らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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思い出作りの旋律~箱根温泉旅行3日目前編~

昨日のゆたか達の報告を受けて、そして、こなた達が山で遭難をした事を知った俺達は、ゆたか達にちょっかいをかけようとし、俺と死闘を演じた村木の協力もあり、こなた達の居場所を探して温泉街で聞き込みを行う。

 

そして、こなた達が登山道入り口付近で見かけられたという目撃情報を得て、俺達は早速山狩りを行い、こなた達を探した。

 

その際に俺は、足を滑らせて斜面を滑落し、一時意識を失う。

 

そして、その最中で俺は亡くなったはずのこなたの母親に会い、こなたの居場所を教えられる。

 

その導きにに従ってこなた達を探し出し、何とか無事に保護をして4人を旅館まで連れて帰り、一連の騒ぎは収束を見た。

 

流石に長時間山の中を彷徨っていたこなた達は、旅館に辿り着き、夕飯を食べると一気に疲れが出たようで、温泉に入った後はそのまま眠ってしまったらしい。

 

そして、俺もまた山の中を走り回った疲れから、こなた達と同じようにすぐに体を休める事となった。

 

そして次の日の朝・・・・・・

 

「・・・ん・・・んん・・・ふあ~~あ・・・って痛てててて!!久々に走り回ったから筋肉痛だ・・・あたた・・・。」

 

結局俺は、たとえ疲れていても普段の生活習慣はそのまま出ていたようで、いつもの時間に目を覚ましたのだが、昨日の晩に恐れていた通り、斜面からの滑落と無駄に走り回った影響で体中が筋肉痛と打撲でひどい事になっていた。

 

それでも、顔を洗っておかなければいけないと思い、まだ眠っている龍兄を起こさないように俺はそっと洗面所へと向かったのだった。

 

ちなみに、昨日散々かがみに怒られていたまつりさんといのりさんは、今日はこの部屋に来ていないようだった。

 

「・・・ふー・・・やれやれ、まいったな・・・。」

 

痛む体を引きずりながら俺は昨日使った洗面所へと辿り着く。

 

すると、俺の背後から俺に声をかけてくる人物がいた。

 

「おはようございます、慶一さん。昨日あれだけお疲れになったというのに、今朝もお早いのですね。」

 

その声に振り向いてみると、俺を見て少しだけ顔を赤らめつつ、にこにこと笑うみゆきがいた。

 

「ははは。なんというか、俺もこの生活習慣が骨の髄まで染み付いているみたいだよ。」

 

痛みを伴う体ではあったが、無理に笑顔を作ってそう言う俺にみゆきは

 

「ふふ。実は私もなんです。いつもの調子で目が覚めてしまいました。でも、今日はまだ、かがみさんは目を覚ましてはいませんね。やはり昨日の事が堪えているようですね。」

 

苦笑しながらそう言うのだった。

 

俺は顔を洗いながら

 

「まあ、無理もないだろうな。お前らがいなくなった時間から考えたら、かなりの時間歩いていたんだろうしさ。」

 

そう言うと、みゆきもくすりと笑いながら

 

「そうですね。泉さんの提案に乗って山へ入ってしまいましたが、それから先あれほどに歩く事になるなんて思いもしませんでした。実は私、あの後筋肉痛になってしまったんですよね。」

 

そう言いつつ少し痛みが来たのか、顔を軽くしかめるみゆきを見て俺は

 

「まあ、仕方ないさ。普段あまり使わない筋肉を酷使してるはずだからな。だから今日は温泉でも巡ってゆっくりしよう。」

 

俺の言葉にみゆきもにこりと笑って

 

「そうですね。それがいいかもしれません。あ・・・慶一さん・・・色々な所に傷出来ていますね・・・昨日斜面を滑落した、とおっしゃっていましたよね?これはひょっとしてその時の・・・。」

 

俺の腕や顔などについたバンソーコー等を見ながらみゆきが少し落ち込みながら言うと、俺は

 

