らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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思い出作りの旋律~箱根温泉旅行2日目後編~

2年生最後の春休み、俺達は、2年生最後の思い出作りの為に春休み中に温泉旅行へと出かける。

 

そして、旅館に着いた次の日の朝、ちょっとした騒ぎが起きた。

 

それは、俺達も知らぬまにこっそりと、俺達の部屋の鍵を叔父から入手したまつりさんといのりさんが俺達の部屋に忍び込み、龍兄の布団にもぐりこんで一緒に寝ていた事だった。

 

同じ部屋に泊まっていたやまとが、朝にその事に気付いて俺に2人の事を聞いて来たので、2人が行方知れずだという事を知る。

 

心配するかがみだったが、俺は居場所を知っていた為に、慌てる事なくかがみにその事を伝えると、2人の説教の為にダッシュでその場からいなくなるかがみを見送ったのだった。

 

その後は、俺の知るとっておきの場所にかがみ達を連れて行き、景色を見せた後、今後の行動予定を話し合う俺達。

 

こなた達は何やら回ってみたい所があるとの事でかがみ、つかさ、みゆきと共に行動する事になり、こう、やまと、みさお、あやのは4人で連れ立って温泉街へと向かった。

 

そして、俺とゆたか、みなみ、ひより、パティの5人は、叔父のお使いも兼ねて温泉街の散策。

 

龍兄とまつりさん、いのりさんはデートとなった。

 

そんな最中に、ゆたか達が地元の人間に危害を加えられそうになるという事態が発生し、俺は自らも傷つきながらも4人を守ったのだった。

 

とりあえず4人を守れた事を安堵している俺だったが、これよりももっと厄介な事が、今後起きる事になる事を、この時点の俺は気付く事もなかった。

 

こうside

 

今日の自由時間に付いて、私達はどのように行動しようかという事を話し合ったのだが、その時にやまとと日下部先輩、峰岸先輩の4人で温泉街を回ってみよう、という話になったので、私達は4人で温泉街へと足を運んでいた。

 

「うーん、意外と活気あるねー。それに、結構色々温泉もあるみたいだね。」

 

街を見回しつつそう言う私にやまとも頷いて

 

「そうね。空気も澄んでて気持良いし、賑わってもいて中々良い所だわ。連れてきてくれた先輩に感謝かしらね。」

 

そんなやまとの言葉に日下部先輩と峰岸先輩も頷きながら

 

「むぐむぐ・・・そうだなー。それに温泉饅頭も結構いけるぞ?」

「そうよね、ってみさちゃん。食べながら話すのはみっともないわよ?」

 

街を歩いた時に、日下部先輩が美味しそうだと言って買った温泉饅頭をほおばりつつ私にそう返す日下部先輩に、峰岸先輩は困ったような顔をして、私とやまとは苦笑していた。

 

「あはは・・・日下部先輩もなんだかんだで結構食べますよね?元気いっぱいな感じは見ていて清々しいですが。」

 

そんな私の言葉に日下部先輩はあっけらかんと笑いながら

 

「ははは。私結構こういうのって好きなんだよなー。ご当地のうまいもんはこうして食べるのが一番美味しい食べ方だと思わねえか?」

 

そんな日下部先輩にやまとは苦笑しつつも

 

「まあ、わからなくもないわね。それに、私も日下部先輩を見ていたら、ちょっと欲しくなったから羊羹を買ってしまったわ・・・。」

 

やはり、手に持った羊羹を少しずつつまみながら歩くやまとに私は

 

「やまとそれ大好物だもんね。私もこの際だから何か買おうかなあ・・・。」

 

私がそう言うと、峰岸先輩も少し考えるような顔をしながら

 

「そうね・・・私もちょっと自分の好物探してみようかしら・・・。」

 

その言葉に、これからの行動予定を閃いた私はみんなに

 

「なら、ご当地食べ歩きでもしてみましょうよ。折角ですしね。」

「まあ、それもいいかもね。」

「賛成ー!色々珍しいもん探そうゼー。」

「ふふ。面白そうね。じゃあ早速いきましょうか。」

 

峰岸先輩の言葉に私達はそれぞれ頷くと、早速ご当地うまいもの巡りをするために移動を開始する私達だった。

 

それから私達は色々な食べ物を見て、それを試食したり、お土産で買ったり、しながら楽しく温泉街巡りをするのだった。

 

そして、美味しいものを食べながら一休みしている時、私は普段からも仲のいい日下部先輩と峰岸先輩に話し掛けてみた。

 

「日下部先輩と峰岸先輩って仲が良いですよね。慶一先輩からも聞いていますけど、お2人は幼馴染だそうですね?」

 

