冒険者共   作:サバ缶みそ味

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 いよいよ5周年!
 それにともない凱旋ガチャが実施中ですね!

 ……みんな‼ジュエルは持ったか‼


◎13 飛行島の白猫と砂漠のキング

「ねえシュスイ、そろそろ意地を張らなくてもいいんじゃないかな…?」

 

 飛行船に乗ってからどれくらいの時間が経過しただろうか。レクトは心配そうに声をかけるがシュスイはムスッとした表情をしたまま船内の端っこで胡坐をかいて動こうとしなかった。いつまでも動こうとはしないシュスイに今度はキャトラが呆れた様子で声をかけた。

 

「もう、隅っこにいないで来なさいって」

「ぜったい行かないっ‼絶対にサザンクロスには行かないっ‼」

「はあ…じゃあなんでついてきたのよ」

「空の旅がなんか楽しそうだから!」

「子供か!?」

 

 目的地であるサザンクロスまでの道中はこの繰り返しだった。この依頼をクロロ達と共にこなせば晴れて念願の冒険者になれるというのに行先が『世紀末都市サザンクロス』と聞いた途端先ほどまでやる気満々だった様子が一変、シュスイは頑なに嫌がりだした。

 

「ねえシュスイ、なんでサザンクロスには行きたくないの?」

 

 このままじゃシュスイはここから一歩も動かない、理由を聞いて何とかして行かせようとリネアは尋ねた。するとムスッとしていたシュスイはわなわなと震えながら口を開いた。

 

「……サザンクロスはやばい。しかも世紀末だからマジでやばい」

 

「へ?」

 

 一体どういう意味なのか、というよりか言っている意味が分からない。リネアは理解できずに不思議そうに首を傾げた。

 

 しかしシュスイにとって『サザンクロス』という言葉に物凄く嫌というほど嫌な予感が過っていた。その言葉で思い浮かべるとしたらかの『北斗の拳』に登場した刺々しい肩パッドを付けたモヒカン頭の暴徒達が蔓延り、血と暴力とヒャッハーが支配する街『サザンクロス』しかない。

 シュスイもこれは自分の思い違いであってほしいと願っていたが『世紀末』というワードが出たことで己の嫌な予感が確定してしまった。

 

(まさかと思うが転生者か…?)

 

 そんな世紀末な都市を建てたのはこの白猫の世界の人間ではなく間違いなく自分と同じ転生者の仕業なのかもしれない。色々と考え込んで思い詰めていたらリネアが頬を膨らませて顔をのぞかせてきた。

 

「シュスイちゃんと聞いてるの?ヤバイだけじゃ分からないからちゃんと理由を話してってば!」

 

「いや本当にヤバイって!あの街は荒廃してて、肩パッドを付けたモヒカン頭のヒャッハーな奴らが人攫いして人を滅茶苦茶酷使してヒャッハーする暴力に塗れたかなりヤバイ所だぞ!」

 

 モヒカンの暴徒達ごっついジープとかバイクを乗り回して街という街へ侵略するとか血を見たら発狂する拳法殺しの大巨漢がいるとかいま語るだけでも足りないくらい危険な所だとシュスイは話すがリネア達は言っている意味が分かっておらず不思議そうに首を傾げていた。

 

「そうかしら?ガイドブックには1年前に大砂海の砂漠地帯にできた都市で観光に力を注いでいる素敵な街って書いてたわよ?」

 

「いやいやいや⁉絶対に怪しいって!ほらもしかしたらそうやって人を呼び寄せると見せかけて人攫いをするかもしれねえ‼」

 

「う、疑い深すぎるよ…」

 

 原作通りだとすればサザンクロスがどれほど恐ろしい所か、シュスイは訝し気に窓から景色を眺める。いざ着いたらモヒカン頭の暴徒達が襲い掛かってくるかまたはたベレー帽を被った軍人姿の連中が襲い掛かってくるかもしれない。警戒を怠らず慎重に行かねばと考えていたら船内にベルの音が響き渡りだすと同時にゆっくりと降下し始めた。

 

「え、ちょ、もしかして…」

「はい、もう間もなく到着ですよ」

 

 アイリスはにこやかに到着を告げ、シュスイはギョッとした。こんなことを考えている間にもうサザンクロスに着いてしまったとは。シュスイが焦る最中に飛行船は着陸したようでクロロ達は外へ出ようとした。

 

