冒険者共   作:サバ缶みそ味

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 あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~

 茶熊学園3期の予選が始まりましたね‥‥やはりオスクロルさんは上位に…
 そしてコヨミとリネアを投票していたのにまさかいきなり予選でぶつかるとは…あぁ、非常也…


◎3 オーバードライブ紅蓮①

「たぬきち、ここで問題でーす」

 

 潮風がなびく大海原。その海を船で渡っている最中、シュスイは釣り糸を垂らしながら相棒となった星たぬきことたぬきちに尋ねた。たぬきちは何のことかと不思議そうに首を傾げる。

 

「キュキュ?」

「今の状況は何て言うでしょーか?1、まいご。2、マーイーゴ。3、マイゴゥ」

「キュー…」

 

単純な問題なのか、それとも捻った問題なのか、たぬきちは唸りながら考えた。当のシュスイとはいうとただ釣り糸を垂らしたまま水平線のその先を見つめてるままであった。

 

「キュキュッ!」

「ぶっぶー。正解は58番のすっげえ迷子でしたー」

「キュッ!?」

 

 やっぱり捻くれてたとたぬきちはプンスカと文句を言うが「キュキュキュ」しか言えず、ただぴょんぴょんと跳ねる事しかできなかった。そんなたぬきちをシュスイはにんまりとしながら撫でる。

 

「もーやっぱ可愛いなお前はー‥‥」

 

 シュスイはたぬきちを撫で終えると先が見えない水平線を眺めながらため息をついた。

 

「はあ…イスカルタ島には全然着かないし、今どこを漂ってるのかすらわかんねえな…」

 

 星たぬきの島を出てからかれこれ数日が経過していた。最初は快適な船旅を楽しんでいたが、全く島すらつく気配がないとだだっ広い海に少しずつ退屈になり始めた。無人島すら見える気配もなく、嵐に直撃することもなく、何のトラブルもないまま進む事に多少焦りを感じた。

 

「やっぱ航海術って大事なんやなぁ…」

 

 方角も気にせず、自由気ままにただひたすら真っ直ぐ進めたことにシュスイは少し後悔していた。

 

「行く当てのない航海に多少の後悔…ってやかましいわ」

「キュー‥‥」

 

 一人でノリツッコミをするシュスイにたぬきちはポンとシュスイの太ももを軽く叩いた。たぬきちなりに励ましているようでシュスイはぐすんと鼻を啜ってたぬきちを撫でた。

 

「おう、たぬきち…すまないな…あー、早く島が見えねえかなー!早く冒険したいなー!なんかこう、パッと現れてくれねえかなー!」

 

 気を紛らわせながら適当に叫んでみた。こうも簡単に島が見えるわけがないだろうなと思いながらチラリと水平線の先へと視線を向けた。

 すると視線の先にはうっすらと小さな山と建造物のシルエットが見えてきた。さりげなく言ってみたら本当に島が見えたことにシュスイは喜びと驚きを隠せなかった。

 

「マジでか!?やっと島が見えたぜコノヤロー‼ええと、こういう時はどうすんだっけ…!?」

 

 シュスイは喜びつつもわたわたと慌てふためく。

 

「そうだ、全速前進DA‼」

 

 そう叫びつつ船のスピードを上げて進めていく。やっと冒険ができるとシュスイはワクワクしながら心踊ろさせていた。ここでどんな冒険ができるのか、どんな出会いがあるのかと胸を高鳴らせる。

 船は島へと近づいて行き、だんだんと全容が見えてきた。城塞のように建物と壁で周りを取り囲んでおりその奥が見えないが、大きな山々となにかホグワーツのような魔法学校のような城の建造物が見えた。シュスイはどこか見覚えがあるような気が、ふとあることに気付いた。

 

「なあたぬきち…ちょっと気づいたことがあるんだが」

「キュキュ?」

 

 シュスイは額に冷や汗を流しつつ引きつった笑みでだんだんと近づいて見える陸地を見つめていた。

 

「船ってどうやって泊めるんだっけ‥‥?」

 

 船を進めたのはいいものの、船の泊め方を全く知らなかった。シュスイはあたふたと慌てふためき、たぬきちは白目で立ち尽し、そうしている間にも船は止まることなく陸地へと乗り上げてしまった。

 

___

 

「はは、幸先が怪しくなっちまったな」

 

 シュスイは苦笑いしつつたぬきちを頭に乗せて座礁した船を後にした。自分達が到着した場所は森のようで、木にせずに進んで行くと城壁に行き着いた。

 

「むー…どうやら入る場所を間違えたか?」

 