私の言葉に日下部先輩は満面の笑顔で

 

「まあなー。小さい頃からずっと一緒だかんな。」

 

そう答えると、峰岸先輩も微笑みながら

 

「そうね。でも、まさか高校生になってまで一緒だとは思わなかったけどね。下手したら私達も学校違ってたかもしれないし。」

 

そう言うと、日下部先輩は

 

「まあ、そうかもしんねえよなあ・・・でも私はあやのみたいに頭よくねえけどさ、一緒に居たいって思ったから頑張ったんだ。」

 

そう言う日下部先輩に峰岸先輩も嬉しそうに「みさちゃん・・・。」と呟いているの聞きつつ

 

「それでも、そのために陵桜に合格するんだから、日下部先輩もたいしたもんですよ。」

 

その言葉にはやまとも頷いて

 

「そうね。陵桜のレベルは私から見てもかなり高いと思うわ。でも、先輩はそんな陵桜の試験に打ち勝てたんですものね。峰岸先輩と一緒に居たいという日下部先輩の思いは本物なんだな、って分かるわ。」

 

そんなやまとの言葉に日下部先輩は照れながら

 

「いやー、照れるゼー。そういや、八坂と永森も仲のいい友達なんだろ?それに、永森は本来は陵桜(うち)に来る予定じゃなかったんだよな?」

 

日下部先輩の言葉にやまとはばつの悪そうな顔で

 

「・・・そうね、確かに日下部先輩の言う通り、私は本来は聖フィオリナ女学院に行く予定だったわ。けど・・・ここを選んだ。こうの事だけだったら、私はきっとフィオリナに行っていたかもしれないわね・・・。」

 

そして、そのやまとの言葉を私は勝手に補足する。

 

「だよねえ。慶一先輩がやまとを陵桜に呼び寄せたようなものかもだしねえ。」

 

ニヤニヤとしながらやまとに言うと、やまとは途端に顔を真っ赤にして

 

「な、何言ってるのよ!そ、そんな訳ないわ!ここを選んだのはあくまでも私の意思よ?それ以上でもそれ以下でもないんだからね!?変な勘違いしないでよ!!」

 

そうやって言い訳するやまとにさらに私は

 

「ふーん?まあ、そういう事にしといてあげるよー?やまと。」

 

ニヤニヤの顔のままそう追い討ちをかけると、やまとはさらに顔を真っ赤にしておろおろとしていたのだった。

 

そんな私達を見て峰岸先輩は

 

「ふふ。なんだかんだで八坂ちゃんと永森ちゃんも仲がいいわよね?少しだけ私達に関係が似ているかもしれないわね。幼馴染と中学時代のお友達という違いはあるかもだけど・・・。」

 

そんな風に言う峰岸先輩に、日下部先輩もなんだか納得するかのように頷きながら

 

「そっか。お前らを見ててなんか感じてた事があるなーって思ったけどさ、お前らと私らは微妙に関係が違っていてもなんとなく似てる部分があったからそういう所を私らと重ねてみていた部分あるなって気付いたぞ。」

 

そんな日下部先輩の言葉に私も少し納得できたので

 

「うーん・・・日下部先輩の感じてるとおりかもしれませんね。私も言われてみてなるほど、と思いました。」

 

そう答えるが、やまとは

 

「そうかしらね?仲の良さで言えば、私達は日下部先輩達に負けてるような気がするけど?」

 

そんな風に言うやまとに私は慌てながら

 

「ちょ、やまと、それはないんじゃない?」

 

そう言うと、やまとはしてやったりの黒い笑顔で「冗談よ。」と言っていたので私は心穏やかではなかったが、とりあえず安心したのだった。

 

そんな私達を見て笑う日下部先輩と峰岸先輩に釣られて私達も笑ったのだった。

 

そんな風に両先輩方と親睦を深めて私達は、旅館で食べるお菓子等を買い込んで宿へと戻ったのだが、それからしばらくして大変な事件が起こったのだった。

 

かがみside

 

私達のチームはいろいろな所を見て回ろうという事で動く事となったのだけど、こなたが勝手に行き先をどんどん変更するという状況になり、気付いたら私達は山の中へと入り込んでいた。

 

それはいいのだけど、ここで私達の身にまずい事が起きてしまっていた。

 

それは・・・・・・

 

「天は我らを見放したーっ!!」

 

そう叫んでぱたりと寝転がるこなたに私は呆れつつ

 

「なにやってんのよ、あんたは・・・。」

 

そう言うと、こなたはむっくりと起き上がって

 

