らき☆すた〜変わる日常、高校生編〜   作:ガイアード

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終わりと始まりの旋律~終わる2年生と映画館での出来事~

波乱の2年生最後のテスト、そして、ようやく正式な部となったアニ研の部長引継ぎにより、俺は今後は一般生徒として、そして、こうは正式にアニ研の部長に就任という事になり、こうの誕生日の時に入部した2人がこうを補佐する副部長となった。

 

ここに、本格的にアニ研は新しい時代への動きを開始する事となる。

 

そして、苦手教科を落としたこなた達は俺達の支援もあり、何とか再試をクリア、これにより春休みの補習は免れる事となった。

 

こうして、春休みを共に過ごせるようになった俺達は、いくつかの春休みの計画を立てた。

 

そんな事を経て、今日は2年生最後の終了式。

 

校長の長い話を適当に聞き流し、教室でのHRを終えた俺達は、星桜の樹のある場所で待ち合わせをしていた。

 

「ほい、3人とも。頼まれた飲み物買ってきたぞ?」

 

そう言って俺はかがみとあやのとみさおにジュースを手渡す。

 

「ありがとう慶一くん。悪いわね、お願いしちゃって。」

「慶ちゃんもこういうところはマメにやってくれるわよね。でもありがとう。」

「ま、結構助かるし、いいけどなー。サンキュー慶一。」

 

そう言いながら俺から飲み物を受け取る3人。

 

「まあ、この位なんて事ないさ。それにしても、こなた達遅いな。」

 

俺の言葉にかがみは呆れたような声で

 

「ほんと、いつもの事とはいえ自重してほしいわよね。」

 

そんな風に言うかがみにあやのが

 

「まあまあ、柊ちゃん。ひょっとしたらHRが長引いてるのかもしれないし、もう少し待ってみましょ?」

 

あやのの言葉にみさおも便乗しながら

 

「そうそう。柊はカリカリしすぎだゼー?もう少し心に余裕を持った方がいいと思うけどなー。」

 

そう言うみさおをかがみはキッと睨みつけて

 

「ほお~う?毎回の待ち合わせに遅れて来ながらそういう事を言うのか?そんなえらそうな事を言えるのはどの口かしらねえ~?」

 

そう言いつつ、みさおのほっぺたを両サイドからびろーんと引っ張ったり戻したりするかがみに、みさおは涙目になりながら

 

「い、いひゃいいひゃい、ひいらひ、わるかっは、わらひがわるうごはいまふた、だから、かんべんしてくらはい。」

 

ほっぺたを引っ張られてまともな言葉が出せないみさおを見ながら俺は笑いをこらえつつ

 

「くくく・・・か、かがみ、面白いけど・・・くく・・・その位に・・・くはは・・・しといてやれよ。」

 

そして、あやのもまた笑いをこらえつつ

 

「くすくす・・・柊ちゃん・・・くす・・・みさちゃんも反省してるみたいだし・・・ね?くすくす・・・」

 

そんな俺達を見て、かがみは軽いため息を1つつくと、みさおのほっぺたを離した。

 

「ふう。まあ、しょうがないわね・・・日下部?2人に感謝しなさいよ?」

 

みさおを軽く睨みつつそう言うかがみに、みさおは涙目のまま

 

「うう・・・ひでえよ、柊ー・・・それに、慶一とあやのも笑うなんてひでえじゃん・・・」

 

ついにこらえきれなくなった俺達はは笑いながら

 

「あははは!わ、悪い悪い、でも、こらえられなかったよ、ほんとすまん、あははは!」

「ご、ごめんね?でも、つい・・・くすくすくす。」

 

そんな風に笑う俺達ににみさおは「ヴぁー」と言いながらさらに落ち込むのだった。

 

そんな風にやっていると、ようやくこなた達が待ち合わせ場所にやってきた。

 

「お待たせーって何してるの?慶一君と峰岸さん、何か笑ってるみたいだけど?」

「ごめんね、おくれちゃった~。あれ?ほんとだ~。」

「HRが長引いてしまい、遅れてしまいました。慶一さん、かがみさん、峰岸さん、日下部さん、申し訳ありません。」

 

