Fate/Apocrypha 灰の陣営   作:ピークA

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前回のあらすじ

玲霞ママの精神カッ飛びすぎぃ!!

今回は回想をいれながら進めます



六話 聖杯大戦 5日目その1 開戦

午前9時 カタコンペ

 

「人口密度ハンパねえな」

 

モードレッドは寝起きでぼやく。

 

「そんなに気になるのであれば君も霊体化すればよいのでは?」

 

ヴラド三世は実体化しながら進言する。

 

「いやせっかく再び肉体を持てたんだ。睡眠や食事をしたいって思うのは当然だろ。ほれ、こいつだっておんなじだろ」

 

彼女は玲霞と同じ寝袋(昨晩ジギショアラの深夜営業の雑貨店で大きめのを購入)で寝ているジャックを見る。

 

「サーヴァントとは全盛期の状態で召喚されるにしても、あまりにも幼過ぎる気がするのだが・・・」

 

「オレもそう思う」

 

そう、彼等サーヴァントは基本的に全盛期の状態で召喚されるのだ。たとえ少年少女の姿をしていても英雄である以上その精神は見た目以上に成人に近くであってしかるべきなのだ。

 

しかしジャックは違う。見た目が幼い上精神まで幼い。

 

これは極めて異例であるとモードレッドとヴラド三世は思う。

 

「まあ気にしても仕方ないか」

 

「そうだな。余としては昨日の君について気になっているのでな」

 

「あん?」

 

「なぜ、バーサーカーを殺せなかった?君の能力なら十分に殺せた筈だが?」

 

「アーチャーがいつ攻撃してくるか解らないのにあいつ相手に全力回せるかよ」

 

「そうかね?君ならあのバーサーカーを瞬殺してアーチャーを殺りに行けると思ったのだが?」

 

「そんな簡単な状況じゃなかったんだよ。どういう訳かあいつは妙に動きが良かった。アーチャーが入れ知恵したのかは知らねえけど、立ち回りが旨かったんだよ」

 

「そうか。ところで気付いているか?君、バーサーカーをあいつ呼ばわりしている事を。もしかして顔見知りなのかね?」

 

その瞬間、モードレッドは自信の失態に気付いた。

 

「い、いや、ああ多分別の亜種聖杯戦争で戦ったのかもしれないな、うん」

 

「そうか。ならあのバーサーカーの真名は知っているのかね?」

 

「い、いや、知らねえ」

 

「そうか。まあ込み入った事情が在るのなら聞かないが・・・」

 

彼は再び霊体化しようとして、

 

「嘘をつくときは顔を隠した方がいいぞ」

 

と忠告した。

 

(あのおっさん、気付いてんのか)

 

「オレ、そんな分かりやすい顔をしてたか?」

 

するとジャックと玲霞が起床したらしく、

 

「おはよう、ジャック」

 

「おはよー、おかあさん」

 

といいあい、モードレッドにも挨拶してきた。

 

「おはようございます。セイバーさん」

 

「おはよーセイバー」

 

「おう」

 

と、モードレッドは相づちをうった

 

 

午前11時頃 ミレニア城塞

 

カウレスは自信の部屋で考えていた。

 

(今日おそらく、赤の陣営があの空中要塞で攻めて来る)

 

彼はフランの夢の中で見たあの要塞を思い出す。

 

(そしてあのシロウとか言う神父――いやルーラー。あいつは危険だ)

 

「バーサーカー」

 

彼はフランを呼ぶ。

 

「ウゥ?」

 

「あのシロウとか言う神父とキャスターは深追いするなよ。あのキャスターの宝具はもう食らいたくないだろ」

 

「ウゥ!」

 

フランは首肯する。

 

(さてと、俺も準備をするか)

 

彼はこのユグドミレニアを裏切る為に幾つか準備を始める。

 

そして、

 

「フラン、お前に会わせたい奴等がいるんだ」

 

「?」

 

と言った。

 

午後3時 教会

 

ルーラー、ジャンヌ・ダルクはジギショアラの教会を訪れていた。

 

教会に入った瞬間彼女の脳裏に、色黒の青年が映る。

 

「彼は・・・!?」

 

その時足元から鎖が飛び出し彼女の身体を絡めとる。

 

彼女はそれを引き千切ると裏口から外に出て、彼がいるであろう方向に疾走した。

 

教会より数キロ先丘の地下空間には5騎のサーヴァントがいた。

 

セミラミスが口を開く。

 

「さて準備が整った。行くとしよう、諸君」

 

「おいおいアサシンさんよ。この拠点は立て籠るためのものだろ?」

 

アキレウスが訝しむ。

 

「いやいや、前提が違うぞライダーよ。我が宝具は立て籠るのではなく攻めるものだ、このようにな」

 

次の瞬間、彼等の拠点が大きく揺れた。

 

アキレウスとアタランテが外に向かうと空が見えた。

 

いや、自分たちの拠点が飛行しているのだ

 

「冗談だろ・・・?」

 

「いや。これこそ我が宝具の真の姿。虚栄の空中庭園(ハンギング・ガーデンズ・オブ・バビロン)の真骨頂よ」

 

セミラミスは嬉しそうに言う。

 

「この速度なら黒の陣営の拠点までそう時間もかからないでしょう。皆さん戦闘準備を」

 