「ちょっと雰囲気出してみた。」

 

と、あっさり言い放ったのを見て私は思わず

 

「誰のせいでこんな事になってると思ってるのよ!?まったく!!」

 

そう強い口調で言うと、こなたは

 

「まあまあ、かがみん。起きてしまった事は仕方がないし、とにかく戻る道を探そうよ。」

 

さして慌ててもいない口調でそう言うこなたに私は、またも呆れて軽いため息をつくのだった。

 

そんな様子を見ていたつかさとみゆきは

 

「困っちゃったね・・・おねえちゃん。わたし達ちゃんと帰れるかなあ・・・?」

「このままでは皆さんにご心配をおかけする事になってしまいますね・・・これ以上危険な事になる前に帰り着ければいいのですが・・・。」

 

と2人して困惑顔で話すのだった。

 

そう、私たちはこなたの後について動き回ってるうちに、気付いたら山の中に入り込み、遭難してしまったのだった。

 

時間は少し前に戻る・・・・・・

 

慶一くん達と別れて行動を始めて私たちは、温泉街の回りなどを見回って動いていた。

 

そして、そうやって歩いているうちに、こなたが街に隣接する登山道を見つけ、私達に

 

「ねえ、みんな。ここから山に登れるっぽいよ?せっかく来たんだし、ちょっと登ってみようよ。」

 

そう言うこなたに私は、その時はすぐに戻れるだろうし、良いかな?と楽観的考えて

 

「それも面白そうね。つかさ、みゆき。私達も行ってみない?」

 

2人に話を振ると、2人とも頷いて

 

「うん。面白そうだし、いってみようよ。」

「山の自然に触れるのもいいかもしれませんね。私も賛成です。」

 

そう言ったので、私たちは先頭を行くこなたの後ろについて山道を上がっていったのだが、所々でこなたが自分の判断で道を決めて誘導した事がまずかった。

 

そのうちに私たちは帰り道を見失い、山道を彷徨い、現在に至る。

 

「・・・まったく、あんたの根拠のない自信に従って付いて来たことが悔やまれるわよ・・・。」

 

呆れたように言う私にこなたは

 

「まあまあ。起きてしまった事はしょうがないんだし、それよりも帰り道を探さないとね。」

 

と、あんまり反省してない表情で言うこなたに私は、本当に今の事態を把握してるのかしらと思い、軽いため息をつくのだった。

 

そして、そんな私達につかさとみゆきも

 

「こなちゃんの言う通り帰り道を見つけないと大変だね・・・。」

 

少し元気のない顔でいうつかさ。

 

「あれから結構時間も経っています。それにこの時期ですから日没も早いでしょう。さらには山の中という環境では、夏場に比べて気温の低下も心配です。せめて携帯が使えればいいのですが・・・。」

 

今の現状を分析しつつそう言うみゆきに私も考え込みながら

 

「そうね、みゆきの言う通り、なんとかしないといけないわ・・・それに、食料だって今の私達にはふもとで買って来たおやつ程度のものと水もそんなには残っていないわ。ここでは携帯も圏外だし、困ったわね・・・。」

 

そう言いつつも周りを見ると、もう大分時間も過ぎていて、さらには日が傾き始めていたのがわかった。

 

さらに私は周りを見渡しながら

 

「せめて、街か何かが見えるならいいんだけど・・・。ここまで奥に来ちゃうとそれすら見えないわね・・・。」

 

そこまで言ってから私は、心の中に大きな不安が広がり始めている事を自覚しはじめていた。

 

それから3時間近くが経過した・・・・・・。

 

慶一side

 

それぞれの自由時間を終えて、みんなもぞろぞろと旅館へ戻って来ている事を確認してはいたが、ふいに俺の部屋へ飛び込んで来たゆたかが

 

「先輩!こなたおねーちゃんを見ませんでしたか!?」

 

慌てながら飛び込んできて俺にそう聞いてきたので、俺はあれからもこなたの姿を見かけていない事に気付き

 

「いや、あれからまだ姿は見ていないけど、ずいぶん慌ててるが、何かあったのか?」

 

そう訪ねると、ゆたかは

 

「実は、こなたおねえちゃんが未だに帰って来ていないみたいなんです。あれからも大分時間経っていますし、もう日も暮れかけてきています。でも、帰ってくる気配がないので私心配で・・・。」

 

そんなゆたかに俺も困惑顔で

 

「うーん、あいつの事だからいろいろな所回ってる可能性もあるよな。意外と好奇心旺盛だしな。まあ、心配なのもわかるけど、かがみやつかさ、みゆき達も一緒に居るんだし、それなりに分別のつく年齢でもあるだろうから大丈夫じゃないか?心配なのは分かるけど、こなたを信じてもう少し待ってみろよ。」

