世界が俺を殺しにかかってきている   作:火孚

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打てば響き、そして始まる

「鯨澤、今日の模擬戦は棄権してくれ」

「……は?」

 

 

 翌日、奇跡的に一回戦突破を果たした俺たち三五小隊(ざこしょうたい)の次の対戦相手にして、よくよくタケルくんに突っかかってくるある意味因縁の相手ともいえる霧ヶ谷京谷率いる一五小隊との対戦直前。鳳と一緒に神妙な顔つきで俺の前に来たタケルくんが、脈絡もなくそう告げてきた。

 当然俺には意味が分からず間抜けな声が漏れるが、二人は真剣なのか表情一つ動かさない。

 

 

「ごめん、ちょっと意味が分からないんだけど……なに、どういうこと?」

「巫山戯ているわけではないんだ、鯨澤。今は詳しく話している時間は無いのだが、兎に角次の模擬戦には出るな。危険だ」

「いや、だから突然そんなこと言われても……」

 

 

 今度は鳳から棄権するように言われるも、やはり説明はなく要領を得ない。

 そもそも危険だとかいうの、今更過ぎませんかね。どうせ棄権しろとか言うなら、初戦から棄権させて貰いたかったものだ。その場合、一回戦を勝ち上がれていたかどうかは定かではないが。

 

 

「鯨澤。突然こんなこと言われて、混乱するのは分かる。だけど、頼む。俺達のことを信じてくれないか?」

「草薙……」

 

 

 真剣に、まっすぐな眼差しで俺を見据えてくるタケルくんに、俺はやれやれと溜息を吐いた。

 全く、言葉も足りない、証拠も示さない、だけど信じてくれ、とはね。本当に信じさせようという気があるのかはなはだ疑問になるな。

 

 

「……だけど、まぁ。そこまで言われちゃ、信じてあげないのは親友の名が廃るってね」

「……俺が言うのもなんだけど、本当に信じてくれるのか?」

「本当に言うのもなんだね……なに、実はからかっただけでした、とか?」

「い、いや、そうじゃないんだが! ……こんなにあっさりと信じてくれるとは、思わなくてな」

「そりゃ、草薙が言うことだし。逆の立場だったら、草薙は信じない?」

「信じる。信じた上で棄権はしねぇ」

「あぁ、うん。そういえばそんなお人好しだったね……取り敢えず、お言葉に甘えて棄権しようかな。今はこんななりだしね」

 

 

 タケルくんらしい返しに苦笑しつつ、俺は棄権することを承諾する。正直、模擬戦とはいえ相当に体力も喰う上に、今度の相手は霧ヶ谷の小隊だ。一回戦のようなだまし討ちが通用するはずもない。

 それに、この主人公二人が言うのだからストーリー的になにか危険なことが起きるかも知れない、というメタ的な考えもあった。

 態々危険に自分から飛び込むような真似はしない。普段ならタケルくんの近くが一番安全だと思えるけど、今回は公衆の場。前回のテロがあって、この会場にもプロの異端審問官がたくさん配置されてるのだ。観覧席が危険なはずがない。

 取り敢えず二人に応援の言葉を投げかけると、俺は控え室を後にして観覧席にまわった。ただ、他の皆が頑張っているのに見ているのは忍びないと、座ったのは一番前の席。

 ここからなら戦場がよく見回せるし、もしかしたら応援の声も届くかもしれない。まぁ、だからなんだって言われたら困るけど、なんとなく心苦しいし。

 双方の準備が整ったのか、司会が俺の棄権を告げるとすぐに試合が開始される。

 が、すぐに一部から巻き起こるブーイング。いや、なんでだよ。

 

 

「おいどういうつもりだ雑魚小隊ゴルァ! セナちゃんがいないお前らの、何処に見る価値があるんだ!!」

「そうだそうだ! てめぇらも一緒に棄権しちまえ!」

「一回戦をまぐれで勝てたからって、調子に乗ってんじゃねぇぞ! やっちまえ野郎共!」

 

 