 シュスイは腕を組んで考え込む。本来ならば港があるはずなのだが反対側の場所へと入ってしまったようだ。引き返そうとも船は座礁してしまったし行く術もない。シュスイは仕方ないと軽くため息をつき、たぬきちをだっこしたまま高く飛び上がり城壁を軽々と飛び越えて着地した。

 

「さあて…さっそく探索と行こうか!」

 

 やっと冒険ができるとシュスイはたぬきちを連れて楽しそうに鼻歌を奏でながら進んで行った。深い茂みを抜けると市街地へと出た。森林といった場所はここだけのようで辺りは人工物の建造ばかり。目を凝らしてみると市街地の中央は穴になっており、そこから青く古めかしい建築物があちこちに建っているのが見えた。

 

「いや、まさかな‥‥」

 

 シュスイの見覚えが段々と確信へと近づいて行く。あの青く古めかしい建物は遺跡に間違いない。そうとなると、この島は‥‥シュスイは眉をひそめて眺めていたが首を横に振って気を紛らわせる。

 

「と、とりあえず市街地へ行ってみるか!」

 

 西洋チックな建物が連なる市街地には多くの人々が行き交うのが見える。シュスイはキョロキョロと辺りを見回しながら歩き続ける。どこからどうみてもイスカルタではないのは間違いない。シュスイはすぐ近くで店を出している店主に恐る恐る尋ねてみた。

 

「ちょいっといいか?ここの島ってイスカルタじゃないよね…?」

 

 ふくよかな店主は突然尋ねられたことに軽く驚くが、シュスイの服装をマジマジと見ながら不思議そうに首を傾げながら答えた。

 

「あんちゃん、何をとぼけた事を言っているんだい?ここはイスカルタじゃなくて、学術都市スキエンティアだよ」

 

 この島の名を聞いた途端、シュスイは目を見開いて驚いた。あまりにも驚いて声すらも出ず、口を大きく開けたまま立ち尽す。

 

(ま、マジでかぁぁっ!?めっちゃくちゃスキップしちまってるー!?)

 

 学術都市スキエンティア。中央にある青く古めかしい建築物、所謂古代遺跡の研究の為に集まった人々が作り上げた都市である。日々の探求と発見、そして研究と開発により魔法技術が発達しており、様々な魔法、知識が集う。

 

「その様子じゃ知らないで来たようだねぇ。今、港には厳しく審査されてるっていうのによく通過できたもんだ」

「あ、あははー、風の吹くまま気の向くままの旅をしているもんでね‥‥」

 

 揶揄うように笑う店主にシュスイは引きつった笑みで返す。港があるのならばそこへ行けばよかったと内心後悔していた。今の自分は入国審査をせずにただ壁を飛び越えて侵入してしまったのだから、バレてしまったら一溜まりもない。

 

「それにしても、厳しく入国審査してるって‥‥何かあったのかい?」

 

 シュスイは店主の言葉に気になるところがあった。スキエンティア、正直言うとあまりいい印象がない。この島のストーリーはこの世界の主人公と白き巫女のアイリス、そして白いしゃべる猫キャトラが訪れ、この島にある大いなるルーン『英知のルーン』を手に入れるが、闇の道化エピタフの策略に嵌り島の住人達に追われる事に。更にはキャトラの心を傷つける、胸糞悪い内容だ。

 

(あのファッキンクソピエロ‥‥絶対にしばいてやる‥‥‼)

 

 心の中でシュスイは毒づく。厳重に入国審査しているという事はもしかしたらもうこの島に主人公たちが訪れ、大いなるルーンを手に入れ島の住民達に追われた後なのか、気掛かりであった。

 

「実はね…最近この島に恐ろしい魔獣が出没するみたいなんだ」

「魔獣‥‥?」

 

 どうやらルーンが盗まれたというわけでなく、まだ主人公達がこの島に来ていない事に安堵した。しかし、それとは別に気になることができてしまった。

 

「その魔獣…どんなやつだ?」

「気になるのか?あんちゃん、その魔獣を討伐しに来た冒険家かい?」

「いや、冒険家(仮)だ」

「なんだいそりゃぁ‥‥」

 

 ドヤっと胸を張るシュスイを店主は呆れながら見るが、そのまま話しを続けた。

 

「噂では神出鬼没で、魔法が全く効かない魔獣らしい。評議員が殺されたりともう何人か被害が出てるみたいなんだ」

「‥‥」

 

 これはもしやとシュスイは顎に手を当てて考えた。学術都市スキエンティアに現れた魔法が効かない神出鬼没の魔獣の事件、心当たりどころか確信があった。

 

(間違いなく、『オーバードライブ紅蓮』だな‥‥ていうか時系列滅茶苦茶じゃねえか)

 

