パーシヴァルの物語   作:匿名

13 / 21
漸く11話の投稿です。
遅くなって申し訳ありませんでした。

時に、皆様はいづれ神話の放課後戦争(ラグナロク)という小説を知っているでしょうか?
自分が好きな小説なのですが、時々そこにパーシヴァル君を入れたら面白そうだなぁと思う時があります。

新しい作品として書きたい思いもありますが、何事もこの作品を終わらせないとなぁ。




11━微笑まぬ乙女

 暗き空を明るく染める太陽が、地平線から顔を出す。

 人々はそれに合わせるように、動きを活発にし城下町のあちこちから煩くも元気で、何処か心地の良い声が上がる。

 それが目覚ましになったのか、それとも窓から差し込む陽の光でか、ベットで眠っていたパーシヴァルは静かに目を覚ました。

 

 「……」

 

 数秒だけぼうっとすると、小さな欠伸を漏らす。

 昔と比べ少し長くなった髪を掻き上げながら、状態を起こし、少し伸びをした。

 

 「いっ」

 

 小さな痛みが走った。身体を見れば包帯()が巻かれている。

 そこで漸く、昨日の決闘を思い出した。

 ルーン魔術で完全に傷を治そうと考えていると、トントンと扉がなった。

 入室の声と共に入ってきたのは、白髪の魔術師マーリンだ。まだ少し眠いのか、マーリンは欠伸をしながら入ってきた。

 

 「やぁ、体調はどうだい?」

 「特には。少し痛みが残ってるだけだな」

 

 それは良かった、とそう微笑みながらこちらを見据えるマーリン。

 彼の言い方からして、傷を負ったパーシヴァルを治療したのはマーリンなのだろう。

 それが分かったパーシヴァルは、ありがとうと素直に礼を言うと、ふっとイーテルの事を思い出した。

 

 「なぁマーリン。イーテル卿はどうなった?」

 「彼かい? 彼なら無事だよ。少なくとも、命には別状はない」

 

 それを聞いたパーシヴァルは少し安堵の息を漏らす。いくら決闘とは言え、命を奪うつもりは無かったからだ。

 しかし、言葉の後にマーリンはただ、と続けた。

 

 「イーテル卿はもう、最前線で戦う事は出来ない」

 

 イーテルは元々歳により限界が近付いていた。それがパーシヴァルとの決闘により深手を受けた事で身体の筋肉がボロボロになってしまった。

 それは治癒の魔術であろうと治せない物だ、マーリンの言葉にパーシヴァルはそうか、と一言だけ零す。

 

 「にしてもパーシヴァル。君、最後油断したね?」

 「……バレたか」

 

 マーリンの言葉に苦笑いを浮かべながら、昨日の決闘の最後を思い出す。

 朱槍を真名解放をしたにも関わらず、パーシヴァルはその身に傷を負わされた。力、速さ、技量、その全てに置いてパーシヴァルはイーテル卿に勝っていた。

 本来ならば圧勝とは行かないまでも、傷を負わずに直ぐに勝てた筈だ。

 然し、結果はどうだろうか。

 

 確かにイーテル卿は、全てにおいてパーシヴァルに劣っていた。だが、油断をしていい相手では無い。

 己の方が格上だと慢心し、付け入る隙を与えてしまった。それが今の自分の弱さ。

 旅をする中、力を付け、気が付けばいつの間にか強者の側に立っていた故の弊害だろう。

 こんな姿をスカサハに見られればどうなるだろうか……簡単だ。修行させられる(殺される)

 それが想像出来たパーシヴァルは、一瞬で顔を青ざめさせた。

 

 「……ァル、パーシヴァル」

 「んっ、ああ、何だ?」

 「だから、この後イーテル卿に鎧を貰いに行ったら、それを着て、今一度改めてアーサー王に功績を賜りに行くんだ」

 「あぁ」

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

 「よっこらせっと」

 

