最強の目を持つハンター   作:kurutoSP

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出来たぁー。
何とかまとまった。


彼女は奇跡を起こし、そして人を辞める

 彼女の念能力『魂の書架』はその人物の経験の全てを定期的に()()()に移し刻みむものである。もちろん、その経験は彼女が任意に引き出せ自身に還元することが可能であり、刻み込まれた経験は決して付け焼刃のものではなく、十全に扱えるようになる。

 

 そして、自身の経験を彼の魂に移すことにより、整理され様々な本という形で保管される。この本には大きく分けて「知識」と「感情」の二種類あり、知識に分類される本は、最初に整理された本を原書とし、そこから彼女の最強の目に最適なモノだけを記した書「王の書」を作り出し、感情に分類される本は、その感じたものを()()()()()()()()()()()()()()()()()保管される。そして、この書を作成するのは1日の終わり24:00ピッタリか、彼女の()()()が怒りと愛の二つの感情を処理しきれなくなった時に、自衛のために発動する。

 

 ここまでだと、彼女は自身の記憶を『魂の書架』に移動させ、整理することにより完全記憶能力者のようなデメリットを排し、さらにその知識を無駄なく最適に使用できる。これに最強の目があわさったなら、戦闘に関しては全ての事象を見抜き、学び、最適化をするため、これ程彼女にピッタリな能力はないだろう。

 

 しかし、これは彼女が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の様なモノである。

 

 まず前提として、『魂の書架』は書がないと利用出来ないので、書を作成するために彼女の経験の全てを捧げる必要がある。つまり、捧げた時点で彼女には何も残らない。以前彼女のことを純粋・無垢と表現したが、それは文字通りの意味であり、彼女を表現するには、それ以外の言葉がそもそも存在しないのである。

 

 しかしながら、一つの疑問が浮かぶであろう。さらに狂気を追加した方が良いのではないかということであろうが、やはり彼女にはそれ以外の表現はないのである。なぜならば、彼女が感じることができる感情は、『魂の書架』の感情に分類される本が、怒りと愛情しか存在しないのだから、その二つしかないのである。ゆえに、彼女はその二つの感情を基本として他人に接するため、狂気と言える行動も言動も他者の視点からであり、そもそも他の感情を感じられない彼女にしてみればおかしいのは他の人に見えるのであり、二つしか感情のない人間として彼女を見たとき、恐ろしいことにそれは狂気と表現することが正しくなくなる。

 

 もう少し理解しやすくするためにレミングの集団自殺について考えてほしい。これは簡単に言えば、彼らは数が一定以上になると集団で自殺をするという事象なのだが、何も知らなければ、人間の立場として考え、狂気的であると感じるかもしれないが、彼らにしてみればこれは種の存続のために、彼らの遺伝子に刻み込まれた、彼らにとって当たり前のことであり、そこに狂気など存在しえないのである。つまり、彼女は純粋・無垢と表現するしかないのである。

 

 だからこそ、彼女は完璧に書の内容をその身に受けることができるのだ。その対価としてその他の感情を捧げたといっても過言ではない。

 

 だから、彼女は両親から怒りと愛情を学びはしても、なぜ両親が悲しむのか、なぜ楽しいのか、なぜ憐れむのか、なぜ喜ぶのか、なぜ苦しんでいるのか、なぜ………、どれも知識として理解して、どう対応すればいいのかの最適解を持っていようと感情として学ぶことはできなかった。しかし彼女は幸せだった。彼女の人間性のほとんどと人としての人生、もしくは幸せを奪われたにもかかわらず、彼女はこの世界で最も幸せなのは自身だとすら考えていた。

 

 なぜならば、彼女はこの奇跡的な能力による対価としては安いものだと思っていたし、かの存在への愛だけではなく、その象徴たる怒りの感情すら残っており、それしか残ってないから、二つの感情をより深く理解し、そして彼女を最強にする念能力『愛と怒りを捧げる最強の目』をより完全にするための制約と誓約としてちょうどよかったのだ。

 

 そして、その制約と誓約としては怒りと愛の感情を捧げること、捧げる感情がより強いほど、より純粋なほど最強の目がとらえる事象が増え、よく見えるようになる。これはクラピカが蜘蛛に対する強い怒りの感情ですら、自身のオーラを殆ど使用しない限り、キング・ブラッドレイの目と同等のモノを得れないのに対して、彼女はその怒りと愛情でキング・ブラッドレイと同様の目を得るだけでなく、周囲の風の流れ、温度、湿度など見ることにより、彼女の目は見える空間の情報を全て把握する、なので一度見て把握している空間なら見なくとも把握することができる程で、その目を持つ彼女は空間を支配するといっても過言ではない。さらに彼女は身体強化にまわすだけのオーラを残しているのである。これだけで、彼女がどれだけ愛し、怒り狂っているのかがわかる。

 

 しかし、彼女は成長しない。矛盾しているのかもしれないが、彼女は自身の全てを捧げるため、彼女はいつまでも変わらないのである。だから彼女の脳は許容量が一般人よりも小さいため、ふたつの感情が無際限に高まると耐えられなくなるのである。だからこそ……

 

 

 

 

 

【『魂の書架』の「感情の書」と「知識の書」を開きます】

 

 一次試験、二次試験と彼女が蓄積してきた怒りと愛情がついに許容量を超えて発動した。

 

『…………発動しちゃったか、はぁ~、いつ体験してもこの自身にあった唯一の感情が抜かれるのは、何もなくなり空っぽになった感じがして嫌だね~、……クソが。はぁ、またハイな状態になるには時間がかかるなぁ』

