり減ったと思うよ。」

 

その言葉に龍兄は微笑みながら

 

「まあ、それもお前にそれ以上に気にする仲間が増えた事が原因みたいだがな。けど、俺にとってはそれは嬉しい事さ。」

 

そこまで言った後、また厳しい表情になって

 

「けど、そんな仲間を守るならお前はその為にもっと努力はしなきゃなならないぞ?みんなを悲しませるような真似はしたくないだろ?お前はさ。」

 

俺はその言葉を噛み締めるように頷くと

 

「・・・そうだな。簡単に守るとか言っている俺だけど、このままでは確かに厳しい・・・俺もまだまだ頑張らないと駄目って事だな・・・。」

 

そんな俺の肩を叩きながら龍兄は

 

「お前にその気があるなら、俺がいる間はお前の鍛錬には手を貸してやるさ。まあ、俺が鍛えるからには覚悟はしてもらうがな。」

 

そんな龍兄の言葉に苦笑しながら俺は

 

「今更そんな事言わなくても分かってるさ。龍兄のしごきは昔から経験済みだよ。けど、よろしく頼むよ、龍兄。」

 

俺の言葉に笑いながら頷く龍兄。

 

そして、俺達はしばらくここで足を癒した後、別の温泉へと足を向けたのだった。

 

「うーん・・・中々気持よかったね。足も大分楽になった気がするよー。」

「そうね。起きた時よりは大分いい感じね。次は全身浸かれる所みたいだけど。」

「それもいいかもね。まだまだ体も疲れてるもんね。」

「温泉の癒し効果は素晴らしいものがありますよね。次はゆっくりとしたいです。」

 

そんな風に言う4人にみさおとあやのは

 

「泉ちゃん達は特に疲れをとらないと、だもんね。」

「まあ、仕方ねえって。とはいえ私らもついでに癒されるゼ。」

 

4人に笑いかけながらそう言うと、4人も頷きながら

 

「そうだねー。今にして思えばよくあんな時間歩いてられたなあ、と。」

「確かにそうね・・・でもそれだけ私達は必死だったんだと思うわ。」

「歩いてないと不安だったもんね・・・。」

「立ち止まる事が怖かったのかもしれませんね・・・。」

 

そんな4人に俺も

 

「それだけ、お前らは自分の置かれた状況を心の中では分かっていた、って事じゃないかな。生きたいと思うから、帰りたいと思ったから必死になれたんだろうよ。」

 

そう言うと、4人ともその時の事を思い出して考え込んでいた。

 

そして、こうとやまとは俺に

 

「でも、人間のそんな思いって凄い力を出させるものなんですね。」

「自分の限界すら麻痺させる程に、って事なのね。だから泉先輩達はあそこまで足を痛める事になった訳ね。」

 

俺はそんな2人に頷いて

 

「そうだな。おそらくそれが、火事場の馬鹿力という奴なのかもしれないが。」

 

そんな俺の言葉にその場にいる全員が頷いていた。

 

そうこうしているうちに、次の温泉へとやって来た俺達はそれぞれ、男湯女湯に分かれて入った。

 

その後も、いくつかの温泉を回って俺達は旅館に帰る。

 

一度部屋に戻った俺達は部屋でくつろいでいたのだが、龍兄が何かを思い出したようで

 

「なあ、慶一。久しぶりにあそこへ行ってみないか?一般客も知らない俺達が見つけたあの秘湯にさ。」

 

俺は龍兄の言葉に、昔に一緒に入りに行ったあの場所を思い出して

 

「あそこか?まだ残ってたんだなあ・・・懐かしいけど。」

 

そう言いながら、当時に龍兄と共に修行の後、偶然にも見つけた温泉の事を思い出していた。

 

そんな懐かしさに少しの間浸っていたが、俺はふと、あれから数年もそこに行っていない事を思い出して龍兄に

 

「なあ、龍兄。あそこってもう何年も行ってないはずだよな?そんな所がまだ残ってるのか?」

 

俺の疑問に龍兄は笑いながら

 

「それについては心配ないぞ?叔父さんが俺達だけでなく、自分達も使いたいと思ったらしくてな、あれからずっとあの場所を管理してくれているらしいぞ。」

 

その言葉に俺は驚きながら

 

「叔父さん、わざわざそんな事してくれてたんだな。でも、まだあの当時のままで残されているっていうなら楽しみだよ。」

 

そう言う俺に龍兄も頷いて

 

「ま、とにかく行こうぜ?俺はいつでもいいぞ?」

 

