「それで主任。話ってなんですか?」
「おお、そうだったそうだった。
実はだね、上から話があったんだ。
それはF因子による戦線拡大を以って、君には何種類かの星を担当してもらうことになった」
「つまりその何種類の星に、私が固定で赴くということですね?」
「そういうことさ!それにその世界の主人公を見つけて、協力体制を築けば非常に戦力になってくれる。
何せ主人公は勝つのが仕事だからね。全宇宙の悪であるフォーリナーは、主人公とEDFの敵だ。
だから顔見知りになっておけば、他の隊員が行かなくてもいい。専用の人が行けば、効率が上がると上が言っている」
「確かに効率的です」
私はさすがと思う。
今はストームチームが、上層で采配を振るっている。
おかげで撤退を許可してくれるし、増援を要請から許可してくれる。
更に状況をしらせるカメラとの連携で状況を把握でき、そこから宇宙転移技術を用いて隊員を一瞬で転移させてくれる。
基本的にただでさえ少ないレンジャーを救出することが、増援として派遣されたEDF隊員の使命である。
犠牲の大小と敵の量と強さで、撤退を見極める。
これは現場に居合わせた隊員へ増援が言う言葉である。
今地球の地下や宇宙転移してくるフォーリナーの逐次投入に、EDFが出動して何とかしてきた。
だが他の宇宙世界で敵の勢力を減衰させることも、EDFの役割なんだ。
だからこのように効率的に、その世界と向き合う主人公と仲良くなった隊員を固定化して送ろうと画策しているのだ。
私が拝命したのは、巨人の世界・花の世界・魔法の世界・魔砲の世界だ。
他にもランダム宇宙転移で、主人公と共闘することがあればそちらにも行くとのこと。
「さて、結城!出動だ!」
「はっ!」
真っ黒な深夜。
月明りが周囲を照らす中、私はこの中世ヨーロッパっぽい所に来ている。
私がここに来た理由は、少数のフォーリナーがこの街に潜んでいるという報告を受けたからだ。
レーダーに敵影はない。
本部は間違ったのか?
いや今までレーダー圏外はいつもの事だ。
それに今まで最初からフォーリナーが、現場にいたことはなかった。
基本的に現場ではその世界の住人と会話して、状況の確認と把握を行い来たるべき脅威に備えていた。
だから今私が行うべきは、ここが私が知っている世界なのかどうかの確認だ。
私はフォーリナーの奇襲を恐れて、武器を構えたままにする。
こうでもしないと、冷静になって周囲に目を凝らす事なんてできないと思うからな。
……私は臆病だ。あの時から変わっていない。だが、確実に進歩はしているはず。
いや、状況と時代が変わっただけだ。外見が変化しただけで、中身は大それて変わっていない。
結局恐れたまま、前に進むことなんてできないんだろう。
嗚呼、しかし、うつむいたままじゃまともに前すら見れず、全うな道すら選べられない。
それだとただの犬死でしかない。気を持つんだ。
満月の二日前の月光に照らされながら、『AF-15―34』を構えて哨戒に出る。
負へ持っていかれる気持ちをなんとか表へ持っていく。
そんな中フォーリナーの昆虫共の足音が聞こえないかどうか、周辺の音を聞き分ける。
ふむ、何もないな。
あれから30分間捜索するが、何もいなかった。
私は居ないという事で、上層部に連絡を寄越したがそんなはずはないといってすっぱり切られた。
居ないもんは居ないんだよ。
仕方がないので、近くにある深夜でも開いているファストフード店に立ち寄る。
「いらっしゃいませ……え?」
「ああ、EDFだ。夜分にすまない」
EDFの紋章を見せて、私の存在をこの世界になじませる。
そしてこの場所とEDFの通貨規格が同じ円なのが幸いした。
おかげで簡単に食糧を得ることができる。
暫くはゆっくりさせてもらおうか。
少し経過すると、レーダーに新たな反応が出る。
それは青の表示だ。
EDF隊員?それにしては一人というのはありえない。
私はその場所へ赴く。
場所は郊外。
青点の表示は1だけだったが、急に赤点が7程増えた。
私はすぐに近くの木々に隠れ、『ボルケーノ3A―11』を構える。
ヘルメットの高倍率で、敵を拡大する。
そこでは男子二名が、とある建築物のステージ前で佇む男に集中攻撃している。
またステージ上には6名の女子が、泡のようなもので捕獲されている。
ステージ中央は女子一名が吊らされている。
