「記憶喪失…」
「はい。いつ治るかははっきり言ってわかりません。最悪の場合戻らないという可能性もあります」
「そんな…」
「…先生、俺達に出来ることは?」
「そうですね…普段良くしていたことをしてあげるか、昔話をしてあげるのもいいかもしれません。どんなきっかけで戻るか分からないので」
「…わかりました」
「どうしようはちくん…」
「とりあえず渡辺に俺たちとの関係とか話すか。誰かも分からないのは一番怖いだろうからな」
「そうだよね…!よし!曜ちゃーん!」
「わっ!…あ、さっきの」
「高海、ここ病院」
「あ、そうだった」
「あ、あの…私、記憶喪失なんですよね?」
「…あぁ」
「…そう、ですか…じゃあもしかしてあなた達は私の知り合いでしたか?」
「私は高海千歌!千歌でいいよ!私達幼馴染みなんだよ!あともう1人松浦果南ちゃんっていう子もいるよ!」
「そうなんだ…あなたは?」
「えっとだな……比企谷八幡。…一応お前の恋人だ」
「こ、恋人っ!?……そ、そうだったんだ」
「曜ちゃんは何覚えてることはある?」
「…日本語とか話せるあたり、思い出的なものがなくなってる感じだな」
「はい…勉強の方は少し見たら分かるんだけど…」
「大丈夫!きっと戻るよ!曜ちゃんのペースで行こっ?」
「うん…ありがとう、千歌ちゃん」
「うんっ!」
それから2週間ほどたった。色々試してみたがいまだに記憶は戻らない。
とりあえず勉強の方はできるので学校には通っている。
何かあってはまずいので俺か千歌がそばにつくようにはしているが。
今は日直の仕事で渡辺と職員室へ向かっているところだ。
「……やっぱり戻らないのかな…」
「諦めたら終わりだ。不意に戻ったりするかもしれないしな」
「うん…」
「……あんまり悲しそうにするな。治るもんも治らなくなるぞ」
「そ、そうだよね!まだ希望は残ってるもん!頑張ろう!わっ!?」
「っ!渡辺っ!」
渡辺は階段でつまずき、落ちそうになる。
俺は渡辺の手をつかむがそのまま落ちそうになったので俺が下になるように渡辺を抱き抱える。
「……んっ!?」
「…っ!?…す、すまん。大丈夫か?」
階段から落ちた拍子に俺達の唇は重なっていた。
罪悪感すごい。今の渡辺は俺なんかただの男子としか思ってないからな。
「………あれ?比企谷くん?」
「どうした?」
「…さっき私達デートしようとして歩いてた気が…なんで学校?」
「………も、戻ったのか?」
「何が戻ったの?」
「………っ!」
「わっ!?ひ、比企谷くん!?きゅ、急に抱きついてどうしたの!?」
「良かった…!」
「こ、ここ学校だよ〜!恥ずかしいってばー!」
「す、すまん。勢いで……渡辺、とりあえず行くぞ」
「どこへ?」
「曜ちゃーーーん!!!」
「わぁっ!?千歌ちゃん!」
「記憶が戻ったんだね!良かったー!」
「あはは、そうみたい」
「どうやって戻ったの?」
「階段から落ちたんだよ俺達」
「え!?」
「まぁ怪我とかはなかったから安心しろ。多分その時に何かの衝撃で戻ったんだろ」
「そうそう!気づいたら比企谷くんとキスしてて驚いたよ!」
「ぶっ!?お、おい、それは階段から落ちた拍子であってわざとじゃ」
「わかった!そのキスだよ!白雪姫的な!」
「んなバカなことあるか…」
「ちっちっちっ!甘いよはちくん!恋はいつでもハリケーンなんだよ!?」
「お前恋愛経験ないくせになにいってるんだ」
「な、ないけど!ネットで見たもん!」
「……でも、そうかも」
「渡辺はまで何言ってるんだ…」
「だって私、多分自分で思ってるより比企谷くんのこと大好きだもん」
「…そうですか」
「きっと愛の力だね!」
「もうそれでいいわ…」
「はちくん紅くなってる!」
「お前はしばく」
「いたいよー!頭ぐりぐりしないでよー!」
「あー!私も混ぜてよ!」