GATE~ヴァンツァー、彼の地にて、斯く戦えり~ 作:のんびり日和
そして此方も内容を変更しました。
盗賊団の討伐が終わり、カズヤは到着した東門に居る同じレイブン隊の2人に声を掛けた。
「お疲れさん」
『あ、隊長。お疲れ様です』
『災難でしたね』
「全くだよ。さて、俺は第3偵察隊の所に戻るからここは任せる」
『『了解!』』
カズヤは2人に捕らえられた生き残った盗賊団達の監視を任せ、輸送トラックがある南門へと向かう。
その機体の背を見送る2人は少し安堵の表情を浮かべながら見送っていた。
『何とも無そうで良かったですね』
『そうね。今回はたまたま良かっただけかもしれないけど、今後は分からないわ。だから私達で支えるわよ』
『えぇ、分かってます』
そう言い2人は監視をすべく海兵隊と自衛隊が捕らえた盗賊団の元へ向かった。
輸送トラックに機体を固定させ、カズヤはMP7を手に機体から降りる。
「カズヤ大尉、丁度戻って来たか」
そう声を掛けられ顔を向けると健軍が其処に居り、その隣には何故か目にタンコブの跡がある伊丹が居た。
「カーネル健軍。伊丹さんの身に一体何が?」
「さぁ? 俺がヘリから降りてきた時にはその状態だったぞ」
そう言われカズヤは首を傾げながら伊丹達の後ろの方を見ると、ロゥリィはそっぽを向きながら不機嫌な雰囲気を出していた。
「……なにしたんですか、伊丹さん?」
「……ただロゥリィをお姫様抱っこして避難しただけだ」
伊丹はそう言うと、カズヤと健軍はそれでか。と呆れた様な溜息を吐く。そして伊丹、健軍、ロゥリィ、ダン、そして通訳のレレイと東門に伊丹達を向かうよう指示したカズヤはフォルマル邸に向かった。
そしてフォルマル伯爵邸に着いた6人は謁見の間へと通されると、フォルマル伯爵領の当主、ミュイとメイド長。そして帝国のピニャとハミルトンが居た。そして派遣団と帝国との交渉が始まった。
そんな中、ピニャは心此処にあらずといった表情だった。
(戦いに勝てたのに、なぜこうも高揚感がわかん? ……あぁ、そうか。我々が勝ったのではない。エンセイダン、そして使徒ロゥリィが勝ったんだ)
そして次に遠征団達の戦い方にギュッと奥歯を噛み締めた。盗賊団をあっと言う間に掃討した力を恐怖した。
(この地はエンセイダンの物となる。それを民は喜んで向かえ入れるだろう。そうなれば……)
自身の今後の行方に思い詰めている中、ハミルトンは健軍と請願の事を交渉し合っていた。
「では、捕虜の権利は我が方に有ると心得ていただきたい」
「無論それで構いません。しかし情報収集の為3~5人程確保できればいい。それと、そちらの慣習に干渉する気はないが、できたら捕虜を人道的に扱って欲しい」
「ジンドウテキ? なんだそれは?」
ハミルトンは聞いた事が無い言葉に首を傾げると、通訳であるレレイが説明する。
「友人、知人の様に無下に扱わないと言う事」
「……友人、知人が町や村を襲い、略奪などするものか!」
「それが遠征団のルール」
レレイは若干強気に言うと、ハミルトンは勝利者は向こうだ。大人しく従おうと思い了承した。するとピニャはハミルトンの大声で意識が現実に戻っていた。
「すまん、ハミルトン。何処までいった?」
「あぁ、良かった。心此処にあらずといった表情でしたから心配しておりました」
そう言いながらハミルトンは遠征団が提示した条件を書いた羊皮紙をピニャに見せる。其処には捕虜から3~5人を連れて帰る事。帝国と遠征団との仲介をピニャ、そしてフォルマル伯爵家がその往来の保障を確約すること。フォルマル伯爵領及び、イタリカ市内でのアルヌス協同生活組合との交易に掛かる関税、売上、金銭の両替などに発生する負荷される各種の租税一切を免除することが書かれており、そして遠征団はすぐに此処を立ち去ることも書かれていた。
その文面を見たピニャは驚かざる負えなかった。
(勝利者の権利を放棄している。どう言う事なんだ?)
そう思いながら書面に自身のサインをし、ミュイのサインがされた後健軍のサインがされその場での話し合いは終わった。健軍達は帰ろうと一礼して去ろうとした瞬間
「待って欲しい」
そうピニャに呼び止められた。4人は体をピニャの方に向ける。
「なにか?」
「そちらの者はそなた達とは鎧が全く違うが、一体どういう事なのか教えてくれんか?」
レレイの通訳を聞いた4人は顔を見合う。ピニャが指しているのは恐らくカズヤであると。
ピニャはこの謁見の間に入って来た時から気になっていたのだ。2人は緑の斑模様の服を着ているのに対し、もう2人は砂色の服装に鎧。3人は装備が所々違うが恐らく同じと思えたが、一人だけ鎧が違う物で左肩の肩当にはナイフが装備されている。
「どうします?」
「別にやましい事などは無いから、言っても構わんだろう」
「分かりました。レレイ、通訳を頼めるか?」
カズヤはそう言うとレレイは分かった。と返す。
「自分は連合特地遠征団、機動中隊レイブン隊所属のカズヤ・ハミルトンと言います」
「……それで、何故そなただけ装備が違うんだ?」
「どう言ったらいいんでしょうか。簡単に言うならばあなた方が見たあの巨人を操縦する者です」
そう言うとレレイは、操縦=調教して使役と考えカズヤを調教師と言った。するとピニャ、そしてハミルトンの顔が真っ青に染まり始めた。
「……レレイ、あの人に何て言ったんだ?」
「ん? カズヤはあの巨人の調教師だと言った」
そう言われえぇ~。と困った表情を浮かべる。
「まぁ、あながち間違ってないだろ」
健軍はそう言いピニャに声を掛ける。
「では、そろそろ退室しても宜しいでしょうか?」
そう聞くと、ピニャは首を縦に激しく振る。そして6人は謁見の間を退室して行く。
するとメイド長のカイネはカズヤの名前を聞き、ある事を思い出しミュイに顔を近づける。
「ミュイ様、先ほどのカズヤ・ハミルトン様の事なのですが」
「何ですか?」
「実はペルシアがシャナを連れて帰ってきた際に何処に居たのか聞いたところ、そのシャナを見つけたのが先程のカズヤ様らしいのです」
そう言うと、ミュイは驚いた表情を浮かべた後、笑みを浮かべる。シャナはカズヤが南門で偶然保護した猫の名で、ミュイにとっては大切な家族なのだ。父が亡くなり、自分ではなく土地と財産にしか興味がわかなかった姉達とは違い自分に寄り添ってくれる数少ない家族なのだ。
「そうなのですか。またこのイタリカに来られましたらお礼をしないといけませんね」
「はい」
カイネは朗らかな笑みを浮かべながら、頷く。そんな中隣のピニャ達はと言うと
「ひ、ひ姫様。あ、あの者があの巨人を使役してる者だとすると……」
「う、うむ。絶対にあの者を怒らしてはいかん。わ、我々が滅ぶぞ」
そう言い、顔を真っ青に染めながら派遣団、特にヴァンツァーを操縦している者達は危害を加えてはいけないと心に決めたそうだ。
次回予告
協定の取り決めが終わり伊丹達はレレイ達が商談が終わるまで待っていた。そして商談を終えたレレイ達を車へと乗せ帰ろうとした時、事件が起きた。
次回
事件