冒険者共   作:サバ缶みそ味

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あけましておめでとうございます(大遅刻)

 更新遅れました‥‥
 年末年始の凱旋ガチャ、何十回も回したのに‥‥アイシャがね、出なかったの(血涙)
 今年はガチャ運は渋いようですん


❖6 九条厄霊記⑤

「‥‥」

 

 シズクと共にエキビョウを退治することになったシャラクだったが、今非常に悩んでいた。

  

 

シャラクside

 

 

 さて、クジョウの都を包んだ病魔の霧を操っていた妖魔、エキビョウとの戦いになったのだが‥‥『大神』では『霧隠』を使い熟せばあっという間に倒せる簡単な中ボスで初見でも苦戦することもなく楽に倒せた。

何十週ものプレイをしても3分以上かけたことがない。と言うかどれくらいの速さで倒せるかタイムアタックをもしたほどだ。ボシュラッシュでは『あれ?お前いたの?』的な感じだったし、ポーション役或いは高難易度チャレンジや縛りプレイでの束の間の休息。はっきり言って印象にない。

 

そんで実際に対峙して見ると‥‥めがっさ怖ええええっ!?平面だったしポップな絵で怖い雰囲気は無かったし、もうほとんど楽勝ムードだったけどこれ、勝てるの?的な雰囲気が出ててヤバい‼

 

 いやいや落ち着くんだシャラク、素数を数えるんだ…相手は名前負けしている中ボス。攻撃パターンとかもう把握済みだし攻略済みなんだ。一つ一つの行動をよく見て筆業で対処すれば楽勝な敵だ。シズクさんやコリンやカスミもいる。もう何も怖くないっ!

 

 大神と同じように出方を見て『攻撃見てから霧隠余裕でした』作戦をすればあっという間のはず。そうそう、エキビョウがゆっくりと腰に提げている刀を抜こうとして‥‥ん?それ、あかんやつや‥‥!

 

「シズクさん、危ねえっ‼」

 

 勢いよく横から飛び込んでシズクさんを押し倒す。その数秒後に自分の横を嫌な気配が高速で通り過ぎた。後ろを見れば自分達が立っていた場所にあった灯篭が見事にスッパリと斬れて大きな音を立てて崩れ、刀を鞘に納めるエキビョウの姿があった。

 

「シャラク殿、今のは‥‥!?」

「ちょ、ちょっと!何が起きたの!?」

 

 シズクさんもコリンも今エキビョウが何をしたのか分からず戸惑っていた。正直言って俺も見えなかった。速すぎじゃないでしょうか‥‥

 

「今のはエキビョウが恐ろしく速い居合斬りをしたんだ」

「居合!?速すぎて見えなかったよ!?」

「わ、私でも見切れなかった‥‥」

 

 エキビョウは病魔を振り撒くだけでなく、中身が空洞だからなのかまたはた妖刀『金釘』を持つほどの実力なのかその動きは速い。恐ろしく速い居合。普通の俺じゃ見逃しちゃうね、と言っている場合ではない。対処しなければ打開することはできないのだ。

 

「大丈夫、こっちには対抗策がある」

「シャラク、それは本当かい!」

「まあタイミングがいるけれども‥‥その、なんだ‥‥」

 

「もじもじしてないではっきり言いな!あれかい?準備に時間がかかるとかかい?」

「シャラク殿、ご安心ください。時間稼ぎなら私達が!」

「こういう場合は早くしてほしいけどね。仕方ないからのってあげるわよ」

 

 悪乗りでちょっとためらいながら言おうとしたけども、なんかすっごい言いずらい空気。どもっている暇はない。

 

「その…コリンの耳をモフモフできたら、もっとやる気がry」

「殴るわね?」

「嘘ですゴメンナサイ‼今すぐ、今すぐにいたしますのでっ‼」

 

ジョークを言ってふざけている場合ではないと。これ以上ふざけたら本気でコリンに怒られるので集中することにした。

 

