パーシヴァルの物語 作:匿名
ホームズとアルトリア〈ランサー〉が二枚抜きで我がカルデアに来てくれました。
その嬉しさから、気分が乗り書き上げました。
けど……荒いかもです。
△月△日
久しぶりに日記を書く、何ヶ月ぶりだろうか。
……前の日付を見たら、約10ヶ月ぶりだった。
随分と間を空けたなぁ。
……久しぶりだから、どう書けばいいか忘れてしまった。
うーん、取り敢えず日記を書いていなかった間の事を記すとしよう。
前回の日記を書いてから、数日後には本格的に槍術や対人戦の修行、そしてルーン魔術を習い始めた。
剣を主に扱っている為、リーチの長い槍は扱いづらくなかなかに苦戦した。
スカサハ師匠もダメ出しばっかだったが、投擲、投槍の方はなかなかだと褒めてくれた。
まぁ、それで調子に乗ってしまえばボコボコにされてしまうので、余り喜べないが、それでもその時は珍しく褒めてくれたので嬉しかった。
因みにだが、前は調子に乗ってしまい「いつか、俺が
……でも、あの時の師匠は何処か嬉しそうだった。
とと、閑話休題。
対人戦の方は、死徒や人形の魔物と戦った経験が多少あるので、それを生かし何とか及第点を貰えた。
ルーン魔術の授業では、その多彩さと応用の高さから驚かされた。
今では慣れたが、その万能さは他の魔術基盤と比べても頭一つ抜けていると思う。
それと、〈原初のルーン〉こちらも何とか習得した。これの習得には時間が掛かった。
本来なら、習得するには10ヶ月は短い時間であり、習得は到底無理だ。
しかし、それでも覚えられたのは〈ネクロノミコン〉の助けが大きい。少しばかり寿命を縮める結果となったが、
ネクロノミコンについても触れようか。
この
恐らくだが、読解阻害の魔術、それの解除条件は名前を知る事だったのだろう。
読める様になってからは、暇を見つければページを読み進めて行くという本の虫と化していた。
前世でも、読書は趣味だったので別段苦という訳ではなかった。
そして中身は面白い事に、あらゆる魔術とその効果、使用法が記されており。
中には『魔法』と呼ぶべき物も多数記されていた、流石は魔道の奥義が記されているとされた書物なだけあると、すごく感心した。
ただ厄介な事に、どうやら
悪夢は酷いものばかりだ。
人々が無惨に殺される夢、吐き気を催す程の悪虐の夢、絶え間なく溢れ出てくる憎悪の夢、どれもが俺の精神を侵そうとしてくる。
何とか夢による精神汚染を耐えていた俺だが、何事にも限界はある。
……一度、たった一度だけ俺はネクロノミコンの邪悪に飲まれた事がある。
あの時は酷かった。
と言っても、俺自身は余り記憶に無いのだが、スカサハ師匠の話によると。
邪悪に染まった俺は、暴走して目に映るものを破壊し始めたとか、スカサハ師匠が止めようとしてくれたが、修行のせいもあってか、なまじ力が付いてしまい更には
俺も目が覚めた時、大きい傷こそ無いものの、目の前に多かれ少なかれ傷があちこちに付いているボロボロの師匠を見た時は酷く動揺した。
そんな事もあってか、精神修行も行うようになった。
お陰で、今では
それから俺の『肉体』をこちらに召喚、呼び寄せた。
前に、スカサハ師匠は俺が半分魂の状態だと言っていた、という事は残り半分の魂は肉体に宿っているという事。
ふと俺は、ネクロノミコンに召喚魔術の方法が記されている事を思い出した。
師匠に一日だけ休日を貰い、早朝に術式と陣を完成させて自分自身を媒体に、半分の魂が残った肉体を召喚した。
結果は成功、いや大成功と言うべきものだった。
何故なら『肉体』だけでなく我が相棒、スレイも一緒に召喚されたからだ。
多分だけど、召喚される際に近くにいた生命体を巻き込んだのだと思う。あと、道具一式と剣も。
自分の体の隣に、凄く大きい馬が居た時は少し驚いたが、それがスレイだとすぐに分かってほんの少し涙してしまった。
スレイが何か言いたそうに唸っていたので、どうしたのか聞いてみると、どうやら今の今迄スレイが俺の『肉体』を守ってくれていたのだと言う。
言葉は分からないが、そう言っているのがわかった。
流石は俺の相棒だと、感心した。
さて感動も程々に、予め用意していた魂の、今の俺を肉体に入れる魔術式が組まれた陣の上に肉体を起き、術式を起動。
無事に半魂と肉体は定着、元に戻った。
…………あれ? 今思えばこれって魔法の領域ではないのだろうか?
