モフモフ…モフモフ…モフモフ…モフモフ…モフモフ
椅子に座るベル、その後ろに立ったままひたすらにモフモフする静謐のハサン。
マスターのお願いでもあるため、顔を赤くしながらも大人しくしているベルは頭を動かさないように注意しながら用意されたクッキーや紅茶(ストロー付き)を口にする。
この状況ができるキッカケはベルが召喚されてからの挨拶回りに遡る。
「ベル、彼女が静謐のハサンだよ。呪腕さんや百貌さんと同じでハサン・サッバーハの一人。静謐ちゃん、今この子の挨拶回りを付き添ってるところなの。」
「この度召喚されたセイバー、ベル・クラネルです。よろしくお願いします。静謐さん、でいいですか?」
「はい、その方が呼びやすいでしょうし。よろしくお願いします。」
「はい、……っと、わわっ。」
素顔と衣装に顔を赤くしながらも、しっかりと挨拶をして次へ向かおうとしたベルを、仕掛けたの忘れられていた
咄嗟の出来事にマスターと静謐は顔を青ざめるが、
「す、すいません!?」
バッ、と真っ赤になりながら勢いよく飛び退けるベルにアレ?と二人揃って首を傾げる。静謐の身体はサーヴァントにも効く猛毒が人の形をしていると言える程のモノであり、軽い接触でも効果はある筈なのだ。
「ベル、なんともないの?」
「へ?な、なにがですか?」
マスターが問うも、真っ赤になったままクエスチョンマークを頭に浮かべ問い返してくる。
静謐のハサンの特性を教えても、特に何も無いらしく三人で首を傾げていると、何処からともなく自称「万能の天才」ダ・ヴィンチちゃんが現れた。
「説明しよう!!ベル君のクラススキル『対異常』は静謐のハサンちゃんの毒にも対応しているのさ!!いくつかの実験でそれは立証済だからね。つまり、彼女はマスターと同じようにベル君と触れ合うことが可能なのさ!!では、私は忙しいからね、もう一人の私と新たな実験を準備中なんだ。去らばだ!!」
まるで徹夜明けのテンションで嵐のように去っていった背中をポカーンと見つめていたが、マスターはいち早く復帰し、ベルにこんなお願いをしたのだ。
「ベル、静謐ちゃんは草花とか小動物が好きなんだけど、さっき言った理由で触れることができないの。だからベルの頭を触らせてあげてもらえないかな?」
「えぇ!?………うぅ、分かりました。」
突然のお願いに少々悩んだものの、自分がガマンすれば良いだけだと判断したベルは受け入れた。
「ほらほら、静謐ちゃん、試しに一回触らせてもらおうよ。ベル、ちょっと屈んで?」
「は、はい。」
困惑する静謐をよそに話が進んでいく。ベルは目の前に静謐のヘソ部分があるためすぐに目を閉じる。マスターに手を引かれ伸ばされた静謐の手のひらがベルの髪に触れた時、彼女の胸にナニかが去来した。
モフモフ…モフモフ…モフモフ…モフモフ…モフモフ…
無言でモフり続ける彼女に、ウンウンと腕を組んで満足げな顔をするマスター。こうして、時折静謐の部屋でベルをモフモフする時間が設けられた。
以来、ほぼ毎日誰か(サーヴァント、職員の女性陣)の部屋に招かれてモフモフされるベルであった。様々な話しを聞けたり、ファッションショー(何故か女性物byメディア×2)をさせられたりと色々有るそうだが、大半はベルにとっても有意義なモノらしく、楽しげである。
飽きることなく、彼女はベルをモフり、二人で穏やかな時間を共有する。次の戦いへと備え、心を充実させる。
まだ、マスターの旅は終わっていないのだから。