シロウは彼らに告げた。

 

同時刻 テムside

 

「なんかすげぇ揺れと魔力を感じたけどなんかあったか」

 

ランサーがセイバー達に向けて問う。

 

「あれを見なよ」

 

セイバーが空中に浮かんだ要塞を指差す。

 

「なんだ、ありゃ」

 

「かなり古い時代の英雄の宝具だと思うよ」

 

クロはランサーに言う

 

「あれ?ライダーの旦那は?」

 

「ライダーならブカレストの空港にいるよ。それから君達に伝言がある。『戦争の準備は整ってる。後はクロの指示に従え』」

 

「へえそうか、じゃあ何をすればいい?」

 

「とりあえず町の郊外にある三番目のアジトにあるものをとりに行きたいから、ランサーとアサシン手伝ってくれ。アーチャーとセイバーはキャスターの所に行って、彼の作った物をトゥリファス付近まで運んでくれ。昨日雇った傭兵を使ってもいいよ。その後は合図まで待機」

 

「合図ってなんだ?」

 

「テム曰く『とびきり派手な音を鳴らすよ』だってさ」

 

「ふーん。そっか。じゃあ行くか」

 

彼等はクロの指示通りに動いた。

 

午後7時

 

「まさか領土ごと飛んで来るとは・・・」

 

ケイローンは驚嘆する。

 

フィオレはケイローンに聞く。

 

「ケイローン、敵の拠点は?」

 

「停止しました。おそらくあの草原を主戦場とするのでしょう」

 

要塞から骨がばら蒔かれ、地上に刺さりそれが骸骨の兵隊を形造る。

 

「ほうあんなこともできるのか」

 

クー・フーリンは感心した。

 

「いやービックリだね!」

 

数十分前に牢から解放されたアストルフォは草原の惨状を目の当たりして呑気に呟く。

 

「ヴヴぅぅぅぅぅぅ」

 

フランは敵を前に唸る。

 

「バーサーカー、宝具のリミッターは外すなよ!絶対にだぞ!」

 

カウレスの発言に対してフランは首肯する。

 

「フィオレ、ここから先は我らに任せ下がって下さい」

 

「はい」

 

フィオレはフランと共に来たカウレスと共に下がる。

 

「さて、赤のライダーは俺、赤のランサーはセイバーが相手がするとして他はどうする?」

 

「おそらく赤のアーチャーはどちらかの援護に回るかと」

 

「そうか、できりゃあ俺ん所に来てほしいなぁ。向こうのセイバーとバーサーカーは?」

 

「キャスターのゴーレムと私とバーサーカーが相手にした方がいいかと」

 

「そうか、じゃあ空のことはライダー。お前に任せた」

 

「まっかせてよ!」

 

「さて、手ぇ抜くなよてめぇら!これより先は決死の覚悟でかかれ!必ず敵を討ち果たせ!相討ちは許されない!敗北なんてもっての他だ!敵の首級をあげ勝利しろ!俺達には勝利の二文字しか要らねえんだ!」

 

クー・フーリンは高らかに宣言した。

 

そして。

 

「行くぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

そして開戦の時はやって来た。

 

ランサーは城から飛び出すと真っ直ぐ竜牙兵の群れに突撃する。竜牙兵の間を縦横無尽に駆け抜け軍団を一掃した。そして要塞に指を指し二、三度指を曲げた。

 

まるでアキレウスを誘うかのように。

 

それを見たアキレウスは思わず出ようとするが、

 

「待て、ライダー」

 

アタランテが静止し、矢を番える。

 

「我が弓と矢を以って太陽神(アポロン)月女神(アルテミス)の加護を願い奉る。この災厄を捧がん――『訴状の矢文(ボイポス・カタストロフェ)』!」

 

その空に向けて放たれた矢は、矢の豪雨となってランサーのいる戦場に降り注いだ。

 

後続のホムンクルスとゴーレムはまともに直撃した。

 

しかし、

 

「何・・・!?」

 

ランサーは矢の豪雨を無傷で凌いだ。いや直撃すらしていない。ルーン魔術で身体能力を底上げし彼女の宝具を完全に避け切ったのだ。

 

「成る程、矢の豪雨すら避けるか・・・」

 

「でもお陰で奴の能力の高さが見れた、ありがとよ姐さん」

 

「そんな呼び方をするな、ライダー」

 

「では、俺も行くとするか」

 

カルナは右側から攻める竜牙兵を駆逐していく黒のセイバーを見つける。

 

「じゃあ俺はあのランサーを倒すか」

 

アキレウスはクー・フーリンを見据える

 

「では援護をしよう」

 

アタランテはアキレウスに進言し、

 

「ああよろしく、頼む」

 

アキレウスは承諾する。

 

そして彼等はそれぞれの標的に向かって行った。

 

草原から程近い場所にモードレッドは着いた。

 

「マスター、今回は遅参しなかったな!」

 

『ああ、前より早い時間に出たからな』

 

モードレッドにマスターからの念話が届く

 

すると、彼女の前にホムンクルスとゴーレムが現れる。

 

『では作戦通りに』

 

「おうよ」

 

獅子劫との念話を切り彼女は目の前の敵に集中する。

 