そんな3人に俺は

 

「おう。まあ、そんな事じゃないかとは思ってたけどな。それと、ちょっとさっき面白い事があったからな。」

 

そう挨拶をした後面白い事の説明をこなた達にすると

 

「むう、それは残念。みさきちの面白い顔を見そびれたね。」

 

こなたが腕組みしながら面白いものを見れなかった事を残念そうにしているのを見て、つかさは苦笑しながら

 

「こ、こなちゃん、それは悪いんじゃないかなあ?」

 

と遠慮がちに言っていて、みゆきも同じように苦笑しながら

 

「そ、それは災難でしたね、日下部さん。でも、人は誰しもそういう事は一度はしてしまうものですし、あまりお気になさらず・・・」

 

というみゆきの言葉を遮るようにかがみが

 

「甘いわ、みゆき。こいつらの場合、1度や2度という訳じゃないのよ?どこかで引き締めないとずっと同じ事し続けるわよ?」

 

そう言われてしまうと、みゆきも苦笑しながらも何も言えないようだった。

 

そんなかがみの言葉を聞きながらこなたとみさおは

 

「・・・別に少し遅れるだけじゃん。そんなに迷惑かけてないとは思うけどなー・・・」

「そうだそうだ。大体柊は怒りすぎなんだよな・・・」

 

そうぶつぶつ言っていたが、その呟きを聞き取られ、かがみが2人を睨みつけると、途端に縮こまる2人だった。

 

そうこうしているうちにこうとやまとの2人もやってきた。

 

「皆さんお待たせしました。」

「HR、こっちも少し長引いてしまったわ。ごめんなさい。」

 

その言葉に俺は手を振りながら

 

「なに、こなた達もそうだったんだから問題はないさ。それよりも、っとほらこれ。」

 

俺はこう達とこなた達にもあらかじめ買ってあったジュースを渡した。

 

「お?ありがとー慶一君。」

「もらっちゃってもいいのかな?」

「お気遣いありがとうございます、けど、よろしいのでしょうか?」

「先輩、すいません。いただきますね?」

「ありがとう、先輩。いただくわ。」

 

そんな5人の言葉に頷いて俺は、改めて星桜の樹を見つめる。

 

そんな俺の視線を追って、みんなもまた星桜の樹を見つめていた。

 

「ここで、皆と出会って仲間になってもう1年経つんだな・・・」

 

何となく感慨深げに俺がそう呟くと、こなたも頷きながら

 

「そうだね。1年前は君とこうして一緒にジュース飲みながらこの樹を見上げる事になるなんて考えもしなかったねえ・・・。」

 

そう言うこなたにかがみも頷いて

 

「そうね。私なんか一緒のクラスになるなんてことすら予想もしてなかったわよ。それ以前に慶一くんに助けてもらう事だって、今からしたら信じられない事だったものね・・・。」

 

かがみの言葉につかさも懐かしそうに

 

「そういえばけいちゃんと知り合いになるきっかけって、けいちゃんがわたしを助けてくれた事がそうだったよね?」

 

つかさの言葉を聞きながらみゆきも樹を見上げつつ

 

「私もそうでした。重い荷物を抱えた私を慶一さんが助けてくれました。それがお知り合いになるきっかけでしたよね・・・。」

 

同じように樹を見上げながらあやのとみさおも

 

「私たちの場合は柊ちゃんと話している慶ちゃんに話し掛けた事がきっかけになったわよね?」

「そうだなー。慶一が柊を助けてくれた。その話を聞いて私も慶一と友達になったんだよな?」

 

そんな言葉を聞きながらこうとやまとは

 

「私たちは中学生の頃に先輩に会いましたが、その時もやっぱり私たちを助けてくれた事が知り合うきっかけになりましたね。」

「結局、どこかでみんな慶一先輩に助けられたりする事がきっかけで知り合ったのね。」

 

