GATE~ヴァンツァー、彼の地にて、斯く戦えり~   作:のんびり日和

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16話

門の外で激しい派遣団の攻撃が行われている中、東門の中では緊張状態が続いていた。その訳が

 

「……」

 

突如して出現したエムロイの神官、ロゥリィだ。彼女が突如空から降って来て地面に降りたつと同時に城門の外で攻撃が起きたのだ。

盗賊団達は突如現れたロゥリィに緊張で動けずにいたが、一人が体を無理矢理動かそうと大声をあげ、ロゥリィに斬りかかった。

 

「相手は小娘一人だ!」

 

「やっちまえ!」

 

そう叫びながら盗賊達はつられるように持っていた剣や槍などでロゥリィに向かった。ロゥリィは笑みを浮かべながら向かってくる盗賊達を次々に斬り捨てていった。

そして伊丹達も到着し車両から降りていき、太ももに付けている銃剣を取り出す。

 

「着け剣! ロゥリィを援護「でぇええい!!」あ、馬鹿野郎!」

 

伊丹は前線へと走りだしていった栗林にそう怒鳴るも、栗林は前線へと向かって行った。

 

「あの馬鹿!」

 

「仕方ない、2人を援護する! 突撃にぃ、前へ!」

 

そう言い伊丹と富田、そしてダンは突撃していった栗林とロゥリィを援護するように攻撃を開始した。

 

ロゥリィは攻撃してくる盗賊団達を薙ぎ払う様にハルバードを振るい、敵を次々に薙ぎ払って行った。すると巨体の兵士がロゥリィを握りつぶそうとしてきたが、その脇腹を栗林が銃剣を突き刺した。

 

「でぇぇぇえい!!」

 

そう叫び銃剣を刺した後、止めに引き金を引き7.62㎜弾を放ち銃剣を兵士から抜く。するとロゥリィを襲っていた兵士の何人かが栗林の方へと標的を替えた。

 

「どっせぇえい!」

 

栗林は斬りかかって来た兵士を斬り捨てると、背後から襲ってきた兵士の攻撃を64式のハンドガード部分で受け止め銃床で頭を殴った。すると64式のハンドガード部分についていた2脚がボロッと取れた。

 

「あ! やばい、武器陸曹にどやされる」

 

そう呟いていると背後から数人の盗賊団が襲い掛かってくるが、ロゥリィがハルバードを振って栗林の背後から迫ってくる敵を斬り伏せた。そのロゥリィの後ろから迫っていた敵を栗林はサイドアームで撃っていく。

 

「あの2人。完全に戦場の空気に呑まれている。不味いぞ」

 

ダンは周りに居る敵は把握できても、味方の指示などが耳に届いているのか疑問を持つ。

 

「えぇ。出来るだけあの2人の背後に敵が回らない様に援護するぞ!」

 

「了解!」

 

伊丹はそう指示し、栗林とロゥリィの背後に敵が回らない様に援護射撃を継続する。

 

部下達が次々に蹂躙されていく姿を城門上で見下ろす盗賊団の首領は悔しそうに顔を歪める。

 

「何を手間取っている! 相手はたった2人だぞ!」

 

そう叫んでいると背後からヒューと言う音が聞こえ振り向くと同時に爆発が起き首領は左腕と左足を失い、そのまま下へと落ちた。落ちた所は丁度ロゥリィの前で、ロゥリィは落ちてきた首領に何の興味も無い様な目で見ていた。

首領は残った手をロゥリィへと伸ばしながら口を開く。

 

「こ、こんなのは戦いではない。そ、そうは思わんかエムロイの神官?」

 

そう問うもロゥリィは何も言わず、ただ持っていたハルバードを振り下ろし首領に止めを刺した。

 

「しゅ、首領が!?」

 

「お、落ち着け! 隊列を立て直すんだ!」

 

兵士達は首領が死んだことに、どよめきが走りながらも楯を構える。伊丹はその光景に呆れているとコブラが飛来し門内が見える位置へと移動すると、伊丹の携帯無線機に無線が入った。

 

『ハンター1から3Rec。これより門内を掃討する。10秒以内に至急退避しろ。繰り返す至急退避しろ! 10…9…』

 

ハンター1からのカウントダウンに伊丹と富田は顔を見合い、すぐさまロゥリィと栗林の元へと向かい回収に向かった。

 

「ダン中尉! 援護を!」

 

「分かっているから、急いで行け!」

 

そう叫び、ダンは伊丹と富田に気付いた盗賊団に向け持っていたM416A5を向け引き金を引く。

 

 

【挿絵表示】

 

 

そしてダンの援護を受けた伊丹と富田はロゥリィと栗林を回収し馬防柵の内側へと戻ってくる。

 

『3…2…1…ファイヤッ‼』

 

