パーシヴァルの物語 作:匿名
なので、次の投稿も結構遅れると思います。
ああ、でも気分が乗ったら別です。
という訳で、お待たせして申し訳ありませんでした。
続きをどうぞ。
※修正しました。8月3日 22︰34
〈退けた〉と言う表現から〈生き残った〉と言う風に変更しました。
▽月▽日時
気付いたら、見知らぬ場所で寝ていた……。
何を書いているか分からねぇと思うが、俺も何が起きたかさっぱり分からねぇ。
……少し深呼吸をし落ち着いて、ゆっくりと何があったか、日記を書きながら思い出してみる。
━━━━……あ、思い出した。
そうだ、確か出航から半月ぐらい経ち、減っていく食料を心配しながら、のほほんと一日過ごしてたら、突如として大きい嵐に襲われたんだ。
風は強く、波は大荒れ、船のあちこちから嫌な音が響き、慌てて何とかしようとしたけど、結局は沈んだんだった。
……てことは、現状を見るに俺は何処かに流れ着いたって事か。
あ! そうだスレイ! アイツどうなった!? ……もしかして溺れた? 嘘だろ……。
いやいや、待て待て。俺がこうして陸に流れ着いてんだ、アイツも何処かに流れ着いている筈、きっとそうだ。そう信じよう。
それよりも先ずは、現状をどうにかしないと。
持ち物は無い、剣も食料も道具も。勿論日記も。
でも不思議な事に何故か、あの
日記が無い為、魔導書の後ろの空白のページに魔力で日記を書いている状態だ。
……取り敢えず、食料と寝床の確保をしようと思う。
☆月☆日
化物にあったでござる……。
流れ着いて1週間、食料と言える食料は満足に取れず、寝床と言える寝床も無く、今日まで何とか持ち堪えた1週間。
諦め半分で今日も食料を探しに行ったら、……化物にあったでござる。
……死にかけたで候……。いや、本当はふざける余裕なんて無いが、無理矢理にでもふざけないとやってられない。
その化物は妙に刺々しく、龍とも猪とも取れる容姿をしていた。丈は俺の何倍何十倍もあった。
剣も何も無い状態で、そんな化物を相手にする様な俺じゃない。
そいつが何処か行くまで身を隠してたけど、見つかった。
その瞬間だった、今迄感じた事の無い威圧感に襲われた。
逃げなきゃ、とは思うものの身体は言う事を聞かなく、息は上がり、尻餅を付いていた。
明確に迫り来る━━死。
戦いの中で死ぬ危険を感じた事はあれど、『殺される』と言う危機感は初めて感じた。
今思えば、抗う事すら許されぬ『死』あれが真の意味での恐怖を体感した時だと思う。
けれど、窮鼠猫を噛む──俺の場合は少し違うが──とはよく言ったものだ。
何を思ったか、今になってはよく覚えてないが、その
いやぁ本当にね、何考えてんだか自分の事ながらよく理解出来ないわ、ははは……。
ホント理解出来ない。
当然勝てる訳もなく、ボロボロにやられた。
俺もやれるだけはやったと思うけど、あれは強すぎた。全力の魔力放出を浴びせても無傷とか頭可笑しいだろ。
対して俺は腕のたった一振りで、身体中傷だらけの血だらけで瀕死、片腕はひしゃげ皮だけで繋がっている状態、その中で意識の持つ限り応戦し続けた。
暫くそんな事を続けてたら、そいつは飽きたのか、何処かに向かって去って行った。
傷一つ負わせられず、退けたと言うよりは興味をなくし移動した化物、その事実に湧き上がる悔しさと惨めさ。
しかし反面、死から免れた開放感と脱力感に包まれながら安堵した、生き残れたと。
気を失う前に魔術で最低限の治療してから、俺は意識を手放した。
そして、起きてからこうやって日記を書いてる訳だが……全身が痛い。
何とか魔術で痛みを抑えているが、それでも激痛だ。
寝る所無いし食べ物もないし、スレイも居ない……もう嫌だ、お家帰りたい。
鬱だ寝よう。
□月□日
やぁ、諸君! 久しぶりだね!
いきなりだが、好きな食べ物は何かな? 俺はやっぱり肉かな。
贅沢を言えば黒毛和牛とかいいが、でも俺はどちらかと言うと質より量、その辺のスーパーとかで売っている安い肉を買って沢山食べられれば満足だ。
あとはそうだな、甘い物も好きだ。パフェとかクレープとか、美味しいよね!
逆に嫌いなものは野菜かな、食べられない事は無いけど、野菜って苦いじゃん? いや、なかには甘いものもあるのだろうが、それは野菜好きが勝手に言ってる事だ。野菜嫌いからしたら、甘い物も含めて全て不味いのだ。
ん? なになに? 何でこんな事を書いてるかって?
━━━━現実逃避だよクソったれ!