「まあな。けど、お前らを救えたのならこの程度の傷、なんて事ないさ。だから、お前は気にするな、いいな?みゆき。」

 

そう言い、みゆきが俺のこの傷の事を気にしそうだったので先に釘を刺しておくと、みゆきは少し驚いたような顔になりつつも

 

「は、はい・・・あの、慶一さん。顔のバンソーコーが1つ取れかかっていますよ?」

 

その言葉に俺は、顔をまさぐるように手を伸ばす。

 

それを見たみゆきは俺に

 

「慶一さん、私が直してあげますからそのままで動かずにいてください。」

 

そう言って来たので俺は頷いて

 

「わかった、じゃあ、頼むよ。みゆき。」

 

そう言うと、みゆきは頷きつつ俺の顔に手を添えながら顔を近づけてきた。

 

「そのままでいてください、すぐ終わりますから。」

 

そう言いながら俺は、みゆきにされるがままになっていたのだが、ふいにみゆきが俺の唇に自分の唇を重ねてきたのだった。

 

驚く俺は、そのまま凍りついたように動けなくなった。

 

そうしておよそ30秒程度だろうか?その状態でいたみゆきはおもむろに俺から唇を離すと、顔を真っ赤にしながら

 

「ご、ごめんなさい。慶一さん。私、昨日の事が嬉しくて・・・そして、慶一さんに何かお礼をしたいと思ったのですが、色々悩んだ結果、その・・・こうしたい、って思いましたので・・・その・・・こ、これが私の慶一さんへの精一杯の感謝の気持です。」

 

そこまで言うと、みゆきはさらに恥ずかしくなったのか、踵を返してそのまま走り去って行くのを俺はただ呆然と混乱しまくった頭で見送っていたのだった。

 

しばらく思考回路がショートしていた俺だったが、ようやく思考が元に戻って来て先程の事を思い出した時、俺は顔を真っ赤にして慌てていたが、頭を冷やそうと思い、冷たい水で顔を冷やして俺はとっておきの場所へ足を向けた。

 

屋上のあの場所で頭を冷やす為、俺はドアを開けて絶景ポイントへ足を運ぶ。

 

そこで、冷たい風を受けながら火照った顔と頭を冷やしていた。

 

しばらくそうしていると、ドアが開く音が聞こえ、誰かがこの屋上へ来たらしい事を悟った俺はそちらの方へと目を向けると、そこにはかがみが立っていた。

 

かがみは俺を見つけると、小走りでこちらへ寄ってきて

 

「おはよう、慶一くん。今日もいい朝よね。」

 

そう言って笑顔で俺に挨拶をしてきたので俺もかがみに笑顔を返しつつ

 

「ああ、そうだな。昨日はとてもあんな事があったとは思えないような朝だ。」

 

そう言うと、かがみは少しばつの悪そうな顔で

 

「ご、ごめん。慶一くん。昨日は本当に心配かけちゃったわよね・・・。」

 

そう言うと、俺はかがみの頭をなでながら

 

「いいさ。お前らが無事だったんだからそれでさ。それより、昨日は筋肉痛等にはならなかったか?あれだけ山道歩きまわったんだしさ。」

 

そう言うと、かがみは苦笑しながら

 

「慶一くんの言う通りね。私も体中痛いわ。特に足が酷いけどね・・・。」

 

そんなかがみに俺も頷きながら

 

「まあ、そうだろうな。だから、今日は温泉巡って疲れた体を癒すとしよう。叔父のはからいでもう1日泊まれる事になったからな。せめて最後の1日は湯治では終わらせたくはないだろ?」

 

そう言うと、かがみも頷いて

 

「そうね。そんなんじゃ確かにつまらないわ。まだ春休みに余裕あるからこそ出来た応用なのかしらね?あれ?慶一くん、よくみたらあんたの体中、細かい傷だらけね・・・これってやっぱり昨日言ってた斜面を滑落した時の奴なの?」

 

