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ここ最近、学校内に於ける纏さんは、よそよそしかったと思う。どんな感じだったかっていうと……
『纏さ―――――ん!!!』
放課後、学校内で姿を見かけたので大きな声で呼びかけると、
『アーータイヘンダーキョウハヨウジアッタンダーハヤクカエンナキャー!』
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
あからさまに嘘だって分かる言葉。焦った(つもりの)表情で騒ぎながら両足をグルグルの渦巻きにして去っていっちゃった。
いきなり逃げられたらこっちはポカ~ンってなるしかないよ!
――――
『纏さん!』
ある日、街中で纏さんを見つけたので私は大きな声を掛けた。
『ビクゥッ!!』
と、全身が幽霊でも遭遇したかのように、大きく震える。……って誰が幽霊だ、失礼な。
恐る恐る振り向いてきたので、
『奇遇ですね! 学校じゃ中々話せないですし、ちょっとそこで話でもしませんか?』
たまたまチェーンのカフェが右側に見えたんで、そう誘ってみたんだ。
『え、えっとね……、きょ……きょ……、今日はカフェラテ……』
『……ここのカフェラテ、美味しいんですよ?』
でも、目線を私に合わせず、もにょもにょとする様子の纏さん。
私はどうして普通に喋ってくれないのかな、と怪訝に思いながらも、そう伝える。
『そうなの? ……じゃなくって、カフェラテをね……えっと2リットル』
『2リットル……へ?』
どう聞いても、今考えながら喋ってますよねっ!? とツッコミたくなった。
『2リットル……そうだ、カフェラテ2リットルも飲んじゃったんだ。……だからカフェ行っても飲めない……ってそうじゃなくって……えっと……』
冷や汗をダラダラながら、一生懸命誤魔化しの言葉を考えている様子の纏さんだったけど―――
『ここ、カフェラテ以外も、美味しいですよ?』
私がそういった途端、限界が来た。
『……とにかくっ!! 2リットルって言ったら2リットルなんだってば―――――――――ッッ!!!!』
『纏さ―――――んっ!!??』
周囲の通行人の目線も関係なく、もはや嘘どころか正気を疑うしかない言葉を叫びながら、足を渦巻きにして走り去る纏さん。私が驚きながらも呼び止めようとするけどもう米粒大に小さくなっちゃった。
――――以上から、私が分かったのは、纏さんという人物は絶望的に嘘が下手くそだということです。
巻き込みたくない気持ちは分かるけど、せめて自分と話す時は普通にして欲しかった私にとっては、ちょっぴりガッカリする出来事でした。
――――ちなみに、全力疾走する纏さんですが、誰よりも豊かに実った二つの
眼福。
……マミさんみたいなキャラにするつもりだったけど、辞めました。