 

 彼女はこの一瞬が嫌いだった、と言っても知識としてそう判断しているだけでその根底にあるのはやはり怒りではあるのだが。

 

『さて、どうしようかなぁ、今日はリセットまでに後3時間程度だし、仕方ないけど、一般人と同じ程度に考えられる今のうちにヒソカに接触するかな』

 

 この念が発動すると彼女の怒りと愛が一時的とは言え、消えるため比較的まともになるのだ。そして、トンパが話しかけた時の彼女がこの時の状態だったのである。この時の彼女は、容姿と相まって、楚々とした美人であるだけに残念である。

 

 

 

 

 

 

「へえ♠まさか君の方から来てくれるなんて、うれしいなぁ♥」

 

 ヒソカはトランプタワーを作っては壊してを繰り返したところに彼女が来て自身に話があると言ってきた時、試験時の彼女とあまりに違い驚いていた。それは飛行船の廊下を人気がいない場所に移動している現在でも彼女のオーラが余りにも静かであり、昼間の荒れ狂い力に溢れていたオーラを纏っていた彼女からは想像がつかないほど、対極にあるといってもよいほど異なっていた。

 

『昼とは全く違うけど、これもまた美味しそうだ♦だけどどういうことだろうねぇ、なかなか興味深い♣』

「話って何かな♠、デートなら喜んで受けてあげるよ♥」

 

 ヒソカは彼女が立ち止まったので、話しかけてみた。

 

「違うわ、変態とデートなんてするわけないでしょ。頭ちょっと大丈夫。そんなことよりも、幻影旅団にわたしを入れろ変態。適当に団員の一人やるから紹介しろ」

 

 彼女の発言により、確かに場の空気が凍った。いわゆる濃密な殺気がヒソカから発せられたためである。

 

「どうして、僕にそんなことを聞くのかな♠」

 

「だって、あなた団員でしょ。…ごまかさなくてもいいわ、私の目は全てを捉える。背中に堂々とあれば分かるわ」

 

 そう言って彼女は左目の眼帯を取り、その異常な目をヒソカに曝した。もちろん彼女の目は素晴らしい性能を持つが透視能力を持っているわけではない(疑似的には可能であるもののオーラの圧倒的無駄遣いとなるため、特殊な事情がない限り使用することはない。)、原作知識を利用したハッタリである。しかし、その異様な目と真実の情報により、ヒソカはごまかしが効かないと思い、

 

「へぇ、いい目をしているんだね♣でも、僕に何もメリットもないし面倒くさいじゃない、それに今ここで僕と戦えばいいじゃない♥」

 

 ヒソカからおぞましいオーラが大量に放出された。

 

「メリットならあるわよ変態、それと気持ち悪いからそれ納めなさい」

 

「どんなメリットだい♦」

 

「だからオーラを、…やっぱいいわ。話を続けるわよ。まず確認したいのだけれど、あなたは強者と戦いたいのよね?」

 

 彼女はヒソカにもう一度注意をしようとして、変態に何を言っても無駄だということに気づき、交渉を再開した。

 

「そうだね♠」

 

「なら、幻影旅団に入ったのもその仕事の過程で強者と戦えるから、もしくは旅団員と戦いかのどちらかでしょ。これに間違いはないわね」

 

「そうだけど、それで何ができるのかな♣」

 

「私の目がいいのは知ってるよね。この目でとらえた獲物は私は一度も逃したことがないんだよね。言いたいこと分かるかな」

 

 それを聞きヒソカは、彼女の利用価値と自身の目的達成にどれだけ影響を及ぼすかを瞬時に計算し、

 

「でも、それは君が負けたら何も意味がないよね」

 

「問題ないでしょ。あなたは今まで通り過ごすだけだし、それに私が騒ぎをここで起こせばまずくなるのわあなたのほうよ。もう一度ハンター試験したいなら別にいいけどね」

 

「うーん、それは困るかな♣、でも、その話は君がハンター試験に合格出来たらでいいかな♠」

 

 ヒソカは、彼女が団員になろうがなるまいが、そこに騒ぎが起こることを予想し、それを利用できる可能性を発見したため、どちらに転んでも損がないと判断した。

 

「今はそれで問題ないわ。じゃあおやすみ」

 

「一緒に寝るかい♥」

 

「死ね」

 

 ヒソカは去ってゆく彼女の後ろ姿を見ながら本当に残念そうな顔をしながら、

 

『彼に依頼でも頼んでみるかな♠、それで死ぬなら口封じできるし、死なないなら死なないで、計画に十分利用できるしね♦、あぁ、本当に楽しみだなぁ♥』

 

 

 

 

 

その頃、ヒソカの目から見えなくなったところで彼女は、

 

『何とか上手くいきました。しかし、ほんっとキモイわね。……思い出しただけで吐き気がするとわ。クソ、サッサと死なないかなあいつ』

 

 近くにあった植木を彼女は通り過ぎざまに無意識のうちにバラバラにしており、その剣筋は美しいのだが、物騒である。

 

 やはり、彼女はどこまで行っても彼女であることに変わりはないようだ。




 次から彼女の本格的な戦闘シーンが入り込みます。
 ついでにレミングは集団自殺はしませんよ、だからここではレミングの集団自殺という神話は皆さんが良く知る仮想の話のレミングについて、書かれています。だって、説明が楽なんだもん。あっ、そういうタイトルの本があるわけではないですよ。知りたい人は「白い荒野」で調べるかレミングの集団自殺で調べるとよくわかります。
 僕も最近まで知りませんでした。せめて、講義で友に解説する前に知れていたならば……

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