そんな皆の言葉に俺は照れながら後頭部を掻きつつ

 

「ま、まあ、結果的にそうなった訳だが、結局、そんな風に困ってる皆を見てほおっておけなくなったからだしなあ・・・」

 

その言葉を聞いたこなたはニヤニヤとしながら

 

「そうだよねー。あの時だって私がコロネ売り切れて落ち込んでたのを見て私に譲ってくれたしさ。」

 

かがみも少し顔を赤らめつつも腕組みしながら俺を見て

 

「そうね、私の時も探し物手伝ってくれたし。」

 

そしてつかさもほわほわとした笑顔で

 

「わたしが怪我した時も治療してくれたよね~?」

 

そう言うと、みゆきもにっこりと笑いながら

 

「あれだけの大きい荷物を私の代わりに持ってくれましたしね。」

 

そう言い、あやのとみさおも

 

「みさちゃんが迷子になった時は一緒に探しにいってくれもしたわね。」

「勉強や宿題も慶一はよく助けてくれたよなー。私結構感謝してるんだゼ?」

 

そんな2人の言葉を聞きつつこうとやまとも

 

「アニ研の仮部長も部の立ち上げの時に引き受けてくれましたよね。」

「私がフィオリナではなく陵桜を選んだ時も先輩は私を受け入れてくれたわよね。それに・・・。」

 

やまとのその言葉にかがみとみゆき、あやの、みさおの4人は頷き合うと

 

「猪の襲撃の時は命をかけて私達を助けてくれた・・・。怖かったけど、嬉しい事だったわ・・・。」

 

俺はそんなやまとの言葉に複雑な表情を向けつつ

 

「あれは、それこそ必死でだな・・・でも、あの時は心配かけてしまった。みんな、本当にあの時はごめんな?」

 

そんな俺の言葉にやまとは笑顔で

 

「いいですよ、先輩。今はこうして私達の前に居てくれるんですから。」

 

そう言うと、俺が猪から助けた4人も頷いてくれた。

 

俺はそんな言葉に嬉しい気持になり少し顔を赤くしながら笑っていた。

 

そんな俺を見てこなたはまたもニヤつきながら

 

「でも、慶一君との事はそれだけじゃなかったよねー。ここにいるみんなと友達になれたのも慶一君が私達をつないでくれたからでもあるよね。」

 

その言葉にかがみも頷いて

 

「そうね。日下部や峰岸はともかく、八坂さんや永森さん、それに、小早川さんや岩崎さん、田村さんにパトリシアさん、山辺さんに毒島さん、それに若瀬さんなんかも慶一くんを通して知り合ったわよね。」

 

かがみの言葉につかさも

 

「うん。あれから時間が経って、気付いてみたらわたしの周りにはお友達が一杯できてたよ。」

 

そう言うと、みゆきも感慨深げに

 

「そうですね、それに。学校内以外の方もそうですね。牧村さんや氷室さん、それに慶一さんのお兄さんである龍也さんも。」

 

その言葉にあやのは頷きつつ

 

「なかでも龍也さんの事は本当に驚きだったわ。龍也さん、この学校の卒業生だったんだものね。」

 

あやののその言葉にみさおもうんうんと頷いて

 

「だよなー。そして、私らをつなぐきっかけを作った慶一がここにいるのは、龍也さんが居たからだって聞いた時には私は運命すら感じたもんなー。」

 

俺はそんなみさおの言葉を聞きながら

 

「それは俺も、かな?気付かせてくれたのはこなただったけどな。」

 

そう言うと、こなたは照れたように赤くなりつつ「えへへ。」と笑っていた。

 

そして、そんなこなたを見ながら俺も微笑みつつ言葉を続けて

 

「ここに来ようと思ったのは龍兄の真似をしたかったという思いからだ。だから、ここでこなた達に出会う事、今こうして仲良くなって1年を終えようとしている事も当時の俺には考えすらつかない事だった。でも、こうして皆に会えた事、学校で仲間を増やせた事も今はとても嬉しく思っているよ。」