他にも泡の前には、ちびっちゃいのが3体いる。
ふむ、男子二名は押されている。
そしてあの泡を作り出したのは、あの戦闘している男性だろう。
次に主人公だ。私たちEDFが味方するのは、今後戦略的に有利になる主人公側が良い。
だから主人公を見極めなければいけない。
……どうみても男子二名の方だな。
EDF隊員は以前であれば、フォーリナーを優先的に排除してきた。
しかし今後のため、主人公の仲間として認められるまたは、味方だと思われるための軍事介入は致し方なしという見解がされている。
だが変な誤解を避けるため、私はフォーリナーが出現するまで待ってみようと思う。
そうしなければ、何故助成したのだといわれ”主人公の加勢のため”という醜い応答をしなければならないだろう。
それとレーダー上の7つの赤点が気になる。
その赤点はステージの裏手のようだ。
私は前方ステージでの戦闘を無視し、ステージの裏手へ迂回した。
ステージの裏手には、ステージの建築上の設計によりあの男へ敵意を向けながら、嵌っている黒蟻が7匹いた。
有効射程は250M。敵との距離は150M。戦闘音による消音効果で、連射音はかき消されないが……やってみるか。
私はマザーシップから送られてくる映像を見ながら、連続で大きな音が発生するその時を待つ。
早速来た!少年一人が、容姿が変化した男性に猛烈なインファイトを仕掛けた!
この時しかない!
私は『AF-15―34』を構え、射撃する。
ステージの表側からは、猛烈な打撃音が聞こえる。
これくらいの大音量ならば、燃焼効率の良い火薬酸化反応音なんて無に等しい。
私はこの黒蟻共を、地獄に落としてやった。
<敵勢力1体が、そちらへ向かっています。敵勢力をレーダーに紫色で表示します>
クソッ見つかってしまったか……。
だが有能なマザーシップのおかげで、敵がどこからくるか分かった。
その間に、『ボルケーノ3A―11』に変更して、敵を待つ。
敵は私の右側面から仕掛けてきた。
「魔法を見られたからには、ヤらせてもらうゼ」
へんな色をした少女が、蹴りをかましてきた。
しかし見てから回避は、訓練通り。
そして爆破範囲から出たので、射撃し目の前の敵を爆散させる。
「お、なかなかやるナ」
そういうと少女は肉体が、軟体であるかのように腕を鞭やら縄として攻撃してくる。
しかしそれはライフルに変更して、射撃しハチの巣にさせてもらった。
さらに熱い弾丸のおかげで、その肉体の水分を奪うことに成功。
蒸発した腕を元に戻そうと再生しているが、そんな隙は与えない。
後方へローリングして、ロケランで射撃する。
レベルが上昇しているこいつの瞬間火力はすさまじいぞ?
ロケランの射撃でひるむのを抑えるため、ライフルに変更しながらタクティカルファイアを行う。
お父さんたちは制限なしで、この技術を使えるが私のような新世代の隊員は制限付きでこれを使える。
しばらく戦闘するが、無限に回復しているようなそぶりを見せる。
<結城!ミッションクリアしているぞ?帰還しないのか?>
<します。しかし、面倒なのに絡まれておりますので、倒すまで安全に帰還できません>
<わかった。じゃ、あとでな!>
主任からの連絡だ。
やはり奴らだけだったようだ。
しかしこんな量だけで向かえとは……上もなかなか、人使いが荒いじゃないか。
いやもしもフォーリナーの奴らが、主人公達へなんらかの被害を与えるとふんだのだろう。
ならば仕方がないといえるものだ。
それにF因子のこともある。
これが主人公につけば……悪夢だろう。
そしてその世界は、崩壊へ向かってしまうだろうな……。
っと私らしくもないな。私はEDFのレンジャー1結城だ。
フォーリナーを撃滅しつつ、その功績でフォーリナーの元軍隊を集めその集団波長か何かで敵本拠地を探るのが目的だ。
フォーリナーはEDFの敵。それ以外は障害物か餌だ。
たまに正義感を出して、市民を守るのは武力を持つ強き者の役目なんていっているバカがいる。
しかしフォーリナーを撃破しなければ、その市民が襲われている状況という根底を破壊できない。
私はそんなことはせず、フォーリナーを確実に追いやるため赴く世界のフォーリナーを撃破する。
功績なんざ、その過程で必ず手に入る。
だからいちいちそれを気にして戦うことはない。
さあ気持ちを切り替えるんだ。
