冒険者共   作:サバ缶みそ味

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 話を短くすると言ったな‥‥あれは嘘だ(土下座)

 時折こんなキャラはこんな口調じゃないし、こんな性格じゃねえ‼というような所があるかもしれません。知識不足です、すみません…


❖4 九条厄霊記③

「もう‥‥疲れたよぉ‥‥」

 

 宿屋にてコリンは畳にうつ伏せになって寝た。疲労困憊で尻尾もキツネ耳もぐったりとしている。

 

「本当に都中の木や草花を咲かせるとはね‥‥」

 

 シャラクが都中の枯れ木や萎れた草花を咲き戻したことに感心していたが、かなり疲れた様子でため息をつく。

 

「まさか私までも踊らされるなんて思いもしなかったわ‥‥」

「ご、ごめんねぇ…あのバカ急に思いつく癖があるから…」

 

 シャラクは効率を上げる為、コリンだけではなくカスミも踊るように頼んだ。『そんなこと言ったってしょうがないじゃないか、巫女さんだもの』と誰かを真似たような口調で頼み、コヨミの期待の眼差しとコリンの助けを求める眼差しで仕方なくカスミも舞を踊ることにしたがその後がひどかった。

 

「舞だけではなく変な踊りを強要してくるのは流石に焦ったわ…」

「いやもう分かんないって。何なのよデレマスって…」

 

 シャラクが『なんかタイミングが合わん』とか言ってきて別の踊りをするよう指示してきたのだった。シャラクの指示した踊りをするがキレがないとか笑顔が足りんとかそれじゃあMステに出場できんぞ!とかきめ細かく指摘してきた。

 何故か踊りの練習になっていて本当にこれで大丈夫なのかと気になった二人であったが、『その調子で笑顔で歌いながら踊ってて!』とシャラクが言いだして駆けていくと次々と木々に〇を描いて花を咲かせて穢れを祓っていったのだった。

 都中に花を咲かせていき都を包んでいた重々しい空気が和らぎ、都の人々の顔色も回復していったのは良かった。しかし都のど真ん中で歌い踊ったためギャラリーにかなり注目され、アンコールの声に囲まれてしまったのだった。シャラクが戻ってくるまで二人は歌い、踊り続けてかなりくたびれたのであった。シャラクが恵比須顔で『明日もヨロ★』と言った時はコリンとカスミはラリアットをシャラクにかました。

 

「というかこれ、巫女じゃなくてアイドルじゃん‥‥」

「何を考えているのかさっぱりね‥‥ところで、シャラクはどこ行ったの?」

 

 シャラクはコリンとカスミを宿屋で休ませてすぐにどこかへ出かけてしまった。迷子になってないだろうか多少は気にはしていたがコリンはため息をついて顔を上げる。

 

「シャラクの事ならコヨミとフローリアがいるから大丈夫でしょ‥‥たぶん」

「た、たぶん大丈夫よね!ふ、フローリアが一緒にいるんだし!」

「いや、あの変態(シャラク)は何かやらかすかも…こ、コヨミがあのバカの毒牙にかかる前に何とかしなきゃ‥‥」

 

 疲れきっているコリンは這ってでも向かおうとしていた。あのシャラクを信用しているのか信用していないのかカスミも疲労で頭が回らなかった。

 

___

 

「おーねがい♪シーンデレラー♪」

 

「いいねー、コヨミ。めっちゃ可愛いぜ!アイドルになれるぞ‼(やっべぇwメッチャ撫でまくりたいww)」

 

 シャラクはコヨミとフローリアを連れて都のあちこちを散策していた。コリンとカスミが歌って踊っていた曲を歌うコヨミを内心大喜びしながら撫でるシャラクにフローリアは微笑む。

 

「シャラクさんは不思議なお方ですね…シャラクさんからはヒマワリ、お日様の香りがします」

「え、うーむ、あながち間違っちゃないな」

「シャラクにーにはお日様のようでぽかぽかしているの!ぎゅっとしてるとあったかいんだー!」

「でへへへへー」

 

 コヨミにぎゅっと抱きしめられてシャラクは照れながらにやけた。そんなシャラクをフローリアは優しく微笑む。

 

