一応、Bパートから一週間後ぐらいの話ですが、今後の本編の展開次第では時系列的に矛盾が発生するかもしれません。
☆
あれから一週間後のことです。
再び、纏さんと食事をする機会があったので、また聞きたかったことを聞こうと思います。
「纏さんって……彼氏、いるんですか?」
あの時、纏さんのお姉さんがポロリと溢した人物。魔法少女の彼氏さんってどんな人なんだろう。あの日から私はとても気になっていました。
私が前ここで頼んだものよりも5倍はあろうかという、ジャンボサイズの和風ハンバーグを、それはもう幸せそうな満面の笑みで、頬張っている纏さんですが、
尋ねた瞬間――――ピシッ! と石みたいに固まってしまいました。
それを見て私は「あ、マズイ」と思ったのですが、もう逃げられません。
「もしかして…………、あの、その、ごめんなさい」
居ないんですか? とはっきり聞くのは止めました。
悪いことをしたような気がして直ぐに謝りましたが……直後、纏さんの身体がワナワナと震え出すのです。
私はどういう訳か、その姿が噴火前の火山を彷彿とさせてなりませんでした。
ぶっちゃけ、もう逃げたかったよっ!!
「……縁ちゃん……」
「……っ!!」
纏の口から、別人とさえ思える様な低い声が響きます。私は背中に氷を当てられたみたいにゾッと震えました。
ですが……、
「彼氏はね……居るよ」
「はいぃっ!! ……って、へ?」
てっきり怒られるっ!と思って、身構えましたが、まさかの答えが返ってきたので思わず首を傾げてしまいます。
では何で、そんな怒ってる様な雰囲気を纏わせているのか――――その時は理解できませんでした。
「でもね、縁ちゃん」
纏さんが顔を上げます。
満面の、すっごく良い笑顔でした……。でも、その上半分にはドス黒いオーラが掛かっています。声も低いままです。
(ひいいいっ!!)
いつも笑顔で明るい女神みたいに優しい纏さん☆
……の、まさかの暗黒面を引き出してしまったじゃないかっ!! どーすんの私!? ねえっ!?
と、頭の中で私は悲鳴を上げました。
「その人、高校卒業したら医学校希望してるの、だから、私は彼の負担にならないようにデートの時は極力彼に合わせるようにしてるんだけど……それってすっっっごくっ!! 辛いんだよ……。分かる??」
「え、えっと……」
同意を求められましたが、生憎私には彼氏が居た事無いのでまっっったくっ!! 理解できません。
「それにね、頭の良い人だから、ニーチェとか福沢諭吉とかすっごく難しい話をよくしてくれるんだけど、正直クッソどうでもいいんだよね。それにご飯の時だって、こっちはガッツリ食べたいのにイタリアン行こうとか言い出して、お洒落なんだけど高そ―なお店で茶碗一杯分ぐらいのパスタしか食べられなくって、更にそれとサラダだけで千円以上取られたりボッタクリもいいとこだよねしかも聡史くん身持ち固いからこっちがアタックしてもあんまり反応してくれないしもう付き合って一年は経つんだけど未だに仲が進展しなくって正直私何のために彼女やってんだかそう考えると辛いよでもあとであいつ一回シメ」
私は、『あ、もう限界が近いな』、と思いました。
「纏さんっ!! ストップスト――――――ップ!!」
これ以上言わせたら歯止めの効かない事態に発展すると本能が感じたのかもしれません。
――――噴火したら、間違いなく最初に被害に遭うのは私なので……そうなったらこの世からいなくなっていたことでしょう。
大声を挙げて止めました。
他のお客さんから注目を浴びるのは恥ずかしかったですが……それよりも自分の命の方が大事だよっ!?
「あっ……ご、ゴメンね」
我に帰った途端、纏っていたオーラが消滅しました。わたわたと慌てながら咄嗟に私に謝る纏さん。
「い、いえ……いいんです……っ」
――――大惨事にならなくって本当に良かったぁ~。
私はぜえ、ぜえ、と息を切らしながら、そう思い、テーブルに突っ伏すのでした。
以上、息抜きで書いたネタでした。