主人公やいろんな世界とつながりを強固にし、様々な世界に干渉するという方向へEDFが方針転換しただけだ。
私自身の思惑の転換を強制されたわけではない。
私は帰還しようと、右腕にある腕輪の機能である帰還ボタンを押そうとする。
<キャリアーの侵入を確認。迎撃してください>
帰還しようとした矢先、新たな敵を運ぶキャリアーが出現。
ハッチを開いて、黒蟻の投入を開始する。レーダーに映りだす、数多のフォーリナー。
さらにそのフォーリナーは、結構ひどい方向に投下されている。
それはステージの表側。きっと主人公も気づいているだろう。
あ、雷。
それと高笑い。
敵と思われた少女はいつの間にか消滅していた。
私はすぐにフォーリナーとの戦場へ赴く。
戦闘が終わったばかりの少年少女を、そのまま放置することはあまり好きじゃない。
大人ならまだしも、これからが全盛期な子供を将来が潰えるような状況に押し込むことは、EDFの対フォーリナー戦線の保持に反する。
即座に行動を移す。
緊急回避を使って、ステージ前方へ移動する。
そして私は『ルールオブゴッド―5』を発動し、超高高度から扇状に白い光線を発射させフォーリナーを効率よく撃滅させた。
しかし効率よく撃滅しただけで、全滅させたわけではない。
撃破できなかった黒蟻は、ステージにいる子供たちに群がる。
しかし子供たちは、主に少年二人による健闘で黒蟻を漸減させ、遂には全滅させる。
私は子供たちの無事の確認とフォーリナーという存在について、ほかにもあるがそれらのことを伝えるためステージに近づく。ああ、キャリアーは去ったよ。
ステージにある観客席から、少年少女らに向かって歩いていく。
武装は解除できない。
そのまま歩いていくと、当然の如く警戒される。そりゃそうだろう。
「私はEDFのレンジャー1結城です。お怪我はありませんか?」
そういうと、警戒が解けた。
そして、少年の一人が代表して出てくる。
「けがは黒蟻にやられたものじゃないので大丈夫です」
「そうですか。実はあれは黒蟻ではなく、フォーリナーといいます。
端折れば、あれは世界の敵です。できるだけぶっつぶすか、武力を持っている組織に連絡してください」
「わかりました。ありがとうございます」
赤毛の少年はその見た目に似合わない口調を見せる。
しかしこの少年、どこかで見たことがあるような……。いや、関係ないことか。
簡単に世界の主人公に会うことなんて、そう都合の良いことはない。
それにその世界にとっての主人公がだれか、それは全く分かっていない。
自分たちで見出して、ともに歩むことしかできないのだ。
「質問よろしいでしょうか」
「はい、なんでしょう」
「先ほど結城と聞きましたが、EDFの方は不死身なのですか?」
「いや、我々にはすべての過去・現在・未来・位相・時空を跳躍・転移できる技術がある。
これを使い、すべての星にはびこるフォーリナーを駆逐している」
「なるほど。ということは、僕のことは知っているはずですね?」
「まあ、そうなりますね。しかしそういうことは、相手が知っていようがなかろうが、自分からしなければならない」
しばらく問答が続く。
その間少女らを帰宅させ、巨大な木の下で私と少年が向かい合う。
「僕はネギ・スプリングフィールドです。あの時から、幾年が経ちました。
あの時の僕は、酷く弱虫でしたが強くなりました。フォーリナーと悪魔が襲ってきたときより、強くなりました。
お兄さんはどうなんですか?僕と違って数日しか変化していないようですが」
「ネギ君。君が何を言いたいのか、今いち要点を掴めない」
「つまりですね……」
そういうと彼は魔法というものを放ってきた。
私は回避する。
見てから余裕だ。
彼の戦闘能力は、あの時からかなり成長しているようで、精神的な面が一番変化が著しいといえるだろう。
「僕は強くなりました。しかし、限りある力で、その場を制圧できるほど強くなっていません。僕はお兄さんを超えて見せる」
ネギ君の気合の入った技が、私に突き刺さる。
ミッションが終了した今、EDFに帰るのもいいけれどもこうやって何か目標を得ている者の指標になるものいいな。
APは299に減少する。結構威力が高く、あと一回食らえば死ねる。
「やっぱり強い。あの攻撃で、アーマーに亀裂もなにも入っていない」
「まあ待つんだネギ君。私は今仕事中でね。君の武者修行に付き合う暇はないんだ。