 内心ツッコミを入れつつ納得する様に頷く。そうとなれば自分はどうしようかと悩んだ。一件に首を突っ込むべきか、見守るべきか、関わらないでいるべきか。そんな悩むシュスイに店主はため息をつきながら話を続けた。

 

「ほんと最近は物騒になっちゃったよ。数週間前にあんな事件があってからすぐに魔獣の事件が起きるなんてねぇ」

「ん?あんな事件‥‥?」

 

 シュスイは店主の愚痴にピクリと反応した。はて、この一件にそんな話があったのだろうか。かなり気になっている様子のシュスイを気にもせずに店主は話した。

 

「リブリで大量の魔導書が盗まれたみたいなんだ」

「‥‥はいぃ?」

 

 シュスイはどこぞの紅茶が好きな特命係みたいなキョトンとした返事をした。その話は『オーバードライブ紅蓮』のストーリーで聞いたことがないからだ。リブリとは世界中の知識が集められたスキエンティアの国立図書館の事であり、ありとあらゆる魔導書を管理していると言われている。

 

(いや、確かリブリから無断で持ち出し厳禁の魔導書を持っていった輩がいたはず…俺の記憶違いか?)

 

「いったいあれだけの数の魔導書をどうやって盗んだのか分からないみたいでさ、中には禁忌として保管されていた魔導書も盗まれたんだとさ」

「‥‥‼」

 

 店主の話を聞いてシュスイは確信した。その事件、このイベントクエストにはない。間違いなく第三者の介入だ。

 

(つーことは、俺と同じ同業者(転生者)の仕業…でもなぜだ…)

 

 それではなぜ大量の魔導書を盗んだのか、同業者の目的が分からない。もしかしたらこの一件に何かしら手を加えている可能性が高い。

 

(ここはやっぱりこの一件に関わるべきだな‥‥)

「あんちゃん、さっきからしかめっ面をしてるんだがお腹でもすいたのかい?林檎でも買う?」

 

 そういえばとシュスイははっとする。今日は何も食べておらず、たぬきちとともに空腹であった。本当ならば腹ごしらえをしてからここへ来るつもりだったが、船が座礁してしまった時、その衝撃で船に穴が開き、食糧をロストしてしまった。

 

「キュー‥‥」

「うん、そうだよね‥‥」

 

 そして残念な事に持ち金すらもない。このままでは路頭に迷うどころか空腹で行き倒れてしまう。それではいけないし、羽織っている外套を質屋に出すべきかと思い悩んだ。

 

 その時、どこか遠くで爆音と爆発が響いた。音を聞いた通りの人々は騒然とし、目を凝らしてみると人々を押しのけて走る物騒な面をした男達が駆けているのが見えた。

 

「ありゃあダウンタウンで縄張りを広げてる魔術ギャングの連中じゃあないか…!魔導書が大量に盗まれて連中に流出しちまっているのかもねぇ…」

 

 店主が焦りながらつぶやく。学術都市スキエンティア、魔術や知識が培われ世界中へと広げていくが、伝わるものは良いものばかりではないようだ。シュスイは無言で見つめていたが、ちらりと店主を横目で見た。

 

「おっちゃん、あれを捕まえたら‥‥林檎を2つタダでもらってもいい?」

「えっ?出来たらいいけど…やめとけ、あんちゃん。連中はギャングだ。痛い目に遭うぞ?」

「そんじゃま、返事を考えといてくれよな!」

 

 店主の制止を聞かずにシュスイは好戦的な笑みで逃げているギャング達へと駆けていった。

 

__

 

「くそっ!警吏どもめ!もう嗅ぎ付けやがって…‼」

「追いついてくる前に逃げるぞ‼どけどけ!」

 

 警吏に追われているギャング達は声を荒げ、怒声を飛ばしながら道行く人々を押し退けて駆けていく。ふと気づくと此方に向かって駆けている人の姿がギャングの一人の目にとまった。彼は刃がついたメリケンサックを握り絞めて払いのけようとした。

 

「邪魔をすんじゃねぇ!さっさと退きやが‥‥ふべっ!?」

 

 メリケンサックを振りかざす前にシュスイの飛び蹴りが顔面に炸裂し蹴り飛ばされてしまった。突然の急襲にギャング達は戸惑うがすぐさまガンを飛ばし、恐ろしい剣幕でシュスイを睨んだ。

 

「てめえ‼何しやがる‼」

「ぶち殺されてえか‼」

 

「いやー悪い悪い、こちとら食べ物の為にガチなんでね。大人しくお縄についてもらおうか」

 

「くそっ‼こいつも警吏だったか!」

「構わねえ‼ぶち殺せ‼」

 