獅子劫はモードレッドのいる草原から程近い森にいた。

 

「じゃあこっちも始めるますか、っと」

 

彼は自身の後ろの2騎のサーヴァント――ジャックとヴラド三世に告げる。

 

「ダーニック・プレストーン・ユグドミレニアを暗殺する」

 

ランスロットside

 

ランスロットはホムンクルスに支給されていた槍を使い竜牙兵を仕留めていた。本来、ランスロットほどのサーヴァントの腕力で振るえば自壊は免れない速度の筈だが、ランスロットはその槍をDランク相当の宝具に変えて(・・・・・・・・・・・・・)己の武器としてふるっていた。

 

騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)

 

彼が手にした武器と認識できる物に魔力を通し、Dランク相当の宝具へと変えることのできる宝具。

 

彼はそれを使いただの槍を宝具化して竜牙兵を圧倒していた。

 

すると程近い場所に赤のランサー―――カルナが降り立った。

 

「また会えましたね、カルナ」

 

「そうだなセイバー」

 

ランスロットはゴルドに念話を繋げる

 

(マスター、カルナが来ました)

 

『そうか、ならば全力でねじ伏せろ』

 

(分かりました)

 

「マスターからの許可がでました。全力で行かせていただきます」

 

彼は自身の姿を鮮明にした。

 

「ほうそれが貴様の姿か。何故姿を表した?」

 

「分かりませんか?全力で行くと。私と貴方の戦いに変身宝具(よけいなもの)は必要ありません。あれに割く魔力を全て我が剣に回しました。というより以前の戦いの時に私の身体の大きさなどは計っているのでしょう?だから不要と判断しました」

 

「ああ、そうか。ありがたい。ならばこちらも持てる力で戦わせて貰おう」

 

カルナが槍を、ランスロットは剣を構える。数秒後、双方が激突した。その衝撃で彼等の周りの竜牙兵達が粉々に砕け散った。

 

クー・フーリンside

 

別の場所では、アキレウスとクー・フーリンが

 

「はははははははははは!!」

 

「はははははははははは!!」

 

と、二人とも命をかけた戦いだと言うのに笑いながら戦っていた。

 

しかしその戦闘はあまりにも速かった。

 

その戦闘の最中でもクー・フーリンにはアタランテの矢が飛んでくる。しかし、当たらない。直撃する軌道の筈なのにまるで当たらないのだ。

 

矢よけの加護。

 

クー・フーリンの持つそのスキルの前では飛び道具は無意味なのだ。

 

しかし、

 

「ならば、やり方を変えるか」

 

彼女は、標的をクー・フーリンからクー・フーリンの足元の地面に変え、矢を放った。

 

「む・・・!?」

 

クー・フーリンはアキレウスの槍を受け流し距離をとって再び彼と激突しようとしたら、足元の地面に矢が刺さり、爆発。土煙を上げた。

 

そして突貫しようとしたクー・フーリンの動きが一瞬止まる。その逡巡をアキレウスは見逃さない。

 

アキレウスはクー・フーリンに槍の連撃を見舞う。

 

クー・フーリンはそれを全て受け流し、反撃に出ようとする。

 

しかし今度は彼の目の前に葉のついた木の枝が降ってきた。彼の視界が一瞬塞がれ、顔面にアキレウスの槍が刺さらんとする。

 

「おおお!?」

 

彼はその槍を回避し、距離を取る。

 

(成る程、矢を俺自身に当てるのではなく、俺の周りの状況をほんの少し変え、アキレウスの勝率を上げようと言う魂胆か)

 

「まるで狩人だな。さしずめ、俺は追い立てられる獣と言ったところか」

 

「汝、なかなか鋭いな」

 

「はは、そりゃどうも。でも目的が知れりゃ対策も取れるってもんだ」

 

彼は槍を構え、アキレウスに突貫する。

 

すると彼の足元のから爆発が起き、それがさらに彼の速度を加速させる。

 

「!!」

 

アキレウスはそれを受け止めきれず、弾き飛ばされる。

 

アタランテは援護をしようと矢を二、三放つ。するとクー・フーリンの足元の地面が壁を形造り彼の姿を一瞬隠す。

 

矢が土の壁に激突し破壊されるも彼の姿はそこになく、代わりに槍が刺さっていた。

 

「なに!?」

 

(宝具をおいて行っただと!?)

 

「捉えたぞ、弓兵」

 

真後ろから声がする。アタランテはこの男愚かさと豪胆さを実感する。

 

(よもや武器を囮に私に接敵しようとは)

 

彼女は矢を持つ。矢に番え射るのではなく目の前の敵に突きす為に。

 

クー・フーリンは左手を前に構え、右手を大きく振りかぶる。

「ランサー!!」

 

アタランテそう叫び大きく飛び退いた(・・・・・・・・)。すると彼女先ほどまでいた場所に赤色の槍が飛んできた(・・・・・・・・・・)

 

彼はそれを掴み横合いからやって来たアキレウスの槍を受け止める。

 

「おらぁぁ!!」

 

両者は地に着地したかと思うと再び激突した。

 

彼女は先ほどのクー・フーリンの作戦に驚きを隠せなかった

 

(よもや、宝具が自身の手に帰ってくるという特性を利用し私を討とうとするとは)

 