 そんな罵声と共に、ガタッと席を蹴立てて今にも戦場に飛び降りんと男子達(バカ共)が気炎を吐く。清々しいほど馬鹿らしい動機で模擬戦に乱入しようと次々に走りだすも、会場の警備に当たっていたプロの異端審問官達にあっさりと鎮圧されて何処かへと引きずられていった。

 一体、彼らは何がしたかったのだろうか。なんだか俺の話をしていたような気もするのだが、全体怪我人の俺がいないからと言ってなんの不都合があるというのか。

 もしや、怪我人の俺が更に痛めつけられるのをみたいとかいう奇特な性癖の持ち主だったり? うわ、ちょっと鳥肌立ったわ。怖いから今後あいつらには近寄らんとこ。

 あほくさいことは早々に忘れることにして、タケルくん達の応援に全力を傾けるべく模擬戦に集中することにした。それはいいのだが、どうしたことか待てど暮らせど草薙君達に動きはない。まるで、何かに脅えるかのように死角を潰し、視界を確保し、備えている。

 

 

「草薙ィ! てめぇ、こそこそ隠れてどう言うつもりだ!? 正々堂々勝負してやろうってのに、何考えてやがる!」

 

 

 いっこうに動かないタケルくん達にしびれを切らしたのか、霧ヶ谷が物陰から姿を現し怒鳴り声を上げる。会場も同じ気持ちだったのか、動けとか戦えといった野次が方々から飛ばされてきた。

 だが、つきあいの長い俺ならよく分かる。タケルくんが霧ヶ谷に脅えるなんて事態はまずあり得ないし、これが何かしらの作戦という可能性は更に低い。タケルくんにそんな器用なまねが出来るはずがない。

 とすると、一体何を警戒しているというのだろうか。恐らく、模擬戦とは関係ないこと。そして、俺を棄権させた理由もそれと同じなのだろう。

 霧ヶ谷がインカムに怒鳴るように指示を出している様子を眺めながら、俺はどこかで感じる違和感の正体を探した。

 喉元まで出てきているのに、どうしても最後の一押しが足りずに答えが分からない。だというのに、何故かそのことに対して感じる焦燥感。

 ……いや、思い出せないと言うことは大したことでもないんだろう。そんなことより、タケルくん達のことを応援することの方が大事なことだ。

 俺は違和感を振り払うように頭を左右に振ると、改めて戦場へと視線を戻し。

 

 

──ずぎゅる

 

 

 そして、歪な水音を耳にした気がした。

 

 

 

 

 

◇     ◇     ◇     ◇

 

 

 

 

 

「ハレエエエエエエエルヤアアアアアアアアア!」

 

 

 俺が耳にした音が発生した直後、忽然と姿を消した霧ヶ谷を除く一五小隊の面々。そして、謎の茨に腹部を貫かれた霧ヶ谷の姿と、その身から茨を溢れさせる吉水明。更に、その溢れ出る茨から姿を現した男が大きな声で名乗りを上げるに至って、漸く固まっていた観客達が事態を認識し悲鳴を上げながら逃げ惑い始めた。

 

 

「ほーん……てっど……?」

 

 

 俺はその名を聞き、無意識に呟いていた。ホーンテッド。幻想教団(ヴァルハラ)の魔法使いであり、死霊術士(ネクロマンサー)

 聞いたことがある、どころではない。そう、俺は知っているはずだった。()()()()()()()知っていなければいけない名だった。

 

 

「なんでこんな重要なことを……ッ」

 

 

 ど忘れしていた、なんて言葉では片付けられない。俺はこれが起きるのを知っていたはずで、事前に何かしらの手を打つことも出来たはずなのだ。

 とはいえ、だ。幸いにもタケルくん達のおかげで、俺は安全な場所にいることが出来ている。ここに居れば命の危険にさらされることもないし、原作を照らし合わせてみるならばホーンテッドはタケルくんに無事撃退され、話はめでたしめでたしで幕を閉じるはずだ。

 そもそも、俺が居たところで足手纏いになるのが関の山だ。レリックイーターと契約しているわけでなし、何か特別な才能があるわけでもない。その上、怪我をしているとあってはただのお荷物。タケルくん達が解決するのを此処で待っていれば良いんだ。

 

 

「…………ッ」

 

 