「待て待て待て⁉武器を持って気を付けて出ろ!いきなり襲い掛かってくるかもしれねえぞ⁉」

「ほら刀を抜かないでさっさと行くわよ」

 

 こうしちゃいられないと慌てて刀を抜こうとするシュスイの手をリネアが彼の手を掴んで止めぐいぐい外へと引っ張り出していった。

 

「わーっ⁉待てって⁉モヒカンがっ!ゴッドアーミーがっ!南斗爆殺拳がっ!デビルリバースがっ!」

「だから言ってる意味が分からないってば!ほら、レクトもたぬきちも手伝って‼」

「シュスイ、ごめんっ!」

「キュキュッ!」

 

 レクトとたぬきちまでもがシュスイを引っ張り出し飛行船の外へと連れ出した。

 

「おま、ちょっ、待て⁉サザンクロスはやばいとこ………えっ?」

 

 外へと連れ出されたシュスイは目が点になった。見えるは綺麗に整備された石畳の道と緑にあふれる街路樹や椰子の木。さらには大小様々な建物とビルに似た高い建物が立ち並び、そして道の端には水路があり水路には清らかな水が流れており、広場のような場所には噴水から絶え間なく水が流れていた。

 

「………ナニコレ?」

 

 荒廃しているどころか発展していた。思っていたのとかなり違っていたことにシュスイは驚くよりも拍子抜けて脱力してしまった。そんなシュスイにキャトラがどや顔をする。

 

「ほら、まったく危険そうな場所じゃないでしょ?」

「お、おう…というか思ってたのと全然違う…」

「へへーん、あたしの言ってたことが正しかったわけで後で美味しいの皆に奢ってもらうわよ」

「おう……って、そんな約束してたっけ⁉」

 

 いつの間にそんな約束をしていたのか。全く身に覚えがないしアイリスとクロロが慌ててキャトラを止めようとする。しかし時すでに遅し、リネアがにっこりと笑顔でシュスイの肩をポンと叩いた。

 

「シュスイありがとー♪私飲み物が欲しいなー?」

「くっ……あやねるボイスで言われたら断り切れねえ…っ」

 

「なんで満更でもない顔をしてんのよ」

「というかシュスイ、今そんなにお金持ってないんじゃ…」

 

 ひとまず荒廃していなかったとシュスイは安堵してクロロ達と共に街中へと進むことにした。あたりを見回せばどの建物も壊されている形跡が全くなく、露店や店に並ぶ野菜や果物、織物や土産品など品々は豊富だった。行きかう人々はやつれてたり疲労に満ち溢れた顔はしていない。それどころか皆笑顔で明るく活気であふれている。かの世紀末のような恐怖と暴力で支配されたサザンクロスとは百八十度も違う。

 

「思いっきり賑わってんな……ありえん」

「いつまで疑いぶってんのよ!こんな賑やかな所に危なそうな人なんてry」

 

 キャトラは「危なそうな人なんていないでしょ?」と自慢げに言おうとしたが曲がり角から刺々しい肩パッドを身に着けたモヒカン頭の逞しい体格をした強面の男たちがぞろぞろと列をなして歩いてきたのが見えた。その姿を見たシュスイとキャトラは愕然した。

 

「ぎ、ギニャァァァっ⁉ほ、本当にいたーっ⁉」

「ほらな⁉ほらやっぱり世紀末だろ⁉」

 

 やはりここは世紀末だったかとシュスイは慌てだすがリネアが平然としてシュスイを止めた。

 

「あの人たち治安を守る警備隊の人達ですって」

「えっ?」

 

 シュスイはキョトンとするがリネアはいつの間に買っていたのかチュロスを食べながら話をつづける。

 

「元々は盗賊団の人達だったのだけど、この都市の長が改心させたって話なんですって」

「…まじか」

 

 よく見れば市民達はモヒカン頭の男達に声をかけたり笑顔で手を振ったり、子供達は怖がるどころかはしゃいで走り寄っていった。そんな市民達に対してモヒカン頭の屈強な男達は同じように市民達に笑顔で手を振り駆け寄ってきた子供達には頭を優しく撫でたりだっこをしてあげたりしていた。かの世紀末のような暴力的な様子は一切見られない。そんな光景と雰囲気にアイリスとクロロは笑顔になるがシュスイはポカンとしていた。

 

「…というかものすごく賑わってんな」

「明後日に1周年記念の祭典が行われるみたいでその準備みたいよ?」

「何そのソシャゲみたいな1周年記念祝いは」

 