あの魔術による壁も、地面に突き刺さった槍も、魔術によって偽造したDランク近い気配遮断も、そして彼自身すら、全て囮に過ぎなかった。

 

(これがあの男の実力)

 

おそらくこれが全てではない。

 

しかし彼女はクー・フーリンのレベルの高さを思い知った。

 

 

モードレッドside

 

モードレッドのいた戦場はまさに地獄と化していた。

 

「あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁ!!!!鬱陶しい!!」

 

ホムンクルスとゴーレムは確かに雑魚だ。しかし数が多い。さすがに雑魚相手に十分も時間をかけていたら苛立ちが募る。

 

しかも時々ゴーレムが自壊しては自身の身体を固めようとしてくるのだ。

 

「またかよぉぉぉ!!いい加減にしろやぁぁぁぁぁ!!」

 

もういい加減うっとおし過ぎて宝具をぶっぱなしそうになるのを抑える為に、叫ぶ。

 

ヴラド三世side

 

「これは面倒だな」

 

「うん、うっとうしいね」

 

一方こちらはモードレッドほど苛立ちは募っていなかった。

 

何せジャックの宝具『暗黒霧都(ザ・ミスト)』によってホムンクルスに関しては無力感できるからだ。

 

しかしゴーレムが厄介だった。

 

自壊して砂に近くなるため、ヴラド三世も霧に変化ができず、更に固まるという性質があるためジャックの筋力では脱出できなくなる可能性があるため、結果的にヴラド一人が全てのゴーレムを相手どることになった。

 

「アサシンよ、ここにいるホムンクルスなら食べて良い。魔力を補給せよ」

 

「え?いいの?」

 

「ああよい」

 

加えてマスターに念話を繋ぐ。

 

(マスターよ。ジャックに魂食いを許可した。アサシンに回している魔力を全て余に回せ)

 

『分かりました』

 

「これで全力で戦える」

 

彼はゴーレムに接近し胴体に手を触れ杭を射出した。ゴーレム内部の魔力や石等を杭が吸収、枝分かれし、更に別のゴーレムを巻き込み、彼の前方のゴーレム、ホムンクルスの軍団が全滅した。

 

「叔父さんすごーい!」

 

ジャックは素直に感想を述べる。

 

「さて進もうかアサシン」

 

彼はジャックに言う。

 

彼等は城に向けて前進する。

 

 

フランside

 

フランはシロウ・コトミネと相対していた

 

「ウガァァァァァァァ!!」

 

「くッ・・・!」

 

シロウは思った異常にフランに苦戦していた

 

ステータスはそれほどでもない。いかに心眼があろうともそれほど脅威ではないと、思っていた。

 

なのに彼女は自身の攻撃を読んでいるかのように的確に行動していた。

 

いや、読んでいるのではなく、見てきたかのように。

 

方向転換する黒鍵は電撃で破壊してその魔力を吸収し自身の力に変えていた。攻撃のタイミングが完全に読まれていた。

 

それでもフランは警戒する。

 

この男はまだ宝具を使っていない(・・・・・・・・・・・)。三池典太というキャスターが鍛えたという宝具ではなく。彼自身の宝具を。

 

 

6時間前 トゥリファスの貧民街

 

会わせたい奴がいる、とカウレスはフランを連れて貧民街の路地裏にある寂れたバーに来ていた。

 

カウレスはバーに入ると。カウンターに一人の日本人とおぼしき女性が座っていた。

 

「あんたがあの人のいってたメッセンジャーか?」

 

「ええ、そうよ」

 

カウレスはその女性の隣に座る。

 

その女性はとても扇情的な女性だった。すると彼女はカバンからパソコンを取り出すとあるアプリを起動する。

 

カメラをセットしパソコンに接続し使用可能にした。

 

何をしているのだろう?と思っているとパソコンの画面に一組の男女が現れる。

 

『おー映った映った。この世界オレが参加した聖杯大戦より文明の技術が上な気がするんだけど』

 

『まあそんな事どうでも良いだろ』

 

そこに映ったのは赤のセイバー陣営だった(・・・・・・・・・・・)

 

「? ??」

 

フランは、何が起きているか理解できなかった。

 

カウレスとフランは黒の陣営のはずだ。なのに彼は敵である赤の陣営と繋がっていた?

 

何故?

 

じゃあこの女は、敵?いや殺気は感じない、だけど何だ?

 

分からない。解らない。

 

このカウレス(マスター)は、本当に私の知っている、青年か?

 

「バーサーカー」

 

びくりと彼女は身体を震わせた。

 

「悪いな。今まで黙ってて。あの城の中じゃあまり動けなくてな」

 

「うぅ?」

 

一息ついて彼は混乱する彼女に言った。

 

「俺は魔術協会のスパイだ」

 

「―――」

 

今、何と言った?

 

スパイ?

 

つまりマスターは自身の陣営を裏切っていたのか?