そう無線が入ると同時にコブラのM197三砲身ガトリング砲が火を噴き、門内で楯を構えていた盗賊団達は次々と蜂の巣にされていった。突然のコブラの攻撃に馬防柵の内側に居た民兵達は唖然とその光景を見ていた。そして暫くしてコブラの攻撃が止み、土煙が晴れると其処には血の海が広がっており生きている盗賊団はほぼ皆無だった。

 

「ば、化け物……」

 

高い位置に移動し指揮を出そうとしていたピニャの横に居たハミルトンはそう呟いた。

 

「全てを叩かれていく。……何者にも抗えない絶対的力。誇りも名誉も全てを一瞬で否定する。……こ、これは女神の嘲笑なのか?」

 

ピニャは茫然とその光景を見ていた。

その頃、城門の外ではレイブン4に守られながらイタリカ城門まで到着したミスフィット隊とヒューイに搭乗していた自衛隊員達が降りて来て、降伏した盗賊団達を一か所に集め始めていた。

 

「こちら用賀。敵集団の殲滅を確認。送れ」

 

『了解した。レイブン3、他に敵はいるか?』

 

『こちらレイブン3。ほぼ殲滅されているようです。逃亡を始めていた敵も上空からの攻撃、更にレイブン4の攻撃によって殲滅されているようです』

 

その報告を聞き健軍は『了解だ』と返し、自身が搭乗しているヘリを地表に着陸させた。

外の制圧がほぼ終わり始めた所、東門にはレレイや黒川達が居た。彼女達が居るのはレレイが派遣団の事をもっと詳しく見たいと南門からやって来たのだ。テュカや黒川はそのお供だ。だが既に戦闘は終わっていた。

 

「ん? サージェント黒川。何故ここに居る?」

 

ダンはテュカやレレイ達を連れ前線に来ている事に少し怒った顔を浮かべていた。黒川はすぐに姿勢を正しを訳を話す。

 

「レレイが近くで見ると言い、一人で此処に向かった為慌てて追いかけてきたのです」

 

「レレイが?」

 

そう言いダンは目線をレレイに向けると、レレイはコクコクと首を縦に振った。ダンははぁーー。と呆れたため息を吐き分かった。と言い黒川に顔を戻す。

 

「……確かサージェント黒川は医療資格を持っていたな?」

 

「は、はい」

 

「彼女達の護衛は俺が代わるから、負傷者達の手当てを頼む」

 

そう言い顔を馬防柵付近にいる市民達へと向けた。其処には斬りつけられ血を出している者達が大勢居た。

 

「了解しました」

 

そう言い黒川は急いで負傷者達の元へ向かう。するとその傍に富田と栗林がやって来た。

 

「ダン中尉、援護感謝します」

 

「あぁ、お疲れ。……それと」

 

そう言いながらダンは栗林の元へ向かい、頭頂部に向け思いっ切り拳を落した。

 

「いだっ!!?!?」

 

「敵に突撃しに行って死ぬ気か、お前は!」

 

ダンは怒った表情を浮かべそう怒鳴った。栗林は本気で怒られた事にしょんぼりとなり「す、すいませんでした」と謝った。隣にいた富田は何とも言えない表情を浮かべ、何も言わなかった。

 

「お前が万が一死んだら、悲しむのは俺達だけじゃない。お前の家族や友人達も辛い思いをする。二度と突撃するような真似はするなよ?」

 

「……了解しました」

 

そう返事が返され、ダンは宜しい。と言い体を返す。

 

「……だが格闘の腕は良かったぞ」

 

そう言ってレレイ達と共にその場を離れて行った。栗林は怒鳴られた後に突然褒められた事に少しきょとんとした表情を浮かべた。

すると隣にいた富田が声を掛けた。

 

「栗林、もうやるなよ?」

 

そう声を掛けられ、直ぐ苦笑いを浮かべ答えた。

 

「うん……。あそこまで中尉に怒鳴られたもん。やったらまた怒鳴られるからね」

 

そう言い手元にある銃に目線を向けると、自身の64式が2脚の破損以外にもバレルが曲がっている事に気付いた。

 

「……とみちゃん」

 

「どうした?」

 

「私、ダン中尉以外にも確実に怒られる人が出来ちゃった」

 

そう言い銃を富田に見せる栗林。それを見た富田は呆れた表情を浮かべた。

 

「……まぁ、こってり絞られろ」

 

そう言われ栗林は、やってしまったぁ!と頭を抱え空を見上げた。富田は呆れた様なため息を吐いていると、その背後に市民達がやって来た。

富田は体の向きを変え、市民の方へと向く。

 

「貴方方のお陰で街は救われました。貴方方は何処の軍隊なのですか?」

 

「我々は連合特地遠征団です」

 

そう言うと市民達は「エンセイダン……」と街を救った軍隊の名を呟く。

 

「―――エンセイダンとは一体何者なのだ」

 

ピニャはそう疑問を零しながら、派遣団達を見下ろしていた。




次回予告
戦闘が終わり、カズヤは機体から降りてフォルマル伯爵邸へと伊丹達と向かう。そこで今回の捕虜についての相談が行われた。

次回
協定

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