 

ここに居る全員を一人一人見回しながら俺はしみじみとそう言うと、皆も口々に

 

「私達もそうだよ?慶一君と出会ってよかったって思ってるからね。それに、かがみやつかさ、みゆきさん以外の人とも仲良くなれた事もね。」

「私もそうね。きっと慶一くんと出会えなかったら、私たちはこんなに友達も増えていなかったかもしれないわ。」

「わたし本当はたくさん友達を作りたかったんだ。でも、こなちゃん達がいればそれでいい、ってこなちゃん達とお友達になった時、それ以上の友達を作る事も諦めかけてたんだよね。でも、けいちゃんはそんなわたしにお友達をくれたよね。」

「慶一さんは私達にとってさらに大切なものを私にくださいました。そして、一緒に笑い、泣き、協力し会える仲間達も作ってくれたんです。」

「そしてそれはいつしか慶ちゃんを助ける為の力にもなりえたわ。そんな人達が慶ちゃんの為に立ち上がってくれた。あなたがきっかけをつくらなかったら出来なかった事だものね。」

「私らだけじゃなく、他にもお前の事を考えてくれる。お前はそんな人間達を集める橋渡しにもなってたんだゼ?」

「先輩のおかげで私の夢も1つ叶いましたしね。そのための仮の部員ではありましたが、その協力者も先輩がくれました。さらに、新たな人材も、ですね。」

「私に忘れられない思い出の誕生日をくれたのも、先輩が皆をつないでくれたからよ?みんなと仲良くなっていなかったら、あの誕生日は実現なんてできなかったもの。」

 

自分達の思いを告げる。

 

そんな皆の思いを一言一言を心に刻みながら俺は感慨深げに

 

「結局みんな、繋がっていたんだな。こうしてみんなでここに立っている事もまた俺にとって、皆にとっての必然に何時しか変わっていたって事だよな。」

 

そう言うと、俺の言葉に頷く皆。

 

俺は少しの間目をつぶり、今までの思いとこれからの思いを考えていた。

 

そして、静かに目を開けて

 

「俺はこれからも、みんなと共に進みたい。係わって、そして、楽しみながら残りの1年も過ごしていきたいと思う。みんな、こんな俺だけどこれからもみんなと一緒にいたい。いつかは、はなればなれになるとしてもその時が来るまでは皆と一緒に・・・。」

 

俺のその言葉にみんなも

 

「私だって同じだよ?慶一君と一緒に、皆と一緒に過ごしたいからね。でも私はそれが最後だなんて言いたくはないよ?だって私は望んでるからね。慶一君が言ったとおりにね。」

「私もかな。だって私達はもうそんな柔な繋がりじゃなくなってるものね。それがある限りはいつまでも付き合っていけるわよ。」

「わたしもそう思うよ~?みんながそう思ってくれてるからきっと大丈夫だよ。」

「私達は本当の仲間ですからね。私も泉さんやかがみさんの言う通りだと思っています。」

「私達は一生の友達になれる、ってなんかそう思えるのよね。不思議なんだけどね。」

「私もそれは疑っちゃいねーぞ?なんとなくだけどわかるんだ。」

「私もですね。先輩と友達になれたあの時から思ってます。」

「私も何故かそう思えるわ。きっといつまで経っても先輩は私たちの側に居る、みんなも居る、そう思えるから。」

 

そんな皆の思いを受けて、俺も何故か自然に頷く事ができた。

 

俺もまたその事を何故か疑いもしなかったのは、そんな思いが俺の中にあったのだと思えたからだった。

 

これからも一緒に行こう、その思いを確認しあい、俺達は2年生最後の学校を後にしたのだった。

 

そして、当初の計画どおりまずはみんなで映画を見ようという事になり、俺は今かがみ達と共にこなたやみさおを待っていた。

 

「ふう。まだ来てないみたいね、あの子は。ほんと毎度毎度困ったものよね・・・。」

 

呆れ顔のかがみにつかさは

 

