カルデアで送るベル・クラネルの日常   作:自堕落キツネ

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エルドラドのバーサーカーと(殺)試合

彼女にとって、ベル・クラネルとは殺そうと思える相手の筈だった。

本人は知らなくとも、ゼウスに育てられ、ヘスティアの眷族である。つまりはギリシャ神話に関係する男だ。

世界が違い、血の繋がりは無くとも、ヘラクレスの甥に当たり、ハーレムを願う辺りがゼウスの価値観を受け継いでいる。

そう彼女は考えていた。怒りを抑えて彼の物語を読むよう、マスターに勧められるまでは。

 

読んだあと、彼女の認識は変わっていた。女性に弱いところはあるが、女性を軽んじてはいない。むしろ、自分より強い相手に惚れ込み、追い越そうと努力している。

女性は守るべき存在であるとは考えているが、それはあくまでも戦うチカラを持たない立場の者に対してだ。

現に、自分より強い相手に必要だからと悩みながらも手を借りている。

狐人(ルナール)の少女を助ける為に、多くのアマゾネス、つまり女性に全力でそのチカラを奮っていた。相手が死ぬことまで覚悟していたかは分からないが。

 

だからこそ、彼女は考えを変えた。

戦士として戦いたいと。全力をぶつけ合いたいと。カルデアには全力で戦える相手はいるが、彼女の過去を考えれば、適任者は限られてくる。ベルはそれに当てはまるのだろう。

マスターに頼み、自身の考えを訴え、戦いの場を作ってもらった。

 

カルデアのシミュレーションルームには、エルドラドのバーサーカーとベルの二人だけが立ち、中を見れる観戦室には、マスターやマシュ、二人の戦いを見ようと集まった者達がいた。なお、この話を聞きつけた何者かが大々的に周囲に広めたのがこれだけの観戦者が集った原因である。(おのれ、作家め。)

 

マスターが眼前にあるマイクで中の二人に声をかける。

 

『それじゃあ二人共、細かいルールは無し。どちらかが死んだら終了ね。概念礼装で復活できるからって結構無茶なルールだけど、仕方ないか。それじゃ、二人共思う存分暴れてね。』

 

勝負内容に思うところは有るものの、彼女の望みを叶えるのにこれは必要だろうと判断した。

 

「あぁ、全力でイクぞ。」

 

ガシャリ、と爪の付いた手甲と、ジャラリとそれに繋がれたトゲ鉄球を構える。

 

「はい!!」

 

こちらも、ガシャリと大剣を構える。

 

「ん?お前の武器はナイフだろう。何故それを使う。私を舐めているワケではあるまい。」

 

手を抜くワケでは無いだろうとその理由を訊ねる。

 

「はい。エルドラドのバーサーカーさんの武器を相手にするにはナイフでは難しいと思ったので、僕のもう一つの武器で戦おうと思ったんです。」

 

回避主体の戦闘方法のベルだが当然武器で弾くことも有る、だが彼女の武器が相手ではそれは困難であると判断した為に、ベルは武装を変えた。

 

「そうか、ではお喋りは終わりだ。イクぞ!!」

 

言葉の終わりと同時に接近する彼女。

同じタイミングでベルも飛び出し、丁度二人が立っていた場所の中間地点で激突する。

 

ハラハラしながら見守るマスターとマシュを他所にどちらが勝つか、賭けを始める観戦者達。(胴元は誰であろうか?後でマスターに〆られたそうだが。)

 

 

 

決着がついた後、ベルを気に入ったようで度々試合を持ち掛ける彼女の姿が見掛けられるらしい。

決着の結果?

それは二人だけの秘密だそうだ。(賭けをしていた為にマスターとマシュが怒り、なんやかんやとしている内に概念礼装による復活まで終わっていた。)


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