そう言いながら、俺の体中の傷痕とバンソーコーに気付いたようで、俺に心配そうに声をかけてくる。

 

俺は、そんなかがみにこれ以上は心配させまいとして、かがみを安心させるように笑顔で

 

「まあな。けど、大した事ないしかすり傷だからお前が気にする事はないんだぞ?これはお前らを救えた俺の勲章みたいなもんだからな。」

 

そんな風に言う俺を見て、かがみは困ったように微笑みながら

 

「・・・まったく・・・ほんと、優しすぎるわよ、あんたは・・・。」

 

そう言った後、かがみはおもむろに俺の足元を指差して

 

「ねえ、慶一くん。あんたのスリッパに傷ついてるんじゃない?」

 

そう言うかがみの指摘に俺は、しゃがみこんでかがみの言う傷を確認しようとする。

 

そして、腰を落とした瞬間、かがみが俺の側に素早く寄って来たかと思うと、俺の頬を両手ではさんで俺の唇にキスをした。

 

俺はその瞬間、またも自分の頭がオーバーヒートするのを感じて動けなくなった。

 

かがみもまた、みゆき同様の時間程度にキスをすると唇をゆっくり離して

 

「ありがとう、慶一くん。昨日、あんたが来てくれるまでの間、私はずっと不安だった。このまま帰れなかったらどうしよう、家族に、そして、あんたに会えなくなったらどうしよう、って考えてた。でも、あんたはそんな傷だらけになっても私達を助けに来てくれた。嬉しかったわ、本当に・・・だから、これは・・・あんたへの感謝と、そして・・・あんたともう一度生きて会えた事を喜んだ私の・・・その・・・気持・・・だから・・・。」

 

顔を真っ赤にしてそう言いながらかがみは、自分の言いたいことを言い、踵を返すとそのまま屋上を出て行くのだった。

 

俺は呆然とそれを見送って、そして、再び頭を冷やす為にしばらくの間そこにいつづけたのだった。

 

とりあえず自分の頭と気持を落ち着けはしたものの、それでもさっきの感触が妙に生々しくて、俺はかがみとみゆきの事を考えつつ、ロビーに足を向けていた。

 

そうして、気もそぞろのままに廊下を歩いていると、ドテッという誰かが転んだような音と共に

 

「ふええ・・・痛いよう・・・足が筋肉痛で動かないよう・・・」

 

と言う聞きなれた声が聞こえてきたので、俺はそっちの方へ様子を見に行ってみると、そこには案の定つかさが転んで痛む筋肉痛の足をさすっていた所だった。

 

俺は軽いため息を1つつくと、つかさの側に寄って

 

「大丈夫か?つかさ。昨日あれだけ歩き回ったんだからあまり無理はするなよ?」

 

そう言うと、つかさは俺の声に気付いて顔を上げながら

 

「あ、けいちゃん、おはよ~。えへへ・・・そうだね・・・歩けるかな?って思って試しに歩いてみたけど、思ってた以上に酷いみたいだよ・・・。」

 

そんなつかさに俺は

 

「どれ、足を見せてみろ。少しマッサージしてやる。」

 

そう言いながら俺は、つかさの足の筋肉をマッサージしてほぐしたり、もんだりして、足の痛みを和らげさせた。

 

「ありがとう、けいちゃん。大分楽になったよ~。あ・・・けいちゃんその怪我・・・。」

 

ここに来てつかさは、俺の顔や腕や足などに出来ている傷に気付いたようだった。

 

「ん。まあ、お前らを助けに行ったときにドジってな。けど、かすり傷だから心配ないぞ?」

 

俺はつかさの足のマッサージを続けながらそう言うと、つかさは泣きそうな顔になって

 

「ごめんね?けいちゃん。わたし達が心配かけるような事したから・・・。」

 

そう言うつかさの頭に俺はぽんと掌を乗せて

 

