嗚呼、今宵も又ガチャで爆死するのか…(吐血)
「そんなことよりおうどん食べたい」
「もう一度殴られたいの?」
「サーセン」
笑顔でこぶしを握り締めるコリンにシャラクは即座に頭を下げた。何を考えているのかが未だに理解できていないカスミは彼に任せて本当に大丈夫なのだろうかと訝し気にシャラクをジト目で睨む。
「ねえ本当に大丈夫なの…?」
「そ、そこら辺は大丈夫だと思うから。ほら、シャキッとやっちゃいなよ!」
「はいはい、しゃーねえなもう‥‥えーと、まずはこの木からやってみるか」
コリンに急かされ渋々と承諾したシャラクは腰に提げている大きな筆を取り出して、枯れ木の前に立つ。力を込めると筆先が墨が付いたように黒く染まる。枯れ木の前に大きな黒い〇を描き、花壇の草花は黒く塗りつぶした。
すると枯れた木は生気を取り戻したかのように幹は色づき、葉が生え戻り満開の桜の花を咲かせ、しおれた草花は若葉色の葉と鮮やかな花を咲かせた。
「!?花たちが息を吹き返した…!?」
「ここに漂っていた穢れを祓えたの…!?」
シャラクの技にフローリアとカスミは驚きの声を上げた。巫女の力をもってしてでも祓えなかった穢れをこうも簡単に祓えたことには驚きを隠せなかった。やるじゃないかとコリンはシャラクを褒めようとしたがシャラクは何処か困ったような表情をしている事に気づく。
桜を咲かせ草花は生えて咲いたが、その直後に緑色の毒々しい霧が漂いだすとみるみるうちに花びらは落ちて草花はしおれ、木は葉を落とし枯れてしまい戻ってしまった。その光景にコリンはポカンとした。
「‥‥ちょ、ちょっと、これはどういうことなんだい?」
「うーん、結論から言うとこの都に漂う穢れがすんごい強いってこったな」
「はあ!?」
自己完結して納得する様に頷いて答えるシャラクにコリンは唖然とした。こうもあっさり言うのだからムッとしたコリンはなるほどなるほどと呟きながら頷くシャラクをつかんで何度も揺さぶる。
「さっきまで俺に任せとけって言ってたくせにどの面下げてるんだいあんたはー‼」
「あばばばば!?ちょっと落ち着けっ!?俺は別にできないって言ってねえぞ‼あれだ!パワーが足んねぇだけだって‼」
「「ぱわー…?」」
コヨミとフローリアは頭にハテナを浮かべて不思議そうに首をかしげる。コリンの手を放してシャラクは一度咳払いをしてから説明をした。
「俺の力は万能じゃなくて周りに影響されやすいんだ。パワーが足りないってのは、えーと…人や動物や植物がこう『幸せだなー』っていう元気な気分とか『ありがたやー』っていう気分に比例するんだ」
「つまり、シャラクさんの力は気の力や人々の信仰心に影響されるという事なんですね?」
「そうそれ!俺の語彙力の無さにびっくり!だからこの穢れを祓うにゃすっこしばかり力作業になる。巫女さんの力も必要なんだ」
「成程、私達の力を添えれば祓えるのね?」
「やるっきゃないかー。シャラク、ワタシ達は何をすればいいんだい?」
「んー‥‥じゃあコリン、踊ってくれや」
「…はああああっ!?」
当たり前の様に笑顔で頼んでくるシャラクにコリンは声を上げて目を丸くする。どうして自分が踊らなければいけないのかわけがわからない。
「イヤイヤイヤ!?なんで踊るの!?」
「お前は何を言っているんだ。花を咲かせるためにゃ踊るのが普通だろ?はなさかじいさんも踊ってたし、ト〇ロだってどんぐりの木を生やすためにメイやサツキと一緒に踊ったんだぞ?」
「知るか!?というか本当にあんたは何言ってのかさっぱりなんだけど!?」
