ゼロの使い魔〜if〜 サイト・ラ・ヴァリエール 作:匿名サンタ
プロローグ デルフと才人
才人の体はボロボロだった。エルフの魔法により全身傷だらけで、すでにデルフリンガーを握るための握力すら危うい。
「よう。相棒調子はどうだ?」
そんな才人に調子のいい声を掛けたのは、才人の相棒であるデルフリンガー。
彼もすでに何度も魔法を吸い込み続けて今にも壊れてしまいそうなはずだった。しかし、その声色は全く変わらない。まるで、いつも二人で鍛錬をしていた朝、中々起きない才人を起こすように。
そして、デルフリンガーの問いに対して、才人は一言。
「全然余裕!」
「それでこそ相棒だぜ! 当然俺っちも余裕よ」
当然、二人の言葉は強がりだった。
もう、二人とも今にも壊れてしまいそうなのに、こんな強がりを言わせているのは、男の意地。
ただ、それだけだった。
「相棒。俺っちは伝説の使い魔に相応しかったか?」
「お前以上に俺に相応しい剣を俺は知らねえよ」
「そりゃ、俺以外殆ど使ったことねえからだろ?」
デルフリンガーのツッコミに才人は冗談っぽく、バレたか、と言って舌を出して笑った。
才人の反応を見てデルフリンガーもつられて笑う。
「ったく。じゃあ、質問を変えるぜ。相棒のご主人様は最高だったか?」
「……ご主人様も一人しかいなかったからなあ。デルフと一緒で比べようがないぜ」
「誤魔化すなよ。相棒にとって嬢ちゃんは最高の女だったかって聞いてんだよ。今まで色んな女に好意を寄せられてただろうが。剣の俺だって知ってるぜ? その中で嬢ちゃんは最高だったかって」
「そういう意味なら、ルイズが最高の女だな。俺にとっての、って付けなきゃなんねぇかもしれないけど」
「使い魔以外の関係でも? 恋愛が許されない関係でも?」
「当然。というか、使い魔の時点で恋愛なんて普通許されないっつーの」
「そっか」
「どうしたデルフ。いつもよりおしゃべりだな」
「相棒が震えてるから励ましてやってんだよ」
「へっ、どっちが」
会話を終えてから、才人はエルフに向かって飛びかかる。
デルフリンガーを振り上げて、地面を蹴った瞬間、才人はデルフリンガーが何か言葉を発していることに気がついた。
「……じゃあな。相棒。どっかの嬢ちゃんとも仲良くな」
ーーーーは?
才人がデルフリンガーに発した言葉の意味を問おうとしたとき、すでに才人の意識は暗転していた。
それから次に才人が目を覚ましたとき、一番最初に目に入ったのは、最高の相棒であるデルフリンガーではなく、愛しのご主人様でもなく……。
ご主人様の父親に似た顔をしている金髪の髭面の男の顔だった。