「お日様‥‥元気を取り戻した花や木達も貴方の事をお日様と呼んで感謝してますわ。本当にありがとうございます」

「あっははー、お日様かぁー、照れちまうなぁ。よっしゃ、この都を包んでる霧を晴らしてお天道様を照らしてやんねえとな!」

「シャラクにーに、次は何をするの?」

「んーそうさなぁ‥‥人助けかな」

 

「「人助け?」」

 

 コヨミとフローリアは不思議そうに首を傾げる。草木に花を咲かせて穢れを祓っていったが今度は人助けをするということで穢れを祓うことができるのだろうか。

 

「簡単なこった。落とし物を届けたり、道に迷ってる人を道案内したり、重たい荷物持ってあげたり、困ってる人を幸せにしてあげるんだ」

「そのような事でいいのですか?」

「小さなことからこつこつと。都中の人たちも笑顔になりゃ都も明るくなる。そうすりゃどっから穢れが湧いて出たのかが分かるんだ。さあ頑張るぞー」

「コヨミもお手伝いするー!」

 

 シャラクは言っていたとおり落とし物を持ち主の下へ届け、道に迷っている人をおぶって目的地へと案内し、重たい荷物をしょっている人の代わりに持ってあげたりと次から次へと人助けを行った。

 その間でもシャラクは不思議な力を使っていた。近道だと言って水面に〇を描くと大きな蓮の葉が現れて、蓮の葉を使って川を渡り、橋が壊れて渡れない時は筆で橋を黒く塗りつぶすと橋が直ったりとコヨミとフローリアを驚かせた。小さなことでも人々はシャラクに感謝し、暗かった表情が消えて笑顔に戻っていった。

 それから丸一日、シャラクは都中を駆け回り困っている人を手助けし続けた。彼の奮闘のおかげか毒々しい霧に包まれていた都の空気も雰囲気も明るくなり、街中を行き交う人々も表情が明るくなった。

 

「うむ、ざっとこんなもんっしょ」

 

 シャラクは疲れの様子が全くなくドヤ顔で頷く。一日中都を駆け回っても疲れの色を見せないシャラクにコリンは半ば呆れた。

 

「あんた、どういう体力を持ってるんだい‥‥」

「ふっ、コヨミに褒められれば元気100倍、そしてコリンが褒めてくれば気力1000倍!あ、ついでにキツネ耳を触らせてくれたら元気ビンビン、ヤル気10000倍だけどね?」

「せいっ‼」

「ミコーンッ!?」

 

 コリンはすかさず調子に乗っているシャラクに目つぶしをした。奇声をあげてのた打ち回るシャラクにどうツッコんだらいいのかとカスミは戸惑う。

 

「にーに、ねーね!コヨミもタローも人助け頑張ったよ!」

「うんうん、コヨミは偉いねぇ。どっかの変態とは大違いだ」

「さ、流石はコヨミだ…モフらせてくれないケチなキツネ巫女の代わりにモフらせryがああああっ!?」

 

 即座にシャラクはコリンのアームロックで絞められた。フローリアに「それ以上いけない」と言われるまで止めなかった。

 

「けれど、穢れの大元は分かったの?」

 

 カスミは色々とツッコみたかったが取り敢えず本題に入ることにした。草木に花を咲かせ、人々の手助けをして穢れを祓おうとしても都に漂う毒々しい霧と穢れをどうにかしない限り解決しないのだ。穢れを撒いた元凶がいるとシャラクが言っていたが当の本人は少し困ったように首を横に振る。

 

「都中を駆け回ったんだが中々見つからんでな。見つからないように潜んでいるだろうなー」

 

 本来ならば穢れが薄れれば穢れの発生源が露わになって分かりやすくなるはずなのだが一日中都を駆け回っても見つからなかった。見つからないように潜み、気づかれないように穢れをばら撒いているはずだ。即刻見つけなければ穢れは再び広がり、これまでやったことが水の泡になってしまう。

 

「こうなれば‥‥臭いで嗅ぎ付けるしかねえ」

「はぁ!?そ、そんな事で見つけれるのかい?」

 

 コリンはくんくんと鼻でにおいを嗅ぎ始めるシュスイを訝しげに見つめる。シュスイはくんくんと鼻を嗅いでコリンに近寄り、満足げにニッコリと笑った。

 

「くんかくんか‥‥うほっ、いいかほり」

 

 コリンは無言でシャラクにチョークスリーパーをかました。

 