「反省してるならそれでいいさ。それに、俺はお前らを怒っちゃいない。むしろ、無事だった事を喜んでるからな。だから、お前は気にする事はない、それだけは言っておくからな?その後で変な心配したら、つかさにデコピンの刑かますからな?だから、もう変な心配するんじゃないぞ?」

 

そう言って聞かせると、デコピンという言葉に少し緊張したように見えたつかさだったが、それでもにっこりと笑って俺の言う事に頷いてくれたのだった。

 

そして、つかさはおもむろに俺の後方を指差して

 

「あ、けいちゃん。あれ、なんだろう~?」

 

そう言うつかさの言葉に俺は、思わずつかさの指差した方に顔を向けたのだが、すぐにつかさに肩を叩かれて俺はつかさの方へ顔を向けたのだが、その瞬間つかさが俺の唇に自分の唇を重ねて来た。

 

そして、みゆきやかがみよりも短い時間ではあったが、俺はつかさとキスをしたのだった。

 

俺は突然の出来事に再び思考がショートするのを感じたが、その俺の状況等おかまいなしにつかさは顔を赤くしながら俺から唇をゆっくりと離すと、俺に

 

「ありがとう、けいちゃん。わたしあの時すっごく怖かった。もうわたし、2度とみんなの前に、けいちゃんの前に帰れないんじゃないか、って。それを思った時、すごく悲しくなったの。でも、けいちゃんはわたし達を助けに来てくれた。すごく嬉しかったよ?今わたしがここにこうして居れるのも、けいちゃんのおかげ。ささやかだけど、これが・・・わたしの気持だよ?ちょっと照れちゃうけどね。」

 

つかさはそう言いながらもゆっくりと立ちあがり、俺に

 

「あはは・・・。勢いでやっちゃったけど、結構恥ずかしいね・・・。けいちゃん。後で一緒に、みんなで一緒に温泉めぐりいこうね?おねえちゃんからもその事聞いてるから、わたし楽しみにしてるよ?そ、それじゃけいちゃん。また後でね~。」

 

俺にそれを伝えると、自分の部屋へと走って戻って行った。

 

俺はつかさを見送った後、自分の頭を冷やす為にその場で床に頭を数度打ち付けた。

 

そして、頬をパンパンと叩いて自分を落ち着かせている時に、丁度その場面を見ていたらしいこうとやまとに声をかけられた。

 

「おはようございます、先輩。昨日はお疲れ様でしたね。はいいですが、何やってたんですか?いきなり床に頭打ち付けたりして?」

「はたから見たらかなり危ない人だったわよ?先輩も自分の行動にはちゃんと責任持ってくれないと困るわ。そうじゃなきゃ私達が変な目で見られる事になっちゃうから。」

 

そんな2人に俺は、先程のつかさとの事は見られていないようだと思い、ほっとしつつも

 

「わ、わかってるよ。ちょっと気分を落ち着かせたいと思ってついな。それより、ありがとうな。2人とも。突然の事とはいえ、昨日はお前らにも走り回ってもらったからな。」

 

俺の言葉に2人とも笑顔で

 

「当然ですよ。泉先輩達だって私達の仲間なんですから。その仲間のピンチとあっては私達だって動かないわけにはいかないですよ。」

「そうね。それに、私達は楽しい思い出を作りにきたんだから、こういう事でそれが駄目になるなんて納得できなかったもの。」

 

俺はそんな2人の言葉に頷いて

 

「そうだな。下手したら楽しい思い出が悲しい思い出になるとこだったよな。ともあれ、4人とも無事で良かったよ。」

 

そんな俺の言葉に、俺の体や顔を見た2人は俺に

 

「それにしても、見事に傷だらけですね、先輩。昨日は武術家とも戦ったって聞いてましたしね。それに、その細かい傷は捜索途中で斜面を滑落した時に出来た、っていってましたよね?」

「小早川さん達から話を聞いた時は気が気じゃなかったわ。それに山での事も、私達はかなり心配した事を忘れないで欲しいわね。」

 