「ソシャゲ…?それは置いといてここサザンクロスは1年前は砂漠の真ん中にあった荒廃しかけた集落だったの。かつては草木や水もあったけれども年が経つにつれ草木も水も枯れ、生活の頼みの綱は旅の休憩地点として訪れる行商人だけ。住民達が飢えと渇きで生活が苦しくなりこの集落を捨てようと決断したある日、とある男性が訪れてきたの。その男は『この集落を救い、発展させる』とか言い、『呼び寄せルーン』というルーンを使って水を掘り当て集落を救い、更に食物や人を呼び寄せ集落から大都市へと発展させていった、と言われてるわ」

 

「な、なんというかすごく詳しいのな」

 

「うん、あそこで種籾と『世紀末チュロス』を売ってるおじいさんから聞いたの」

 

 振り返れば露店で笑顔で種籾とチュロスを売っている老人の姿が見えた。シュスイはマジかとあんぐりとする。よくみれば『世紀末たこ焼き』や『世紀末かき氷』や『世紀末Tシャツ』やら、なんでも『世紀末○○』とついた店が立ち並んでいる。

 

「なんでも『世紀末』をつけりゃいいってもんじゃないと思うんだけどなぁ……」

「『世紀末』ってつけたらなんかかっこいい、って都市の長が決めたことなんですって」

「どういう考えをしてんだその長は」

 

「シュスイ!すごいわよ⁉世紀末カニカマも売ってたわ!ここは最先端ね‼」

「……もうつっこみきれない!」

 

 いつの間にカニカマを食べていたのか、というかそれで最先端と決めるのはどうかとシュスイは頭を抱えてため息をついた。このままじゃこちらが呆れ果ててくたびれてしまう。シュスイは本題に入ることにした。

 

「ところでクロロ、アイリス。依頼ってどんな内容なんだ?」

「それが依頼の内容は目的地に着いたら話すと言ってました。ええと…『世紀末プリンスホテル』のロビーで待つようにと」

「それ、大丈夫な依頼だよね…?」

 

 こんなよくわからない場所なせいかに依頼主は現地で合流して依頼内容を話すとなると怪しくなってきた。本当に信用できる相手なのか確かめなければならない。

 

「はい、なんでもその人は革命軍の方だと手紙では書いてありました」

「…!」

 

 アイリスとクロロは依頼主は信用できる人物だから大丈夫だとにこやかに答えた。しかしシュスイは本当に大丈夫だろうかと心配になってきた。

 革命軍といえば銀の諸島といわれる諸島で市民に重税をかける王家を打倒せんとエリーナはザックをはじめスラム街の孤児たちが結成させた組織だ。そんな組織がこんなよくわからない所に来るとは考えがつかない。この世紀末都市サザンクロスの裏側でよからぬことが起きているのは確かかもしれない。

 

(しかし革命軍の人というがいったい誰だ…?)

 

 革命軍で思い当たる人物がいないか施行を張り巡らせるがそんな人物は一人として思いつかない。誰かが興味本位か任務で赴いたのかまたはた自分の知らない人物か、シュスイは気になってしかたなかった。

 深く考えていたところいつの間にか合流する場所である『世紀末プリンスホテル』に到着していた。名前の通りほかの建物よりも豪勢に見える。

 

「これまた豪華そうなホテルなこった。世紀末なんてつけなきゃもっとましにみえたんだけどなぁ…」

「なんでも今後各国から訪れる観光客のために建てたとか……ぜ、ぜんぜん世紀末じゃないね!」

「センスはいいけどネーミングセンスはいまいちよね……」

 

 レクトもリネアもそろそろこの都市の長のネーミングセンスがおかしいと感じてきたようで、何でも『世紀末』とつければいいものじゃないと3人の考えは一致した。

 

「まあまあそう気にしなくてもいいんじゃない?ネーミングセンスは置いといて豪華だしカニカマも美味しかったしここはきっといい所で間違いないわ!」

「キャトラ、カニカマで基準を決めるはどうか思うんだけど…」

「……」

 

 カニカマを食べてご満足なキャトラにアイリスとクロロが苦笑いする。キャトラがいざ待ち合わせの場所であるロビーへと向かおうとしたその時、キャトラの足元に小さな金属の筒状のものが転がってきた。クロロが拾い上げて見るとそれはは空の薬莢だった。