と言う龍兄に俺も

 

「おっし、それじゃ久しぶりに行ってみるか。」

 

そう言って頷くと、龍兄と一緒に部屋を出たのだった。

 

こなたside

 

私達も大分体の疲れも取れて楽になっていたのだけど、私はふと飲み物が欲しくなり、ロビーの自動販売機まで買いに行ってみようと部屋を出た。

 

その時に、たまたま龍也さんと共に部屋を出て行く慶一君の姿を見かけた私は、こっそりとロビーへ向かいつつ、慶一君達の後をつけてみる事にしたのだった。

 

ロビーで2人に気付かれないように様子を伺っていると、慶一君達は叔父さん達に何かを話した後、旅館を出て行くのを見て、私はその事に興味を持ったので、叔父さんに話を聞いてみることにしたのだった。

 

私は叔父さんの近くに行って

 

「あのー、叔父さん。慶一君達どこへ出掛けたのかわかりますか?私、何となく気になったもので。」

 

そう訪ねると、叔父さんはわりにあっけらかんと慶一君達の目的地について話してくれた。

 

「ああ、その事かい?実はね、彼らがこのあたりで山篭りの修行をしていた時に偶然見つけた一般の人も知らない温泉があってね。彼らはそこへ向かったのさ。彼らが温泉を見つけた後は、私も彼らにその温泉の事を教わって入ってみたのだけど、その温泉をかなり気に入ってね。それ以降は私があの場所を管理しているのさ。興味があるなら後で行ってみるかい?」

 

そう話す叔父さんに私は、一般客も知らない秘湯という言葉にわくわくして

 

「是非おねがいします!ところでそこって男女って分かれてますか?」

 

そう訪ねると叔父さんは

 

「いや、大きい温泉でもないもんだし、自然のままの温泉でもあるからね。分かれてはいないんだ。」

 

それを聞いて内心ほくそえみつつ、叔父さんに温泉の場所を教えてもらった私は、この情報をもって部屋へと戻ったのだった。

 

そして、私は慶一君達が先にその秘湯へ向かった事を伏せたまま、かがみ達に水着を持たせて慶一君達の後を追ったのだった。

 

「それにしても、そんな秘湯があるなんて、こなたもたまにはいい情報もって来るじゃない?」

 

と、うきうきしながらその場所へ向かいつつ、かがみが私にそう言うと、私はその言葉に少し拗ねながら

 

「たまには、は余計だよー。でも、私達だけが知る特別になるみたいだからね。私も少し楽しみだったりするよ。」

 

そんな私の言葉につかさも笑いながら

 

「なんかいいな~。わたし達だけの秘密の場所なんてさ~。」

 

そう言うと、みゆきさんもにこにことしながら頷いて

 

「そうですね。これもまたいい旅の思い出ですね。私達だけの。」

 

みさきちとあやのさんもそれに頷きながら

 

「そうね。なんだかそれだけで特別って感じがしてきたわ。」

「なあなあ。後で慶一達にも教えてやろうゼ?折角私らで来た旅行だし、慶一達にも私らと秘密を共有したいもんな。」

 

そして、そんな言葉を聞きながら八坂さんと永森さんも

 

「まったく、先輩もこんな時にどこかに出かけちゃうなんて、ほんと間が悪いですよね。」

「そうね。思い出を作るいいチャンスってこういう時だと思うわ。」

 

そして、ゆーちゃん達もまた

 

「ならこなたおねーちゃん。今回は私達が先に来ちゃってるけど帰る前にもう一回皆で行ってみればいいんじゃないかなあ?」

「・・・そうだね・・・ゆたかの言う通りかも・・・。」

「まだ1日あるんですから大丈夫っスよ。」

「そのトキにはまたワタシがケイイチとタツヤのセナカをナガしてあげるデス!」

 

そんなパティにまつりさんといのりさんは

 

「おーっと、パトリシアさん?龍也さんの方は譲れないよ?」

「そうそう。龍也さんの背中は私が流してあげるんだから。」

 

と言うのを皮切りに、2人の言い合いが始まったのを見て私は苦笑しつつ

 

(あははー・・・すでに2人が向こうにいるって知ったらきっと驚くよねー・・・でも、それが今日であるか明日であるかの違いだけだもんね。後でかがみに殴られそうだけどとりあえずこのままいっちゃえ)

 

と、心の中で思いつつ、私達は秘湯を目指して進んで行く。

 

そして、ついにその場所へと辿り着いたのだった。

 