俺はその言葉に申し訳なさそうな顔になって

 

「そうだな、すまん、2人とも。要らない心配またかけさせちゃったよな。」

 

そんな風に言う俺に2人は

 

「もういいですよ。こうして今先輩が無事に私達の前にいるからそれで。」

「そうね。それだけで安心だし、もういいわ。そろそろ朝御飯よね?行きましょ?先輩。」

 

一応2人とも俺を許してくれたようなので、俺はその提案に頷くと、その場から立ち上がって2人を伴って朝食へと向かうのだった。

 

食事できる大広間へと着くと、そこにはすでに先に来て朝食を食べ始めているゆたか達やみさお、あやの、かがみ、みゆき、つかさの8人がいたが、俺達に気付くと

 

「あ、先輩ー。先に食べてますよー?先輩達も早く席に着いてくださいー。」

 

と、ゆたかが手を振りながら言って来たので俺達もそれに頷きつつ、それぞれの席について朝食を始めた。

 

俺はその中にこなたと龍兄、まつりさん、いのりさんの姿だけが見えない事に気付いて

 

「あれ?こなたはともかく、龍兄やまつりさん、いのりさんはどうしたんだ?」

 

とゆたかに訪ねると、ゆたかは

 

「こなたおねえちゃんはまだ寝ているらしいです。それと、龍也さんはもう食事を終えてまつりさんいのりさんと一緒に適当にくつろぎに行ったみたいですよ?」

 

その言葉にかがみは呆れたような声で

 

「・・・まったく、同じようにつかさも筋肉痛になりながらもその痛みの所為で起きたっていうのに、あいつはそんな痛みはものともしないのかしらね?私やみゆきが起きた理由もそこにあるっていうのに・・・。」

 

と足をさすりながらかがみが言うと、つかさとみゆきも同じように足をさすりながら

 

「あはは・・・この痛みのせいでわたしもよく眠れなかったよ・・・。」

「日頃の運動不足もたたっていますね・・・仕方がない事ではありますが・・・。」

 

そう言っていたのだった。

 

そんな3人とまだまともに顔を合わせられず、そして、3人もまた、そういう感じらしくて俺達はお互いに意識をそらしつつ、食事を済ませた。

 

済ませたのだが・・・・・・

 

「こなたの奴まだ起きて来ないのか?」

 

皆が食べ終わる頃になっても姿を見せないこなたに俺も少し心配にはなったが、そのうち起きて来るだろうと思い、俺はロビーで少しくつろぐ事にした。

 

少し経って、俺の側にみさおとあやのがやってきた。

 

「おはよう、慶ちゃん。昨日はお疲れ様。柊ちゃん達を見つけてくれてありがとう。」

「おはよう慶一。私からも礼を言わせてくれ。サンキューな、慶一。」

 

そんな2人に俺は照れながら

 

「はは。とにかく必死だったからな、昨日は。それより、2人とも4人を探す為に動き回ってくれたんだろ?お前らこそお疲れ様だよ。おかげで手早く情報も集まったから対処が早く出来たんだしな。」

 

そう言うと、2人とも笑って

 

「柊ちゃん達は私達の大切なお友達だもの。当然よ?」

「そうだゼー?柊はなんていっても私の嫁なんだからな。助けるのは当然だゼ!」

 

そう言う2人だったが、ふいに後ろから現れたかがみがみさおに一撃いれて

 

「誰があんたの嫁よ!まったく、こんなとこでそんな恥ずかしい事言ってんじゃないわよ!!」

 

そうツッコミを入れると、みさおは頭を押さえながら涙目で

 

「いてえよー、柊ー・・・。そんな本気で殴る事ないじゃん・・・。」

 

そんなみさおにかがみはキッと睨みつけると

 

「この位いい薬よ!まったくいつまでたっても懲りないんだから!」

 

その言葉にますます凹むみさおだったが、俺とあやのはそんな2人を見て苦笑を浮かべていたが、あやのは俺の体中の傷に気がついて

 