「成程、精神統一のようなものですね!シャラク殿、私が相手の気を逸らしている間にどうぞっ!」

 

「あ、シズクさん嘘です本気にならないで!?心が痛い‼やめて!俺の良心のライフはもうゼロよ!」

 

「ほらシズクが本気で信じちゃったじゃん!」

「シズクは真面目すぎるからね‥‥どうするの?」

 

 ええい、ままよ。ここで怖気づいてしまっている暇はねえ、真面目過ぎるシズクさんの為にいち早くやるしかない!相手の動きをよく見ろ。タイミングを間違えるな。エキビョウが刀に手をかけ居合斬りをするその時が狙い目だ。

 

「今だっ‼」

 

 エキビョウが刀に触れたその瞬間、筆で空中に『=』の文字を描いた。

 

 

シズクside

 

 シャラク殿が言っていた妖魔、エキビョウ。これまで戦ってきた鬼や妖とは違い、禍々しい気配を感じる存在だった。しかも見た目に反して目にも止まらぬ速さの居合は私でも見切れなかった程の腕前。油断をしているとこちらがやられてしまう。だが、負けるわけにはいかない。クジョウの都を、都の人々を、そしてイサミを苦しめた妖魔を絶対に許さない!

 

 何やらシャラク殿はエキビョウに対抗できる秘策を持っている。どんな手なのかは分からないが、今はシャラク殿を信じよう。

 

「‥‥‼」

 

 再びエキビョウが刀に手をかけあの目にも止まらぬ速さの居合をしてくる。未だに見切れていない上にここで避けてしまったら後ろにいるシャラク殿やコリン殿に当たってしまう。防ぎきれるかどうかわからないが刀を交差して構えた。エキビョウが刀を握り今にも居合斬りを放とうとした時だった。

 

「今だっ‼」

 

 後ろでシャラク殿が叫んだ途端、シャラク殿が前へと駆け出していくのが見えた。無暗に前に出てしまえばエキビョウの居合斬りで斬られてしまう。私は咄嗟に『危ない‼』と叫ぼうとしたが‥‥叫べれなかった。

 

 よく見れば、前方からエキビョウが刀を抜いたままゆっくりと動いている。それだけでない。はらりと落ちる葉の動きも、水の流れも、空気の流れも、周りの全てがゆっくりと動いていた。勿論、私も一つ一つの動きが遅くなっている。まるで時の流れが遅くなってしまったかのようだ。そしてその空間の中でシャラク殿だけが通常に動いていた。

 

 シャラク殿はゆっくりと動いているエキビョウに向けて筆を一文字に薙ぐ。黒い墨が空中で『一』の文字を描くと一筋の剣閃がエキビョウを斬りつけた。ガキンと金属音が響くとエキビョウが持っていた錆びた刀が彼方へ飛びエキビョウはがくりと倒れた。それと同時にゆっくりと流れていた時間が元に戻る。

 

 振り向けばコリン殿もカスミ殿も私と同じように時がゆっくりと遅く流れていたのを感じていたのだろう、一体何が起きたのか戸惑っていた。これがシャラク殿が言っていた秘策‥‥時の流れを遅くする術を持っているとはシャラク殿、一体何者なのだろうか。

 

 いや、今はそんな事を考えている暇はない。妖魔の動きが止まっている間が好機、直ぐに倒さなければ。私達はすぐに倒れているエキビョウに向けて攻撃をしかけようとした。

 

「シズクさん!そっちじゃない‼本体はこっち‼」

 

 ふとシャラク殿が私達を止める声が聞こえた。見ればシャラク殿がぴょこぴょこと逃げるように跳ねている錆びた刀を追いかけていた。

 

___

 

「このっ!逃げんな本体っ‼」

 