「まあまあ、おねえちゃん。もう少しだけ待ってみようよ。」

 

そう言ってなだめる姿を見ながらみゆきも

 

「まだ、時間的には余裕はありますよね?私もちょっとその辺りを見て来ますね?」

 

そう言ってこなたを探しに付近を捜索に行くみゆき。

 

そうこうしてるうちにあやのとみさお、こうとやまともやってきた。

 

「ごめんなさい、慶ちゃん。待たせちゃったかな?」

「わりい慶一、柊ー。でも今日はそんなに遅れなかったゼ?」

 

そして、こうとやまとも

 

「何とか間に合えましたね。まだ来てない人いるんですか?」

「こうにしては上出来かしらね?そういえば泉先輩の姿だけまだみたいね?」

 

その言葉に俺も苦笑しつつ

 

「みさお、あやの、まだ時間には余裕あるから大丈夫だ。こうとやまともとりあえずはチケット買って来ちゃえよ。こなただけまだ姿が見えないんだよなあ・・・どうしたものやら。」

 

俺の言葉に4人は、とりあえず映画のチケットを買いにいき、俺は何気に周りを見渡していたが、俺の側にいた背の小さい、帽子を被った女の子がおもむろに帽子を脱ぐと、とたんにぴょこんと跳ね上がるあほ毛を見て俺とかがみとつかさは驚いて

 

「え?こ、こなた?お前もしかしてずっといたのか?」

「あんたのくせっ毛が見えなかったから気付かなかったわよ・・・。」

「わたしもびっくりだったよ、こなちゃん。」

 

そんな俺達にこなたはかなり不機嫌そうな顔で

 

「みんな酷いよね、今日は私、ちゃんと時間どおりに来たのにさー。」

 

そんな風に言うこなたに、俺達はひたすら謝り倒していたが、そのうちにこなたを探しに行ったみゆきを呼び戻してない事に気付いて、俺はすぐさまみゆきに連絡を入れた。

 

そして、みゆきと合流したあと、俺達は映画館へと入り、席につく事にしたのだが、ここでちょっとした軽い争いが勃発していた事に俺は気付かなかった。

 

こなたside

 

いつもとは違い、私も珍しく待ち合わせ時間に遅れないようにと家をでたのだけど、今日に限って帽子を被っていった事が失敗だった。

 

みんなと同じような時間でついていたにもかかわらず、帽子を取るまでは自分とは気付いてもらえなかったからだ。

 

そんな状況に、慶一君をはじめとするみんなも苦笑しながら私に謝っていたんだけど、やっぱりどこか面白くなかった私は少々不機嫌になった。

 

ともあれ、このままでいても仕方ないので、私も映画のチケットを買って映画館へと入っていったのだが、そこでちょっとした出来事が待っていた。

 

そう、それは・・・・・

 

(うーん、これはいいチャンスだね。どさくさにまぎれて慶一君の隣に座っちゃおうかな?)

 

そんな事を考えつつ席の方を見ると、やはり同じように考えていたのか、かがみや永森さん、みゆきさん、それに、何も考えていなさそうなみさきちやつかさまでもが慶一君の側へ陣取ろうとして向かっているのが見えた。

 

それを見た私は慌ててかがみたちの方へ行って小声で

 

『かがみ、つかさ、みゆきさん、永森さん、みさきち、ちょっといい?』

 

そう声をかけると、かがみ達は私を見て

 

『なによ?どうかしたの?』

 

と、かがみが代表で私に聞いてきたので、私はかがみに

 

『えっと・・・さ・・・かがみ達もひょっとして慶一君の隣に座ろう、とか考えてない?』

 

少々照れが入りながらではあったがそう言うと、かがみ達は途端に顔を赤らめつつ

 