 

そう諭すとゆたかも少し落ち着いたようで

 

「そ、そうですね・・・。すみません、先輩、お騒がせしました・・・。」

 

そう言ってゆたかは部屋を出て行こうと踵を返したが、そこにもう1人慌てながら俺の部屋に飛び込んで来た2人がいた。

 

「慶一ー!!柊が戻って来てねえんだが、お前見なかったかー!?」

「慶ちゃん、妹ちゃんと高良ちゃんもまだ帰ってないみたいなのよ。あれから大分時間も経っているし日も暮れかけてるから少し心配だわ。」

 

そんな2人にゆたかも驚きながら

 

「え?日下部先輩、峰岸先輩。柊先輩達もまだなんですか?」

 

そう言うゆたかに2人も頷いて

 

「ああ。部屋で待っていたけど、帰ってくる様子がねえんだ。」

「それに、柊ちゃん達の携帯に電話してみたけど、電波が届かないってなってしまっていて、連絡が取れないの。」

 

その言葉に俺とゆたかも顔を見合わせて

 

「それは本当か?2人とも。携帯が繋がらない、って・・・。」

「こなたおねーちゃんの方はどうでしたか?」

 

そう訪ねると2人とも首を振った。

 

そこで初めて俺は、4人の身に何か起きたのかもしれないと思い始めていた。

 

俺は少し考えてから、3人に

 

「これはちょっとただ事ではなくなってるかもしれないな・・・みさお、あやの、ゆたか。とりあえずもう一度4人へ連絡を入れて、それでだめそうならあいつらの画像をもって温泉街で聞き込みをしよう。その際にこう達やみなみ達やまつりさん達にも声をかけて手分けして当たってみてくれ。俺も龍兄と一緒に動いてみる。」

 

そう言うと、3人は頷いて

 

「わかりました。すぐに行って見ます。後で何かわかったら連絡してくださいね。」

「おっし、わかったゼ!今から聞き込みに走るってヴァ!」

「いきましょ?みさちゃん。柊ちゃん達が心配だわ。」

 

そう言って走り出す3人を見送った後、俺はロビーで休んでいる龍兄の所へと急いだのだった。

 

ロビーで龍兄を見つけた俺はすぐに

 

「龍兄、大変だ。こなた達が自由行動からまだ帰って来ていない。ゆたかから話は聞いたけど携帯の電波も届かない状況のようだ。ひょっとしたらあいつら山に行ったんじゃないかな、って思ってるんだが・・・。」

 

そう声をかけると龍兄も血相をかえて

 

「なんだと?確かに携帯の電波が届かないとなると、その可能性はあるな・・・それで、慶一、お前はどうする?」

 

龍兄の言葉に俺は頷いて

 

「うん。俺はとりあえず温泉街で聞き込みをして4人の目撃情報を探すよ。そして、行き先が判明したら俺達で4人を連れ戻しに行こうと思うんだが・・・。」

 

俺の言葉に龍兄も頷いて

 

「うん。それがいいだろう。よし、俺もすぐに聞き込みに向かう。何かわかったら俺に連絡を入れろ、いいな?慶一。」

 

その言葉に俺は頷いて

 

「わかった。日が暮れたら厄介だし、すぐに行く。龍兄も何かわかったらよろしく頼む。」

 

そう言うと龍兄も「ああ、任せろ。」とそう言うと、叔父の所に何かを伝えに走って行ったのを見届けて俺も街へと出た。

 

温泉街を走り回って俺は4人の目撃情報を探す。

 

すると、そんな俺に声をかけてくる奴がいた。

 

「おい、確か森村だったな。どうしたんだ?そんなに慌てて。」

 

その声に振り向くと、そいつはさっき死闘を演じた村木とその取り巻き達だった。

 

俺はそんな村木達を睨みつけたが、村木は

 

「おいおい、さっきので勝負はついたし、俺はもうお前らに手出しするつもりはねえよ。けど、何かお前が妙に慌てているようだったからな。何かあったのかと思って声をかけただけだ。」

 

俺は奴のそんな言葉に少しだけ警戒を緩めつつも、完全には警戒を解かない状態で

 

「・・・実は俺の連れの4人が昼間から行方がわからなくなっていてな。未だに旅館に戻らない状況だし、携帯まで繋がらない、さらには日没が近いってのもあって慌ててその4人を探して聞き込みをしている所だったんだ。」

 

俺がそこまで説明すると、村木は

 