「コリン、落ち着くのよ。踊るといっても多分舞の事だと思うわ?」
「コリンねーねの踊るとこ見てみたい!」
カスミに宥められ、コヨミが目を輝かせて期待の眼差しで見つめてくるのでコリンはやむなしと肩を竦めてため息をついた。
「はぁ、やってあげるわよ。まあたまに舞はやるけどさぁ…」
コリンはゆっくりと深呼吸をし、鈴を取り出して舞を踊った。袂や尻尾を靡かせ、しめやかに優雅に艶やかにコリンは舞う。
「コリンねーね、とっても綺麗‼」
「キャンキャーン‼」
コヨミとタローはコリンの舞に目を輝かせて嬉しそうに尻尾を振った。コヨミとタローの声援にコリンは照れながらも舞い踊り続ける。
「ちょ、ちょっと恥ずかしいなぁ‥‥シャラク、いつまで踊ればいいんだい?」
いつになったら終わっていいのか一向に声を掛けてこないシャラクが気になってコリンはチラリと見た。シャラクは満足げな恵比須顔でサムズアップしていた。
「いやー、いいもん見れて超満足‼」
シャラクはその後コリンに滅茶苦茶ボコボコにされた。
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「…次、ふざけたらタダじゃおかないからね?」
「ずびばぜん゛でじだ‥‥」
ちゃんと反省しているのか気にはなるが、コリンは気を取り直して舞い踊る。シャラクは真面目にやるようで一本の枯れ木の前に立って集中しており、コリンの舞で響く鈴の音をじっと耳を傾けて目を瞑る。今度は寝るんじゃないだろうかと心配するが、シャラクはカッと目を開くとでかでかと筆を使って枯れ木や枯れた草花を囲うように〇を描いた。
先程よりも満開の桜の花が咲き、草花も力強く葉を早し鮮やかに咲きだす。花が咲いたこの場所だけが毒々しい霧が晴れ、淀んだ空気が透き通り、穢れが薄くなっていった。本当に穢れを祓えたことにカスミは目を丸くして驚く。
「どや?」
「いやーやるじゃんか。流石だねぇ」
ドヤ顔で胸を張るシャラクにコリンは苦笑いをする。どういう力なのか仕組みとかはよく分からないが頼もしく思えた。性格が自分よりも自由すぎるのは難なのだがと内心ため息をついた。
「どういった力なの…?」
「ふー、これで穢れを祓えry」
「それじゃあ続けてどんどん行こうか」
「「えっ?」」
キョトンとするコリンとカスミにシャラクはお前は何を言っているんだと言わんばかりにジト目で見つめる。
「たった一本じゃすぐにまた穢れに侵されるぞ?最低でも20本、最高でもこの都中の桜を咲かせれば都の空気も多少良くなるだろ」
「えぇっ!?これでよかったんじゃないのかい!?」
「ここまで大きな穢れが在るってことは、どこかに元凶が潜んでるはず。そいつを退治しねえ限りいつまでたってもこの霧は晴れねえぜ?」
当然の様に語り、やる気満々のシャラクに唖然とする。穢れを祓う為に都中を駆け回るつもりだけではなく、この都を穢れで包んだ元凶がいる事に気づいたシャラクをタダ者ではないとカスミは察っする。そんな事を気にしていないシャラクはコヨミを肩車して気楽でいた。
「よっしゃ都中をひとっ走りすんぜ!コヨミ、しっかり捕まっとけよー」
「わーい!シャラクにーに、はっやーい‼」
疾風の如くシャラクは駆け出していった。思った以上の速さにポカンとするが、コリンも置いて行かれないように急ぎシャラクを追いかけていく。
「ちょっと!?あんた速過ぎだよぉ‼」
❖は短く分けて行こうと思います‥‥
シャラクさんの〇を描いて花を咲かせる業、『大神』より『桜花・花咲』。大神はとてもやり込みました…