「おにぃちゃんっ!」
「どした小町」
「はいこれあげる!」
「…ディスティニーランドペアチケット?」
「お母さんがくれたんだけど、私前行ったからあげる!」
「いや、お前ココ最近ずっと家に…」
「いいから!お兄ちゃんは曜さんを誘って行くの!」
「…なんで」
「お兄ちゃんは、いつも曜さんからで自分から遊びに誘ったことないでしょ?」
「俺がそんなことできたらボッチなんてやってないからな」
「まぁお兄ちゃんはぼっちじゃないと思うけど…それより!もうすぐクリスマスだし曜さん誘ってクリスマスデートしてきなよ!」
「いや、それまるで俺があいつに好意持ってるみたいじゃねぇか」
「え、そうでしょ?」
「…俺そんなこと言った覚えないんだけど」
「直接はね。でもお兄ちゃん、最近曜さんの話ばっかりするし仲が進展してるのかと…」
「そんなに話してたか?」
「うん。気持ち悪い笑顔しながら」
「…小町ちゃん、辛辣よ」
「普段のお兄ちゃん見てたら絶対曜さんに惚れてると思うよ?」
「……そうか?」
「しかも曜さんの気持ちも気づいてるでしょ?」
「…まぁ、それは」
「だったら!誘うしかないよ!お兄ちゃん…素直になるんだ!」
「………」
「あぁ!お兄ちゃんがモジモジしてもキモイだけだよ!お兄ちゃん、想像してみて!曜さんが知らないイケメンの男子と話してる!」
「あぁ…」
「そして、手を繋ぎ出して…」
「あ、あぁ…」
「いい雰囲気になってきたと思ったら…2人は抱きしめ合い…」
「あ、あぁ…!」
「そして2人の唇が…」
「…ってうちの学校女子ばっかだし男子もイケメンなんていないぞ」
「もしもだよ!…で、お兄ちゃん、今どう思った?」
「…まぁいい気はしなかったな」
「それは恋だよお兄ちゃん。お兄ちゃんだって気づいてるけど気づかないふりしてるだけでしょ?」
「……」
「言い方悪いかもしれないけど、曜さんの気持ち知ってるなら、後は告白するだけなんだよ?」
「……俺じゃあいつとは釣り合わねぇよ」
確かにあいつといるとつまらなくはない。居心地も…まぁ良い。
でも周りの目を気にすると俺なんかがそばに居たら渡辺のイメージを下げてしまう。
「まーたそういうこという…お兄ちゃん、それは曜さんが決めることだよ?お兄ちゃんは曜さんが好きなんでしょ?なら気持ちを伝えるべきだよ。その後のことは曜さんが決めてくれる」
「…まぁそれはそうかもだが」
「それに、もしなんかあっても、お兄ちゃんの数多い黒歴史がひとつ増えるだけでしょ?軽い軽い!」
「俺そんなに黒歴史あったのか……まぁでもそうだな。…とりあえず、誘ってみるわ」
「うん!頑張って!お兄ちゃん!」
「あぁ」
そして運命の日が来た。誘うだけだけど。
「…なぁ渡辺」
「どうしたの?」
「…今日一緒に帰らないか」
「…え?」
その時、クラスが凍りついた。なぜなら普段は渡辺ばかりで俺からこんな行動をすることはなかったからだ。
「う、うん。今日は部活もないし大丈夫だけど…ひ、比企谷くん、熱でもあるの?」
「…いや、一歩進もうと思っただけだ」
「…?」
時間は過ぎ、約束通り渡辺と帰路についている。
「…」
「…め、めずらしいね!比企谷くんから帰り誘ってくれるなんて!」
「…まぁたまにはな」
「…」
「…渡辺」
「は、はいっ!」
「…………く、クリスマスの日とか…あ、空いてるか」
「…………へ?」
「……ど、どうだ?」
「う、うん。あいてる…けど」
「そ、そうか。………な、ならその日…俺とディスティニーランド行かないか?」
「…そ、それって……で、デートのお誘いってこと?」
「…まぁそうなるな」
「そ、そっか…」
「べ、別に嫌ならいい。俺なんかといってもつまらないしな」
「…ううん。行くよ。比企谷くんといるの楽しいもん」
「そ、そうか…じゃあまた待ち合わせとかは連絡する」
「う、うん」
俺達は謎の空気のまま、別れた。