「なるほど、それは穏やかじゃないな・・・なあ、その4人の姿が写ってる物とかはないか?」

 

そう聞いてきたので俺は訝しがりながら

 

「何故だ?それをお前が知ってどうするんだ。」

 

そう言うと、村木はやれやれというジェスチャーをしながら俺に

 

「そう警戒するなよ。さっきも言ったが、もうお前らに手出しはしたりしない。だが、事件が起きてるかもしれないという事であれば、俺達もその4人の捜索に協力するって言ってるんだ。だからだよ。」

 

そう事情を説明してくれた村木に俺は

 

「いいのか?仮にもさっきはあんな死闘を繰り広げたばかりだぞ?」

 

そう言うと、村木は笑いながら

 

「あの勝負はあの勝負さ。俺が負けた時点でもうその時の遺恨はなしだ。けど、誰かが困っているなら俺はそれに協力したい。これでも一応は武を修める人間だからな、そんな状況は捨て置けない。」

 

そんな風に言う村木を見て俺は少し考えた後

 

「なら、協力頼めるか?行方不明はこの子らだ。」

 

そう言って携帯の写真を見せる俺に、村木達はじっくりと写真を見た後

 

「なるほど、よく分かった。森村、何かあったらお前に連絡を入れたい。お前の携帯番号を教えてくれ。」

 

俺にそう言う村木に俺は頷いて携帯番号を教えると

 

「よし、それじゃ、こっちも人手を出して捜索に当たらせるから何かあったらそちらに連絡をよこす。お前はいつでも連絡を受けれるようにしていてくれ。お前ら、いくぞ!?」

 

村木は取り巻きにそう言うと、取り巻き達は「「「オッス!!」」」と掛け声をかけて走っていった。

 

俺はそれを見送った後、俺自身も4人の情報集めに奔走した。

 

そして、しばらくすると、俺の携帯に村木からの連絡が入った。

 

「もしもし?村木か?何かわかったのか?」

「森村か?街の外れに近い山道入り口付近で4人の姿を見かけた者がいたようだ。何度か特徴を聞いてみたが、ほぼ間違いなさそうだ。どうする?これから山狩りするならうちの道場からも人を出すが。」

「村木、悪いが頼んでもいいか?俺も一緒に山狩りには参加する。この寒さだし、急がないと手遅れになるからな。」

「わかった。山道入り口の場所を教えておく。お前もそこへ来い。お前が到着し次第、捜索を始めよう。」

「ああ、わかった。すまないな、村木。うちの者が迷惑をかけてしまって。」

「気にするな、お前とは拳を交えた仲でもある。それに俺も、同じような境遇に陥った事もあったからな。あの時は助けられなかったから、今度は助けてやりたいと思っている。」

「なるほどな・・・それじゃ後でな。必ず見つけ出そう。」

「うちの道場のメンツにかけてもやってみせるさ。」

 

そう言って電話を終えた俺は、龍兄にこの事を伝えて教わった山道入り口へ急いだ。

 

その際にゆたか達には旅館に残ってもらい、俺達だけで行く事にした。

 

だが、叔父は俺達のそんな事態に草薙の道場の人にも声をかけてくれたみたいで、捜索の人数は一気に膨れ上がったのだった。

 

そして、山道の入り口で村木と合流した俺は

 

「ここがそうか?」

 

と訪ねると、村木は頷いて

 

「ああ。ここから山道に入っていく4人を見かけた者がいた。だから間違いないと思う。ここをあがったところにもいくつか分岐がある。そこから人員を分けるべきだろうな。」

 

その言葉に俺達も頷いて

 

「よし、なら早速出発しよう。みんな、急にこんな事になってしまってもうしわけないが、人命もかかってるから協力してくれ。」

 

俺の言葉にその場に集まってるみんなも声をあげてくれて、俺はそれを確認した後に先頭をきって山道へ飛び込んだのだった。

 

そして、いくつかの分岐点で人を分けてそれぞれの担当として捜索を進めていった。

 

俺と龍兄もこなた達が入ったであろう山は、俺達もかつて修行の為に訪れた山であったがゆえに、このあたりの地理も頭には叩き込まれていたので、こなた達がそちらへ行っていて欲しいという願いを込めつつ、足を速めた。

 

かがみside

 

あれからまた時間も経ち、私たちはそのまま山の中を彷徨い続けていたのだが、どうにも同じ場所をぐるぐると回っているらしい錯覚に捕らえられて、自分達の状況がわかりにくくなっていることに焦りを感じ始めていた。

 

