冒険者共   作:サバ缶みそ味

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▲2 貴石のアステリズム①

「はあ‥‥」

 

 とある酒場にて、クオンは盛大に大きなため息をついて憂鬱そうに頬杖をついた。落ち込んでいるクオンにジークは楽しそうに笑いながら励ます。

 

「おいおい、どうした?そんなに落ち込むことはないぜ?」

 

 ジークはジョッキに注がれたビールをグイッと飲んでクオンにも勧めようとした。

 

「こうして冒険して、ビールだって飲めるんだ。気楽に行こうじゃあないか?」

「うん、気持ちは分かるよ?分かるけどさ…」

 

 クオンはそれでもため息をついた。これまでの経緯を思い出すたびにため息の回数は増えるばかりであった。

 

「わざわざ十傑走りをして海を渡って途中の島で宝箱探しをして資金を溜めて島を渡るたびをしてきたのはいいし、それから娯楽の島ジョカと似たような島に来れたのはいいよ?」

 

 今自分達がいるこの島は帝国にも連邦国家にも属さない観光資源を持っている新興のリゾート地、クロン島。リゾート地であるが故に観光施設や酒場に宿、そしてカジノもある。クオン達3人は一先ずここで資金稼ぎをする方針に決めてしばらく滞在をしていた。大抵の資金はクオンが酒場でアルバイトをし、ジークがカジノで勝って稼いでいる。

 

「おかげで資金は溜まりつつあるのはいいんだ。でもさ…折角の資金が二人の食費でほぼ費やされるってどういうわけなの?」

 

 クオンはジト目でジークを睨む。思いのほか稼げたところまでは良かった。これならすぐ冒険家ギルドで冒険者登録ができると思っていた。しかし、落とし穴があった。ジークとエイジが想像を絶する大食いであったということであった。ジークは苦笑いをしながら視線をそらした。

 

「あー…ほら、あれだ。腹が減っては戦ができぬっていうじゃないか」

「そういうレベルじゃないって。おかげでまた振出しに戻ってるよ…」

 

 クオンは再びため息をついて顔を机に伏した。いつまでも気を落としているクオンをジークは軽く笑いながら肩を叩く。

 

「そうめげるな。また俺がカジノで大勝ちすれば問題はねえ」

「やり過ぎたらまた出禁にされるよ?ていうか、レイジは何処行ったんだ?」

 

 クオンは顔を上げてレイジが何処へ行ったのか辺りを見回すが、肝心のレイジの姿が何処にも見えない。このクロウ島に来てからエイジは何か稼ぐ方法は無いかとずっと考えていた。ストリートファイトで稼ぐわけにもいかないし、喧嘩っ早く考えるよりも手が出る自分にちょうどいい稼ぎ所がないか探していた。

 

「あいつ、すっかり脳筋になっちまったし…まあその分扱いは楽だけどな」

「心配だなぁ…どっかで変な所にケンカしてないか心配だよ」

「クオン、心配しすぎだ。あいつならそんなへまは…おっ、噂をすれば何とやらだ。戻って来たぞ」

 

 ジークの指さす方にクオンは視線を向ける。レイジは鼻歌を歌いながら、ドヤ顔でやってきた。あの様子だと何かいいことがあったのだろうかと二人は気になった。

 

「やあやあ諸君、地道に稼いでるかぁ?」

「やっと戻って来たか、食費の蟲」

「ああ?ジーク!おめぇも俺と同じくらい食べまくってるじゃねえか!」

「いいや!俺が3割でお前は7割だ‼」

「でもお前、酒飲んで女の子ナンパしてるだろうが‼」

 

「ほらほら、二人とも喧嘩をしないの」

 

 ぐぬぬと睨み合うジークとレイジをクオンは苦笑いしながら諌める。ここで大喧嘩になってしまうと色々とまずい。

 

「それで、レイジ。今日は随分と上機嫌だけどいいことがあったの?」

「ふふふ…クオン、ジーク、聞いて驚け!俺、すっげえ稼ぎ所を見つけたぜ‼」

 

 ドヤ顔で胸を張るレイジにクオンとジークは嫌な予感がよぎりながらも引きつりながら笑う。多分これは厄介な事に巻き込まれるかもしれない予兆だ。

 

「それで、その稼ぎ所ってどんなの?」

「おう!用心棒ってやつさ!」

 

 やっぱりとクオンとジークは頭を抱えた。このクロウ島、娯楽の島ジョカから流れたギャングがカジノを切り盛りしているという噂がある。もしかしたらギャングの用心棒をするかもしれない。

 