『な、何言ってんのよ・・・わ、私は・・・ベ、別にそんな事なんて・・・』

『あ、あはは、こなちゃんの気のせいじゃないかな~・・・。』

『わ、私は・・・その・・・けしてそのような・・・』

『い、泉先輩の考えすぎじゃないかしら、偶然にもそうなろうとした、ってだけだし、その事にこだわってるという事は・・・。』

『ぐ、偶然だよ偶然。ちびっ子も気を回しすぎじゃねえか?でもよ、私らにそう聞いてくるちびっ子はどうなんだよ?』

 

みさきちが私に反撃でそう聞いてきたので、私は、みんなにはっきりと言い放った。

 

『もちろん、私は狙ってるよ?だからみんなに聞いたんだよ。』

 

と言う私のの言葉にみんなはとたんに絶句した。

 

その状況にもかかわらず私はさらに

 

『もしみんなもそれを狙っているんならさ、ここは1つ公平に座る場所を決めない?』

 

そう投げかけると、かがみとつかさは

 

『わ、私は遠慮するわ。別に今回どうしてもって言う訳じゃないしさ。』

『わ、わたしもかな?そこまではわたしもこだわっていないから。』

 

そう言うかがみ達同様みさきちも

 

『わ、私も特にはこだわってねえかな?まあ、近くにいれりゃそれでいいかんな。』

 

そう言って、この勝負から降りたのだった。

 

だが、永森さんとみゆきさんの2人は

 

『泉さんのお話はわかりました。今回は慶一さんの隣の席をかけての勝負、お受けしたいと思います。』

『わ、私も今回だけはやらせてもらうわよ?それで?泉先輩、どうやって決めるの?』

 

かなり乗り気だったので私は2人に

 

『なら、ここはじゃんけん3回勝負と行こうか。勝っても負けても恨みっこなしで、それでどうかな?』

 

私の言葉に2人とも頷いて

 

『わかりました。お受けします。』

『こちらもそれでいいわ。』

 

そう言うと私も頷いて

 

『よーし、それじゃいくよー?じゃーんけーん・・・ぽい!』

 

そして、1回戦目、結果は永森さん勝利、私とみゆきさんの負け。

 

続いて2回戦目はみゆきさんの勝ち、私と永森さんの負け。

 

みゆきさん永森さん共に1勝1敗、私は2連敗となった。

 

後がなくなった私は、3回戦目に少々意気消沈しながら挑む。

 

そして、私の勝ち、永森さん、みゆきさんの負け。

 

これで共に1勝2敗同士で3人が横並びとなった。

 

『次で1人が負けたら慶一君の隣の席の権利は残り2人のものだよ?いい?いくよー・・・じゃーんけーん!ぽい!!』

 

そして最終結果は・・・・・・私と永森さんが権利を獲得する事となった。

 

この結果に落ち込むみゆきさんを見て、私と永森さんも少しだけ罪悪感を感じつつ

 

『・・・ごめん、みゆきさん。でも今回は・・・』

『今回は私が勝ったけど、でも・・・。』

 

私の言葉を遮ってみゆきさんが

 

『ええ、わかっています。公平な勝負の結果ですからね。でも今度またこういう勝負がある時は私も負けませんからね?』

 

ちょっと落ち込んだ表情のみゆきさんだったが、最後にはにっこりと笑ってそう言ってくれたことで、私もいくらかは救われたような気持になって

 

『ふふ。望むことろだよ。でも安心して?みゆきさん。みんなに頼んで慶一君の斜め後ろの席にしてもらうようにするからさ。』

 

その言葉にみゆきさんも少し驚いたような顔をしていたけど、微笑みつつ頷いてくれた。

 

そして、私と永森さんは勝利者の権利である慶一君の隣の席へと向かうと、事情を察していてくれたみんなが慶一君の両隣の席を空けて待っていてくれた。

 

私は、ちょうど慶一君の斜め左後ろに座っていた峰岸さんに事情を話して、みゆきさんにその場所を譲ってもらったのだった。

 

かくして、私と永森さんは共に慶一君の両隣に座る事が出来たのだった。

 

慶一side

 

映画館内に入り、席を決めたまではよかったのだが、何故か俺の両隣の席が空くようにみんなが席についたのを見て、俺は頭にハテナマークを飛ばしていた。

 