そこは、まさに天然の露天風呂という感じで、お風呂の石組みも自然が作り出した不思議な感じを秘めていた。

 

そして私は、湯気の奥の方に2人の姿をぼんやりと確認したのだった。

 

けど、2人は服を別の場所で脱いでいたのか、近くには2人の服は見当たらなかった。

 

とりあえず私達は荷物の置けそうな場所に荷物を下ろし、各自水着に着替えつつ湯船の方へと向かう。

 

何も知らないかがみ達を伴い、湯船の奥に進んだ時、私達の姿を見つけて驚愕する2人の姿を見たのだった。

 

慶一side

 

龍兄と2人、修行時代の事を思い返し、俺は龍兄と話しながらのんびりと温泉に浸かっていた。

 

だが、しばらくすると、俺達のいる場所より奥側から誰かが近づいて来る気配を感じた。

 

龍兄もそれを感じていたようで、ふいにそちらへと視線を向けると、そこには水着を着たこなた達の姿があったのだった。

 

俺はこなた達がここに居る理由がわからず、驚きながら

 

「こ、こなた?お前どうしてここに居るんだ?」

 

そう訪ねると、こなたはぺろりと舌を出しながら

 

「あはは。実はさっき龍也さんと一緒に旅館を出て行く慶一君達の姿を見かけてさ、それで叔父さんに行き先を聞いてやって来たんだよねー。ねえ、おどろいたがっ!」

 

こなたの最後の台詞が言われる瞬間に、背後からこなたが殴られたようだったのでよく見てみると、そこには・・・・・・般若の形相のかがみと共に皆が揃っていた・・・。

 

「こ~な~た~?あんたこの事知ってたわね!?何で黙ってたのよ!あんたはっ!!」

 

凄い剣幕で言うかがみにこなたは、殴られた頭をさすりながら

 

「い、いやあ、こういうサプライズもありかなあ、って思ってさー。」

 

そんなこなたの台詞にさらにかがみが激昂して

 

「だからって、私達が水着持ってきてなかったらどうするつもりだったのよ!!私達に慶一くん達の前で裸さらさせるつもりだったの!?あんたはっ!!」

 

その言葉にこなたは怯えつつ

 

「だ、大丈夫だよー。元々ここって水着着用で入る温泉らしいからさー。だから初めからちゃんと水着持たせたじゃん。」

 

そんなこなたにかがみは

 

「それはわかったわ。後もう1つ。あんたはここが混浴だって事、言ってなかったわよね?これはどういう事なのかしら?」

 

こなたを睨みつけながら言うとこなたは

 

「い、いやー。皆で思い出作りたいって思ったからさー。それに、ここを知ってるのは私達だけなんだし、別にいいじゃん。」

 

そのこなたの言葉に呆れて大きなため息をつくかがみ。

 

俺はそんな2人のやり取りを見ながら

 

「事情はおおむね理解したよ・・・それにしても・・・叔父さんも叔父さんだな、あっさり教えたみたいだしなあ・・・。」

 

そう言うと、龍兄もなんだか疲れたような表情で

 

「・・・はあ・・・まあ、来てしまった以上は仕方ないだろ・・・とりあえずみんな、水着同士だし、ゆっくりしないか?このまま立ってても仕方ないだろうしな。」

 

そう言うと、かがみとこなたの2人のやり取りを呆然と見守っていた皆も我に帰って

 

「あ、そ、そうだね。とりあえずお湯に浸かろうよ。」

「そ、そうですね。それじゃ失礼します。」

「あはは・・・泉ちゃんにしてやられたってところなのかしらね・・・。」

「あいつって妙な所で行動力あるよなあ・・・。」

「私も少しは見習うべきなのかな?」

「そういう部分は見習うべきではないと思うけど?」

「時々こなたおねえちゃんには付いていけなくなる時あるなあ・・・。」

「・・・突発的に、と言う事はあるね・・・。」

「それが泉先輩の凄さでもありますけど。」

「フフフ。コナタにはマケていられませんネ。」

「た、龍也さん。隣失礼しますねー。」

「あ、ちょっと!まつり!ずるいわよ!?」

 

そう言いながらもみんな次々湯船に浸かるのだった。

 

「私たちも浸かろうよ、かがみ。」

 

そんな風に言うこなたに、かがみもやれやれといった感じで

 

「・・・はあ・・・仕方ないわね。ここまで来ちゃったんだから浸かっていくしかないわね・・・あ・・・。」

 