 シャラクは錆びた刀、妖刀金釘を追いかけていた。病魔を振り撒くエキビョウの本体は錆びた刀。これを退治しない限りこの穢れを祓う事はできない。

 

 シャラクが一閃を放とうとしても的が小さすぎるせいか妖刀金釘はぴょこぴょこと跳ねて躱し、逃げてしまう。

 

「普通はそこで気絶してるってのに‥‥!往生際が悪いぞこの野郎‼」

 

「エエイ、黙レ小僧‼我イ剣技ハ居合ダケデハナイゾ!‼」

 

 そう叫ぶと妖刀金釘は怪しく光り出す。相手は何か技を使って来たのかもしれないがシャラクそれにも気にせず追い続ける。

 

「シャラク殿‼お気を付けください‼」

 

 シズクが叫んだのが聞こえ、後ろを振り向くとエキビョウの体に突き刺さっていた無数の刀や弓矢が抜けてシャラクに向けて一斉に飛んできたのだった。

 

「うっそぉぉぉぉっ!?」

 

 此方に跳んでくる無数の刀や弓矢にシャラクはギョッとした。確かにゲームでは本体を含めて刀剣を飛ばしてくる攻撃パターンはあったがこんなにも無数に飛んでくるのは見たこともない。

 

「あぶねっ!?」

 

 シャラクはひやひやしながら弾幕シューティングのように躱していく。直撃しそうになった時は『霧隠』を使い自分の周り全てをスローモーションにして切り抜ける。

 

(霧隠は便利だけど‥‥多用するからけっこう消費が激しいんだよね)

 

 霧隠は時間の流れを遅くさせる事で攻撃ができる、相手の攻撃を躱せるのに便利なせいで多用してしまう。そのため消費が多い。そして周りをスローモーションにできるのだがそれができる時間も短い。この飛んでくる刀剣を躱すことに費やし続けてしまったらエキビョウを倒す前にばててしまう。

 

「小僧‼ソノ首、貰ッタ―――ッ‼」

 

 無数の刀や弓矢の弾幕を掻い潜り、妖刀金釘を握ったエキビョウが飛び掛って来た。いつの間に鎧の体が本体と合流していたのかシャラクは驚いて動けなかった。

 

「しまっ‥‥」

 

 目にも止まらぬ居合がシャラクの首にめがけて放たれる。今ここで『霧隠』を使おうとしても間に合わない。シャラクは咄嗟に目を瞑った。

 

「させません‼」

 

 硬い金属がぶつかり合う音が木霊する。シャラクは恐る恐る目を開くと、シズクが二本の刀で妖刀金釘の居合斬りを防ぎ、受け止めていた。刀を弾き返し、シズクは二本の刀を薙ぐ。一太刀受けたエキビョウはよろめきながら

後ろへと下がる。

 

「ナニ‥‥!?我ガ剣技ヲ防イダダト!?」

「私は鬼退治の一族の末裔、侮るな!」

 

 戦士としての勘なのか、エキビョウの太刀筋を見切った。シズクの凛とした様にシャラクは見惚れていたが、自分とシズクの周りに無数の刀や弓矢がフヨフヨと浮いているのに気づいた。

 

「ダガ、見切ッタトシテモモウ遅イ。コノママ串刺シニナルガイイ‼」

 

 

 一斉に宙に浮いている無数の刀が二人を串刺しにせんと飛んできた。今の状況で避けきれるかシズクは多少体に刃が刻まれようとも全力で受けて立つ覚悟を決めた。

 

「シズクさん、ここは任せてくださいな!」

 

 窮地な状況の中、シャラクは落ち着いており寧ろ楽しんでいた。どこかしら背中を任せられる安心感をシズクは感じた。かつてイサミと共に互いの背中を守り、鬼を探す旅をし鬼との戦いをしてきた日々をシズクは思い出し、ふっと笑った。

 

「ええ‥‥シャラク殿、お願いします!」

 