そして、そうやって彷徨っているうちについに日が暮れ始めてしまい、その頃にはこなたもつかさもみゆきも、まだ寒さの残る山にかなり元気を無くしてしまっているようだった。

 

携帯も試してみたものの、やはり電波は繋がらず、私達の不安は相当に大きくなって来ていた。

 

「どうしよう・・・もう日が暮れちゃうわ・・・それに伴って気温も下がってきてるし、今晩一晩をここで過ごす事になったら・・・いえ、それでも帰れなかったら・・・。」

 

その呟きにつかさとみゆきも不安な顔で

 

「おねえちゃん・・・わたし、怖いよ・・・。これからどうなっちゃうのかな・・・。」

「つかささん、不安なのはわかりますが、最後まで希望は捨ててはいけません。きっと、諦めなければ帰る手立てもあるはずです。」

 

そんな私達にこなたが物凄く申し訳なさそうな顔で

 

「・・・ごめん、みんな・・・私のせいだね・・・本当にごめん・・・。」

 

こなたにしては珍しく物凄く落ち込んだような顔でそう言うのを見て私は、少し驚きつつも

 

「・・・反省してるのはわかったわよ。でも、ただここで反省だけしていても事態は良くはならないわよ?この状況を打開するためにも、悪い方に考えちゃだめよ。きっと助かる。そう信じて行動しましょ?」

 

こなたにそう諭すとこなたも顔をあげて1つ頷くと

 

「うん。そうだね。私達4人いればなにかいい知恵も浮かぶよね、きっと。」

 

そんな風に言うこなたに私も頷きで返しながら

 

「そうよ?いつもは一番楽天的なあんたがそんな顔してたら皆も不安になるわ。あんたの取り得はその元気さなんだからしっかりしてらわなくっちゃね?」

 

こなたをからかうように言うと、こなたも少し驚いたような顔で

 

「取り得がそれだけって酷くない?でも、ありがとう、かがみ。少しだけ元気出てきたよ。って事でここは1つ・・・。」

 

そう言うこなたを見て苦笑するつかさとみゆきだったが、こなたが何かをやろうとしているのが見て取れたので

 

「こなた、あんた何を・・・」

 

そこまで言いかけた時にこなたはまたもぱたりと倒れて

 

「天は我らを見放したーーっ!!」

 

と大声でさっきやっていた事をやっていた。

 

それを見た私は呆れたようなため息をつくと

 

「はいはい、わかったからさっさと立ちなさい。とにかく進むわよ?」

 

そう言ってこなたを立ち直らせながら私は心の中で(少しは雰囲気も和らいだかな?こなたはそういう所がいい所の1つよね、なんにしてもまだ頑張れるわね、これなら・・・。)

 

そう考えつつ、そんな私たちを見て笑う2人にも声をかけて先へと進む事にしたのだった。

 

慶一side

 

こなた達の捜索を開始して結構な時間が経ったが、俺達は中々こなた達を見つけることが出来ずにいた。

 

そして、そうしているうちに心の中は不安が溢れ出していたのだが、悪い方向には考えまい、とそんな不安を強気で振り払ったのだった。

 

そして、さらに先へと進んだ時、俺はぴたりと足を止めた。

 

「なんだ・・・?今のは・・・声?・・・どっちだ・・・。」

 

一瞬、俺の耳に飛び込んで来た微かな声を俺は捕らえていた。

 

そして、声の聞こえた方へ向かおうとして足を出した瞬間、暗がりに足を取られて俺は茂みを滑り落ちたのだった。

 

そして、体を打って俺は一瞬気絶した。

 

気絶した中で俺は、夢を見ていたらしい。

 

それは・・・・・・

 

「・・・きて、ねえ、おきて?森村君、起きて?」

 

俺はその声に反応するかのように目を開けると、そこには白いワンピースをきて白い帽子を手に持ったこなた?が立っていた。

 

「・・・こな・・・た?いや、違う・・・あんたは誰だ?あんたはこなたじゃないな?」

 

よく見ると、こなたに似た女の人にはこなたの特徴の1つであるあほ毛がなかった。

 

それと同時に目の下の泣き黒子も。

 

そして、その子は俺に

 

「森村君、はじめまして。私は泉かなた。こなたの母親です。」

 

こなたにそっくりな女の人は自らの名前をそう語った。

 

「こなたのお母さん?でも、確かこなたのお母さんは・・・。」

 

そう言うと、かなたさんは悲しそうな顔で

 

「ええ。あなたの言う通りです。私はこなたが物心つく前に亡くなりました。」

 

そう言うと俺は

 

「で、ではあなたはもしかして・・・幽霊?」

 