 

「許せとは言わない。そもそもなんでこうなっているか説明させてくれ」

 

「ぅぅ」

 

とりあえず話だけでも聞いておこう。

 

そうしてカウレスは語り始めた。

 

 

話は一年程前に遡る。

 

「なんで俺が呼ばれたんですか?」

 

彼は姉のバックアップとして共に時計塔に在籍していた時、ロッコ・ベルフェバンの部屋に呼びだされた。

 

「何故か?それは君がユグドミレニアの名を持っているからだ」

 

「とは言ってもフォルヴェッジ家はユグドミレニアの中でも新参の家系ですよ?」

 

「そういう事ではない。重要なのは君がユグドミレニア一族の人間であるということだ」

 

「はぁ・・・」

 

「君に聞きたい。君はダーニックについてどれだけ知っている?」

 

「魔術でほぼ不老になっている冠位の魔術師、で60年位前の冬木の聖杯戦争唯一の生存者、ぐらいですかね」

 

「そうかならば聖杯がどこかに消えた、という話も聞いているだろう?」

 

「ええ、まあ。その影響で亜種聖杯戦争が世界中で勃発してる位ですから」

 

「なら、一族の中で、ダーニックは密かに大聖杯を所有しているかもしれない、という噂は」

 

「いえ、知りませんけど?」

 

「そうか。君には姉がいたね、フィオレと言ったか」

 

ロッコの物言いに何かを感じ、彼は怪訝そうに聞く

 

「それが何か?」

 

「もしダーニックが大聖杯を、所有しているとしたらそろそろ起動してもいい頃だ。つまり一族の中で聖杯戦争が起きるかもしれない。君のお姉さんは優秀だから間違いなくマスターに選ばれるだろうね」

 

「何が言いたいんですか?」

 

「果たして彼女はその戦い勝てるかな?」

 

「・・・」

 

カウレスは思考する。確かに姉は優秀だ。このまま時計塔で腕を磨けば典位か色位までいけるかもしれない。ダーニックに届きうる魔術師は彼女だろうと言われているほどだ。

 

しかし、カウレスは知っている。姉はあまりに優しく人間らしい。それは美点だが魔術師はとしては欠点である。

 

もしかすると一族の人間に情けをかけ、相手の命までは奪わないかもしれない。その結果裏切られ殺されるかもしれないというのに。

 

そこまで思考して彼は聞いた。

 

「要点を言って下さい」

 

「あぁ。つまりもし一族で聖杯戦争が起こったら、君達姉弟を支援しようということだ」

 

「成る程、それで60年のダーニックと同じように、魔術協会が聖杯を奪う訳ですか?」

 

「奪うのではない。あれは魔術協会が保有すべきものだ。ユグドミレニア一族ごときが持っていいものではない。だから回収して解析する。我々魔術協会の為にね」

 

「そうですか。で、要件はそれだけですか?」

 

「いや、それだけではないよ」

 

すると、ロッコの部屋のドアをノックし、誰かが入ってきた。

 

「呼びましたか?ロッコ老」

 

「あぁ」

 

その男は長髪に不機嫌そうな顔つきをしていた、この時計塔でも有名な男だった。

 

カウレスは驚きながら言った。

 

「ロード・エルメロイ二世!?」

 

「あぁ、そうだ。そういう君はユグドミレニアの人間だな?」

 

「は、はい。カウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニアです」

 

軽い挨拶の後、ロッコはエルメロイ二世に進言した。

 

「二世よ。その少年を秘密裏に育ててくれないか?」

 

「何故そのような事を?」

 

「冬木の大聖杯を回収するため」

 

「ダーニックが持っているかもしれないというのはあくまで仮説に過ぎない筈では?」

 

「それでも、彼には君に教えさせる。彼は強くなって貰わないと、マスターとして選ばれないからな。それに、君も彼の中に眠る才能を埋没させるのは嫌だと、言っていたではないか」

 

「わかりました。できるだけがんばって見ます。カウレス。来なさい」

 

「え?あ、はい」

 

そんな感じで彼はエルメロイ二世に魔術を教えられた。

 

 

ダーニック離反の二週間前

 

「先生。ダーニックが一族の人間に召集をかけました」

 

「そうか」

 

カウレスは姉から、ダーニックが呼んでいると聞いたのでそれをエルメロイ二世に伝えた。

 

「これを渡します」

 

彼はエルメロイ二世に携帯電話を渡す。

 

「これは?」

 

「俺との連絡用です。魔術的な傍受をされるかもしれないので」

 

「成る程、それでこれか」

 

「ええ、一応ロッコ学部長にも渡しました」

 

「よし、いきたまえ」

 

「はい」

 

2日後彼は、ミレニア城塞についた途端ダーニックに、

 

「お前達には、サーヴァント召喚の触媒を探してもらう」

 

と言われ、姉と共に触媒を探した。

 

もちろんその事をロッコと二世には伝えた。

 

ロッコは触媒を提供すると言ったが、それでは怪しまれる可能性があったので断った。

 

そして彼は姉のツテを頼りにフランケンシュタインの怪物の設計図を手に入れた。

 

 

ダーニック離反の当日

 

「これより我々は魔術協会から脱退し大聖杯を旗印に新たな組織を立ち上げる‼その事は先ほどロッコ学部長に伝えた」

 

それを聞いた時の一族の反応は様々だった。

 

ゴルドは期待と不安が入り交じった表情をした。

 

セレニケは楽しそうな表情を浮かべた。

 

ロシェはようやく始まるのかと歓喜の表情を浮かべた。

 

フィオレは不安そうな表情を浮かべた。

 

