Fate/Apocrypha 灰の陣営   作:ピークA

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前回のあらすじ

【悲報】ヴラド三世ルーマニアなのにバーサーカーとして喚ばれる


四話 聖杯大戦 3日目 黒の忙しい1日

午前1時頃 トゥリファス付近 国道

 

そこには二騎のサーヴァントがいた。

 

「ルーラーとお見受けする」

 

「赤のランサー・・・インド神話の大英雄カルナですか・・・」

 

「ほう・・・我が真名を看破するか。それがルーラーの特性か」

 

ルーラー

 

それは聖杯戦争を管理・監督するサーヴァントである。聖杯戦争に参加したマスター・サーヴァントの願いによって世界が滅びると理論的に成立すると判断されたとき聖杯によって喚ばれる(・・・・・・・・・・)サーヴァントである。

 

ルーラーには真名看破と言われるサーヴァントの真名を見破る能力とサーヴァント一騎に対し二画の令呪が与えられる。

 

それは十分過ぎる特権でありよってルーラーに該当するサーヴァントには基本的に中立の立場を守れる者が選ばれる。

 

しかし、今回の聖杯大戦は何かがおかしかった。ルーラーはレティシアと喚ばれる少女に憑依する形で現界していた。これは本来であればあり得ない異常(エラー)であり、その瞬間に彼女はこの聖杯大戦が何が狂っていると感じた。

 

だから聖杯大戦が行われるであろうトゥリファスに向かう道中で、中立であるはずの自分を抹殺しようとする赤のランサーと相対していた。

 

「では、覚悟してもらおう」

 

カルナはルーラーに突貫する。ルーラーはそれをなんとか回避し攻勢に転じようとして、

 

「やれ!セイバー!」

 

ランサーは、横合いから放たれた不可視の存在からの攻撃をいなした。

 

「大丈夫でしたか?ルーラーよ」

 

ゴルドはルーラーに話しかける。

 

「貴方は黒のセイバーのマスターですか?」

 

「ええ!我が名はゴルド・ムジーク・ユグドミレニアと申します。此度の聖杯大戦においてセイバーを召喚いたしました」

 

ゴルドはカルナのほうを見て、

 

「赤のランサーよ!ルーラーに対し攻撃をしかけるとは究極のルール違反だろう!大人しく我がセイバーとルーラーの沙汰を受けるがいい!」

 

と叫ぶ

 

するとルーラーは、

 

「赤のランサー、黒のセイバー。此処で戦うのならどうぞ。私は手を出す事はありませんので」

 

「な・・・!?」

 

「赤のランサーが私の命を狙うのと、貴方方が戦うのは無関係なことなので。私にはルーラーとしての義務を果たす責務があるので」

 

その意見にゴルドは狼狽する。

 

「しかしルーラーよ!赤のランサーは貴方の命を狙ったのですよ!?」

 

「それはそれ、これはこれですので」

 

「そんな・・・!?」

 

そこでランサーは口を挟む。

 

「成る程、二人がかりで俺を押さえようという魂胆か。あさま・・・」

 

そこまで言った瞬間、セイバーはランサーに切りかかった

 

ランサーは槍で受け止め

 

「・・・随分と急いでいるな」

 

「申し訳ない、私と相対しながら我がマスターとルーラーと話していましたので、倒す好機と思いまして」

 

「姿を見せないだけでなく不意討ちまでしてくるとは、随分と無礼なやつだな」

 

「ご冗談を。これは戦いです。隙を見せれば殺られる。何よりマスターを侮辱しようとした貴方の言動は看過出来ませんでした」

 

「そうか、それは済まなかったな。しかし何故姿を見せない?」

 

「ルーラー対策・・・とでも言いましょうか。先ほどのように真名を呟かれてはたまりませんので」

 

「そうか、ありがとうセイバー。疑問は晴れた。これで心おきなく戦える」

 

次の瞬間カルナは魔力を放出した。ランスロットは一端カルナから距離をとった後ランサーに突貫した。

 

二騎のサーヴァントが剣を、槍を打ち合う。

 

カルナにはランスロットの姿を見ることはできないが彼の体の身体と剣の大きさをおおよそ把握していた。対するランスロットはその尋常ならざる技巧で神速とも思える槍の連撃を回避し剣でいなしていた。

 

(まだ戦いが始まって十分と経っていないのに身体と剣の大きさをおおよそ把握するとは・・・!これが神代の英雄か・・・!その様な存在と緒戦を飾ることが出来るとは・・・なんたる行幸・・・!!)

 

ランスロットは驚愕と歓喜混ぜたような表情をする

 

対するカルナも、

 

(この尋常ならざる技巧・・・我が槍が未だとらえられないとは・・・世界とは広いものだ・・・!これ程の芸達者と武芸を競うことが出来ようとは・・・!!)