そう訪ねるとかなたさんは悲しそうな顔のまま

 

「ええ、そうなりますね。それはともかく、今あの子はピンチです。あなたの助けがいります。私が今からあの子の居場所を伝えますから、どうかこなたを、娘を助けてあげて欲しい。」

 

そう懇願してくるかなたさんに俺は頷きつつ

 

「わかっています。その為に俺はここに来たんですから。かなたさんは今のこなたの居場所をご存じなのですね?」

 

そう訪ねるとかなたさんは頷いて

 

「ええ。今からあなたの心をそこまで導きます。後はその通りに走ってこなたの所へと行ってください。」

 

俺はその言葉に力強く頷いて

 

「わかりました。お願いします。」

 

そう言うと、かなたさんは俺の心を今のこなた達が居る場所へと飛ばしてくれた。

 

かがみside

 

あれからもしばらく歩き回ったけど、結局立ち往生になってしまった私たちは、下手な体力の低下を防ぐために寒さの凌げそうな場所で4人で寄り添って休んでいた。

 

「・・・寒いね・・・。流石に3月とはいえ、山は気温低いや・・・。」

「そうね・・・山の事結構甘く見すぎていたわ・・・。」

「わたしたちちゃんと帰れるかなあ・・・。」

「大丈夫ですよ・・・きっと、慶一さん達は私達の事に気付いてくれているはずです・・・。」

 

そんなみゆきに私も頷いて

 

「そうよね・・・流石にこんな時間まで帰ってこなきゃ、ちょっとした騒ぎになっていてもおかしくはないわね・・・。」

 

そう言うと、こなたは罪悪感のある顔で

 

「ごめん、みんな・・・。」

 

と言うのを聞いて私はこなたの頭をぽんと叩きながら

 

「ほらほら、そんな顔しない。まだまだ希望がなくなったって訳じゃないのよ?慶一くん達を信じて私達も希望を捨てないで頑張りましょ?」

 

そう言うと、こなたも俯きながらも

 

「うん、そうだね・・・頑張らないと・・・。」

 

そう返答するこなたを見て私は心の中で

 

(こなたを励ますためにああは言ったけど、正直私も不安だわ・・・それに、夜の山って結構怖い・・・慶一くん、お願い・・・私たちを見つけて?このままじゃ怖いよ・・・。)

 

弱気になっていたのだった。

 

慶一side

 

かなたさんに今のこなたがいる場所へ心を飛ばしてもらってその場所に着いたが、そこで俺は4人を発見した。

 

4人は相当疲れきってるように見えたが、側に立った時、彼女達の心の叫びが聞こえてきた。

 

(慶一君。怖いよ・・・早く助けに来て・・・。このまま死にたくない・・・もう一度君に会いたいよ・・・。)

(私達これからどうなっちゃうのかな・・・このまま助けがこなかったら・・・嫌!そんなの嫌!皆に、お父さんやお母さんに、お姉ちゃん達に、そして、慶一くんに会えなくなるのは嫌!そして、私達の事で泣く慶一くんを見たくない・・・助けて!誰か私達を!!)

(怖いよ・・・もうどうなっちゃうのかもわからない・・・このまま死んじゃうのかな?もう、みんなに会えないのかな・・・嫌だよ・・・そんなの嫌だ・・・けいちゃん・・・。)

(不安です、正直・・・ここまで強がって来ましたが、この先がどうなるのかを考えたら、不安で仕方ありません・・・このまま死んでしまったらお母さんも悲しむでしょうね・・・それに、みなみちゃんや慶一さんも、きっと・・・そんなのは・・・嫌ですね・・・会いたいです、もう一度・・・慶一さん・・・助けて・・・。)

 

その言葉を聞いた俺はいても立ってもいられない衝動が起きた。

 

それを察したかなたさんは俺に

 

「こなた達はこの場所にいます。お願いです、森村君。こなた達を助けてあげて?」

 

俺はそんなかなたさんに頷いて

 

「大丈夫ですよ。俺がきっと救ってみせます。ですから安心してください。」

 

俺がそう力強く宣言せうと、かなたさんは安心したような表情になり

 

「ありがとう。こなたの事お願いね?」

 

かなたさんのその言葉と共に俺の意識は覚醒した。

 

そして、体を起こして俺は自分の体のダメージを確かめる。

 

「よし、大丈夫だ。深刻なダメージはないな。それにしても・・・。」

 

俺は先程の夢の事を思い出していた。

 

(夢、だったのかな?と思ったけど、違う。そう思える。かなたさんはこなたを助けて欲しくて俺の前に現れた。俺を導く為に・・・なんでかわからないけど、俺はそれを素直に受け入れられたな。とにかく、あの場所は俺の知っている場所だ。すぐさま動くぞ!)