そして、カウレスの思考は一瞬停止した。

 

(何を言っているんだこの男は?魔術協会を脱退して新たな組織を立ち上げる?それはつまり魔術協会に戦争を吹っ掛けるのと同じじゃないか)

 

「あぁ諸君らを魔術協会の精鋭が我々を殺しに来るだろう。だが安心したまえ。方法は考えてある」

 

そのあとカウレスはエルメロイ二世を通じてロッコと連絡をとった。

 

「そっちにもダーニックの離反は届いているよな」

 

『あぁ、届いているとも。あと2日もすれば五十人の精鋭が君達を殺しに行く』

 

「だったら俺が城の中からその精鋭を手引きするから、俺と姉ちゃんは助けてくれ」

 

『君や君の姉を助けるメリットがない』

 

「聖杯さえ手に入れたら俺たちを殺すメリットもないだろ!」

 

『いや。魔術協会に逆らったんだ。見せしめが必要だろう』

 

「だったらダーニックだけ殺せばいい。そうすればユグドミレニアは崩壊する」

 

『・・・』

 

「それから、ダーニックは何故か余裕だった。何かあるはずだ。例えばサーヴァントに時計塔の魔術師を迎撃させるとか」

 

『・・・成る程、面白い仮説だ。わかった。できるだけ善処しよう』

 

 

 

ダーニックが離反した2日後、彼はサーヴァントを召喚した

 

カウレスはポケットの中のスマホでメールを送信していた。

 

『今すぐ精鋭を引かせろ。サーヴァントに迎撃させるつもりだ』

 

「サーヴァント・ランサー。召喚に応じ参上した。お前が俺のマスターか?」

 

「あぁ私がお前のマスターだ。早速だがランサー。仕事を頼めるかい?」

 

「召喚早々人使い荒いねぇ。ま、いいや。なんだ、マスター。」

 

「実はこの城を魔術協会の魔術師達が囲っていてね、彼らを一人を残して全滅させて欲しいんだ」

 

「成る程、了解だマスター」

 

ランサーは城からでた

 

エルメロイ二世がロッコ学部長に伝え、迎撃中止をさせるより速く、精鋭は一人を残し全滅した。

 

 

 

「と、これが今に至る経緯だ」

 

『成る程ねぇ』

 

画面を通してモードレッドは相づちをうつ。

 

「分かってくれたか、バーサーカー」

 

「うぅ・・・」

 

理解はした。しかし・・・

 

「お前の願いは叶えられない。本当にすまない」

 

「アァ・・・」

 

カウレスは本当に申し訳なさそうに謝った

 

「・・・い、いよ。べつ・・・に」

 

「フラン・・・」

 

「カウ・・・レスは、わたしを・・・りかい・・・して・・・くれた・・・から」

 

「ごめん・・・本当に」

 

『で、何でこんな形で話さなきゃならないんだ?』

 

獅子劫は聞いた。

 

「キャスターのゴーレムがあんたらの拠点を見張ってるからな。そこから動かず連絡を取り合うには魔術的なメールを使ってもよかったが、それだと傍受される可能性がある。それに口頭で伝えた方が伝わり安い事もあるだろ?だから、ビデオ通話の形にした」

 

『機材とか諸々が高かったんだが』

 

「それはすまなかったな。でこの女の人は誰だ?あんたの愛人?」

 

『黒のアサシンのマスター、六導玲霞だ』

 

「相良豹馬は殺したのはあんただったのか?」

 

「ええ。そういう事になります。あとユグドミレニアの魔術師の暗殺集団も全員殺しました」

 

「ツークツワンクもか。そりゃありがたい」

 

『厄介なのかそいつら』

 

「戦闘特化の魔術師の集団。そっちのメアリーより少し弱い十人ぐらいの奴らが同時に襲ってくると思ってくれ。しかも死を恐れない狂信者的な奴らがな」

 

『うん。厄介だな』

 

「あいつらがいたらそれなりに厄介だから、消してくれたのはラッキーだよ」

 

すると、獅子劫は話題を変えた。

 

『まあ、互いの紹介はすんだな。それからお前がスパイだと言う件はメアリーには伝えてあるから心配すんな』

 

「そのメアリーは?」

 

『後ろで寝てる。英気を養うとかほざいてたけど』

 

「まあ大戦そのものは夜にやるし正しい判断か?」

 

『そうだな。じゃあダーニックの暗殺の話をしようか』

 

「そうだな、具体的な策は?」

 

『ジャックに暗殺してもらうのが手っ取り早い』

 

「結界に探知されたらアーチャーとキャスターのゴーレムが来るな」

 

『だったらバーサーカーもジャックに着かせるか』

 

「セイバーはダメなのか?」

 

するとモードレッドは通信に割ってはいる

 

『オレは戦場で暴れてアーチャーの目をこっちに向けさせる。その方が成功率が上がるだろ』

 

「そうか、でもアサシンって対魔力ないんだろ?だったらアーチャーの守りを抜けたとしてもダーニックの部屋に入ったらアウトだ」

 

『どういう事だ』

 

「ダーニックのやつ、ランサーのルーン魔術で部屋をガッチガチに固めてやがる」

 

『ランサー・・・クー・フーリンだったか?そんなにヤバイのか?』

 

