……申し訳ありませんorz
1000字ちょいのSSです。
☆
――――――――――
「――――!」
パチリ、と彼女――――三納香撫は目を開けた。
同時に、二つの感覚が意識を刺激する。
まず一つが視覚。ボンヤリとした視界に、オレンジ色の微かな光に照らされた暗い天井が映り込む。もう一つは触覚。背中全体を包み込む様なクッションの柔らかい感触が心地良い。
一体、ここはどこだろうか。そう思った彼女はむくり、と上半身を起こすと、ゆっくりと首を旋回して周囲を見遣る。
どうやらビジネスホテルの様だ。
……そこで、左耳に、少女らしき誰かの寝息が、すうすうと聞こえてきて、ようやく状況を理解した。
意識はそこでかなーり酩酊していたのだが、気分が高揚していた自分は、まだまだイケると思い、日本酒を注文して、一気飲み。
――――意識は、そこで吹き飛んだ。
右手で拳を作る。それを軽く上げると、頭をコツン、と叩いた。
私のアホタレ。
そう自嘲しながら、首を隣のベッドへと向ける。代金を代わりに支払い、泥水状態の自分をここまで運んでくれた張本人は、艶やかな黒髪を生やした後頭部を向けて、寝ていた。
すうすうと聞こえてくる寝息は、普段の彼女からは想像できない程、穏やかで、可愛らしい。
(…………!)
そこで、香撫の中にある衝動が起きる。
――――頭を撫でたい。
唐突に湧き上がった欲求によって、自然と右腕が動いた。左隣のベッドで寝る少女の後頭部に、開いた手の平がゆっくりと伸びていく。
だが……
「香撫姉」
「!」
あと数センチで触れる、まさに寸前であった。
ピシャリと――――唐突に聞こえた低い声が、意識をひっぱたいた。伸ばされた右腕が一瞬、ビクッと揺れた後、ピタリと制止する。
「あたしを
続けざまに放たれた鋭い指摘に、香撫はドキリと心臓が飛び跳ねた。
確かに彼女は、自分の●●じゃない。あくまでビジネスパートナーの一人だ。でも……
「……夢ぐらい、見たっていいじゃない」
右腕を隠す様に自分の背中に回すと、ムスッと頬を膨らませて、ジト目で言い返す香撫。
「
だが、少女の返答はにべもない。後頭部を向けたまま極めて冷淡に、
「……イケズ!」
こんな奴の頭を撫でようとしたのが間違いだったか――――と、香撫はボスン、と勢いよく音を立ててベッドに上半身を倒した。
掛布を直すと、再び目を閉じる。
漆黒の闇が、自分の意識を覆い尽くすと――――何処か知らない世界へと、誘っていった。
☆
最新話(#10-C)の冒頭に書いていた文章でしたが、時系列がおかしなものになってしまい、作者自身が混乱を起こしたため、急遽番外編として投稿させていただきました。
お気づきいただければ幸いです。