「慶ちゃん、その傷、昨日のでしょ?大丈夫?痛くない?」

 

そんな気遣いをしてくれるあやのに俺は頷きながら

 

「大丈夫だ。見た目はこんなんだが、ただのかすり傷だからな。」

 

そして、何時の間にか復活したみさおが後ろから俺の背中を”ドン”と叩いて

 

「そうそう、この程度は慶一にとっては何てことないってヴァ。な?慶一。」

 

そんな風に言うみさおの言葉とは裏腹に、その衝撃が体中の傷に響いた俺は苦悶の表情を浮かべながら

 

「・・・ぐ・・・い・・・痛えよ・・・みさお・・・。」

 

とぎれとぎれにそう言いながらみさおに文句を言うと、俺の様子を心配したかがみとあやのが

 

「だ、大丈夫?慶一くん。ひょっとしてあんた・・・やせ我慢してたんじゃ・・・。」

「痛い?慶ちゃん、痛い?大丈夫?」

 

そんな2人と共に俺の突然の様子の変化に焦ったみさおも

 

「わ、わりい、慶一。大丈夫か?その様子、結構痛そうだぞ?」

 

そうやって心配そうに見つめる3人に俺はなおも強がって

 

「だ、大丈夫だ。この位・・・龍兄との本気組み手でぼろぼろにされた時に比べたら大した事ないって・・・。」

 

その俺の言葉に呆然とした表情のみさおとあやの。

 

そして、かがみはそんな俺の言葉に呆れたように

 

「ほんと、あんたの所はどんだけよ・・・龍也さんのしごきってそんなにきついの?」

 

その言葉に俺はただ黙って重々しく頷くと、そんな俺を見て苦笑を浮かべる3人だった。

 

そして、そんな最中でかがみは、俺に伝えようとしている事があった事に気付いたらしく

 

「あ、そうだ。ねえ、慶一くん。これから今日は温泉巡りするのよね?今からだと結構回れそうだけどさ、いい加減こなた起こさないとその時間もなくなりそうなんだけどさ、私達がどんなにやってもこなた起きてくれないのよ。慶一くん、こなたを起こすの得意よね?だから、部屋行って起こしてきてくれないかな?」

 

両手を合わせて拝むようにして俺に頼み込んでくるかがみに俺は呆れつつ

 

「・・・はあ・・・ったくしょうがないやつだな、こなたも。分かった、はいいんだが、俺の目覚ましはこれだぞ?それでいいのか?」

 

そう言ってデコピンの構えを見せると、かがみは

 

「構わないわ。起きないこなたが悪いんだから。それに早く起こさないとこなたの朝食もなくなっちゃうわよ。」

 

そう言って来たので、俺は軽いため息を1つついた後頷いて

 

「分かった。それじゃ行ってみるよ。こなた起こしてこなたが飯食ってる間に行く準備済ませよう。こなたを起こしたら呼びに行くからロビーあたりにでもいてくれ。」

 

俺がそう伝えると、かがみ達も頷いて

 

「わかったわ。それじゃ、お願いね?」

「私たちもここにいるから、事が済んだら声かけに来てね?」

「慶一ー、ちびっ子の事は任せた!」

 

そう言って俺を送り出してくれたのだった。

 

そして、俺はかがみに部屋の鍵を借りてこなたの部屋へと向かう。

 

部屋の前に着いた俺は、部屋の呼び鈴を押してみる。

 

だが、案の定無反応だったのを確認した俺は鍵を使って部屋へと入ると、未だに夢の中を彷徨い、幸せそうな寝顔でだらしない格好で寝ているこなたの姿を見つける。

 

俺はとりあえず側に行って、テンプレ通りに起こしにかかってみたが、こなたが起きる様子がなかったのでいつも通り、こなたの額に照準を合わせて一撃を叩き込む。

 

「はうっ!!」

 

という情けない声を上げて飛び起きるこなた。

 