「ああ、かなりヤバイ。あとこれはないかもしれないけど令呪でランサーを呼び戻してもアウト。できれば一撃で殺す事ができる手札が欲しい」

 

『だったら、俺の虎の子をジャックに持たせるか』

 

「? なんだそりゃ」

 

『ヒュドラの幼体を加工して作ったナイフがある。それならばどうだ?』

 

「ヒュドラの幼体!?」

 

『あぁ。ロッコのジジイに前金がわりにもらった』

 

「あの爺さんマジでヤバイな」

 

『でどうなんだ?行けそうか?』

 

「多分いけるだろうけど・・・」

 

『なら決まりだな。でそっちの城の結界はどうなってんだ』

 

「あぁ、そうだな・・・」

 

それから結界を開く事のできるパスワードや防衛魔術の位置などを伝えて計画を立てた。

 

 

現在 フランside

 

「ナァァァァァァオォウ!!」

 

「ぐっ・・・」

 

天草四郎は焦る。

 

予想以上に自身に追いすがるフランに押されかけている事実に。

 

いいや、だからこそ笑う。

 

これも、かの主が自身に与えたもうた試練なのだと。

 

 

ランスロットside

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

「・・・ッ!!」

 

カルナとランスロットの戦いは拮抗していた。

 

双方の身体には傷がつくがすぐに治癒する。いや回復速度はカルナの方が早い。しかし傷の数はランスロットの方が少なかった。

 

数十、数百と打ち合い、互いの距離が離れる。

 

カルナは口を開く

 

「やはり、以前の貴様は本気ではなかったのだな」

 

「それはあなたも同じでしょう」

 

カルナの言う通りランスロットは以前以上のスピードとパワーがあった。

 

そしてそれは彼の持っている剣を解放したからであることは明白だった。

 

無毀なる湖光(アロンダイト)

 

かの騎士王の聖剣『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』の兄弟剣であり決して刃毀(はこぼ)れすることのない星が鍛えた聖剣。

 

自身のステータスをワンランク上昇させる効果を持つランスロットの愛用の剣。

 

円卓の騎士の中のおいて最高の技量を持つランスロットに極めて相性のいい剣。

 

しかし、ランスロットはある違和感を覚えていた。

 

いくらステータスをワンランク上昇させたとしてもカルナは神の子だ。英霊としての基礎スペックはカルナの方が上の筈だ。本気になれば自分はもしかすると圧倒されているかもしれないと考えていたのに、

 

(おかしい、カルナは本気なのか?)

 

「まさかオレが本気ではないと疑っているのか?」

 

(こちらの思考を読まれた!?)

 

「オレは燃費の悪いサーヴァントでな。いかに一級の魔術師とはいえ、オレが本気で魔力放出をすれば一瞬で干からびてしまう」

 

「つまり、あなたは本気で戦う事ができないとでも言うのですか?」

 

「そちらのように魔力供給を代用する手段があれば別だがな」

 

「成る程・・・」

 

ランスロットはカルナの違和感を理解すると共に彼の危険性を理解した。

 

(マスターの魔力を気にして出力を抑えてこの実力だと?)

 

「さあ、戦いを続けよう」

 

カルナは槍を構える。

 

ランスロットは剣を構える。

 

互いに踏み込み、両者は激突した。

 

(問題なのはあの超回復だ。いくら傷をつけようと一瞬で回復する。マスターからの支援だけではない。おそらくあの鎧の効果だ。あれを取り除いた上で我が全力の一撃を加えるしか勝機はない)

 

ランスロットは考える。

 

(あれ程の技量を持った騎士が以前より速く重い一撃を何度も放ち、こちらの攻撃を回避し弾き続けるとは、槍がほとんど当たらん)

 

カルナも考える。

 

状況を変える事のできる手札。

 

つまり。

 

(宝具しかない)

 

互いに距離を取る。己が宝具を打ち出す為に。

 

 

クー・フーリンside

 

クー・フーリンとアキレウス、アタランテは草原から膨大な魔力を感知した。

 

クー・フーリンとアキレウスは、

 

「へえ、向こうは宝具の打ち合いになるのか」

 

「そうらしいな」

 

「お前は使わないのか?最速の英雄?」

 

「そりゃこっちの台詞だ、大英雄。と言いたいところだが、あんたとは一対一でやりたいからな。宝具を開帳させてもらおう」

 

「ほう。そうか、ならば俺も・・・」

 

「いや、開帳すんのは俺一人さ」

 

互いの距離は20メートルも満たない。アキレウスの槍に魔力が満ち、投げる。

 

「?」

 

彼は疑問視した。何故自分を狙わず自分たちの間の中心を狙ったのか。

 

宙駆ける星の穂先(ディアトレコーン・アステール・ロンケーイ)!!」

 

次の瞬間槍を中心に結界が展開された。

 

「こいつは・・・固有結界か!?」

 

「いや、そこまですごい物じゃない。ここは闘技場。ここじゃ互いの宝具は使えない。まぐれも起きない。もちろん、マスターの令呪もな。純粋な実力勝負。どちらかが倒れるまで結界が展開され続ける」

 

「成る程。確かに宝具は使えないらしい」

 

すると彼は槍を納め近接格闘の構えを取る。

 