 ギャング達はメリケンサックやナイフを取り出して襲い掛かって来た。シュスイは無言で構えずに立ったまま見据えた。

 

「…ちょろいな」

 

 そう呟くとナイフを突き立てて突っ込んできた男の攻撃を躱して相手の首の後ろをチョップして倒す。同じようにナイフで斬り込んできた相手を攻撃を回るように躱し、その勢いで裏拳をお見舞いした。メリケンサックで殴りかかって来た相手は腕を絡め取り背負い投げで倒した。軽々と倒していくシュスイにギャング達は怯むが男の一人が持っていた本を開いてシュスイへと向けた。

 

「こいつで消し炭にしてやるっ‼」

 

 適当に開いたページから魔方陣が開き、そこから大きな火球がこちらに向かって勢いよく飛んできた。相手の魔法にシュスイは目を丸くするが、ここは魔術の都市、魔法だってあるのは当然だ。シュスイは怯むことなく面白そうに笑みを見せた。

 

「すげっ、あれが魔法ってやつか…!」

 

 興味津々に目を輝かしつつ、体をひねってその勢いで上段回し蹴りを放つ。シュスイに向かって飛んできた火球はサッカーボールのように蹴り飛ばされ空高く飛んでいった。こうもあっさりと攻撃魔法が蹴られたことにギャング達は口をポカンと開けて見上げる。

 

「‥‥ま、マジかよ‥‥」

「‥‥って、とぼけてる場合じゃねえっ‼」

 

 はっとしたギャング達はすかさずチャカを取り出して撃とうとしたが、時すでに遅し。勢いよく迫ったシュスイに蹴られ殴られ投げられと一掃されてしまった。シュスイは軽く手をはたき、倒れているギャング達を見て軽く一息ついた。

 

「…ま、刀を抜くまでもなかったな」

 

「こ、この‥‥ふもっふっ!?」

 

 まだ意識があって起き上がろうとしたギャングの一人にたぬきちのヒップドロップが顔面に直撃。モフモフの感触が顔に当ったまま気絶してしまう。一人片付けたことにたぬきちはドヤっと胸を張った。

 

「キュキューッ」

「おうおう、でかしたぜたぬきち‥‥さてと、どうしよっか」

 

 シュスイはたぬきちを撫でながら後始末の事を考えた。このままほったらかしにする訳にはいかないし、警吏の誰かが駆けつけてくるまで待つか考えるがその前に店主のおっちゃんに林檎を貰わねばと踵を返して店へと向かおうとした。

 

「やっと追いついた!動かないで神妙に‥‥ってあれっ!?」

 

 どこか聞いたことのあるような声を聞いたシュスイはピタリと止まり後ろを振り向いた。その瞬間、シュスイは息を呑んで目を見開いた。

 彼の視界に映るは薄いオレンジ色の髪、透き通ったような空色の瞳、スベスベしたい柔らかそうなお腹に桃色の花弁のようなドレススカートをした少女。どこか睡蓮の花の騎士のような可憐で艶やかな少女だった。

 少女は戸惑いながら倒れているギャング達を見た後、こちらを呆然と見つめているシュスイの方へと視線を合わせる。

 

「こ、これ‥‥貴方がやったの?」

 

 少女は恐る恐る尋ねるがシュスイは口をポカンと開けたままじっと見つめたまま微動だにしなかった。シュスイの傍にいるたぬきちはシュスイと少女を往復する様に見ながら戸惑っている。答えがこないのでどうしたものかと少女は悩んでいたが落ち着いて話を続けた。

 

「そ、そうねいきなり尋ねられると驚くわよね‥‥私はリネア。魔法原理学部所属で禁忌を取り締まる≪花園≫の一員なの。それで貴方は‥‥?」

 

 リネアと名乗った少女はシュスイに尋ねるがシュスイは未だに目を丸くして微動だにせずじっとリネアを見つめていた。全く返事が来ないことにリネアは心配になってきた。

 

「あ、あの…大丈夫?」

 

「‥‥‥‥こ‥‥‥」

 

「こ?」

 

 ようやく口が動いたシュスイの言葉にリネアは首を傾げる。すると突然目を丸くして微動だにしなかったシュスイは喜びの表情に変わった。

 

 

「こ‥‥心がぴょんぴょんするんじゃぁぁぁぁぁぁっ‼」

 

「ふぇえっ!?」

 

 シュスイは喜びの声は街中に響いた。それがどういう意味をするのか、リネアには分からなかった。




 これがやりたかっただけです。ええ、反省はしてます(焼き土下座)
 ええ、オーバードライブ紅蓮、ガチャは爆死しましたね‥‥
 そしてレクト派の方々‥‥本当に申し訳ございません…♠ルートのヒロイン確定です(たぶん

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