飛び起きて何事かと周りをキョロキョロと見回すこなただったが、額の痛みに気付いたこなたが額を押さえて涙目になりながら「・・・痛い・・・」といってるの聞いた俺は

 

「起きたか?こなた。昨日の事があったとはいえ、少し寝すぎだぞ?お前は。」

 

その俺の声に気付いて俺の方を見るこなた。

 

「・・・うー・・・やっぱり慶一君だったんだね・・・ねえ、どうして慶一君はいつも私にデコピンかますのさ・・・。」

 

そんな風に俺を睨みつけながら言うこなたに俺は、やれやれというジェスチャーをしながら

 

「お前が素直に起きれば痛い思いしなくてすむんだぞ?」

 

俺がそう言うと、こなたはぶちぶちと

 

「・・・だって、仕方ないじゃん・・・昨日あんな事あったんだし、山の中歩き回って疲れちゃってるんだよ・・・。」

 

そのこなたの文句が聞こえた俺はこなたを軽く睨みつけて

 

「こなたー?その原因を作ったのはどこの誰なんだっけなー・・・・?」

 

俺の言葉に「うぐっ!」と軽くうめいて2の句がつげなくなるこなた。

 

「・・・悪かったよ。確かに私のせいだもんね・・・だから、みんなにも探してくれた人達にもちゃんとあやまったよ?心からさ。」

 

そんな風に落ち込みながら言うこなたに俺は、表情を崩して微笑みながらこなたの頭にぽんと手を置いて

 

「分かってるならそれでいいさ。何にしても、無事に帰ってこれてよかったな?こなた。」

 

俺のその言葉にこなたはうんうんと頷きながら

 

「そうだね。本当に何事もなくてよかったよ。これも慶一君のおかげかな?・・・あのさ?慶一君。」

 

俺の顔を覗き込みながらそう言うこなたに俺も頭にハテナマークを飛ばしながら

 

「ん?なんだ、こな・・・」

 

そこまで言いかけた時、俺の唇はこなたの唇で塞がれてしまい、それ以上の言葉を発する事が出来なかった。

 

そして、少しの間そうしていて、こなたは俺の唇からゆっくり自分の唇を離すと

 

「・・・ありがとう、慶一君。自分でしでかしてしまった事だったとはいえ、今回の事は私にとっても怖い事だったよ。ともすれば私は自分の手で自分の友達を不幸な目にあわせる所だった。ううん、それだけじゃないね。私の行動は慶一君以外の人達にも迷惑をかけちゃったよね?でもさ、あの時に慶一君が助けに来てくれた事、嬉しかったんだ。あの時は本当に絶望しかけてたからね。だから、これは私の、君への感謝の気持だよ?とはいえ、事故だったけど、一度はしちゃってるから2度目だって大丈夫だよね?」

 

そう言って顔を真っ赤にしながら照れるこなたを見て俺は、再び思考回路がショートするのを感じていた。

 

「・・・っと、慶一君。大丈夫?ねえ!」

 

そう言いながら俺を揺するこなたの声に、俺の意識はようやく覚醒を果たしたが、その瞬間さっきの事がフラッシュバックされて顔を真っ赤にして押し黙る俺だった。

 

そんな俺を見たこなたも自分のした事を思い出したのか、同じように顔を真っ赤にして押し黙り、まるでお見合いのようになってしまっていた。

 

しばらくして何とかその状態から復活した俺は、こなたに話しておかなければならない事を思い出して、俺はこなたに真剣な表情を向けて向き直り

 

「こなた。実はお前にその事に関して話しておきたい事があるんだ。」

 

俺の真剣な表情を察したこなたは、同じように真剣な表情でコクリと頷くと、俺の次の言葉に耳を傾けたのだった。

 

「あの時お前らが遭難して、俺達がお前らを探して山に入って走っている時にな、どこからか俺を呼ぶ声が聞こえたきがしたんだ。俺はその声の聞こえた場所を探そうとして足元をよく確かめずに一歩踏み出したんだが、丁度その場所が急な斜面になっていてな、俺はそこから滑落し、体を打って一瞬気絶した。」

