ゼロの使い魔〜if〜 サイト・ラ・ヴァリエール   作:匿名サンタ

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第六話 デルフとぬいぐるみと女難の相

カリンがサイトに剣術を教えてから一ヶ月程経った日。

 

カリンとヴァリエール公爵は寝室で話をしていた。

「 サイトの剣の様子はどうだい? カリーヌ」

 

「計り知れない程ですよ。何しろ、私の偏在を倒したのですから」

 

「なに!? 本当か?」

 

「勿論ドットスペルしか使わず、動きも緩慢の弱い偏在です。ですが、それでも才能は抜きん出ています。もしかしたら現時点でもそこらのメイジ殺しと呼ばれる人間に負けないほどに」

 

「素晴らしいじゃないか! 」

 

「それでサイトは自分の剣を買って欲しいと」

 

「ああ、それぐらいならお安い御用だな」

 

しかし、カリンの顔は芳しくない。

 

「なんだ。反対なのか?」

 

「……ええ。サイトはあまりに剣に夢中になりすぎています。……サイトもルイズも未だ初歩の魔法すら成功させてはいないと聞いています」

 

「……うむ」

 

「魔法が全てとは言いません。ですが、やはりこのまま剣だけを夢中にさせてしまっていいのかと母として心配なのです」

 

「なぁに。遅咲きの可能性だってある。ルイズとサイトは私たちの子だ。魔法が使えないなんてことはないよ」

ヴァリエール公爵は明るくカリンをそう励ました。

 

 

 

そんな両親の心配を全く知らないサイトとルイズは、

 

「じゃあ兄様がわたしの旦那様ね!」

「えー、あ、うん。まいったな」

 

 

二人楽しくおままごとをしていのだった。

 

 

翌日、サイトとルイズ。そしてカリンはトリスタニアへと来ていた。

 

「それでサイト。その欲しい剣がある武器屋はどこにあるのです?」

 

「こっちだよ!」

 

「待って、兄様!」

 

元気良く駆け出すサイトとルイズ。

 

「走っては駄目ですよ!」

 

しかし、何故わざわざトリスタニアの武器屋になど……。

 

ヴァリエール領に行商人を呼べばそれで済む。

 

それにトリスタニアに才人を連れてきたはずがないのに、何故そんな武器屋を知っているのか、それも気になる。

 

それらのことをサイトに尋ねるべきだ、カリンはそう考えた。

 

才人が着いたと言って見上げた武器屋は、路地裏にある寂れた店だった。

 

カリンは顔をしかめたが才人の後に続いて入っていく。

 

「き、貴族様が何のご用事でしょう!? うちは全うな商売しかしとりませんぜ!」

 

やましい事でもあるのか、貴族がきたことにビビっているのかいつか才人が聞いたことのあるような言葉を店主が吐いた。

 

「武器屋に来たなら武器を買いにきたに決まってんじゃん」

 

「へ、へ? 坊っちゃまがお使いになるので?」

 

「そ。見ていい?」

 

「も、勿論でさぁ。よろしかったら奥に名刀が沢山あるんで持ってきましょうか?」

 

「ううん、いらない」

 

そう言ってサイトは雑多に剣が差し込まれた安物の樽を物色していく。

 

だが、見当たらない。

 

「ねぇ、おっちゃん! デルフは?」

 

「デルフ? なんですか、それは?」

 

「錆びたインテリジェンス・ソードだよ! よく喋る口の悪いの!」

 

「そんなもの、ウチには置いてませんぜ」

 

(まだ入ってないだけなのか。それとも)

 

「サイト本当に剣を買わなくていいの?」

 

「うん。いい。欲しいのなかったから持ち越しってことで」

 

「……そう?」

 

「あ! でも、ねぇ母様。耳貸して」

腰を落として才人の内緒話を聞いてカリンは微笑んだ。

 

「ね? いい?」

 

勿論、カリンはサイトのお願いを断る理由はなかった。

 

露天で物を(ルイズからはカリンが邪魔で何を買ったのかはよくみえなかった)

 

「あー! 兄様だけずるい! わたしも! わたしも!」

 

ルイズはおねだりしてうさぎのぬいぐるみを買ってもらった。

 

帰りの馬車の中で、才人は照れくさそうにルイズに袋を渡した。

先ほど露店でカリンに買ってもらったものだ。

 

 

 

「折角母様に買ってもらったのに、いいの?」

 

「本当は自分で買えればよかったんだけどな」

 

「開けるね!……わぁ!」

 

中に入っていたものはおもちゃのペンダント。ルイズの顔が笑顔に染まる。

 

そして、左右の手にあるぬいぐるみとペンダントを交互に何度も見比べて。

 

「兄様、これあげる!」

 

ルイズから差し出されたうさぎのぬいぐるみをを見て、ぷっ、と才人は吹き出してしまう。

 

「いいよ。俺があげたくてあげたんだから、そのぬいぐるみもルイズが持ってな」

 

ルイズはしばらく悩んだあと、

 

「ん。じゃあ両方とも大切にするね!」

 

と頬を赤く染めながら言った。、

 

「よかったわね。ルイズ」

 

そう言ってルイズの頭を撫でながら、カリンは心の中であることを確信した。

 

才人はきっと、将来女の子にモテる。けれど、それが原因で色々なトラブルに巻き込まれるだろうと。

 

 

 

おまけ

ーー小さなルイズの悩みーー

私は未だに魔法を成功させていない。

ただ全く進展がないという訳ではなく、小さな爆発は起こるようになった。

だから魔力がないというわけじゃないと思う。

 

「なにがダメなのかしら」

エレオノール姉様とちい姉様は習い始めてすぐに自分の系統がわかったと言っていた。

魔法が使えないのは兄様と一緒。

 

何もそんなところまで似なくていいのになーって、そう思う。

 

最近、兄様は剣に夢中だから、早くわたしが魔法を覚えて兄様に魔法を教えてあげよーっと!


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