親和性が高い自分自身とは言え、魂を扱った神秘の行使。それも、外界にある『魂』から『肉体』の内側への定着を難なく成功させた。
……これって、やばくないか? いや、まてそもそも魂の話をするなら、今迄何故、魂の状態それも半分だけという欠陥の中、様々な物に干渉できたんだ?
視線は自然と机の上に置かれた
考えても分からないなら、考えない方がいい。
そうそう、召喚した肉体だが、筋肉の低下等で痩せ細っていてまともに動けなかったので、死にものぐるいで筋トレをした。
……辛かったなぁ。
後は、スレイの事でも書いておくか。
先程書いたと思うが、スレイはまた大きくなっていた。
影の国に来る前は、普通の馬より一二回り大きいぐらいだったのが、召喚時はそれの1.5倍位になっていた。
予想だけど、多分残されたスレイは肉体を守る傍ら俺から離れられない為、食事は近寄ってきた魔物とかだけだったのだろう。
それも、飛び切りに危ないヤツを。
そしてこの影の国に来てからも、修行で俺が倒した魔獣を食っている為、更に成長。
今では、ワゴン車より大きいぐらいだ。
これ以上はもう成長しないと思うが、スレイは魔獣を未だに食べ続けてるしどうなる事やら……。
♡月♡日
早いもので、影の国に来てから1年が経った。
ホントに早いな、昨日の事のようにここへ来た……送られた時の事を覚えている。
人は慣れる生き物だ、辛かった修行も少し楽しくなっている。
ランナーズハイと似たようなものだろうか。
それはそうと、この間オイフェと名乗る女性が来た。
俺の記憶が確かならば、オイフェと言えば確かスカサハの姉妹に当たる人物だ。
俺が見た時は、姉妹と言うだけあって容姿はスカサハに瓜二つだった。
オイフェが来てから直ぐにスカサハ師匠が来たが……何故か死闘を始めやがった。
正確に言えば、オイフェが師匠に襲い掛かったのだ。
何が何だか分からずに、けれど巻き込まれてたまるかと、俺は迅速に二人から距離を取った。
遠巻きに二人の戦いを見るが、人間業じゃ無いぜあれは。
今更かもしれないが物理法則に唾吐きながら、中指立てて、馬鹿にしているようなもんだぞあれ。
俺も人間辞めてる自覚はあるけど、あの二人は別格だな。
けれど、それを見て尚俺は凄いと感じなかった……いや、感じたには感じたが。
自分もあのレベルに付いていける自信があった。
これが自惚れでなければ、修行の成果で俺が師匠に近付いて来た証拠になるのだろう。
その後も暫く戦闘は続いたが、オイフェが引く形で幕を閉じた。
オイフェが帰る際、少しだが俺は会話した。
話している分には、悪い人じゃないのだが、気になった俺は何故いきなり襲ってきたのか聞いてみると。
曰く、スカサハとは和解しているが時折こうして腕の試しの戦いをしているのだとか。
分かります、戦闘狂ですねはい。
見た目がそっくりなら、中身もそっくりだったようだ。
姉妹なんだなぁ、と俺はつくづく思った。
それと、……俺は明後日、影の国を出ようと思う。
これはスカサハ師匠にも話してある事だ。
強くなる事は、俺の望みでもある。
けど、俺はもう一人の師匠、マーリンから世界を見て回れと言われた、ならば長くここに居るべきでは無い。
幸い、スカサハ師匠からの教えは殆ど身につけた、後はそれを伸ばす段階にいる。しかし、それは影の国でなくとも出来る。
1年もいた奴が何をって、言われれば痛いがそれでも俺は直ぐにでもここを出たかった。
それを、2ヶ月前スカサハ師匠に伝えた。
すると師匠から条件を出された、その条件が師匠に認めさせる事。
簡単に言えば卒業試験だ。
俺は悩んだ。
どうすれば、師匠に認めさせる事が出来るのか。
その時、頭をよぎったのはあの化物の姿だった。
━━━━
この身に恐怖を刻んだ、魔獣或いは神獣。
アレを倒す事が出来れば……。
そう思った俺は、1ヶ月の間準備に取り掛かった。
……そして遂にその日は来た。
師匠を呼び出し、俺はクリードに挑む事を言った。