 

「…貴方達が飛行島の冒険者の方々ですね?お待ちしておりましたよ」

 

 キャトラ達は転がってきた先を見るとそこには紫のベストの上に濃い紫の上着を羽織り、紫のミニスカートに白いハイニーソと靴を身に着け、そして紫のベレー帽を被った紫の長い一本の三つ編みをした女性がにこやかに手を振っていた。

 

「もしかして貴女が依頼主の方ですか?」

 

「ええその通り。前までは旅をしていた傭兵でしたが…今は革命軍の一員です。あ、自己紹介が遅れました。私はエry」

 

 

 

「エルトナムさん?」

 

 

 その女性よりも早くシュスイがその女性の名を呼んだ。キャトラ達は一斉にシュスイのほうを見つめ、女性は目を丸くした。

 

「え?シュスイ、この人と知り合いなの?」

 

「いや、知り合いというか……まんまエルトナムさんだし?……しかも型月じゃなくてフランスパンの方の……」

 

「あーちょっと待っててくださいね!少しこの人とお話ししなければならない用事がちょーっとできましたので!」

 

 女性は急ぎシュスイの腕を引っ張ってキャトラ達から少し離れた所へと移動すると慌てた様子でシュスイを睨んだ。

 

「な、なんでモデルを知ってるんですか⁉マイナーだからそんなに知らないだろうと思ってたのに…も、もしかして()()()()()()⁉」 

 

 シュスイはこの女性が自分と同じ転生者だと確信した。見た目も声もかの格闘ゲーム『UnderNight In-Birth』のキャラであるエルトナムさんのまんまであり、そのゲームは白猫とコラボもしていない。だとすれば特典として手に入れた転生者でしかない。

 

「まあ俺も同じだ…というかなんでメルブラじゃなくてUNIの方にしたんだ?」

「好きなゲームで持ちキャラだったんです!それしか思いつかなかったから仕方ないでしょ?」

 

 その女性は自信満々に胸を張って答えた。なんとなく気持ちはわかるが、とりあえずそれ以上は聞かないことにした。

 

「とりあえず転生者だってことは黙っておくよ」

「助かります…」

 

 まさかこんなところで自分の他の転生者に出会うとは、お互いに思ってもいなかっただろう。話を済ましてキャトラ達のところへと戻った。

 

「シュスイ、この人とは知り合い?」

「レクトの言う通り……なんというか腐れ縁的なやつ?」

 

「腐れ縁とは失礼ですね、あながち間違ってませんが……自己紹介が大幅に遅れてしまいましたね。私はエルトと呼んでください」

 

 まんまじゃないか、と呟いたがエルトには聞こえたようで彼女は笑顔でシュスイの足を思い切り振んずけた。

 

「キャトラさん達のことは同じ革命軍のザックからお伺いしています。お力をお貸しいただきありがとうございます」

 

「へへーん!あたし達にかかればどんな依頼もお茶の子さいさいよ!」

「もうキャトラったら…エルトさん、今回の依頼はどんな内容なんですか?」

 

 アイリスがさっそく本題に乗り出す。このサザンクロスに革命軍が何をしにやってきたのか、シュスイも目的が知りたかった。エルトは咳払いをしてゆっくりと口を開いた。

 

「目的は……この世紀末都市サザンクロスを興した男、『キング』を捕らえます」

「キングって…エルト、もしかして……アレ?」

 

 シュスイはずっと気になっていたホテルのてっぺんに飾られていた大きな看板の方へと指さした。願わくば自分の気のせいだと、思い違いであると必死に考えていた。しかし、エルトはにこやかに首を縦に振った。

 

「ええ、あの男です」

 

 マジかとシュスイは肩を竦めた。看板に描かれていたのは長い金髪で鋭い目つきをしたいかにも悪そうな顔をしているがどや顔をしているためどこか間抜けそうな顔をした男性だった。

 

(どこからどう見ても……シンなんだよなぁ……)

 

 かの北斗の拳に登場したサザンクロスの主であり『キング』と呼ばれた南斗聖拳のシン。そのシンに姿がそっくりな男の絵を見てシュスイは確信した。

 

(キングっていう男も転生者かよ……)




 キングスクラウン3もキングスクラウン2も爆死でした…

 嗚呼、キアラぇ……嗚呼、アイシャぇ……


 メルブラのシオンもいいですが、UNIのエルトナムさんもなかなかかっこかわいい

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