その時まだ俺は湯船の中で立っていたのだが、そんなかがみが、俺のわき腹の所に付いている手の平の形の痣に気付いて

 

「ねえ、慶一くん。その痣、どうしたの?」

 

俺はかがみが指摘した所に目をやると、そこには村木との戦いでつけられた掌打の跡がくっきりと残っていた。

 

かがみの指摘に俺は言いにくそうに

 

「んー・・・実はな・・・。」

 

そこまで言いかけたときゆたかが声をあげた。

 

「先輩、それってあの時のですよね?」

 

そう言ってゆたかは立ち上がって、俺の側まで来て痣にそっと触れながら

 

「痛いですか?先輩・・・。」

 

心配そうに見つめるゆたかの頭を軽くぽんと叩いて

 

「大丈夫さ。この程度は何てことはない。ええとな。これはゆたか達が絡まれていた時があってな。その時にその中の1人と戦りあってできたやつさ。綺麗に一発もらっちまったからな。」

 

ゆたかに心配ないと言ってからみんなに説明する。

 

そんな俺の傷を心配そうに見つめるみんなに

 

「大丈夫だって。こんなの龍兄と修行したらあたりまえのようにつけられるからな。それに、怪我は負ったけどゆたか達を守れたからな。これはその勲章だ。」

 

そんな風に言う俺にこなたとみゆきは

 

「そうだったんだ・・・慶一君。ゆーちゃんを助けてくれてありがとうね?」

「慶一さん。みなみちゃんを助けてくれてありがとうございます。」

 

そして、こうもまた俺に

 

「先輩。ひよりんとパティを助けてくれてありがとう。2人とも期待の部員候補だからね。何事もなくてよかったよ。」

 

そう言うと、ひよりとパティも俺に

 

「先輩、改めて感謝っス。そしてその為に怪我させてしまってすいません。」

「ケイイチ。あまりムチャはいけませんデスヨ?」

 

そう言われたので俺は苦笑しつつも頷いたのだった。

 

そして、やまとは俺を見つつ呆れた表情を向けて

 

「まったく・・・先輩は私達に心配かけさせないって事出来ないのかしらね?いつもはらはらさせられるわよ・・・。」

 

そう呟いていたのだった。

 

そんなやまとの言葉に苦笑する俺だったが、気を取り直すと皆に

 

「みんな、ここから見える景色は雄大だぞ?みんなもよーく目に焼き付けておいてくれ。」

 

そう言って湯船の端を指差すと、皆もそちらを見たのだが、その景色の壮観さに皆は言葉をなくしているようだった。

 

その様子を見つつ、龍兄は小声で

 

「まあ、運良く今回は守れたみたいだが、結局はお前の未熟さが招いた結果でもあるって事をよく肝に銘じておけよ?」

 

そう俺に突っ込みを入れるのが聞こえた俺は、その言葉に凹みつつ苦笑を浮かべていたのだった。

 

そして、みんなで風呂に浸かりながら、皆から俺達の鍛錬の様子や昔の俺達の事をみんなに質問されたりしたのだが、そこで調子に乗った龍兄に俺の恥ずかしい思い出までも暴露される事となり、俺ははずかしさで顔を赤くして凹んでいた。

 

そして、ある程度ここでの時間を過ごした俺達は、帰りは皆で一緒に温泉地を後にして、旅館へと戻ったのだった。

 

こうして、今日一日で体のダメージをある程度拭い去る事ができた俺達は、明日の最終日にみんなで色々回ろうと言う事を話し合い、それぞれの部屋へと戻った。

 

そして、午後9時頃、俺は例の場所へと夜風に当たりに行こうと部屋を出る。

 

俺が部屋から出る時に、例の4人に出会った俺は、4人にどこへ行くのか訪ねられて例の場所へ行くと言うと、4人とも俺に付いていくと言ったので、俺は4人を伴いあの場所へ向かった。

 

そして、鍵を開けて外へ出ると、外はすっかり暗くなっていて気温も大分下がって寒くなっていたが、その分空気も澄んで、星もよく見えるもう1つのいい景色を見られる事となった。

 

皆と共に星を見上げていたが、ここで俺達は軽いやり取りをした。

 

「うわー・・・凄い星空だねー・・・。都会や地元と違ってよく見えるよ。」

「そうね。降るような星空ってこういうのを言うのかしらね?」

「すごく綺麗~。ここがけいちゃんの言ってたとっておきの場所なんだね?」

「昼間の景色も素晴らしいものですが、夜の景色もまた素晴らしいですね。」

「この星空もこの季節ならではだな。けど、大分冷え込んできてるから程ほどにしつつ、だぞ?」

 

