GATE~ヴァンツァー、彼の地にて、斯く戦えり~ 作:のんびり日和
第3偵察隊は村長に教えてもらった近くの村へと向かって走っていた。
高機動車に乗っていた伊丹は後ろの席にいた桑原に確認の言葉を掛ける。
「おやっさん、コダ村の村長が言っていた村ってもうすぐだよね?」
「えぇ今小川を曲がりましたし、道を間違えていなければこの先に村があるはずです。それと伊丹隊長、森の近くで野営を意見具申します」
「そうだね」
「村まで行かないんですか?」
倉田はてっきり村まで一気に行くと思っていた為、伊丹にそう聞く。
「このまま行っても森つくのは夜になっちゃうし、それに一気に村まで押し掛けたら村の方々にご迷惑を掛けちゃうでしょ。俺達は国民に愛されている自衛隊とアメリカ軍だよ?『伊丹隊長!』! どうした?」
突然後方のクーガーに搭乗していたダンの慌てた様子の無線に伊丹は驚きつつも無線に出る。
『前方に煙が見える。煙の量からして恐らく火事だ。どうする?』
ダンからの報告に伊丹は急いで前方を確認すると、確かに遠くの方に黒い煙がモクモクと上がっていた。
「おいおい、これ俺たちが向かっている方向じゃん。仕方ない。ダン中尉、俺達はこのまま進んでコダ村の村長が言っていた丘に向かいましょう」
『そうだな。このまま平地を進んで行った場合、火事に巻き込まれる可能性があるからな』
「よし、倉田。このまま進んで丘に向かうんだ。」
「了解っす!」
高機動車を先頭に偵察隊は丘がある場所へと向かって走って行った。
数分後見晴らしのいい丘に到着し、それぞれ車両から下りていき状況を確認する。偵察隊の目の前にある森は激しく燃えており、伊丹達は酷い山火事だと思っていた。
「こりゃすげぇな。大自然の脅威ってやつか?ってうぉっ!? 何だよあれ!」
アイリッシュは双眼鏡でそう呟きながら辺りを見渡していた。すると炎の中から出てきた物を見て驚いた声を上げる。
「どうした? 何かいたのか? おいおい、何の冗談だよあれ……」
パックはアイリッシュが見ていた方向を見ると、ドラゴンが火を噴きながら飛んでいるのが見えた。それを確認したLAVのガンナー席に乗っていたネイサン・へイル二等軍曹は照準をドラゴンへと向けいつでも撃てる様にしていた。軽装甲機動車のガンナーもキャリバーに弾を込める。
「まさかジャパニーズアニメに登場したキング……」
「アステック、それ以上はいけない」
アステックにツッコミを入れたカズヤは冷や汗を流しながら、あのドラゴンがこっちに来ない事を祈っていると、ドラゴンは何処かに飛び去って行った。
「ドラゴン、何処かに飛んで行きます」
「……そうだね。! あのドラゴンってなにも無い森に火をつける習性ってあるのか?」
伊丹は飛んで行ったドラゴンに目を向けつつもそう呟くと、近くにいた栗林が冗談染みた事を言う。
「ドラゴンの習性に興味があるなら隊長お一人で追いかけては「いや、そんなことを聞いているじゃねぇ。あのドラゴンが何もない森に火をつけるか聞いているんだ。村長の話じゃあこの森の近くに村があるって聞いてただろ」!?」
伊丹の言葉に、栗林は戦慄した表情を浮かべ燃えている森に目線を向ける。
「やべぇ! まさか!」
「おやっさん、ダン中尉野営は後回しだ。此処から下りられる場所を探して鎮火したと同時に確認に向かおう」
「了解です!」
「了解だ!」
伊丹の指令に全員車両に搭乗し火事が鎮火するまで待った。そして翌朝火事は鎮火し第3合同偵察班は丘から下り村が有ったと思われる場所へと向かう。そして到着すると建物の残骸だと思われる物が瓦礫となって建っていた。
伊丹は全員に散開して生存者が居ないか探し始めた。だが崩れ落ちた建物などだけで恐らく生存者はいないと判断せざる負えなかった。
「チッ! あのトカゲ擬き、今度見掛たらMk.48でハチの巣にしてやる」
「お前のMk.48で如何にかできる相手じゃないだろ」
焼死体を見つけたアイリッシュはやるせない気持ちで文句を言い、近くにいたパックがそれをツッコムが、パック自身もこれは酷いとしか思えなかった。
あらかた捜索を終えた頃、伊丹は村の中心だと思われる場所に掘られた井戸に腰掛けながら水筒の水を口に含む。だがその量が心許無いなと思っていた。
「ふぅ~、酷い有様だな」
そう呟くと、栗林がメモ帳を片手にやって来た。
「隊長、建物の数を数えた所32棟で、見つかった焼死体は24体です。家の数と照らし合わせても明らかに少ないことから、建物の下敷きもしくはドラゴンに捕食された可能性があります」
「一つの家に4人済んでいると考えただけでもザっと100人以上の人が居て、その多くが死んだって事か」
「酷い物です。門で遭遇したワイバーンは腹か頭に12.7㎜を撃って漸く貫通するくらいだと聞いています」
「もはや空飛ぶ戦車じゃん。……本部にドラゴンの調査と習性を調査するよう頼まないといけないし」
そう言いながら伊丹は水筒の水を補充しようと井戸に、ロープの付いた桶を投げ込む。すると其処の方から“コーン”と何かにぶつかる音が響いた。
「ん? 何か当たったぞ」
「何でしょう?」
そう言い栗林はライトで底を照らすと、金髪の少女と思しき人が気を失っているのか浮いていた。
「人、人だ!」
遂に第3合同偵察隊は唯一の生存者を発見するのであった。
次回
小さな賢者との出会い