「レイジ、どうしてそんな経緯になったのか教えてくれねぇか?」

「あーと…確か街を歩いてたら『用心棒募集』ってビラがあったからよ、その所に行ったんだ。確かリハ…リビャ…リヒャルトっていう地主の所だ。他に来ていた図体のでけえ野郎共が『こんなチビガキに用心棒が務まるか』ってバカにして殴り掛かって来たからさムカついてデコピンでぶっ飛ばしたら即採用したんだぜ!そんで『後二人いるから連れてくるぜ!』って話して戻って来たわけさ」

 

「思いっきり怪しそうな所じゃないですかヤダー」

 

 ドヤ顔で話すレイジにクオンは再び床に顔を伏せてしまった。落ち込むクオンにエイジは笑いながら話を続ける。

 

「大丈夫だぜ‼報酬も倍の額払ってくれるそうだし、その頭目っぽい人も島を良くするためにギャングを取り締まる為の仕事をしてくれって言ってたしよ」

「おいおい、思い切り裏がありそうじゃねえか。大丈夫なのかよ…?」

「俺に任せれば問題はねえ‼大船に乗った気分でいてくれよな!」

 

 何処からそんな自信が来るのかと、胸を張って笑っているレイジにクオンは肩を竦めてため息をついた。

 

「ジーク、もう不安だらけなんだけど…」

「まあレイジなりに考えたんだろう。なるようになるさ」

 

 ジークに励まされながらも本当に大丈夫だろうかとクオンは心配しつつ、レイジと共に現地へと向かった。

 

__

 

 レイジを用心棒として雇ったその場所はとても豪勢な屋敷だった。その立派な造りの建物にクオンとジークは開いた口が塞がらずに見上げていた。

 

「ほぉー…クオン、こりゃあ大当たりかもしれねえな」

「ほ、本当に大丈夫なのかなぁ…?」

「そうぼさっとみてねえでさっさと行こうぜ!」

 

 レイジが遠慮なしにずかずかと門前まで歩いて行く。鎧を着た門番達が一瞬身構えるが、レイジが『あー、俺だぜ。お仲間を連れてきたぜ』とにこやかに手を振るとすぐさま身を引いて門を開けた。もてなされているようだとクオンは見ていたが、門番達はレイジを見て震えているような気がした。

 

「…レイジ、なんかしたの?」

「あ?あー…雇ってもらう前、中々通してくれなかったから昇竜拳をば…」

「ちょ!?手荒にすると厄介な事になるから気をつけって言ってたでしょ!?」

「だいじょーぶだいじょーぶ!あとはデコピンくらいで加減してやってから」

 

 本当に加減をしてるのだろうかと心配しつつもクオンはレイジと共に屋敷内に入った。屋内も豪勢で城のように広い石造りの空間だった。ジークとクオンは屋敷内を見回した。

 

「門番と同じように鎧を着た連中…護衛兵みたいなやつか?」

「見た感じは悪そうでもないけど‥‥」

 

「やっと来ましたか…その連れが貴方の仲間ですか?」

 

 観察をしばらく続けていると、奥の通路から執事のような服装の男性がレイジ達の前にやってきた。レイジはニシシと笑いながら頷く。

 

「ああ。こいつらも俺と同じくらい強いぜ!こっちの大人しそうな奴がクオン、こっちの上半身マッパの変態野郎がジークだ」

「そうですか…私は此処の家主、リヒャルト・ゾーゲン氏の家令を務めています、ルドルフと申します」

「どーも。あの脳筋バカ単細胞野郎が迷惑をかけてないか?」

 

 レイジとジークがガンを飛ばし合っているのをスルーしてクオンはペコペコとそのルドルフと名乗った男性に何度もお辞儀をした。

 

「ほんとレイジがご迷惑をおかけしてます…マジでご迷惑おかけしてます」

「なぜ二回言ったし」

 

「いえいえ、エイジさんのお力は想像以上で驚きましたし、お二方が加わるとなると心強い限りです」

 

 ルドルフはクオン達を奥の部屋へと案内をした。どうやらこの屋敷の当主の部屋のようで、黒のスーツを着た眼鏡をかけたちょび髭の男性がにこやかにクオン達を迎えてきた。

 

「私はこの屋敷の当主、リヒャルト・ゾーゲンだ。君達が用心棒となった彼の親友だね?」

「ああ。ほんっとこのおバカがご迷惑をおかけてるぜ」

「すみません、すみません。レイジが何か壊してませんか?」

「おいこら、そこまで俺はバカじゃねえよ」

 

 3人のやりとりにリヒャルトは軽く笑って頷いた。

 