「ギブギブギブ!?コリンさん嘘ですごめんなさい‼ジョーク‼イッツジョーク‼…あ、なんか背中に柔らかい感触がry」

 

「‥‥」

 

「あがががが!?ウソウソウソ‼嘘です‼真面目にやりますから‼真面目にやりますからぁぁぁ‼」

 

 ギリギリとシャラクをチョークスリーパーで絞めるコリンはまさしく養豚場の豚を見るような目で見下していた。そんな二人を他所にコヨミはくんくんと鼻で嗅いでいるとふと何かの匂いに気づいた。

 

「くんくん‥‥‼シャラクにーに!あっちの方から嫌な臭いがするよ!」

 

「で、でかしたぞコヨミ‥‥俺は危うく死の香りを嗅ぎそうになったけど。あ、他にいい香りもry」

「…次、ふざけたら追い出すからね?」

「ヒエッ」

 

 釘を刺されたシャラクはコヨミと共にその臭いを嗅いで辿る。道という道を通り、だんだんと市街地の奥へと進んでいった。そこは屋台や茶屋や宿屋が立ち並ぶ商店街。果たしてこんな所に穢れの大元が潜んでいるのだろうかとコリンとカスミは不安になってきた。

 

「ね、ねえ、こんな所に穢れの大元があるの?」

「た、たぶんねぇ…コヨミの嗅覚を信じよう」

 

「くんくん‥‥んっ、シャラクにーに!ここから臭いがするよ!」

 

 どうやらコヨミが穢れの大元を見つけたようだ。コヨミが指さす先には大きな旅籠屋があった。シャラクは臭いを嗅ぐと納得して頷きコヨミを撫でた。

 

「上出来だ、コヨミ。間違いなくあそこに穢れの大元が潜んでいるな」

「えへへへ‥‥!」

「本当にこんな所にあったんだ‥‥」

 

 コリン達はその穢れを調べるためにさっそく旅籠屋に乗り込もうとしていたがシャラクは少し考え込んでいた。乗り込むのはいいが問題は何処に、何が潜んでいるかだ。毒々しい緑色の霧やその霧の影響で元気がない人々、枯れた草木からして『大神』に登場する妖魔であり、その正体をシャラクはもしやと勘付いていた。

 

「む…?カスミではないですか。ここでなにをしているんです?」

 

 いざ旅籠屋に入ろうとした時、コリンとカスミを呼び止める声が聞こえた。振り向けば白い和装の服を着て、薄茶色の髪に白い花の髪飾りとリボンをつけた女性がいた。彼女の腰には刀が二振り提げている。その女性を見たカスミは目を丸くした。

 

「シズク!シズクも都に戻って来てたのね」

「ええ、各地に点在する穢れの調査を終えて…そこの御仁は?」

 

 シズクと呼ばれた女性はシャラクに視線を向けた。どうやら気になっている事に気づいたシャラクはドヤ顔で手を差し伸べた。

 

「どうも、貴女の白馬の王子、シャラry「シャラクー、わかってるよねー?」‥‥ゲフンゲフン、コリンのオトモのシャラクです、はい」

 

 笑顔でこぶしを握り締めるコリンを見てすぐさま蔑むように頭を下げるシャラクにシズクは不思議そうに首を傾げる。これ以上ふざけたら二度とコリンのキツネ耳や尻尾をモフることができないどころかコヨミをナデナデさせることができないとなるとシャラクは真面目にやるしかなかった。

 

 コリンはシズクにシャラクは筆を使った不思議な術を持っていること、クジョウの島に点在している穢れを祓う力を持っていることを説明した。シズクは目を丸くして驚きシャラクを興味津々に見つめる。

 

「成程…!シャラク様は摩訶不思議な力をお持ちなのですね!申し遅れました、私シズクと申します」

「えっへっへー、ええまあ。俺に任せときゃ穢れなんてチョチョイノチョイでさぁ‼」

「まあ頭の中はお花畑だけど」

 

「カスミ達はこの旅籠屋に何か御用時なのですか?」

 

 カスミはこの都を包んでいる毒々しい霧と穢れを祓う為にシャラクと共に穢れをばら撒いている大元を探し、この旅籠屋に辿り着いた事を話した。その話を聞いてシズクは驚き旅籠屋を見上げる。

 

