GATE~ヴァンツァー、彼の地にて、斯く戦えり~   作:のんびり日和

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4話

門へと最初に突入した高機動車、そして自衛隊の90式戦車は暫く門の中を走り続けると、外らしき光景が見え門を抜けると、其処は小高い丘だった。辺りは夜の為真っ暗だったが、90式に搭載されているパッシブ式熱線映像装置(サーマルイメージャー)で搭乗してた自衛隊隊員は辺りを警戒していると、丘の下に松明を灯しこちらを見上げている兵士達を確認した。

 

『敵を視認‼』

 

その報告を受けた高機動車に搭乗していた自衛隊隊員、そして到着したLAVやクーガー装甲車から海兵隊隊員が続々と降りてきてそれぞれ窪みへと体を隠す。

 

『こちらサクラ指揮車。各部隊は敵に照準を向けたまま待機。照明弾を2発打ち上げるため、2発目の照明弾と共に攻撃を開始せよ。以上』

 

サクラ指揮車に搭乗している狭間からの指令に、海兵隊や自衛隊はそれぞれの銃の安全装置を解除し、照準を丘の下にいる兵士達へと向ける。

 

「……うじゃうじゃいるな」

 

ゼフィールに搭乗していたカズヤはそう呟きながら、部下達に指示を出す。

 

「レイブン指揮官から各機へ。それぞれ散開し歩兵隊の援護に当たれ。但し、薬莢が下にいる歩兵隊に当たらない位置でだ。あいつ等の頭上に薬莢が落ちてきてもし当たったら怒られるのは俺なんだからな」

 

そう伝えると、ゼニスに搭乗してるレイブン2のロイドが茶化す。

 

『レイブン指揮官、それはやれって言う指示ですか?』

 

「レイブン2、もしそんな指示と思って行動したら、お前の機体だけテンダスに変えるぞ?」

 

そう伝えると、ロイドはうへぇ~と嫌そうな顔で冗談です。と返す。テンダスとは他のヴァンツァーと違いコックピットが強化ガラスで覆われたタイプの物で、ヴァンツァーの攻撃を受ければほぼ一撃で撃破される。言わば歩く棺桶である。

 

『キングマスターからレイブン指揮官へ。各機の配置が済み次第攻撃態勢で待機せよ。地上の歩兵隊の攻撃が開始されたと同時に攻撃を開始せよ』

 

「レイブン指揮官、了解!」

 

カズヤはそう言い、攻撃体勢をとって待機する。そして照明弾が撃ちあげられた。1発目の照明弾は辺りを照らすと、丘の下にいた兵士達は突然明るくなったことに動揺していた。

そして暫くして1発目の照明弾が燃え尽きた後、2発目の照明弾が撃ちあげられた。そして2発目の照明弾が辺りを照らした瞬間

 

『全部隊攻撃開始‼』

 

その無線と共に地上にいた自衛隊員、そして海兵隊員の攻撃が開始された。90式戦車、そしてLAVから発射される弾も、次々と丘の下にいる兵士達に命中し辺りで爆発が上がる。

自衛隊員達の背後にいたヴァンツァーの部隊も、それぞれ持っていたセメテリーやラプターで次々と攻撃を開始する。

 

「レイブン指揮官から各機へ! 奴らを一人たりとも生かして帰すな! 奴らが此処に居たという事はまた日本で虐殺をする気だったかもしれないからな!」

 

「「「了解‼」」」

 

次々と放たれた弾丸の雨に、丘の下にいた兵士達は蜘蛛の子の様に散り逃げていくが追撃とばかりに、一部のヴァンツァーが装備していた肩武装の14型迫撃砲で次々と吹き飛ばされていった。

 

 

自衛隊と海兵隊、そしてヴァンツァーの攻撃によって丘の下にいた兵士達は全滅となった。

 

 

それから2日後、アルヌスの丘から遠く離れた位置にある帝都では、元老院と言われる建物にて玉座に座っている人物に、発言場と思われる場所に立っている男性が質疑をしていた。

 

「大失態でしたな皇帝。帝国が保有する戦力の6割を損失! 皇帝陛下はこの国をどの様に導くおつもりか?」

 

「……カーゼル侯爵、卿の心中は察する。諸外国が反旗を翻し、我が帝国を攻め入ると言う恐怖に夜も眠れぬであろうが、この帝国に危機が訪れるたびに我が帝国は一丸となりこの危機を乗り越えてきた。戦に百戦百勝は存在せん。その為此度の責任は問わぬ」

 

皇帝の言葉にカーゼルは自身の責任を無かったことにする気か。と思いながら皇帝の話を聞いた。すると一人の頭に包帯を巻いた老人、ゴダセン議員が立ち上がり抗議する。彼はアルヌスの丘に進行した兵士の一大隊を指揮していた一人だ。

 

「しかし、どうするおつもりですか? 敵はたった2日にして我が遠征軍を壊滅させたのですぞ!」

 

「敵の方からパパパと音がした瞬間に、兵士達は血を出して倒れて行き、ヒューと音がしたと思えば、気づいた瞬間に辺りに巨大な火の玉が発生し、瞬く間に大勢の兵士達を氷の如く溶かしていきました。あれは私が今まで見たこともない魔法でした! 更に敵の後ろには巨人が大勢おりました。あのような敵とは真正面から戦っても勝ち目何てありませんぞ!」

 

「何をそんなに臆するのだ! 兵士が足りないならば属国から徴兵すればよかろうが!」

 

「そんな事をしても、ゴダセン議員の二の舞となるだけだぞ!」

 

「貴様らはそれでも帝国の人間か!」

 

元老院内の議員達があちらこちらで怒声を浴びせたりしていると玉座に座っている皇帝、モルト皇帝が手を掲げる。すると、騒がしかった議員達が一斉に静かになった。

 

「これ以上此処で討論しても何も始まらん。だが丘にいる者達が敵ならばそれを討たねばならん。周辺諸国に使節を派遣し援軍を求めるのだ。異世界からの賊徒を打ち倒すべく―――」

 

皇帝は立ち上がり高らかに手を掲げた。

 

「我々は連合諸王国軍を編成し、アルヌスの丘を奪還する!」

 

その宣言に、議員達は拍手喝さいをあげる。

 

『帝国万歳‼』

 

『モルト皇帝に勝利を‼』

 

カーネル侯爵は冷や汗を流しつつも、圧倒的カリスマを有する皇帝に、頭を下げる。

 

「陛下、アルヌスの丘は陣馬の骸で埋まりましょうぞ?」

 

そう言うとモルトはニヤリと口角をあげた。




次回
 連合諸王国軍

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