「ははは…これは頼もしそうだ。君達にはこの島を良くするためにギャング達を取り締まる仕事をして欲しい。期待しているよ。頑張り次第では望む額を払おう。」

 

「っしゃあ‼カチコミなら任せておきな!」

「ほら、やっぱり脳筋バカじゃねえか」

 

 取っ組み合うジークとレイジにクオンは肩を竦めた。

 

___

 

「はあ‥‥」

 

 クオンはため息をついてテーブルに顔を伏せる。リヒャルト・ゾーゲンの用心棒として雇われて1週間が過ぎた。確かにかなりの額の報酬をくれるのだが、仕事内容が暴れるギャングのアジトに行って殴り込みをして取り締まると明らかに裏がありそうな仕事ばかり。レイジはウキウキ気分で大暴れをするのだがクオンは乗る気がしなかった。

 

「あの地主、絶対に怪しいって…」

 

 殴り込みをした後はリヒャルト・ゾーゲンの家令のルドルフがギャングの頭目にあれやこれやと取引をして従わせているようで、もしかしたらこの島を我が物にしようとしてるのではないかと思ってきたのであった。そんな心配しすぎなクオンにジークは苦笑いをして励ます。

 

「そうめげるなって。高い報酬に、いい宿をタダで泊めさせてもらってんだ。相手の化けの皮が剝がれたらさっさと退散するってのも手がある。それまで待とうぜ」

「だといいんだけど‥‥って、レイジは何処行ったの?」

 

 クオンは思い出す様に顔を上げる。レイジは今朝からルドルフに呼ばれて屋敷に向かったきり戻ってきていない。何事も無ければいいのだけどと考えているとレイジが扉を勢いよく開けて戻って来た。

 

「おーい!さっそく仕事が入って来たぜ‼」

「随分と張り切ってるな。こんどは何処のギャングに殴り込みに行くんだ?」

「んにゃ、今回は人探しだ」

 

「「人探し?」」

 

 荒事の仕事ではない事にクオンとジークは首を傾げた。

 

「探し人はリヒャルト・ゾーゲンの弟だとよ。その弟を屋敷に連れて行く道中にギャングといざこざあったらしい。ギャングの相手をしてたらその弟さんはどっか行っちまって見失ったんだとさ」

「随分と穏やかそうじゃなさそうだな。どんな弟なんだ?」

 

 ジークが探し人の特徴を聞こうとしたが、レイジは頭にハテナを浮かばせて首を傾げていた。もしや…とジークは呆れる。

 

「お前、特徴とか聞いてなかったのかよ…」

「あー…聞いてたって。そうだ、ちびっ子だ!ちびっ子を探せばいい‼」

「島中のちびっ子を探すわけにはいかねえだろ。ルドルフさんにもう一度聞いて探しに行くぞ」

 

 やれやれとため息をつくジークはニシシと笑うレイジを軽く小突いて出掛けようとした。クオンも後に続いて行こうとしたがジークに止められた。

 

「クオン、ここんところ切羽詰まってくたびれてんだろ。少しは休んだらどうだ?」

「え、でも…」

「無理はよくねえぜ?ここは俺達に任せてゆっくりしてけ!」

 

 ジークとレイジにそう勧められクオンは頷く。ここのところ思い詰めている事が多かったので二人が心配していると気づいたのだ。

 

「わかったよ…二人とも、ありがとうね」

 

「おう!折角のリゾート地なんだ。気分転換に遊んでいけ!」

「遠慮せずにはっちゃけてこい。町角のバーはバニーガールがめちゃんこいるぜ」

 

「そ、そこは遠慮しておくよ…」

 

 ジークとレイジはニッと笑いながら部屋を出て行った。彼らの言う通り折角のリゾート地なのだ、たまには遊んでリフレッシュするのも悪くないだろう。クオンは一息入れてから外へと出かけた。

 

___

 

「とは言ったものの…何処へ行こうか?」

 

 クオンは繁華街を歩きながら考え込んだ。リゾート地であるがゆえに人通りが多く、その分だけ店も多い。お土産屋を見ていくか、露店で美味しい物を買って食べるか、またはた喫茶店でゆっくりするかと色々と考えた。

 

「これだけ多いとまずは何からしようか迷っちゃうな」

 

 この世界に来たクオンにとって目に映るものすべて興味がひかれるものばかりであった。ふと、クオンはある店の前に足を止めた。

 

「ここは確か、ジークが言ってた美味しいパフェを出す喫茶店のある宿か…うおっ!?」

 