そして、そんなみんなの中に、こなたとみゆきとやまとの姿だけが見えなかった事に気付いたが、少しして3人がやってきて、こなたが俺の右隣、やまとは俺の左隣へと座る事となった。

 

そして俺の左斜め後ろにみゆきが座った。

 

俺はこなたに

 

「なあ、お前らだけ少し遅かったみたいだけど、何かやってたのか?」

 

そう訪ねると、こなたはいつものように目を細めながら

 

「まあ、色々あったのだよ。ねえ?永森さん、みゆきさん。」

 

2人に声をかけると2人とも頷いて

 

「ええ、ちょっと話し込んでいただけですよ。」

「ま、まあ、そういう事ね。大した事じゃないわ。」

 

そう言う3人に俺は、特に他には問題なさそうかな?と思ったのでそれ以上は聞かない事にしたのだった。

 

そして、そうこうしているうちに映画が始まった。

 

映画はアクションあり、涙あり、愛ありの中々に面白い内容だった。

 

こなたside

 

席取り合戦に勝利して、慶一君の隣の席を見事勝ち取った私。

 

少しだけドキドキとしながら私は映画の始まりを待った。

 

そして、映画が始まり、泣けるシーンの所に来た時、私は無意識に画面を見ながら慶一君の手を握り締めていた。

 

すると、慶一君も無意識にみたいだったけど、私の手をそっと握り返してくれたのだった。

 

それに驚いた私が慶一君の方を見ると、元々涙もろい慶一君は感動のシーンで涙を流して泣いていた。

 

それを見た私は心の中で

 

(慶一君やっぱりこういうシーンに弱いんだなー・・・でも、改めて慶一君の優しい所が分かるね。それに、私の手を握り返してくれたのも無意識だろうけど、なんだか嬉しいな・・・。今日はいい1日だねー・・・。)

 

そんな風に心の中を暖かくして映画を見続けていた私だった。

 

やまとside

 

思いがけず、泉先輩と高良先輩と3人で慶一先輩の隣の席を賭けた勝負をするとは思わなかったのだけど、運良く先輩の隣の席に座る権利を獲得できた。

 

そして、泉先輩は慶一先輩の右隣、私は左隣へと座る事となった。

 

少しドキドキとしながら先輩の横顔を横目でちらちらと見つつ、映画が始まったので私はそっちに意識を移した。

 

そして、映画の物語の感動シーンに来た時、私は気付いたら先輩の手をそっと握っていた。

 

それに気付いたのは、先輩が私の手を握り返してきた感触に気付いたからだったのだが、それを自覚した途端、私は再び心臓がドキドキとなり顔が赤くなるのを感じていた。

 

そして、ちらりと先輩の方を見ると、先輩は映画に感動して涙を流しているのが見えたが、先輩は私の手を握り締めている事には気付いていないようだった。

 

私はそんな先輩を見ながら心の中で

 

(こんな風に先輩の隣で映画を見れる事になるなんて思わなかったな・・・勝負は厳しかったけど、この権利を獲得できてよかったわ・・・それに、先輩はやっぱり泣き虫ね・・・中学の時にも見せてくれた事のある顔だけど・・・でも、それだけ先輩の心は優しいんだなってわかるわ・・・何時の間にか私も先輩の泣き虫が移ったかもしれないわよね・・・夏休みのあの時とかもそうだったしね・・・私はこれからもそんな先輩の顔を見ていきたいな・・・)

 

そんな風に思う私だった。

 

みゆきside

 

泉さんや永森さんと慶一さんの隣の席をかけての勝負となりましたが、私は一歩及ばず、この勝負に負けてしまいました。

 

そんな私を見て泉さんも永森さんも気を使ってくださったみたいですが、それでも慶一さんの斜め後ろではありますが、近い場所に座らせてもらえた事は嬉しく思いました。

 