今も数多の世界で、数多の星が襲われている。
こうやっている間、罪のない者が殺されている。
これ以上はいられない。退散させてもらおう」
「あ、待って!」
私は帰還ボタンを押す。
「やあ、お帰り結城!」
「ただいま、主任!」
私は帰ってくるとそのまま食堂に向かい、腹を満たす。
この後主任のところへ行き、ほかの世界の動向をみる。
私が担当している世界は、うまくいっているようだ。
しかしそれでも、うまくいっていないところはうまくいっていないようだ。
例えばエアレイダー田中。
彼は文明と財産を破壊することに関してだけ、非常に長けている。
この文明と財産破壊は、規模が少ないほどいいが彼は武器レベルを上昇させすぎて、大破壊しか生まなくなっている。
おかげで立ち直れないレベルで、財政破壊を行ってしまっている。
これにより戦闘を行った国といわれるその世界の国の経済が、全くといって立ち行かなくなり対フォーリナーが上手くいっていない。
この結果は火を見るよりも明らかで、結構な数の隊員が彼の世界に投入されている。
というよりも確実にその世界を破壊しており、軍事バランスすら変化させているので主人公を把握できないまま世界大戦になっている。
「あー、やっちまっているな」
「うむ。あのエアレイダーの実力は高いのだが、如何せん破壊意欲が高すぎる。
現場のレンジャーから苦情が相次いでいる」
「FFをどうにかすればいいのでは?」
「戦場は地獄[Inferno]だから無理だ」
だと思った。
いや、普通だ。今までも、そういうのはあった。というより、FFのおかげでストームチームは生き残ってきた話がある。
だから今更この事に関してどうにかするということは、EDFの長所を消してしまいかねないのだ。
そうするとEDFの超技術を目の敵にしている各国の大国は、長所を消した瞬間に攻め込んでくるだろう。
FFがない恐怖よりも、無駄に突撃し消耗を強いる無能がいる方が気が楽なのは、攻め込む側にとって僥倖以外の何物でもない。
それに現在FFがあろうがなかろうが、愚か者は戦場でうつぶせで寝たりアーマーによる密造酒になってしまうだろう。
本当に今更だ。
「さて、次まで時間があるだろう。結城、休んできたらどうだい?」
「はい。お言葉に甘えて、休憩してきます」
武器を携帯しながら、近場にあるソファに座って次の出撃を待つ。
そしてその出撃は、4分後に舞い込んでくる。
このフロアに響き渡る警報。
だが私はその警報を、主任に言って取り消してもらう。
「私が担当する惑星ですね。行ってきます」
「うむ。
君に行ってほしいのはやまやまだが、この緊急事態は君にはちと荷が勝ちすぎる。
だから援護のための援軍をこちらで集めておくから、先に殲滅してきてくれ」
「そのお言葉は、私以外は無能と言っているのと同じではありませんか?」
「貴殿が行っている惑星は、どんな状況だとろうと君に一任されている。
それに現地でのコネクトもあるだろう。だから、貴殿以外は下士官と同等の扱いになってしまう」
つまりその惑星の事情を知っている者の言うことを聞かないと、痛い目に合うということだな。
なにせ一番最初に潜入して、痛い目を見たのはその本人だ。
だからその本人が味わった恐怖を元にした情報を、仲間に与えてその世界の常識をあてはめさせ郷に従わせ、そして本惑星での拗れや摩擦を少なくさせるための措置なんだろう。
「わかりました。行ってきます」
「うむ、では、健闘を祈る」
「らしくないですよ」
「だな、ハハハ!」
私は武装を確認して、宇宙転移場へ向かい技術技師に頼んで現地へ送ってもらう。
「……行ってこい」
「はい!」
さて、面倒な奴らを撃破してくるか。
近況報告。U=装備中。AP:1021
ロケラン:
『スティングレイM1―100』
U『ボルケーノ3A―14』
アサルトライフル:
『AF-14―100』
U『AF-15―39』
後方支援:
U『ルールオブゴッド―5』
フォーリナー:
『マザーシップ―6』(飛行ドローン5―1/飛行ビークル5―1/最大形態変化3)
『アルゴ―1』
全体改良:
『最大弾数強化―1』
『リロード速度強化―1』
他:
『制御温室』(アプリコット/キンギョソウ/シャボンソウ)
―――
「ネギ!何、あこがれの人にきつく当たってんのよ!」
「だって、6年経ってすべてが変化していないなんて思わないですよ!」