 スタンド看板に書かれているメニューにクオンは目を輝かせる。メニューの中に大好物であるストロベリーサンデーがあったのである。まさかこの世界にもストロベリーサンデーがあるとは思いもせず、クオンは喜びの声を上げた。

 

「へー、ここにもストロベリーサンデーがあるんだな…!よし、まずはここから入ろうか!」

 

 意気揚々とクオンはその店へと入った。カウンター席に座り、さっそくストロベリーサンデーを注文した。クオンは待ち遠しそうにウキウキ気分でストロベリーサンデーが来るのを待った。

 

「はぁ~、至高のひと時だよ。はやくストロベリーサンデーを食べたいなぁ」

 

 そして遂にカウンター席の前にお望みのものであるストロベリーサンデーがクオンの前に置かれる。それは前世の時でも食べた事のある、アイスクリームにイチゴのソースとチョコレートソースがかかった、イチゴやナッツ、ホイップクリームのトッピングがされたストロベリーサンデーそのもの。

 

「うひょー‼これはたまんない‼」

 

 クオンは目を輝かせ、さっそくストロベリーサンデーの味を堪能しようとスプーンでイチゴとチョコのソースがかかったアイスクリームを掬って食べようとした。

 

 その時、店の扉を荒々しく開けてドカドカと荒くれ者の成りをした男達が押しかけて来た。男達はクオンがいるカウンター席を通り過ぎてある客がいるテーブルの前へと止まった。

 

「さっきは世話になったな‼」

「女だと思って甘く見てたぜ」

「おい、三人って聞いたぞ。一人だけしかいねーじゃねえか。おめぇら、こんなのに負けたのか?」

「見た目に騙されちゃダメっすよ。こいつらめちゃくちゃ強ぇっすから‼」

 

 チンピラと荒くれ者達は殺気立って声を荒げる。この状況にクオンは大きくため息をついた。ストロベリーサンデーを堪能するという至高のひと時を邪魔されたことに気分を削がれたのだ。

 

(この島にはギャングが多いからこういった荒事がよくあるのだけど…タイミング悪いなぁ)

 

「まあ、いいわ。女とガキ二人だけなら余裕だろ」

 

 荒くれ者のその一言にクオンはふと振り向いた。4,5人くらいのチンピラと荒くれ者達が囲っている所にはロップイヤーの兎耳が付いている青い髪のバニーガールを模したドレスを着た少女とその少女の後ろに隠れて怯えている子供の姿が見えた。

 

「‥‥けほっ!」

「お姉ちゃん‥‥」

 

 青い髪の少女は病気なのか苦しそうに咳き込みながらも子供を守ろうと男達を睨み、その子供は不安そうに見つめていた。

 

「‥‥」

 

 クオンは無言のまま見つめていたが、やる事は決まっていた。そのまま立ち上がり、まだ一口も食べていないストロベリーサンデーの器を握った。

 

_???side_

 

 まさかすぐにやって来るとは思いもしなかった。最悪な事にこちらの体調はまだ万全ではない。

 

「‥‥けほっ」

 

 咳に耐えながらも手持ちのダーツを確認する。この数なら多少無理してでも追い返すことができる。深呼吸をしてすぐ傍にいる少年の方にちらりと目を合わせる。

 

「お姉ちゃん‥‥」

 

 そんなに心配しなくて大丈夫だよ…君は絶対に守ってあげる。

 

「大丈夫…こんな奴等、的でしかないよ」

 

 臨戦態勢にはいっているチンピラと荒くれ者達をすぐに追い払ってやる。いつものようにダーツを何本か取り出してすぐに投げれるように構えた。

 

「あ?ダーツ?そんなオモチャみてえなもんで俺達を‥‥いってぇ!?冷たっ!?」

 

 突然、荒くれ者の男が後頭部を抑えだした。男の後頭部にはアイスクリームがべったりとついている。

 

「てめえ…何しやがる‼」

 

 荒くれ者の男は後ろにいるカウンター席に座っていた赤いフード付きのシャツの上に青いコートを羽織った青みのかかった銀髪の男性を睨み付けた。その男性はため息をついてチンピラと荒くれ者達を睨み返した。

 

「何をしやがるって…?それはこっちの台詞だよ。折角、ストロベリーサンデーを味わおうと思ったら味わって食べれない状況にしてくれてさ」

 

 その理由を聞いてチンピラと荒くれ者達はポカンと口を開けたがすぐさま怒声を飛ばしながら睨み付けた。

 

「俺達に手ぇ出していいと思ってんのか‼」

「てめえ、この状況を分かってんのか‼」

 

「分かってるさ。野郎共が女子供に襲い掛かろうとしてるって。それを見過ごすわけにもいかないし、あと食い物の恨みは恐ろしいよ?」

 