 シャラクはニッと笑うと筆ででかでかと『三』の文字を描いた。

 

「コリン、カスミ‼吹っ飛ばされないようにしとけよ‼」

 

 それがどういう意味なのかコリンとカスミは分からなかったが、直ぐに分かった。『三』の文字が消えた途端にシャラクとシズクの周りから突然竜巻のような暴風が吹き荒れだした。荒れ狂う暴風が吹きすさび、岩や落ち葉が吹き飛ばされ、二人を突き刺さんと飛んでいた無数の刀や弓矢も暴風に飲み込まれ彼方へと吹き飛ばされる。突然の暴風にコリンとカスミも巻き込まれそうになる。

 

「きゃあああっ!?吹き飛ばされるぅぅぅっ!?」

「風が強すぎるわよ!?」

「いだだだ!?ちょ、カスミ‼し、尻尾をつかまないで!?」

 

 吹き飛ばされまいとコリンは気にしがみつき、カスミはコリンの尻尾を掴んでいた。その光景をシャラクはじっと真顔で見つめていた。

 

「むーん‥‥みえぬ」

 

「シャ、シャラク殿…」

 

 時の流れを遅くするだけでなくこの様な竜巻を起こすシャラクの技にシズクは驚いていた。彼は本当に何者なのだろうかとそう思うしかない。

 

「シズクさん、今のうちに決めちまいな!」

「‼そうですね‥‥お覚悟を‼」

 

 鎧に突き刺さっていた刀剣全てを失ったエキビョウが持っている刀は本体の妖刀金釘のみ。シズクは一気にエキビョウへと駆けた。

 

「オノレ‥‥‼」

 

 怒り狂うエキビョウは再び妖刀金釘を鞘に納めて居合の構えに入る。シズクが間合いに近づくまで待ち構えるつもりだ。迫るシズクが間合いに入った瞬間、錆色の妖刀を抜き目にも止まらぬ速さの居合を放とうとした。放たれた錆びた刃をシズクはギリギリ体に当たるところを躱していく。もう病魔の太刀筋を見切ったのだった。

 

「露と消え去れ‼」

 

 シズクは二本の刀に力を込めて渾身の斬撃を連続で飛ばした。放たれた白い剣閃は何度も何度も妖刀金釘ごとエキビョウに直撃する。切り刻まれた鎧の体は粉微塵となり、妖刀金釘は刃がボロボロになり宙に飛ばされる。

 

「シャラク殿‼」

「おっしゃあ!」

 

 シャラクは宙に飛んだ妖刀金釘に向けて一文字を描き『一閃』を放った。錆びた妖刀、エキビョウの本体は穢れの霧が消えて両断される。エキビョウは慟哭を響かせて霧散した。

 

「いよっし‼退治できたぞーっ‼」

 

 初めての妖魔の退治に成功したシャラクは喜び跳ねた。正直言うとかなり緊張していた。まさか自分が『大神』に出ていた妖魔と戦う事になろうとは思いもしなかったのだから、戦いを終えて一先ず安堵の息を漏らす。

 

「どうよ、コリン‼俺の雄姿に惚れたろ?だから耳をモフらせry」

「こんのおバカぁぁぁっ‼」

「ボベブゥッ!?」

 

 ドヤ顔するシャラクに向けてコリンは思い切りドロップキックをお見舞いした。

 

「あたし達まで吹き飛ばされそうになったし‼というかどさくさ紛れみえぬって呟いたでしょ!?」

「何が見えぬなのか説明してくれないかしら?」

「あー‥‥いえ、これはラッキースケベじゃなくて…し、シズクさんお助け…‼」

 

 ジロリと睨んで迫るコリンとカスミにシャラクは焦り、シズクに助けを求めようとしたが彼女の様子がおかしいことに気づいた。

 

「ふぁーーーい!イサミィ、わたひやっひゃひょーっ‼」

「ふぁっ!?し、シズクさん!?」

 