 言い訳じみた言葉を心の中で並べ立てながら、俺は無意識に歯を食いしばった。

 待ってるだけ、ただ待ってるだけで良い。そんなの、俺がそうしたいからそうするだけだ。怪我をしているとか、才能が無いとか、そんなものは都合の良い言い訳でしかない。

 詰まるところ、俺は危険な目に遭いたくないから、身を挺して仲間を守る覚悟がないからこの場に残るんだ。

 ごめん、タケルくん。

 俺は何に対するものか分からない謝罪を心の中で呟くと、観客と共に逃げようと踵を返そうとする。

 

 

「──!?」

 

 

 その瞬間、ぞわり、と気色の悪い感覚が背筋を駆け抜け、俺は動きを止めた。

 今までに感じたことのないような、全身を何かになめ回されているかのような、不気味な感覚。

 その気配の元を辿り、後ろを振り返った俺は。

 先程まで模擬戦が行われていた、今は茨が溢れかえる戦場で。

 タケルくん達に向かって何かを喋りかけていたホーンテッドと。

 ()()()()()()()()()

 

 

──タンッ

 

 

 スタジアムに響く一発の銃声。それに続くように幾つもの銃声が重なり、ホーンテッドはみるみる穴だらけになっていく。

 ふと気が付けば、俺の周りにも何人もの異端審問官が銃を構えてホーンテッドを狙い撃っており、中にはドラグーンの姿まであった。

 

 

「ほら、君! ここに居たら危険だ、すぐに避難しなさい!」

「ぁ……」

 

 

 その内の一人に肩を叩かれ、俺は漸く固まっていた体を動かす。見れば既に最前列には俺の他に観客の姿はなく、異端審問官達がホーンテッドに向けて銃撃を続けているのみだ。

 緩慢な動作で再度ホーンテッドを見るも、既に不快な感覚は消えており、目が合うこともなかった。

 当然だ。何故ホーンテッドが俺のことを見る必要がある? あいつの標的は、マリだけだろうに。それともなんだ、俺が奴に狙われるようなことをしたとでも言うのだろうか。

 嫌な予想を振り払うように、一度目をぎゅっと閉じる。

 ふと、銃声がやんだことに気が付きそっと目を開けた。そこからの光景は、どこか遠くのところで起きているかのように現実味がなく、ひどく緩慢だった。

 あれだけの銃弾を受けたにも拘わらず、ホーンテッドは意に介した様子もなく観客席へと茨の鞭を伸ばして攻撃を仕掛ける。その攻撃は何かに弾かれ大きく軌道を逸らすも、逸れた先に立っていた塔にぶつかりそれを砕いた。

 崩れてくる瓦礫を()()()()()()()()()、俺は半ば確信めいた予感を脳裏によぎらせる。

 

 

──あぁ、これ今回も巻き込まれる奴だ。

 

 

 直後、俺の立っていた客席部分は瓦礫に押しつぶされ、足下が崩れていく感覚を確かに感じながら、俺の視界は巻き上がった粉塵によって完全に遮られた。

 

 

 

 

 

◇     ◇     ◇     ◇

 

 

 

 

 

 客席に攻撃を仕掛けたホーンテッドは、それが()()()()()()()()()()()のを見届けると、これ以上余計な邪魔が入らぬようにと結界を張り客席と戦場とを分断した。

 そして、薄ら笑いを顔に貼り付けるとタケルとマリの方に視線を戻した。

 

 

「全く、異端審問会の無粋な連中には困ったものだ。折角僕とマリさんが感動の再会を果たしたというのに、それに水を差そうとするなんて。けれど、これでもう邪魔が入ることはありません! さあさマリさん、遠慮無く僕の胸の中に飛び込んでくださいさあ早くさあさあ!」

 

 

 ばっと両手を広げてマリを見るも、当のマリはホーンテッドを脅えたように見るだけでタケルの後ろに隠れてしまう。

 それを見たホーンテッドはさも悲しいというようにオーバーリアクションを取ると、これまた大袈裟な仕草で天を仰いだ。

 

 