事は、化物を退けた翌日の朝ぐらいに戻る、だから一ヶ月ぐらい前か。
その日は、空腹や昨日の出来事からやる気が起きなく大人しくしていた。
ボーッと空を眺めて一日を過ごそうとしていたら、現れたのだ彼奴が、あのババアが。
いきなり殺気を感じて、慌ててその場を跳び退く。見れば先程まで俺の居た場所には、朱い槍が無数に突き刺さっていた。
「ほぅ、今のを避けるか」
そんな凛とした声と共に、俺の前には突き刺さっている槍と同じ物を手に持った長髪の女が現れた。
長い黒髪に、槍と同等に紅い瞳、女らしいその体は男の欲情を駆り立てるものだ。
だが、その前に何よりも気になる事が俺にはあった。
……お、おっぱいタイツだとゥゥ!?
そう、タイツなのだ全身が。
その格好から体のラインがハッキリと出て、激痛が無かったら俺の俺も元気になっていたかもしれない。
いややっぱり、激痛無くても槍をいきなり投げてくる奴に対しては勃たないわ、うん。
くだらない考えは隅に置き、何者か聞いてみるとあっさりと教えてくれた。
名前はスカサハ、このすぐ近くにある影の国の女王だと言う。
……それって、ケルト神話のスカアハの事じゃね?
微妙に名前が違う事に、ツッコミたい衝動に駆られたが、何とか我慢して、スカサハ程の人物が自分に何の用なのか改めて聞いてみる。
曰く、先日の化物──クリードと言うらしい──との戦闘を見ており、ギリギリではあるが何とかクリードを相手に生き残った、俺の実力を確かめたくなったのだとか。
しかし見ての通り俺は重傷を負っている、その事を伝えると近付いて来たので身構えるが、そんな必要はなかった。
なんと、ルーン魔術と言うので俺の傷を直してくれたのだ。
重傷だった身体が幾許かの時間で、あっという間に治った。
これで存分に戦えるなと言うスカサハに、俺は再び、悪いが得物が無いと伝える。
すると今度は手持ちの槍を貸してくれた、……槍は扱ったことは無いんだけどなぁ。
四の五の言ってられない、ここまでしてくれたんだ恩返しだと思って戦ってやろうじゃないか。
こうして、スカサハと俺は戦ったのだが━━負けた。
当然だ、相手は易々と神殺しを成す怪物スカサハ。
昔読んだケルト神話の本にも、その怪物っぷりが載っていた事から強い事は知っているつもりだったが、あれは強すぎた。
けれど、ただやられる俺では無い。
慣れない得物ながらも、何とか応戦。
串刺し覚悟に、カウンターを入れる形で向こうに大きい傷を追わせることに成功した。
……それが地獄の始まりだった。
スカサハは俺の一撃に大変驚き、そして気に入られた。
俺の傷を治すやいなや、俺を弟子にすると言いやがった。
有難いが、俺はそれを断った。師匠には既にマーリンが居たからだ。
それを伝えるが、知った事かと俺を弟子にしようとするスカサハ。
面倒くさくなった俺は、頷いてしまった。
……思い出すだけで、あの時の自分を殴りたくなる……。
そこから一ヶ月、日記を書く暇もなく修行、修行、修行、修行漬けの日々だ。
しかも、マーリンより辛く厳しい超スパルタ方針。
意味わかんねぇよ、なんで丸腰で魔獣とフルマラソンしなきゃいけねーんだよ。
あと、そうそう今の俺って半分魂の状態らしい。
スカサハ師匠に教えてもらったのだが、普通ならばこの影の国に辿り着くことは難しいらしく、俺がここに居れるのは、この『本』が俺の魂をここに飛ばしているからだとか。
スカサハ師匠が、何故魂が飛ばされるような状況に陥ったのか不思議がっていた。
あれだよね、あの嵐の航海が原因だよね多分……。
でもあれ? そう考えると、俺の『肉体』どうなっているのだろうか。
まさか海の上でプカプカ浮いている状態なのか、と嫌な想像が頭をよぎる。
怖くなった俺は、考えを遮るようにしてこの本の事についてスカサハ師匠に聞いてみた。
するとどうだろう、スカサハ師匠は険しい顔をするではないか。
そんな変な
そう言うと、スカサハ師匠は「変と言うよりは、禍々しくて危険過ぎる代物」だと言う。
え、何それ怖い。この本そんなに危ない物なのか。
スカサハ師匠曰く、この本の名は━━━━ネクロノミコンだと言う。
俺は軽く気絶した。
感想欄でネクロノミコンの事を書かれてドキッとしてしまいました。
魔導書は他のでも良かったのですが、パーシヴァルにヤバさを入れたかったのでネクロノミコンにしました。
なんでそんな物があんだよとか、雑設定は見逃してくれるとありがたいですが、納得出来ない人がいれば頑張って理由を考えたいと思います。
にしても、クリードを丸腰で退けるパーシヴァル君、何気にすごくない? ボロボロですけど……。