 これまでお淑やかで凛としていたシズクの様子が一変、頬はほのかに紅く火照り、目はとろんと艶やかに、呂律が回らなくなりへべれけになっていた。彼女の状況にシャラクはギョッとした。

 

「え、これ、どういう事!?」

「シズクは鬼との戦いで『酩酊素面反転の呪い』という酔っ払いと同じ状態になる呪いにかかっているの。これを解くにはお酒を飲まないといけないわ」

「あちゃー、緊張の糸が切れちゃったんだねぇ…」

 

「もぉ~…わらひふぉんなによっへまふぇんよぉ?」

 

「酔っ払いのシズクさん‥‥イイッ!」

 

 へべれけなシズクに何かそそるものを感じたシャラクはサムズアップするがコリンが養豚場の豚を見つめるような目で睨んできたのでふざけるのをやめた。エキビョウは退治で来た。後は病魔の霧が消えるのを待てばいい、そんな事を考えていたその時、緑の霧が蠢いているのが見えた。

 

「オノレ‥‥オノレ‼小僧共ニ敗レルトハ‥‥‼」

 

「げっ!まだいるのかよ‼しぶてえ野郎だなおい!」

 

「コウナレバ‥‥我ガ身ガ消エル前ニコノ女ヲ呪イ殺シテクレル‼」

 

 緑の霧は小さな塊となってへべれけ状態になっているシズクに向かって飛んだ。今の状態ではシズクは避ける事はできない。シャラクは間に合うかどうか筆を振るおうとした。

 だが、それよりも早くシャラクの横を、シズクの横を一本の矢が通り過ぎ、緑の霧の塊に突き刺さると断末魔を上げて今度こそ本当に消えた。今の矢は何処から飛んできたのか、シャラクは振り返る。

 

「何とか間に合いましたね‥‥」

 

 そこにいたのはエキビョウに取り付かれ、病魔に苦しめられ、シズクのジェノサイド雑炊でたぶん死にかけていたイサミの姿があった。

 

「イサミ!もう大丈夫なのかい!」

「よかった‥‥無事に治ったのね」

 

 イサミはコリンとカスミに笑って頷くとシャラクを見つめる。

 

「シャラク殿、コヨミ殿とフローリア殿からお伺いしました。病魔に取り付かれた私をお助け頂きありがとうございます」

「い、いやぁー…そう固くならなくても。あー、シズクさん酔ってるんだけど?」

 

「あっ、シズク‥‥!シャラク殿、御見苦しいところ申し訳ございません」

 

「別に気にしてないけど‥‥あ、シズクさん『わ、私、もうだめぇー!』って言ってみて?」

「わ、わらひ、もうらめぇー‼」

「うん、イイネ‼じゃもっとトロ顔で」

 

「シャラク?」

「うん嘘ゴメン!」

 

 コリンは笑顔でぐりぐりとシャラクの足を踏む。どうやら悪乗りは許してもらえないようだ。そうふざけている間に辺りの霧がどんどんと消えていき、クジョウの都を包んでいた霧が晴れていく。

 

「霧が晴れていく…」

「これで穢れが消えたのね…」

 

 コリン達はクジョウの都を貶めようとした穢れが消え、病魔の霧が空高くへと消えていったのを見上げて安堵していた。シャラクも無事に解決できて空を見上げたが、顔を曇らせた。

 

 空高くに見える病魔の霧、エキビョウの慟哭が黒い影の塊になっていき、その中に一瞬、『毒』の文字がかかれた兜を被っている巨大な蛇の影が見えた。そしてその影は東へと飛んでいった。

 

(あの蛇の影‥‥考えたくないけどあれは‥‥)

 

 シャラクは嫌な予感が過ったが、今はクジョウの都の霧が晴れた事を喜ぶことに集中した。

 

___

 

「もう出立するのね…」

 

「まあねー、まだまだ祓う穢れがあるみたいだし」

 