 手に持つ鍬を使い、土を掘り起こす。その工程を暫く続けているパーシヴァルの額には、汗が浮かんでいた。

 パーシヴァルが正式に円卓入りしてから、早半年。城下町から少し離れた郊外で、半年間パーシヴァルは農作物を育てていた。

 殆ど毎日飽きもせずに、畑を育てる事はパーシヴァルの日常になっていた。

 

 「こんなもんかな」

 

 動かす手を止めて、テニスコート二面分の畑を見る。

 そこには半年しか経っていないとは思えない程に、様々な作物が豊かに実っていた。

 普通ならば有り得ないが、この畑はパーシヴァルの特別製。畑の至る所にルーン魔術が使われている為、魔獣も寄り付くことも無く作物は尋常じゃないスピードで成長をしているのだ。

 自分が育てた農作物を眺め、幸福の笑みを浮かべる姿は傍目から騎士ではなく、農民に見えた事だろう。

 

 「パーシヴァル」

 

 凛とした声が聞こえた。

 その声の主を知っているパーシヴァルは、今日も来たのかと呆れにも似た苦笑いを零し、振り返る。

 

 「む、なんですかその顔は」

 「いや、なんでもねぇよ王様」

 

 視線の先には、美しい金髪を靡かせた王様系堅物大食らい美少女のアルトリア。

 その顔は少しムッとしている、パーシヴァルの苦笑といつもと違う呼び方でそうなっているのだろう。

 

 「その呼び方はやめて下さいと言った筈です」

 「へいへい、悪かったよ。 アルトリア」

 「はい」

 

 一転して、ムッとした顔から笑顔に変わる。

 そんなやりとりの後パーシヴァルとアルトリアは、畑の近くにあった小屋に向かった。

 小屋に入ると、備え付けてあった厨房でパーシヴァルは料理を始め、アルトリアは椅子に座り料理を待つ。

 これもこの半年間で日常になりつつある光景だった。

 

 事の切っ掛けは何気ない事だった。

 その日は珍しく王としての業務も無くのんびりと過ごせる、言い換えれば暇な一日になる予定であった。

 そんな時に、町の外に向かうパーシヴァルをアルトリアは城から発見する。

 その時ふっと後を付けようとアルトリアは考え、行動に移した。

 その後、郊外で畑を耕すパーシヴァルを目撃。見た事もないような食べ物を食べているのを発見した。

 見つかったパーシヴァルは驚いていたが、何やら物欲しそうな目をするアルトリアに作った料理を食べさせて以来、こんな事が続いているのだ。

 因みに、そうしているうちにパーシヴァルはアルトリアが女性だという事を知った。元々疑ってはいたのだが、周りが否定する為確信が持てなかったが、聞いてみたら案の定だったのだ。

 

 「うし、出来たぞ」

 「芳ばしい匂いがしますが、これは?」

 

 皿の上に出された茶色い物体の食べ物。その上にはソースが乗っている。

 周りには彩り鮮やかな野菜が添えられていた。

 

 「挽いた魔猪の肉を丸めて焼いたものだ。ハンバーグと言う」

 「魔猪ですか……」

 

 アルトリアは苦い顔をした。

 魔猪は豚や牛と違い、肉が硬い。まるで岩を食ってるかのように頑丈で味も不味いのだ。

 

 「大丈夫だって、食ってみろよ」

 「……ええ、では」

 

 パーシヴァルに言われてアルトリアは覚悟を決め、肉を口に運んだ。

 

 「こ、これは! 肉が柔らかい! 美味しい!」

 

 強く噛まずとも切れる程に柔らかい肉が、噛めば噛む程旨味を広げていく。

 魔猪の肉とは思えない料理に、アルトリアは驚愕し、何よりその美味さに喜んだ。

 肉を口に運ぶ手を休めること無く、気が付けば皿の上には何も残っていなかった。

 

 「おかわり!」

 「だと思ったよ」

 