「嗚呼、嗚呼! 折角僕が敵地のど真ん中という危険な場所にまで姿をさらして迎えに来たというのに、愛しのマリさんはどうしても僕のことを思い出しては下さらないらしい。思い続けてきた二人の思いは、こんなにもたやすく引き裂かれても良いものか……? 否、断じて否! そう、これはきっと恐らく多分異端審問会がマリさんに何かしでかしたに違いない間違いない! ええい、異端審問会の悪行お天道様が許しても……って、今は僕のせいで隠れちゃってるのか。失敬失敬。ともあれ、この僕が今助けて差し上げますよ待っていてください愛しのマリさんあぁでも今はまだ役者がそろっていないのでもう少しかかりますがね!」

「長ぇしうるせぇ」

 

 

 一息でそこまで言い切ったホーンテッドに対して、タケルは敵意を顕わにしながらばっさりと切って捨てた。

 途端に詰まらなそうな表情になり、ホーンテッドは呆れたような溜息を漏らしながらタケルのことを見据える。

 

 

「これだから異端審問会は。愛しの二人の邂逅くらい黙ってみている堪え性もないのかね」

「本当に愛し合ってたら邪魔なんてしなかったかもな。だが、てめぇのは明らかに一方通行だストーカー野郎」

「ストーカー? この僕が? ははは、面白い冗談だな! 腹がよじれて勢い余って殺すところだったよ、クソガキ」

「っは、面白い。やれるもんならやって見ろよ」

 

 

──限り無き願いを持って

 

 

 タケルが紡ぐは、魔女狩りを始める為の第一声。姿を現す瑠璃色の騎士は、万能の刀剣を携え眼前の魔法使いへと鉄槌の矛先を向ける。

 

 

──魔女に与える鉄槌を!

 

 

 魔女狩り化を果たしたタケルは敵意と殺意をホーンテッドに向けるも、当のホーンテッドはそれを受け、受け流した上で飄々と笑っている。

 相棒のラピスによる分析でも、今のホーンテッドは力の大半を結界についやしていて、勝率は100%。万が一にも負ける可能性はないというのに、タケルはどこか薄ら寒さをホーンテッドに対して抱いた。

 タケルが攻撃を躊躇っていると、ホーンテッドがふと思い出したというように笑みを深め、タケルに向かって問いを投げかけた。

 

 

「そうそう、時にあの少年は元気かい?」

「……誰のことを言ってやがる」

「君と接点の深い少年と言ったら一人しか居ないだろう……あぁ、それとも()()()()()()()()()()いいんだったか」

「……ッ!?」

 

 

 その言葉に、タケルは目を見開いた。ホーンテッドの言葉に該当するような知り合いは、否、知り合いでなかろうとも該当する人間は一人だけだろう。

 タケルは益々殺気を尖らせると、ホーンテッドに対して今にも斬り殺さんとばかりに言葉を投げた。

 

 

「てめぇ、あいつに何かして見ろ……ただじゃおかないからな」

「そう怖い顔をするもんじゃないよ。まあでも、僕としては何かするつもりはなかったんだけど、ちょっと予定が狂ってね。もしかしたら今頃は瓦礫の下かもしれない」

「なんだと……ッ」

「落ち着けよ、僕としても不本意だと言ってるだろ。どっちにしろ最後には殺さなきゃいけないから、手間が省けたと言えば省けたのかも知れないけど」

 

 

 残念だ、と戯けて見せたホーンテッドに、タケルの視界は怒りで真っ赤に染まった。

 京谷や明、更にはセナにまで手を出されて大人しくしていられるほど、タケルは我慢強い方ではなかった。今は丸くなっているとはいえ、本来のタケルは熱しやすい性格。それがここに来て、限界を迎えていた。

 

 

「当然、覚悟は出来てるよなぁ……この外道魔法使い!」

 

 

 走馬刀(そうまとう)を発動させたタケルは、己にだけ許された加速した時間の中で、ホーンテッドへと斬りかかった。

 迷いはなく、躊躇いもなく、油断もない。ただ一刀のもとに斬り伏せるための、大上段に構えた必殺の一撃。

 ただ、そこにいつもと違うものがあったとすれば、それは焦りだろう。目の前の魔法使いをさっさと始末して、親友の元に駆けつけなければ。そんな思いから出た、ほんの数瞬にも満たない小さな隙。

