結局眠れませんでした。無理に決まってるだろ。俺にそんな耐性はない。こいつはこいつで気持ちよさそうに爆睡しやがって…
「んっ…?…比企谷くん…おはよぉ」
「…おはよ」
「…ふわぁぁ……」
「よく眠れたか?」
「うん…」
まだ渡辺さんは寝ぼけていらっしゃるようだ。
「ほら、朝飯食べようぜ」
「はーい…」
「まさか…比企谷くんがこんなに料理上手なんて…!」
「ふっ、俺は伊達に専業主夫目指してないんでな」
「……」
「無言で冷たい目をしながら俺を見るな。なんか傷つく」
「だって専業主夫って…」
「……とりあえず今日どうする?夜には小町帰ってくるらしいが」
「んー、せっかくだし小町ちゃん帰ってくるまで一緒に居てもいい?」
「まぁ別に構わんぞ」
「えへへ、やった。そうだ!どこか出かけようよ!」
「昨日出掛けたからいいだろ」
「そんなこと関係ないのっ!ほらほら!早く用意して!」
「しかもこんな朝っぱらから行くのかよ」
今日は家でゆっくり過ごそうと思ってたんだが…
まぁいいか。こいつが楽しそうにしてるなら。
だが、俺はここで渡辺を止めるべきだった。まさかあんなことになるとは思いもしなかった…
「出発進行!ヨーソロー!」
「で、どこ行くんだ?」
「水族館とか!」
「あー、まぁいいんじゃないか?定番っぽくて。俺まだ行ったことないしあそこ」
「でしょ!ほら!早く行こっ!」
「そんな走ると危ないぞ」
「大丈夫大丈夫っ……!?」
この地域はお世辞にも人口が多いとは言えない。だからその分事故も少ない。きっと俺達も油断していた。
渡辺が横断歩道をはしゃぎながら渡っていると、いきなり車が信号無視して突っ込んでくる。
「っ!渡辺っ!!!」
俺は全力で駆け出す。間に合え…間に合えっ!!俺はどうなってもいいから…!!
「ひ、ひきがやく……」
「渡辺っ!!!!」
「くそっ…!!なんでこうなった…!」
俺の願いは届かず、渡辺は車に突き飛ばされてしまった。
今は病院。検査を受けている。
事故のあと、突き飛ばした張本人とあった時、俺はブチ切れて相手に暴力を振るいそうになった。警察の人に止められてなかったらどうなっていたことか。
「はちくん!!!!」
「高海…」
「曜ちゃんは!?曜ちゃんは無事なの!?」
「今検査受けてるところだ」
「曜ちゃん…!ぶ、無事だよね?」
「そうであることを願うしかない…」
丁度高海が到着した時、検査が終わったのか医師が出てきた。
「先生!」
「……とりあえず命に別状はありません。骨折は少しありますが1ヶ月もあれば充分でしょう」
「よ、良かった…!!」
「ただ……少し頭の方に強い衝撃を受けているようで…後遺症かなにかが残るかも知れません」
「後遺症…?」
「目を覚ましてからでないとまだわかりませんが…とりあえず今は、彼女のそばにいて上げてください」
「……」
俺は自分が許せない。なぜあの時助けられなかった…!
ひたすらそのことだけが許せなかった。俺が代わりになってれば…!
「は、はちくん、後遺症って言っても大したことないよね?」
「…わからん。何も無いことを祈るだけだ。……俺ちょっと飲み物買ってくるわ」
「くそっ…」
「あ!比企谷くん!」
「…松浦」
「曜は!?無事!?」
「とりあえず命に別状はない。今から戻るところだからついてきてくれ」
「高海、もどっ……!目覚ましたのか!」
「あ!はちくん!果南ちゃんも!うん!今丁度…」
「曜…!良かった無事で!」
「曜ちゃーん!!良かったよぉぉ!」
「え…?え…?………………………………あ、あなた達誰ですか?」
「………え?」
続く