GATE~ヴァンツァー、彼の地にて、斯く戦えり~ 作:のんびり日和
僅かな月明かりの中、帝国の兵士達はイタリカの警備に当たっていた。
「こうも暗いとゾッとするな」
「おいおい、ゴーストでも出るとか考えているのか?」
「だってよ、この街でどれだけの人間が死んだと思ってるんだよ。そう考えたらゴーストでも出てきて可笑しくないだろ」
「はぁ~、妄想のし過ぎだ。ほら、警備に戻るぞ」
そう言って兵士の一人は相棒を放置してさっさと進む。
「お、おい待ってくれよ!」
放置された兵士は慌てて後を追いかけていく。その様子を建物の影から覗いている者達に気付かずに。
「―――よし、行ったな。前進」
そう言い建物の影からダン達が出てきて向かいの建物の影に向かって音を立てないよう走り抜き建物の影に入り息を潜める。
「此処までは順調だな」
「えぇ。それでダン中尉、此処からはどう動くのですか?」
「そうだな。恐らく伊丹が連れていかれたのはフォルマル伯爵邸だろ。あいつ等の
「了解です、お気を付けて」
「そちらもな。……サージェント栗林、分かっていると思うが」
「うっ、分かってます! 無茶はしません!」
「よろしい」
ダンの念を押す睨みに栗林はまた無茶をすれば拳骨を喰らわされると恐怖し大人しく首を縦に振り富田達と共にフォルマル伯爵邸の東側に向かった。
残ったダン達も西側に向かって歩き出した。
帝国兵達の目を掻い潜りながらダン達は漸くフォルマル伯爵邸へと到着した。ダン達は素早く窓際の元に行き窓を確認すると、窓には木製の鎧戸がつけられていた。
「よし、パック頼むぞ」
「了解、直ぐに開ける」
「こちらトゥームストーン指揮官、富田そちらは?」
『こちらも到着、現在解除中です』
「了解、こちらは「解除成功」今解除できた。中に侵入する」
『此方も解除完了です。中に入ります』
鎧戸をコンバットナイフでこじ開け、中へと侵入したダン達。だがその動きを察知した者が居た。
ピクッ「何者かが鎧戸をこじ開け中に侵入した者が居ます」
伊丹の部屋に居たメイドの一人、うさ耳の女性が耳をピンと立て鋭い視線を浮かべていた。
「恐らく伊丹様のお仲間でしょう。此処にお連れしなさい。但し他の者なら何時も通りに」
「「畏まりました」」
カイネの指示に紫髪の猫耳女性、ペルシアとウサミミ女性のメイドは一礼し部屋から退出していった。
「あの、彼女たちは?」
「ご存知ありませんか? マミーナは
「い、いろいろな種族が居るんですね」
「亡き先代は開明的なお方でして帝国では迫害の対象であった亜人種も積極的に保護、雇用をされておりました。まぁ『趣味』といった所でしたでしょうか」
「そ、そうですか」(なんか、生きていたらその人とうまい酒が飲めた気がする)
伊丹はそんな考えを思っていると、近くに居たアウレアがそっと近づく。
「伊丹様、先代と同じ匂いがする」
そう言うと頭に居る蛇たちがするすると伊丹に近付こうとする
「こらっ!」
そう怒声が響きアウレアにチョップを繰り出すモーム。
「ご主人様への失礼は許しませんよ!」
「あうぅぅう」
「申し訳ありません、アウレアはメデューサ、つまり吸精種と呼ばれるモノで人の精気を糧に生きております。十分躾はしておりますが、ご注意を」
「は、はぁ」
突然の出来事に頭が追い付いていた伊丹は、ただ自分の身が危うかったという事だけは理解できたのだった。
次回予告
フォルマル伯爵邸内に侵入したカズヤ達。奥へと進むとペルシア達と遭遇してしまう。
そしてそのまま伊丹の部屋まで案内された。
その頃ピニャは、ボーゼス達を部屋へと呼び此度の一件をどう対処するのか語り出した。
次回
伊丹救出作戦 完了?~おう、お疲れ~