 やっぱりこうなったか、と予想通りの展開にパーシヴァルは嬉しいような呆れたような顔をした。

 その日、大量にストックしていた魔猪の肉が無くなったのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

 鎧を身に付けながら、城内を歩く音が聞こえる。

 大柄な体に鋭い目付きをした騎士ケイは、アグラヴェインの元に向かっていた。

 すると目の前に、一人の青年が見えた。

 その青年を視界に映した瞬間、ケイの機嫌は最悪なものとなる。

 

 「はっ、誰かと思えばパーシヴァル卿か。相も変わらずみすぼらしい。城内をその様な薄汚れた姿で闊歩するとは、恥を知れ」

 

 パーシヴァルの元まで近付くと、ケイは嫌味を口にした。その顔には明らかに軽蔑の色が出ている。

 農作業の後だからか、確かにパーシヴァルの服は土で汚れていた。然し言われた当人のパーシヴァルは、あっけらかんとしてケイの言葉を受け流す。

 

 「これはこれはケイ卿。こんなみすぼらいし騎士に声を掛けて頂けるなんて、嬉しい限りです」

 

 ここで言い返しても面倒なだけと理解していたパーシヴァルは、心にもない事を適当に言って、さっさと通り過ぎて行く。

 だが、ケイ卿にはあの態度が逆に癇に障っていた。物に当たりたくなる衝動を抑え、ケイはアグラヴェインのもとにむかった。

 

 その日の夜、ある事件が起きた。

 無礼にもアーサー王の盃を騎士が奪い逃げたのだ。他の者達は今すぐに捕えねばと躍起になり、慌てていた。

 そこに、半年前に円卓入りしたばかりの騎士パーシヴァルが名乗りを上げる。

 

 「俺が、その騎士を捕まえよう」

 

 イーテル卿との一戦により、パーシヴァルのその実力と身体能力の高さは知れていた。また、天真爛漫な明るい性格から周りからの信頼も半年間で信じられない程に厚かった為、これに反対する者は殆ど居らず。

 アーサー王からも直々に命が下り、最低限の準備だけをして直ぐ出陣しようとしたパーシヴァルの前に一人の女性が現れた。亜麻色の髪をした女性だ。

 

 パーシヴァルは一刻も早く出たかった為、女性に何の用かと聞く。

 すると女性は、美しく微笑みパーシヴァルに頑張るよう口添えをした。

 それを見た周りの騎士達は騒ぎ立てた、何故ならこの女性クンネヴァールは、真の騎士にしか微笑まないとされているからだ。

 然し全く微笑まない事から、微笑まない乙女と呼ばれていた。

 そのクンネヴァールが微笑んだという事は、つまりパーシヴァルは真の騎士だと認められたという事。

 それを見た騎士達が騒がない訳がなく、パーシヴァルと親しいものは流石だと褒め称え、そうでないものは妬み疎んだ。

 その中には、パーシヴァルを馬鹿にしていたケイ卿も居る。クンネヴァールが微笑んだという事実が気に入らなかった彼は、あろう事かクンネヴァールの頬を叩いた。

 

 パーシヴァルは当然憤慨し彼の胸倉を掴んだが、それをクンネヴァールは諭し早く盃を奪った騎士を捕まえるように言った。

 諭され冷静になったパーシヴァルは、打たれたクンネヴァールを置いていくことに少し胸を痛めながらも、疾風の如く城を出て騎士を捕まえに行く。

 

 暫くして、盃を取り戻し騎士を捕まえたパーシヴァルは走ってケイ卿の所に向かい力ずくで懲らしめ、クンネヴァールに謝罪する様に求めた。

 パーシヴァルのその行いと騎士を捕まえた足の速さから、「駆け抜ける者」の名が城下町の民にも広まった。

 

 

 

 




後半はたいして見どころもない為、ダイジェスト風です。
手抜きと思われるかもしれません。本当にすみません。

本来この時代には存在しない食べ物とかもありますが、当作品ではあるって方向で行きます。

……評価が下がっていくなぁ……。
悪い所があればどんどん言って欲しいのです。
それと、再度言いますが作者は無知ですので、詳しい方はアーサー王伝説やパーシヴァルの伝承を教えていただけると嬉しいです。



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。