魔法少女ゆかり☆マギカ(休載中)   作:hidon

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バレンタインデーネタを投稿するといったな、アレは嘘だッ!!

……申し訳ありませんorz

1000字ちょいのSSです。



  


     ▲ A番外  『夢の跡』

 

 

 

 

 

 

『香撫、別れよう』

 

 

――――どうして?

 

 

『僕は君と、うまくやっていける自信が無い』

 

 

――――どうして?

 

 

『君との●●を作りたくない』

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

「――――!」

 

 パチリ、と彼女――――三納香撫は目を開けた。

 同時に、二つの感覚が意識を刺激する。

 まず一つが視覚。ボンヤリとした視界に、オレンジ色の微かな光に照らされた暗い天井が映り込む。もう一つは触覚。背中全体を包み込む様なクッションの柔らかい感触が心地良い。

 一体、ここはどこだろうか。そう思った彼女はむくり、と上半身を起こすと、ゆっくりと首を旋回して周囲を見遣る。

 どうやらビジネスホテルの様だ。

 ……そこで、左耳に、少女らしき誰かの寝息が、すうすうと聞こえてきて、ようやく状況を理解した。

 彼女(・・)と焼肉屋に言った時、自分は馬刺しと牛刺をツマミに、生ビールとハイボールをグラス10杯は飲んでいた。

 意識はそこでかなーり酩酊していたのだが、気分が高揚していた自分は、まだまだイケると思い、日本酒を注文して、一気飲み。

 

 ――――意識は、そこで吹き飛んだ。

 

 右手で拳を作る。それを軽く上げると、頭をコツン、と叩いた。

 私のアホタレ。お金が無い(・・・・・)のにいくら何でも飲みすぎだ。あとで、隣のベッドに眠る雌狐から、いくら請求されるか分からないぞ。

 そう自嘲しながら、首を隣のベッドへと向ける。代金を代わりに支払い、泥水状態の自分をここまで運んでくれた張本人は、艶やかな黒髪を生やした後頭部を向けて、寝ていた。

 すうすうと聞こえてくる寝息は、普段の彼女からは想像できない程、穏やかで、可愛らしい。

 

(…………!)

 

 そこで、香撫の中にある衝動が起きる。

 

 

 ――――頭を撫でたい。

 

 

 唐突に湧き上がった欲求によって、自然と右腕が動いた。左隣のベッドで寝る少女の後頭部に、開いた手の平がゆっくりと伸びていく。

 だが……

 

 

「香撫姉」

 

 

「!」

 

 あと数センチで触れる、まさに寸前であった。

 ピシャリと――――唐突に聞こえた低い声が、意識をひっぱたいた。伸ばされた右腕が一瞬、ビクッと揺れた後、ピタリと制止する。

 

「あたしを()だと思うなよ」

 

 続けざまに放たれた鋭い指摘に、香撫はドキリと心臓が飛び跳ねた。

 確かに彼女は、自分の●●じゃない。あくまでビジネスパートナーの一人だ。でも……

 

「……夢ぐらい、見たっていいじゃない」

 

 右腕を隠す様に自分の背中に回すと、ムスッと頬を膨らませて、ジト目で言い返す香撫。

 

叶わない夢(・・・・・)よ。諦めなさい」

 

 だが、少女の返答はにべもない。後頭部を向けたまま極めて冷淡に、真実(・・)を告げてくる様に、香撫の神経が逆撫でされる。

 

「……イケズ!」

 

 こんな奴の頭を撫でようとしたのが間違いだったか――――と、香撫はボスン、と勢いよく音を立ててベッドに上半身を倒した。

 掛布を直すと、再び目を閉じる。

 漆黒の闇が、自分の意識を覆い尽くすと――――何処か知らない世界へと、誘っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 最新話(#10-C)の冒頭に書いていた文章でしたが、時系列がおかしなものになってしまい、作者自身が混乱を起こしたため、急遽番外編として投稿させていただきました。

 お気づきいただければ幸いです。

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