GATE~ヴァンツァー、彼の地にて、斯く戦えり~ 作:のんびり日和
~フォルマル伯爵邸・客室~
伊丹救出のために屋敷に侵入したダン達だったが、今は伊丹のいる部屋でメイド達と交流を図っていた。
「これ、どうやって脱皮を?」
「秘密です」
レレイはアウレアの蛇に興味津々に聞いていたり
「その服、見た事が無いです」
「これ? すっごく着やすくて伸び縮みするの」
テュカの来ているTシャツに興味を示すモーム。
「今朝の戦い拝見しましたが、栗林様の格闘技は鮮やかで素晴らしかったです!」
「そ、そう? いやぁ、それほどでもぉ」
マミーナに今朝の戦闘で栗林の動きを褒められ、栗林は終始顔を真っ赤に染め照れていた。
そんな中一際賑わっていたのは、メイド長のカイネとロゥリィの所だった。
「まさかこのような所で聖下にお会いできたこと、まさにエムロイの思し召しに感謝の仕様が――」
「もう、いいわよぉ。そんなに言わなくてもぉ」
と、カイネの長々しいエムロイ神教の話をするのに流石のロゥリィもタジタジだった。
「何だか、和んでしまいましたね」
「みたいだな。まぁ文化交流という事でいいでしょ」
伊丹の傍に居た古田達はそう言いながら出された軽食に手を付けながら和んでいた。
各々和んでいる中、カズヤも部屋に置かれていたソファに腰掛けながらその様子を見守っていると
「カズヤ様、どうぞですニャ」
そう声を掛けらそちらに顔を向けると、湯気が立っているマグカップを持ったペルシアが其処に居た。
「あぁ、ありがとうございます」
マグカップを受け取りそっと口に付ける。コップに注がれていたのは紅茶で、口の中にほのかに広がる苦みとうま味にカズヤは頬を緩ませる。
「美味しいですね、この紅茶」
「お口にあって良かったですニャ」
カズヤの傍でそう笑みをこぼすペルシア。
「立っていたら辛いと思いますし、どうぞ」
そう言いカズヤは横の空いている部分に案内する。
「それではお隣失礼しますニャ」
ペルシアはそう言いカズヤの隣に座る。
「カイネ様からお聞きしましたが、あの巨人はカズヤ様がご使役されているとお伺いしましたが、真実ですかニャ?」
「ん~使役と言いますかぁ、まぁそれに似たようなものですね」
カズヤは苦笑いを浮かべながら、そう答える。
「そうなのですね! 西門に駆け付けつくださってありがとうございましたニャ」
そう言いカズヤの手を握締め頭を下げるペルシア。突然手を握られお礼を言われ、カズヤは頬を染める。
「あ、いや。自分は当然の事をしたまでですから、その、あの、手を…」
「へ? っ!? も、申し訳ありませんニャ! い、いきなり手を握ってしまい!」
まるで真っ赤なトマトの様に顔を染めるペルシア。突然大声をあげるペルシアに周囲はなんだなんだ?と顔を向ける。そんな中カイネだけ眼鏡の淵をキランと光らせる。
「ペルシア、今は夜中です。それに帝国の方々もいるのですから、声を幾分か抑えなさい」
「も、申し訳ありません」
カイネに叱られシュンとなるペルシア。その姿にそれぞれ苦笑いを浮かべた。
部屋の中で文化交流が行われている中、その部屋の扉の前で一人の女性が佇んでいた。
部屋の前に佇んでいたのは、ボーゼスでその姿はネグリジェを身に纏っていた。
(此度の責任は私が取らなければならない事。これは帝国の、そしてピニャ殿下の名誉の為でもある。失敗は許されない)
そう、彼女が伊丹の部屋の前に居るのは伊丹に自身を差し出し無かったことにしようとしていたのだ。
(何時までも、此処に佇んでいても仕方がありませんわ。さぁ行きますわよ!)
そう自分に言い聞かせボーゼスは扉を開けた。
だが開けた先に広がっていたのは
「はい、ちーず!」
古田がそう言いながらカメラのシャッターを押す。その先には伊丹を中心に集まったダン達とメイド達が集合写真を撮っていた。
「いい感じです」
「えっと、どのようになっているのですか?」
「私も気になります!」
そう言い古田の元にマミーナやモームが集まり他は談笑し合ったりと和気藹々だった。だが誰一人ボーゼスの存在に気付いていなかった。
「……わ、私の事を無視ですの」
肩をプルプルと心の奥底から沸き起こる怒りに震えるボーゼス。そしてカツカツと足に力を入れながら伊丹の元に向かう。
談笑していて周囲はボーゼスが伊丹の元に着いた時に気付く。
「お、おい!」
そう誰かが叫ぶと同時に伊丹の顔目掛け、平手が飛んで行った。
次回予告
突如現れたボーゼスを捕らえ、ピニャの元に連れて行くカズヤ達。そしてどう言う訳かピニャはアルヌスへと同行し、直接指揮官に謝罪しに行くと言い出したのだ。
無論困る伊丹達に更に追い打ちをかける様にカイネがある事を言い出した。
次回
アルヌスへの帰還