そして、原作とは変わった展開があります。ご注意を。
少女ちゃん最強アイテム¦おねえちゃんの御守り
深夜廻、クリア後に〝となりまち〟に行くと、ランダムでランタン片手に少女ちゃんと夜を廻っているせんせいに会えるぞ!
んな訳ないわな・・・
夜が何もかもを隠してしまう。
居なくなった姉とポロの手懸かりを探しに、空き地に来た時、そう思った。
私は警察官でもなければ、その鑑識でもない。
ただの探偵の成り損ないだ。この夜の闇の中、頼りになるのはランタンと懐中電灯の灯りのみ、その悪条件の中で探しても手懸かりは見付からないだろう。
しかしだ。それでも、何らかの手懸かりは残っている筈だ。
「おねえちゃん。あそこのしげみにかくれてなさいって、いったの」
「そっか。とすると」
足跡が残っているかもしれない。
この空き地は芝が地面を覆っていないから、足跡が残っている筈だ。
私はあまり土を蹴立てない様にしゃがみ、ランタンで地面を照らした。微かにではあるが、足跡はあった。
残念ながら、私にその足跡が誰の物なのかは判別出来ないが、足跡の大きさや茂みの前にあった小さな足跡から、この足跡が彼女の物だと確信する。
「これは・・・」
しかし、ここで困った事が起きた。
足跡の向きだ。足跡が外から空き地へと向いている。
だが、何かに抵抗した様な跡はあるものの、空き地から出ていった足跡が無い。
そして、〝抵抗していた相手〟の跡も無い。
あの子は、一体何に抵抗していたんだ?
「〝よまわりさん〟・・・」
「え?」
聞こえた呟きに振り返ると、黒い〝ナニカ〟が空き地の前に続く道に居た。
黒く澱んだ墨汁を溜め込んで弛んだ袋の様な体に、首と思わしき部分から幾つも生える黒い根や紐、縄とも見える手の様なもの。
そして、その黒の中で一際異彩を放つ白い三つの襤褸袋と、横一文字に割れた目の様な何か。
あれが、〝よまわりさん〟なのか。別段、醜悪という訳ではないが、忌避すべきモノだとはっきり理解出来る。
ズルリ、ズルリと、決して早くはない動きだが、一歩一歩が大きいのか、私達の居る空き地へとジワジワと近付いて来ている。
街灯の下に居た〝ナニカ〟や私が見てきた〝ナニカ〟とは、根本的に違う。まだ、距離があるとはっきり解っているのに、早鐘という言葉が生温い程に、心臓が脈打ち胸が痛い。
息が苦しい、早く逃げろと足が疼く。
「こっちに来て」
「うん」
少女を抱え、ランタンと懐中電灯の灯りを切って、空き地に棄てられた廃車の陰にある大きめの茂みに身を隠す。
ズルリ、ズルリ、重くて固くないものを引き摺る音が、空き地の前で止まった。
大丈夫、大丈夫、大丈夫。
私は内心呟き、少女を自分の身に隠す様に抱え直す。
引き摺る音が近付いてくる。
〝右足が疼く〟
腕の中の少女が身を固くするのが解る。
ズルリ、ズルリ、空き地を探る様に這い廻る音が聞こえる。
まだか、まだか、まだか。
〝よまわりさん〟が這う音が止まない。
ズルリ、ズルリと、這う音が近付き、私達が隠れる廃車の前辺りでピタリと止まった。
心臓が五月蝿い。この音で、〝よまわりさん〟に気付かれてしまいそうだ。
廃車の隙間から外を覗く。
暗くてよく見えないが、道にある街灯の灯りが見える。
〝よまわりさん〟は居ないのか?
私は、少女を茂みに隠しつつ、少しだけランタンの灯りを点けた。
微かな灯りが夜に隠されていた空き地を照らす。
〝よまわりさん〟は居ない。
震える少女を抱き抱え、ランタンのつまみを回し、窓を開く。古ぼけた灯りだが、今でも充分に役に立つ。
「せんせい、〝よまわりさん〟は?」
「居なくなったよ」
懐から煙草を取り出し、火を着けようと思ったがやめた。
「せんせい、どうしたの?」
「・・・なんでもないよ」
成り損ないの探偵モドキの勘だが、今火を着けるのはマズイ、そう感じた。
何の根拠も無い、ただの勘だが、今はダメだと本能が叫んでいる。
今、火を着けたら、取り返しのつかない事になる。
私は背中に流れる冷たい汗を無視して、煙草を口の端に噛むだけにした。
「〝よまわりさん〟が、おねえちゃんをつれてったのかな・・・」
「・・・どうだろう? 今はまだ分からないよ」
あの黒い袋が〝よまわりさん〟だとしたら、夜に一人出歩いていたあの子は、〝よまわりさん〟の標的になる可能性がある。
・・・いや、標的になる可能性じゃない。
間違いなく、あの子は〝よまわりさん〟に拐われた。
でなければ、この子を茂みに隠す必要が無い。
そして、
「せんせい?」
〝よまわりさん〟が這った跡が無い。
偶然かもしれないが、あの子が空き地から出ていった足跡が無く、何かに抵抗した跡だけがあり、そして〝よまわりさん〟が這った跡が無い。
恐らく、あの子を連れ去ったのは〝よまわりさん〟だ。
「次は、何処へ探しに行こうか?」
「うん・・・ あ!」
少女が駆け出し、空き地の真ん中辺りでしゃがんだ。
何か見付けたのかと駆け寄ると、白い靴が落ちていた。
「上履き?」
「うん、うわばき」
「なんで、上履きが」
「〝よまわりさん〟がおとしたのかな?」
「分からないね」
そう言えば、〝よまわりさん〟が子供を〝何処へ〟連れ去るのか。それは、どの文献を調べても解らなかった。
どの文献でも、〝よまわりさん〟は名前とその行動だけ語られ、その後どうなったのかは記されていなかった。
隔離出来る施設に閉じ込めているのか。
それとも、古来から語られる怪異の様に食べてしまうのか。
私見だが、食べるという線は無いと思う。
怪異に生物の見た目が通用するとは思えないが、あの〝よまわりさん〟には口らしい器官は見当たらなかった。
あの白い目の様なものが口だとすればそれまでだが、そうでないなら、あの子は連れ去られ何処かに監禁されていると見ていいだろう。
そんな施設に心当たりは無い。〝よまわりさん〟に連れ去られた子供が戻ってきたという話も聞いた事が無い。
聞いた事が無いが、私達は今から〝それ〟をしようとしている。
なら
「学校に行ってみよう」
「がっこう? なんで?」
「もしかしたら、お姉ちゃんが〝よまわりさん〟から逃げて、学校に隠れているかもしれない」
「・・・せんせい。がっこうにいこう」
少しでも、証拠らしいものがあれば、それを辿ろう。
私と少女は、空き地から伸びる暗い夜道を二つの灯りで照らした。
どうやら、〝ナニカ〟は居ない様だ。
煙草に何時でも火を着けられる様に準備をして、慎重に夜道を照らしながら、私達は学校へと急いだ。
この夜が何もかもを隠してしまわない事を祈りながら。
あ、感想返信は後日行います。
挿し絵とか欲しいよね?
描けと友人は言ってくるが、私には糸人間が限界だ。
というか、私はスマホで全てのお話を書いて投稿しているんだよ?
分からないよ!
次回
夜の学校