 

俺の言葉にうんと頷くこなたにさらに話を続けて

 

「その時に何やら夢を見ていたらしいんだが、その夢にな、”泉かなた”さんという人が現れたんだ。」

 

俺のその言葉に驚きの表情を見せるこなたは俺に

 

「え?その名前って・・・私のお母さんだよ?で、でも、私は慶一君に私のお母さんの名前は教えていなかったよね?」

 

その言葉に俺も頷きながら

 

「ああ、その通りだ。だから俺も驚いてな。で、そのかなたさんが俺にお前らがピンチだと言う事、そして、お前らの居場所を俺に教えてくれたんだ。それがあったから俺はお前らを見つける事ができたんだ。だから、本当の功労者はお前のお母さん、って事なんだよ。」

 

俺の言葉を聞き終わったこなたはしばし黙り込んでいたが、そのうちに、その目からは涙がこぼれ始めていた。

 

「・・・うっ・・・ぐすっ・・・ひっく・・・お・・・お母さん・・・私を・・・守ってくれたんだね・・・ありがとう・・・お母さん・・・うぁぁぁ!!」

 

そして、とうとう泣き出してしまったこなたを俺は優しく抱きしめて

 

「・・・よかったな、こなた。かなたさんは・・・お前のお母さんはお前の事ずっと見守ってくれてたもんな。なあ、こなた。今度、かなたさんのお墓参りに行ってやろうな。その時は俺も一緒に行ってお礼を言わせてもらうからな?」

 

俺のその言葉に俺の胸に顔をうずめて泣きながらなんども「うん・・・うん・・・。」と言うこなたの頭を優しくなでてやりながら、こなたが落ちつくまでそうしていたのだった。

 

やがて、泣き止んだこなたは俺に笑顔を向けながら

 

「ありがとう、慶一君。お母さんの事、教えてくれて。私、お母さんの事を誇りに思うよ。」

 

そんな風に言うこなたに俺も笑って頷きながら

 

「そうだな。俺もかなたさんには感謝だ。みんなを救えたのもかなたさんのおかげだしな。」

 

そう言うと、こなたはにっこりと笑って頷いて

 

「そうだね。あっと、そうだ。こうしちゃいられないよ?今日は温泉巡りするんだよね?私も御飯食べてきちゃうから慶一君も準備しておいでよ。それに、その体も癒さないときついでしょ?」

 

俺の体の傷の事に気付いていたらしいこなたが俺にそう言うのを聞いて、俺は驚きながら

 

「気付いてたのか?」

 

俺が短くそう言うと、こなたはチッチッチッと指を振って

 

「君のさっきの話とかがみ達から聞いた話を総合すればその位はわかるよ。滑落した時に作った傷なんでしょ?それに私に抱きつかれてる時も結構痛そうにしてたしね。私も筋肉痛だけど、私は格闘技やってた経験あるからね。多少のケアはできるから君やかがみたちよりはましだしね。」

 

俺は、その言葉を聞いて、さっきまでのこなたがかがみ達の時より足が痛くなさそうにしているのを思い出しながら

 

「なるほどな。蛇の道は蛇って事か。俺もその経験とケアの仕方を生かしたから足はさほどでもないからな。けど、それでもまだまだこの状態じゃきついし、今日は湯治をするとしようか。」

 

こなたも俺の言葉に頷いて

 

「そうだね。とにかく御飯食べてきちゃうから。慶一君、また後で迎えに来てね?」

 

俺はその言葉に頷きを返し、自分の部屋へと一旦戻り、出かける準備をするのだった。

 

今日1日は痛めた体のケアの日になりそうだな、と思いつつ。

 

引き伸ばしたもう1日で、皆との楽しい思い出を作って帰ろうと改めて心に決めて、こなた達の準備が終わるのを待つのだった。

 


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