 エキビョウとの戦いの一件から翌日、シャラクとコリン、そしてコヨミとタローは支度を終えてクジョウの都の正門にいた。彼らの出立をカスミとフローリア、シズクとイサミが見送ろうとしていた。

 

「シャラク殿、見苦しい所をお見せして本当に申し訳ございません!」

「いいっていいって、シズクさんのめちゃんこ可愛いところ見れたしぃ?水墨画で書けるけど見る?」

「は、恥ずかしいので結構です!」

「シャラク殿、どうか大目に見てやってください」

 

 真面目すぎる二人にシャラクは苦笑いをする。これでへべれけの状態になるのだからある意味恐ろしい気がする。そしてこれ以上シズクを弄るとコリンに怒られるのでやめた。

 

「まあ今回はドタバタしてゆっくりとクジョウの都を観光できなかったけど…また来るときは案内よろしくな!」

 

「ええ、またね」

「シャラクさん、コリンさん、コヨミちゃん、またお会いしましょうね」

「シャラク殿、本当にありがとうございました‼」

「またお会いしましょう」

 

 こうして、クジョウの都を包んでいた穢れを祓ったシャラク一行はクジョウの都を後にした。この前は霧で空が見えなかったが、今はこうして快晴の青空を見上げることができた。

 

「シャラクにーに!都、楽しかったね!」

「ああ、今度来るときは生八つ橋を流行らせなきゃな!」

「こだわるねー‥‥それでシャラク、次は何処へ向かうんだい?」

 

 コリンに次の目的地を尋ねられシャラクはうーんと腕を組んで唸りながら考えた。コリンとコヨミにはまだ話していないのだが、エキビョウを倒した後にクジョウの都の上空に現れた黒い影、あれは恐らく各地に穢れを広めた本当の原因。それは東へと飛んでいった。

 

「そうさな‥‥とりま東へ行ってみようか」

 

 こうして東へ向かえばいずれきっと『奴』と戦う事になるかもしれないだろう。

 

「東ねぇ‥‥その先は『軍神の島』か『アオイの島』のどちらかへ行くことになるけどいいのかい?」

「なにそれむっちゃ戦国やん」

 

 どの島も名前からして戦国乱世っぽい雰囲気を感じる。一体全体この世界はどうなっているのやらとシャラクは困惑する。

 

「シャラクにーに、どっちへ行くの?」

「うーん‥‥と、とりあえず東に」

 

 難しい事は考えずになるようになると考えて気ままに向かう事にしよう。シャラクはふぅと一息つくとじっとコリンを見つめる。

 

「な、なんだい?」

「クジョウで頑張ったんだからさ、何かご褒美欲しいなーって‥‥モフらせて」

 

 手をワキワキするシャラクにコリンは手をはたいて尻尾と耳を隠してジト目で睨む。

 

「ダメに決まっているでしょうが‼」

「いいや、もう我慢できない。モフらせて、いやモフらせろぉっ‼」

 

 我慢の限界か好奇心が競り勝ったか、シャラクは飛びかかり、コリンのキツネ耳と尻尾をモフモフしていく。

 

「ひゃっ!?ちょ、耳は反則っ!やんっ、だめだってば!」

「ええぞええぞ‼」

「んっ、やめっ‥‥やめんかぁぁぁぁっ‼」

「どぼへええっ!?」

 

 プッツンと堪忍袋の緒が切れたコリンはアッパーカットでシャラクを空高く飛ばして行く。今日はお天道様が見えるポカポカ陽気、コヨミとタローはのほほんとしていた。

 

「シャラクにーにとコリンねーね、仲良しだね!」




 正月イベ、なんでジュラシックなのかなーっと思ってたらジュラシックワールドの続編が上映されるようで。それに合わせてやったのかな…?

 でも、戌年なんだからコヨミも出して欲しかった‥‥ジュラの実装マダー?

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