「いいな。あんた最高だ!」

 

アキレウスも近接格闘の構えを取る。

 

彼らは互いにぶつかり合った。

 

「まさか弾き出されるとわな」

 

アタランテは嘆息する。

 

(さてどうしたものか・・・)

 

アタランテは考え、

 

「ランサーの援護に行くか」

 

ランサーの援護にいこうとすると、セミラミスから連絡が入った

 

『アタランテよ、ルーラーが来ている。足留めせよ』

 

「何?」

 

『貴様のマスターからだ』

 

「・・・わかった」

 

ランスロットside

 

「極光よ―――」

 

ランスロットの剣に魔力が満ちる。

 

それをみてカルナは笑みを浮かべる。

 

(素晴らしい魔力。剣戟。技量。貴公が全力ならばオレも―――)

 

カルナの肉体から鎧が剥がれていく。そして槍が神々しい力を宿す。

 

(バカな・・・)

 

その戦いを見ていたゴルドもランスロットと同じ感想を持った。

 

『セイバー、勝てるか?』

 

(分かりません。ですがこれはピンチではありますがチャンスです)

 

『何?』

 

(鎧が剥がれている。つまりあの超回復がない。直接宝具を叩き込めば勝機がある)

 

『あの一撃のあとお前が生きていたならな』

 

(ですから)

 

『令呪を切れと?』

 

(ええ)

 

『わかった。ついでにホムンクルスの魔力も好きに持っていけ』

 

(有り難うございます、マスター)

 

瞬間、更にランスロットの剣から光が輝く。

 

限界以上に魔力が剣に満ちている。本来であればすでに解放しなければ剣が砕けてしまう程に。

 

それでもまだ解放しない。

 

「神々の王の慈悲を知れ」

 

「最果てに至れ」

 

彼ら同時に言葉を口にする。

 

「インドラよ刮目せよ」

 

「限界を超えよ」

 

それは覚悟の現れだ。

 

「絶滅とは是、この一刺」

 

「彼方の王よ、この光を」

 

さあ、放て。互いの名誉、誇りにかけて敵を討ち滅ぼす為に。

 

「灼き尽くせ―――日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)!!」

 

「ご照覧あれ―――無毀なる湖光(アロンダイト)!!」

 

太陽のごとき光が槍から放たれる。

 

月光に当てられた湖面のような輝きが剣から放たれる。

 

拮抗はしない。

 

槍の一刺がランスロットの剣から放たれる光を貫いてゆく。

 

そして・・・

 

ランスロットのいた場所で爆発が、起きた

 

「ふぅ・・・」

 

終わったとカルナは確信する。

 

(楽しめたぞセイバー)

 

そしてカルナは他のサーヴァントがいる方向をみて、

 

「まだだ」

 

鎧が欠け、身体の所々が灼け、煤けた臭いを発するセイバーが接敵しているのを感知した。

 

槍で弾こうとするも遅かった。

 

縛鎖全断・過重湖光(アロンダイト・オーバーロード)!!」

 

「ぐっ・・・!?」

 

ランスロットの剣はカルナの右脇腹か左肩にかけて切り裂いた。

 

そして、鎧の防御が完全に消えたカルナの傷口から月光のような光が見えた。

 

「これは・・・まさっ!?」

 

「もう遅い」

 

そして先ほどの対軍宝具に匹敵する爆発がカルナを内側から襲った。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

(有り難うございますマスター)

 

『ふん。よくやったセイバー、令呪を二画消費したかいがあったというものた』

 

そう、ランスロットがあの宝具から生き延びたのはゴルドが令呪を二画きったからだ。

 

カルナの宝具が当たる直前に『転移』の命令。

 

完全に避けきれなかったが。それでも生きていた。

 

そしてカルナが完全に油断したタイミングで『宝具でカルナを倒せ』という命令。

 

それによってランスロットはカルナを討ち取ったのだ。

 

(霊核は完全に破壊したはずだ)

 

すると地に伏していたはずのカルナが口を開く

 

「セイバー・・・よ」

 

(バカな、まだ生きているだと!?)

 

ランスロットは、驚愕する。

 

「そう・・・構えるな。もう消滅を待つしかない身だ・・・だからオレの最後の願いを聞いてくれ・・・」

 

「・・・なんでしょう」

 

「オレのマスターを殺さないでやってくれ」

 

「それは・・・」

 

おそらくそれは無理だろう。だが・・・

 

『わかった約束しろ、セイバー』

 

(よいのですか?)

 

『あぁ、速く答えよ』

 

「分かりましたランサー」

 

それからランサーはマスターの名を告げた。

 

「それから・・・もう一つ・・・。貴公の・・・真名を教えてくれ・・・」

 

(マスター)

 

『答えてやれ』

 

「我が真名はサー・ランスロットと言います」

 

「ランスロットか・・・有り難う。いい戦いだった」

 

そう言い残して赤のランサー、カルナは消滅した。

 




はいという訳で今回話は終了です

思った以上に話が進みませんでした。

聖杯大戦最初の脱落者はカルナさんでした。カルナファンの皆さんごめんなさい。

ランスロットの宝具の口上ちょっと変えました。

Apocryphaアニメやべえよフランちゃん脱落してるし吸血鬼こわいし



次回 中盤戦



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