 それは君が投げたからじゃ…とツッコミを入れたかったが、それどころかではない。関係のない人まで巻き込むわけにはいかない。

 

「危ない‼にげ…けほっ、けほっ‼」

 

 ここま任せて逃げてもらおうと声を出そうとしたが急に咳き込んでしまって途切れてしまう。チンピラと荒くれ者達はターゲットを変えて男性の方へと襲い掛かった。

 

 メリケンサックを持った二人のチンピラが殴りかかろうとしたが男性はそれを軽々と受け流すと、カウンターで相手胃の顔面や鳩尾を殴り倒す。ナイフを持ったチンピラが斬りかかろうとするがそれも躱し、相手の手を思い切り蹴り上げてナイフを飛ばし、そのまま思い切り回し蹴りを決めて蹴とばした。

 

「このっ…調子に乗んじゃねえぇぇっ‼」

 

 荒くれ者が刀を引き抜いて男性へと刀を振り下ろした。すると、店内に大きな銃声が響いた。男性の手には青いリボルバーが握られており、その銃弾で荒くれ者が持った刀を破壊したのだ。その男性は一気に迫り、呆気に取られている荒くれ者の喉元に銃口を押し付けた。

 

「…俺は荒事が嫌いでさ、ここは諦めて退いてくれたら嬉しいんだけどなぁ。あと二度と人のストロベリーサンデータイムを邪魔しないでもらえたら嬉しいな。じゃないと…ついうっかり引き金を引いちゃうかもね」

 

 男性は笑顔でリボルバーの銃口をぐいぐいと押し付けていく。荒くれ者は青ざめて顔引きつらせながら何度も頷いた。

 

「そっか、じゃあさっさと帰ってくれるかな?」

 

 男性は荒くれ者を手放すと床へ撃った。

 

「ひいいいっ‼」

 

 店内に響く銃声が合図かの様にチンピラと荒くれ者達は悲鳴を上げて一目散に去って行った。男性はチンピラと荒くれ者達がいなくなったのを見てほっと一息つき、こちらへと先程とは違う優しい笑顔を見せた。

 

_クオンside_

 

「ふぅ‥‥」

 

 まさかチンピラ相手に六連装大口径リボルバー『ブルーローズ』を使っちゃうとは…ストロベリーサンデーとなるとマジになってしまうとは。少し反省しなきゃ。それはさておき…

 

「君達、大丈夫かい?」

 

 チンピラと荒くれ者達に絡まれていたちょっとバニーガールっぽい兎耳の少女と少年の方に歩み寄る。少女の方は少し警戒しているようだが、敵意がない事を伝えるために笑ってみよう。

 

「この島にはギャングとかいるみたいだし…何があったのか知らないけど、もう大丈夫だよ」

 

「君は…どうして助けてくれたの?」

「物騒な野郎共に、少年を守ろうとする少女。どっちを助けるべきか、理由はいるかい?」

 

 しかも病気で辛そうにしているんだ。このまま放っておくわけにもいかない。それを聞いた少女は少し驚いたように目を見開くが、すぐにくすりと笑った。

 

「ふふ…君、面白いね。まるでボク達みたい…で…」

「お姉ちゃん!?」

 

 少女が突然ふらりと前へと倒れだした。どさりと床へと倒れ込む前に少女の体を受け止めて支える。

 

「おっと‼大丈夫かい…?」

「ごめん…ボク、よく倒れるから…」

 

 少女はすまなそうに微笑んだ。…あれ?ボクっ子、ウサ耳、ダーツ…そして宝石のような綺麗な瞳…これ、どっかで見たことがあるぞ?もしかしたら‥‥俺は恐る恐る名乗った。

 

「…俺はクオン、よろしくね」

 

 

「ボクはサフィラ‥‥よろしく」

 

 あっ…嫌な予感が的中して思わず口をこぼしてしまった。そうだった思い出した。

 

 サフィラ…彼女はルーンナイト、序列四位の少女。という事はこの島には後二人、ルーンナイトがいる。そして彼女達が関わるこの一件…

 

(間違いない…『貴石のアステリズム』だこれー‼)




 貴石のアステリズム…エスメラルダ、サフィラ、ルビィ、3人のルーンナイトのイベントでしたが、まさかルーンナイトは全員弟がいるお姉ちゃんの集団だという事実にはびっくり。

 という事は…全員ブラコン!?(オイ
 まだまだルーンナイトにはなぞが多いし…ルーンナイトに関連するイベントとかもっとやってほしいなぁ…
 

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