 結果的に、その隙は加速した時間の中では大きな隙となっていた。動くはずのないホーンテッドが、目の光をぎらつかせて笑みを濃くするほどには。

 

 

「貫け、必滅の剣(ダーインスレイヴ)

 

 

 タケルが振るう剣速よりも尚早く、ホーンテッドが繰り出したのは純粋な突き。

 北欧の神話に綴られる相対した敵を必ず死に追いやり、決して的を違わず不治の傷を負わせる必滅の剣は、その伝承通りにタケルを意図も容易く貫いた。

 

 

「ガ……ッ!?」

 

 

 何が起きたのかを理解する前にはじき飛ばされたタケルは、胸の焼け付くような痛みとホーンテッドが構えている剣を見て、己が反撃に遭ったことを理解した。

 

 

『申し訳ありません、宿主。この可能性を考慮するべきでした』

「……なにが、起きた?」

『反撃を受けました。敵性個体が保有するのは、ロストタイプの魔道遺産です。名をダーインスレイヴ。敵対者を死に追いやり、やがては使用者をも破滅へと誘う呪われた剣です』

「なるほど、な……ったく、剣でなら、負けない……なんて、これじゃあいつに、どやされる……ッ」

『宿主……?』

 

 

 タケルは蹌踉めきながら立ち上がると、改めてホーンテッドをにらみ据えた。

 上には上が居ると、中等部の時に嫌と言うほど味わわされたはずだった。だというのに、そのことを忘れて相手を侮った結果が、この様だ。

 タケルは一つ大きな溜息を吐き、先程の一撃が肺を損傷させていたことに気が付くと、淡々とした口調でラピスへと声を投げた。

 

 

「ラピス、肺の穴を……塞げるか。呼吸が、乱れる」

『……確かに可能です。ですが、それは』

「いいから、やれ」

『……』

 

 

 タケルの声に、無言ながらもラピスは応えた。

 途端に、想像を絶するような激痛がタケルを襲う。肺に空いた穴を無理矢理埋めるために、ラピスはタケルが身に纏っている甲冑と同じ素材を使用した。そのせいで、内部を異物で弄くられる感覚と、何よりも本来の素材とは違う硬質なもので一部を形成された肺が、一呼吸ごとに鋭い痛みを訴えた。

 しかし、そんな様子をおくびにも出さず、むしろ目が覚めたとタケルはどう猛な笑みを浮かべた。

 

 

「ハンデとしては丁度良いだろ? こいよ魔法使い、第二ラウンドと行こうぜ」

「ハンデ? どうやら勘違いをしているようだね、魔女狩り。手を抜くべきなのは僕の方であって、君じゃぁない。君程度じゃ、僕にもナハトにも勝てはしないよ」

「っは、どうだろうな。やってみなきゃわからねぇだろ? 達人だって時には素人に負けるんだ。俺がお前に勝てたって、何も不思議じゃねぇ」

「……く、ははは! なるほど、確かにそれもそうだ! ならせめて、そのボロボロの体で僕を楽しませてくれよ!」

 

 

 愉快そうに笑い声を上げたホーンテッドは、まるで礼儀だと言わんばかりに仰々しく構えを取ると、タケルのことを見据える。対するタケルも、すべての痛みを無視して構えると、深く深く息を吐く。

 

 

「それじゃ、二ラウンド目だ……

 ――覚悟しろよ、魔法使い!!

 

「何処まで踊れるか、見ものじゃないか。

 ――遊んでやるよ、魔女狩りィ!!

 

 

 獰猛に吠えると、解き放たれた猛獣のようにお互いに一直線に相手へと突き進む。

 勢いを載せたお互いの攻撃は、二人の丁度中間で交差すると激しい衝撃を周囲にほとばしらせ、瓦礫や地面を吹き飛ばす。

 空気すら振動させたその衝突は、さながらその後に始まる激しい攻防の合図かのように、障壁の内側の隅々にまで低く響き渡った。




書ききってから気がつく、色々飛ばしてしまっている事実。
でも書き直しはしません。きっとなんとかなるでしょう(

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