「なんと…‼このような所に…‼」

「シズクもこの旅籠屋に用でもあったの?」

 

 カスミが尋ねるとシズクは深刻そうな表情になりゆっくりと口を開いた。

 

「実は…イサミが病に倒れてしまって‥‥今、この旅籠屋で休ませているんです…」

「え!?あのイサミが…!?」

 

「…え?イサミって誰?彼氏?」

 

 カスミはシズクの話を聞いて驚いていたがシャラクは半ば興味半ば嫉妬の様子で尋ねてきた。それを聞かれたシズクは顔を赤くして焦りながら首を横に振る。

 

「ち、違います!い、イサミとはお、同じエンジュ家の関係ですし、宗家と分家ですし!お、幼いころから共に修行した仲ででで…‼」

「ホントかなぁ~、シズクちゃん顔赤いぜー?うぇいうぇーい」

「こら、茶化してる場合じゃないでしょーが」

「ゴメンヌ!?」

 

 コリンの空手チョップが脳天に直撃したシャラクは奇声をあげてのた打ち回った。そんなシャラクをカスミとシズクはどうツッコんだらいいか戸惑っていたがコリンのとりあえずスルーでというジェスチャーに頷いて話を続けた。

 

「急に高熱を出して寝込んでしまって…都の医者に診てもらっても、薬を飲ませても一向に治らないんです…」

 

「信じられないわ…あのイサミが病に倒れるなんて」

「ねー、これは一大事だねぇ」

 

 カスミとコリンがかなり驚いている様子から察するに、イサミとやらはよっぽどの逞しい男性なのだろう。コヨミに頭をさすられながらシャラクはゆっくりと起き上がる。

 

「‥‥シズクさん、そのイサミさんが寝込んでいる部屋に案内してくれやせんかい?」

 

「え?構わないですが…一体どうして?」

 

「まー…あれです、勘ってやつですよ。もしかしたら原因がわかるかもしれない」

 

___

 

「この部屋でイサミは病に伏せている…」

 

 シズクに部屋を案内してもらいシャラクは無言のまま頷いて部屋へと向かっていた。穢れの大元を探しているのだがこれと関係あるのだろうかとコリン達は気になりつつも静かにシャラクを見つめる。しかしこれまでシャラクの行動で色々と解決できたのだからシャラクを信じるしかない。でもふざけたら〆るとコリンは静かに見つめる。

 

「イサミ、戻ったぞ」

 

 シズクはゆっくりと襖を開けた。狭い畳の一室に布団が敷かれ、その布団で白の混じった銀髪の体格が逞しく、厳格な雰囲気のある男性が寝込んでいた。眠っているようだが、病に魘され苦しそうであった。

 

「数週間前です…都に戻った途端に高熱を出して倒れ、目を覚まさずに苦しみ続けているんです。医者に診てもらっても原因がわからず、処方箋を飲ませても、酒を飲ませても一向に治らない‥‥私はどうしたら…!」

 

 シズクは目を潤わせて病に苦しんでいるイサミを優しく撫でるが彼は目を覚まさなかった。

 

「シャラク…どうにかできないの?」

 

 コリンはシャラクに尋ねるがシャラクはじっとイサミを見つめたまま何かを考えているようだった。シャラクはうーむ、と唸りながら考え込み、キョロキョロと辺りを見回す。

 

「やっぱりな…コリン、皆を少し後ろに下げてもらってくれ」

「え?それってどういうこと‥‥?」

「ままま、見とけって」

 

 シャラクは筆を取り出し、天井に〇を描いた。一瞬、白い光が発せられたかと思いきや天井いっぱいに毒々しい霧が現れた。突然部屋に毒々しい霧が現れたことにコリン達はギョッっとする。

 

「ふん、いくら気配を消して潜んでいろうが、お天道様は見逃しはしないぜ!」

 

「しゃ、シャラク…これって…‼」

 

「ああ間違いねえさ。こいつは妖魔の仕業。妖魔がイサミの体の中に取り付いて毒々しい霧と穢れを都中にばら撒いたのさ」

 




 九条異霊記にもシズクもカスミも出てたし、絡みはあるはずだよね!?

 都、毒霧、体内に取り付き毒霧を撒き散らす…『大神』をご存知の方はもう察しているかもしれません…『ヤツ』です、はい

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