ここからでも慶一さんの表情も伺う事もできるので、今回はとりあえずは慶一さんのお顔を映画を見つつ、みていましょう、そう思いながら、映画の鑑賞に入りました。

 

そして、映画の感動するシーンに来た時、私も思わず感動で涙を流しましたが、そっと慶一さんの横顔を伺うと、慶一さんもまた、感動シーンで涙をながしていたようでした。

 

そんな姿を改めて見たとき、やっぱり慶一さんは優しい心の持ち主なのだなあと思いなんだか少しだけ嬉しくなりました。

 

慶一さんの事を見ながら私は心の中で

 

(ふふ。私たちの前でもよく、慶一さんは涙を見せていましたね。でも、素直な涙を流せる慶一さんはやはりとても心の優しい人なのだと改めて感じます・・・。今回は泉さんや永森さんにお隣の席を譲る事となりましたが、またこんな機会があった時には、今度こそ慶一さんのお隣に座りたいですね。)

 

静かに感動の涙を流しつづける慶一さんを見ながらそう思う私でした。

 

慶一side

 

こうして色々あったけれど、今日の映画をみんなで楽しく見ることができたのだった。

 

帰りにこなたとやまとがやたら上機嫌だったのが気にはなったものの、きっと映画が楽しかったのだろうと納得する俺。

 

そんな中で、少しだけ寂しげな視線を俺に送るみゆきに気付いたが、そんなみゆきに視線を送ると、みゆきは照れたように顔を赤くして俯くのだった。

 

そして、俺達は電車に乗り、家へと戻るのだが、その途中でみさおとかがみ、つかさの3人が交互に俺の隣の席に座ったりして、そんな3人がなんだか嬉しそうにしていたのを見て、俺はよく分からずに首を傾げていたが、それを見ていたあやのがなんだか苦笑しているのを見て、俺は少し困惑していた。

 

そして、家に帰った俺に、かがみからメールが入って来たのを見て俺は、内容を確認してみる。

 

FROM:かがみ

 

慶一くん、今日は映画楽しかったね。次はいよいよ温泉旅行よね。私結構楽しみにしてるのよね。

 

それでさ、私うっかりその事をまつり姉さん達に話しちゃったのよね。

 

そうしたら、姉さん達が私達も連れて行けー!ってうるさくてさ・・・。

 

ねえ、慶一くん、いきなりで悪いけど姉さん達の方も都合つけられないかな?

 

ほんと迷惑かけちゃうけどごめんね?

 

もし何とかなるようならその時点で私の携帯に連絡してくれる?

 

それじゃお願いね。

 

P.S

 

もうすぐ私達の賭けの結果がでるわよね?それでもし私がその賭けに勝ったらその時は私と2人で映画に行く、って事でいいかしら?あんたが勝ったらあんたの条件も考えておきなさいよ? 

 

 

そのメールを見て俺はどうしたものかと悩んだのだが、とりあえず実家に連絡をして聞いてみると、以外にあっさりと許可がでた。

 

そして、俺は内心びびりながら龍兄への連絡をすると、案の定その事に対する追及がきたのだが、かがみから送られたメールをそのまま龍兄の携帯へ送って確認をしてもらうと、龍兄は諦めたようにため息をついていたのだった。

 

今回に関しては俺も謀略はめぐらせてはいなかったので、それを悟ってくれた龍兄は俺に修行3倍、という事は言わなかったが、大分気が重そうな感じだった。

 

ついに終わった2年生。

 

いろいろな事があった1年間だったけど、俺は忘れられない1年間を過ごせたと思っている。

 

そして始まった春休みの最初に俺達は映画を見にいった。

 

そこでもいろいろな事はあったけど、すごく楽しかったと俺は思っている。

 

春休みはまだ始まったばかり、次は2年生最後にする温泉旅行が待っている。

 

俺はそこで起きそうないろいろな事に思いを馳せながら、この旅行もみんなで楽しんでいこうと思うのだった。

 

そして、そんな楽しい思い出を経て、いよいよ間近に迫る3年生に向けての心構えもしておこうと思う俺だった。

 


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