 

そう考えた俺は、その場を飛び出してこなたたちのいる場所へと走って行くのだった。

 

かがみside

 

あれから私達はしばらくの間そこにいた。

 

今の私達にはまだまだそこから動ける程に体力が回復してないから、というのもあったのだが。

 

けど、そのうちに私達の緊張の糸は切れ始めていたのだった。

 

「・・・ぐすっ・・・寒い・・・怖いよ・・・」

 

そう言ってまず泣き出したのはつかさだった。

 

「つ、つかさ?大丈夫だから、きっと助けが来るから、ね?だから泣かないで・・・。」

 

それが皮切りだった。

 

さっきまで元気だったこなたも。つかさにつられるように泣き始めた

 

「・・・ぐすっ・・・ううっ・・・助けて・・・誰か・・・」

 

そして、さらにそれはみゆきにまで伝染した。

 

「・・・ひっく・・・ぐす・・・な、泣かないで下さい、泉さん、つかささん、泣いたら・・・私まで・・・うう・・・。」

 

そしてそれは私にも飛び火した。

 

「・・・な・・・ぐすっ・・・ひっく・・・泣かないで・・・って・・・い・・・うう・・・言ってるじゃない・・・ぐすっ・・・。」

 

そして、ついに限界に来た私達は、全員でその場で泣き始めてしまった。

 

けど、その時に私達を助けに来た人がそこに近づいている事に、今の私達は気付かなかったのだった。

 

そして、しばらく泣きつづけていた私達の側で私達に声をかけてくれる人がいたのだった。

 

「・・・やっと見つけたぞ?まったく、散々心配かけやがって・・・。」

 

その声に驚いて私達4人は一斉に声の方を振り向いた。

 

慶一side

 

必死に走りつづけてかなたさんから教わった場所を目指し、進んでいくと、そこに俺はようやく見慣れた4人の姿を発見する事が出来た。

 

そして俺はゆっくりと彼女達の側へ近づいていき、声をかけたのだった。

 

「・・・やっと、見つけたぞ?まったく、散々心配かけやがって・・・。」

 

そう声をかけると、はじかれるように俺の方に向き直る4人。

 

その顔は涙で濡れていた。

 

そして、俺の顔を確認するやいなや俺の胸に4人が飛び込んで来たのだった。

 

「慶一君!!来てくれたんだね!?ありがとう!助けに来てくれてありがとう!」

「慶一くん、怖かった!このまま私達どうなっちゃうんだろうって思って!ありがとう!来てくれてありがとう!!」

「けいちゃん、怖かったよ~!もう帰れないって思ってたよ~!心配かけてごめんなさい!来てくれて嬉しいよけいちゃん!!」

「このまま死んで慶一さんにももうお会いできないかと思いました!慶一さんは命の恩人です!ありがとうございました!本当にありがとうございました!!」

 

そう言って俺の胸で泣きじゃくる4人を受け止めつつ、俺は4人が無事だった事に安堵していたのだった。

 

そして、俺は懐から非常通信用の広域トランシーバーを取り出すと、捜索に当たってくれてるメンバーに4人発見の報を伝えるのだった。

 

そして、4人が落ち着くのを見計らって俺は4人を連れて山を下った。

 

そして、旅館に無事に戻ると、ずっとみんなを心配していたゆたか達やみさお、こう達、そしてまつりさん達に散々怒られていたようだった。

 

そして、まもなく山狩り部隊も戻って来たので、俺は4人に探してもらった礼をしろと言うと、4人は山狩りに協力してくれた人達に頭を下げに行ったのだった。

 

それを終えて、散々の山歩きでおなかを空かせた4人に改めて食事が振舞われ、それを食べて風呂に入った後のこなた達は疲れもあったのだろう、そのまま眠ってしまったようだった。

 

そして、俺と龍兄も捜索部隊の人にお礼を言った後は部屋に戻り、滑落時に負った怪我の治療をしてもらい、俺も軽く汗を流してから休んだのだった。

 

こうして、4人が巻き起こした大騒動は幕を閉じる事となったのだが、これからはより一層こなた達の動向にも目を光らせないといけないな、と思う俺達だった。

 

とんでもなく疲れた2日目だったが、これもまた思い出になるのだろうなと考えつつ、俺はかなたさんに心の中で感謝をしていたのだった。

 

そういう事も、こなたに明日話してやろうという事を考えながら俺は、夢の世界へ旅立っていった。

 


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