驚いていたが、黙って頷いてくれた。
丸一日、俺がクリードと戦った時間だ。
クリードとの戦闘は、苛烈に苛烈を極める物となった。
あの時は無我夢中で覚えてなかったが、酷く辛いものだったのは記憶している。
そして結果的に、俺は━━━━クリードを殺しきれなかった。
覚えているのは、クリードの半身を超弩級の大魔術で吹き飛ばした事と、それでも倒れぬ化物の姿。
そこから、俺の記憶は途切れている。
次に、部屋で目覚めた時は悔しさから、手から血が出る程に拳を握った。
悔しかった。唯々悔しかった。たった1年だが、短い期間の間に死ぬ程の修行をした。
なのに勝てなかった。
泣きそうになると、師匠がやって来た。
慰めでもしてくれるのか、と思ったが有り得ないと考えを振り払う。
案の定、師匠は先の戦いでのダメ出しを濁流の如く伝えてきた。
でも、まだ1年でこれ程ならば伸び代はあるとも言ってくれた。
俺は、涙を堪えまた修行を頑張りますと伝えると師匠は小首をかしげる。
どうしたのかと思っていると、師匠は「直ぐにここを出るのだろう?」と言ってくれた。
言ってる意味が理解できなかったが、遅れて分かった。
認めてくれたのだ、師匠が。
嬉しかったが、クリードは倒せなかった、なのに何故だろうと思い聞いてみると。
1年でクリードの半身を吹き飛ばせれば十分だと言う。
その日は俺は、嬉しさの中眠りについた。
……まぁ、こうして色々あって明後日漸く影の国を出る準備を整えた訳だ。
さて、今日はここまでにしよう。
♪月♪日
明日はいよいよ、出発の日だ。
昨日と今日は色々あった。
昨日は師匠と俺でお別れ会みたいなの開いた。
まぁ内容はただ酒を飲んで俺が作った摘みを食べるだけなのだが。
初めてこの世界の酒という物を飲んだが、なかなかに美味かった。
これが前世の世界なら未成年飲酒で犯罪なのだが。
ここは過去の世界、法なんてもんは存在しない。
なので、俺は気負いせずに飲み続けた。
それと、話題作りに俺の身の上話と目標を伝えた。
師匠は珍しく褒めてくれたりした、と言うか笑顔可愛いなあの人、惚れそうだった。
何故、普段はあの顔が出来ないのか不思議だ。
あと、酒の席の勢いで師匠に性的な意味で襲われたが何とか回避した。
いや、俺も男ですよ? そりゃヤリたいけどさ、ほらそう言うのって責任取らないと行けないじゃん?
今の世じゃ、そんなもん取らなくてもいいかもしれないが、そこはそれほら俺って元日本人としての感性がまだ残ってるからさ。
コラそこ、ヘタレって言わないの! 俺はチキンじゃねぇ慎重なだけなの!
そういう事で、師匠には『丁寧』にお断りしたつもりなのだが……「ほぅ」といって鋭い眼光を、獲物を狙う時のような目をされた。何故だろうか。
でも、その日は何事も無く終わった。
それから翌日、昨日の事だ。
早朝からスレイと共に来い、と師匠に呼び出されたので、向かってみると何とプレゼントを用意してくていた。
ビックリした、まさか師匠からプレゼントを貰えるとは。
くれたのは
チャリオットはスレイを有効活用できるようにと、朱槍の方は初めは渡す気がなかったが気が変わったからと、その両方共師匠自らが作ってくれた物だと言う。
「初めてチャリオットというものを作ったから出来は何とも言えんが、耐久力は一級だ。……そしてゲイ・ボルク。本来なら〈
とは師匠の弁だ。
このチャリオットにもルーンが使われており、師匠はなんやかんや言っていたが性能も十分過ぎる程にいいものだ。まぁ、船とか作っちゃう人だしね。
隣のスレイも目に見えて喜んでいた、師匠に感謝を伝えながら、いよいよ明日影の国を出る事をしみじみ実感した。
……1年で師匠を
けれど、いつかは宣言通り師匠を……。
そんな事を今は思っている。
さて、明日に備えるとするか。
少し補足を。
さて、もうすぐでアルトリア達の登場です。
やっとだァ……。
お待たせして申し訳ありませんでした。
誤字脱字矛盾等がありましたら、御手数ですが報告お願いします。