特異点ではどれだけの移動距離があるか分からない、その為の手段として馬を選択するのは必然だろう。まさかずっと走る訳にはいかないし、マスターにも負担がかかる。
殆どのサーヴァントは経験があるが、ベルは馬を引いた事はあっても乗ることはあまり無かったらしい。
まずは二人乗りで感覚を掴み、馴れたら一人で。という手順だ。
「背を丸めるな、バランスが悪くなる。それに馬を信用しろ、馬はそれを察するぞ。」
「あの、でもですね。ランサー・オルタさん。」
「なんだ。」
「あの、胸が当たって気になるんですけど。」
「そんなことか、一々気にするな。私は気にならん。」
「僕が気にするんですよ~。」
背の高さからオルタの方が後ろに座る形になる、当然その胸がベルの後頭部にずっとムニムニポヨポヨ当たるため、年頃の少年としてはどうしても気になってしまう。
「私が前に座ってはお前の訓練にならないだろう。そもそもこんなもの脂肪の塊だ、戦いには邪魔になることも多い。」
特定の女性にケンカをガッツリ売る発言だが、周りには誰も居らず安心だ。
しかし胸だけがベルの集中力を奪っている訳ではない。
姿勢の関係でベルの体を包むように腕を回してベルの手ごと手綱を掴んでいるし、馬に乗る以上足を開くために足も密着し、ベルの後ろ半分はオルタに密着していると言っていいだろう。
「ふふっ、なんだ。戦いの時はあんなに勇ましいのに私と触れ合うだけでこんなに真っ赤になるのか。」
「あうあう。」
ポンポンと片手で耳まで赤く染めたベルの頭を優しく叩く。
「本当ならもう少し後にしようと思っていたが気が変わった、私の胸が気にならない程度に荒療治といこうか。」
「あ、あの、ランサーオルタさん?何をする気なんでしょう。」
「言っただろう、荒療治とな。なに、少しラムレイに早駆け
させるだけだ。」
「ラムレイの早駆けって僕より速いじゃないですかぁ。」
「(なんだこの感覚は、このもっとベルを困らせたいという感覚は。そうか…これが萌えというやつか。)」
若干涙目になりつつあるベルに、怪しげなナニカを悟りそうなオルタはそれを微塵も
「(ぐ、ダメだ。これ以上は私が持たん。)」
そこそこの距離(ラムレイからすればほんの数キロ程)で歩行に戻らせる。しがみついていたベルは慌てて離れ、降りてペコペコと頭を上げ下げする。
「す、すいません。ランサーオルタさん、僕のためにしてくれたのにずっと目を閉じちゃってて。」
「いや、私も少し急かしすぎた。次からは徐々に馴れていこう。」
「はい!!次もよろしくお願いします!!」
こうして本日の乗馬訓練は終了した。
しかし、オルタが一人前と認めることは無いだろう。
特異点の移動中は自分の前に座るベルの頭を独占してモフるために。
自分は乗馬したことないんでその辺テキトーです。
はたしてこんなんでイイのだろうか。
こんなんならまだ色々頭にあるけど。