俺が皆の体の事を考えつつそう言うと、こなた達は改まって俺に

 

「わかってるよー。でも、慶一君。本当にありがとう。今こうしてこの星空を見てられるのも君のおかげだね。」

「そうね。もし慶一くんの助けが来なかったらと思うとぞっとするわ・・・。」

「大感謝だよ?けいちゃん。」

「とても嬉しかったです。私はあの時、半ば絶望しかけていましたから・・・。」

 

こなた以外の3人にも真実を伝えなければならないと思い、俺は改めてあの時の事を、こなた以外の皆に話し始めた。

 

「その事なんだけどな・・・。お前らを見つけられたのは俺だけの力じゃなかったんだ。」

 

そう言うと、かがみとつかさとみゆきは不思議そうな顔をしつつ、少し落ち込みつつ

 

「え?それって、捜索に協力してくれた人達も、って事なの?」

「確かに他の人にも大分迷惑かけちゃったね・・・。」

「皆さんも私達も探す為に必死になってくれたのですしね・・・。」

 

そう最後に言ったみゆきの言葉にこなたが

 

「ううん・・・それもあるけどさ、本当はね?慶一君を私達の元に導いてくれた人がいたんだよ。」

 

いつものこなたとはちょっと違い、なんだか嬉しそうにそう皆に告げると、皆はその事が気になったようで

 

「えっ?捜索隊の皆さん以外にそういう人が居たの?私、その事知らなかった。」

「旅館に戻った時はお世話になった人すべてにわたし達ちゃんとご挨拶しにいったよね?いい忘れた人いなかったはずだよね?」

「・・・確かにそのはずでしたが・・・。泉さん、その方とは一体、どなただったのですか?もし、お礼をいい忘れた方がいらしたのであれば、私はその方にもご挨拶しなくてはいけませんね。」

 

そんな風に言う3人にこなたは誇らしげに

 

「あはは。その人はね、私のお母さんだったんだよ。」

 

そう言うこなたに驚く3人だったが、3人はこなたにおそるおそる

 

「ほ、本当なの?でも、こなたのお母さんは・・・その・・・もう亡くなっているはずよね?」

「うん。わたしもこなちゃんからそう聞いてるよ?本当なの?こなちゃん。」

「それが事実だとしたら・・・すごい事ですね・・・。」

 

そう言う3人にこなたに代わって俺が

 

「ああ、みんなの言う通りこなたのお母さんはもう亡くなってる。けど、俺があの時斜面から滑落して意識を失った時、確かにこなたのお母さんが俺の夢の中に現れた。そして、俺の心を皆のところへと飛ばしてくれ、俺はみんなの居場所を掴み、皆を助ける事ができたんだ。」

 

そう補足説明をすると、3人は

 

「・・・そう・・・だったんだ・・・。」

「わたし達、こなちゃんのお母さんにも助けてもらったんだね・・・。」

「魂だけになっても・・・泉さんを救いたかったのですね・・・。」

 

そう言いながらしんみりとしていたが、俺はそんな3人に

 

「そういう事だな。それで俺から提案なんだけどさ、旅行が終わったらみんなでこなたのお母さんにお礼を言いにお墓参りに行かないか?俺は、是非ともそうしたい、そう思ってるからな。」

 

俺の言葉に3人は力強く頷いて

 

「それを聞いたとあっては、きちんとお礼に行かなくっちゃ罰が当たるわね。私は行くわ。今ここでこうしていられるのはこなたのお母さんから命をもらったからだしね。」

「わたしも行く!こなちゃんのお母さんに貰った命に感謝する為に!」

「私も行きます。救っていただいたこの命をありがたく思いますから。そして、未来を下さった泉さんのお母さんに感謝したいですからね。」

 

その3人の言葉にこなたも嬉しそうに

 

「みんなありがとう。お母さんもきっと喜んでくれるよ。私も改めてお母さんに感謝するためにお墓へ行くよ。」

 

そう言うこなたに俺達は笑顔で頷くのだった。

 

そして、俺達はこなたのお母さんへの感謝を胸に、旅行が済んでからご挨拶に行こうと心に決めてこの場所を後にした。

 

残り1日、俺達が共に過ごす2年生最後の旅行の思い出。

 

最後まで悔いを残さず楽しもうと思う俺だった。

 


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