 

カルナにも珍しく歓喜の表情が出ていた

 

午前5時頃

 

もう何十分、いや何時間経過しただろう。彼らはまだ戦っていた。

 

カルナは完全にランスロットの身体の大きさを完全に把握していた。ゆえに致命となる攻撃を何十、何百と繰り返していた。しかしそれでもランスロットはその連撃を回避し、いなしていた。

 

剣と槍の打ち合い。尋常ならざる技巧の応酬。

 

彼らは未だ宝具を打ち合ってさえない。にもかかわらず道路は壊れ、抉れ、蒸発した所もあった。

 

ようやく朝日が昇るか昇らないかの時間になり彼らは打ち合うのをやめた。

 

「このまま打ち合うのもいいが、そちらのマスターはうんざりしているようだな」

 

「そのようですね。願わくばもう一度貴方と戦いたい」

 

「そうだな、名の知らぬ黒のセイバーよ、さらばだ」

 

そう言ってカルナは姿を消した。

 

「ええ。赤のランサー、カルナ」

 

「黒のセイバー、貴方方の戦い見事でした」

 

ルーラーは啓示によってセイバーがいるであろう位置の近くに行く。ランスロットは不可視化を少し緩めボヤける程度にした。ルーラーには彼のステータスの一部は読めても真名はわからない

 

「ありがとうルーラーよ。我がマスターを守ってくださり」

 

ランスロットとルーラーの話にゴルドは割って入り

 

「ルーラーよ。我がミレニア城塞に逗留されては?そこならばトゥリファス全体を監視できますが?」

 

「私の知覚力はトゥリファス全域をカバーできます。それに貴方方の拠点に身を置いては公正さを保てません」

 

「そう・・・ですか・・・」

 

ゴルドは悔しそうにいった

 

「ではお茶くらいはどうでしょう?それくらいなら構わないのでは?」

 

ランスロットが訪ねる。

 

「いいえ、ダメです」

 

ルーラーは頑なに断る

 

ゴルドとランスロットはため息をつきその場を後にする。

 

「これが緒戦ですか」

 

ルーラーは彼等の戦った爪痕を見る。まるで何かの災害に巻き込まれたかのような惨状だった。

 

ゴルドは車でミレニア城塞に帰る道すがらランスロットに訪ねる。

 

「あのランサーには勝てそうか?」

 

「正直な所、わかりません。あのランサー・・・カルナは異常なほど頑丈だった。加えてあの槍撃・・・そして奴がカルナであるなら、極めて強力かつ絶大な威力を誇る宝具を所持している筈ですから。」

 

「・・・」

 

「ですが恐らく私の宝具を至近距離から直撃させれば、勝率は上がる筈です」

 

「そうか」

 

「しかし彼女は大丈夫でしょうか・・・」

 

「ルーラーなら大丈夫だろう。流石に昼間から襲うほど赤の陣営もバカではない」

 

「だといいのですが・・・」

 

ゴルドはランスロットと車内でそんな会話をしたあと城に付くまで眠る事にした。その間ランスロットは襲撃に備えいつでも動けるようにしていた。

 

午前8時 ミレニア城塞

 

「たく、あいつどこにいった?」

 

カウレスはフランを探していた。朝食を済ませた後、フランがどこかに行ってしまった。それで城の中を探していた。

 

(もしかして、彼処か・・・?)

 

彼は彼女の夢で自身と彼女の語り合った場所にいった。

 

「やっぱりここか」

 

そこに彼女はいた。花畑で花を摘んでいる姿は。花嫁衣装とマッチしていた。

 

カウレスは思わず見とれてしまった。

 

するとフランはこちらを見る。

 

「あっ・・・よ、ようバーサーカー」

 

「ウゥ?」

 

「いやお前と話がしたくてさ。ほら、お前って伝承で伝わっているのと随分違うから」

 

カウレスはフランに自身の知っているフランケンシュタインの物語を聞かせたあと、

 

「お前の願いは、同じ存在の伴侶を得るって言うこといいのか」

 

「ぅん」

 

「城のホムンクルスじゃ駄目か?似たような物じゃ・・・」

 

そこまで言ったら、フランは摘んでいた花束をカウレスの顔面にぶつけて来た。

 

「なるほど、ダメってことか」

 

「ウゥ!」

 

「ごめん」

 

するとフランはカウレスの顔をじっと見る。

 

「えっ、俺の願いを言えって事か?」

 

「アァ!」

 

「うーん、まだ決めてないんだよ」

 

「ウゥ?」

 

「いや、願いがないわけじゃないんだ、根源の渦に到達したい気持ちはある。けどもしかしたらこの戦いで姉さんが死んでたら、生き返らせようとするかも知れないだろ。百年先の根源より俺にとっては目の前の姉さんだ」

 

そう言うとフランは、

 

「うん」

 

と頷く。

 

「そっか、お前の事が少し分かった気がするよ。じゃあ俺は部屋に戻るから」

 

「ウゥ」

 

と、フランはカウレスの服の裾を引っ張る。

 

「ん?どうした?」

 

「ウゥ!」

 

フランはカウレスに一輪の花を渡してきた。

 

「くれるの?」

 

「うん」

 

「ありがとう」

 

カウレスはフランに礼をいい部屋に戻った。

 

午前10時頃 ミレニア城塞

 

「あ、起きた!」

 

「おはようございます」

 

「・・・?」

 

昨夜アストルフォに助けてられたホムンクルスはケイローンの部屋で寝かされていた。

 

「大丈夫?」

 

「貴方達は・・・?」

 

「僕はアストルフォ!こっちの彼はケイローンだよ!」

 

「ライダー・・・真名で呼ばないでください」

 

ケイローンは呆れる。

 

「あぁ!ごめんごめん!今の無し!忘れて!」

 

「俺は・・・」

 

「ああ、君昨日城の中では倒れてたんだよ。とてもしんどそうにしてた。ケイ・・・アーチャーが言うには魔術回路の暴走と歩いたことによる過労だってさ」

 

「ついでに言っておきましょう。君の命は保って三年です。もともと魔力供給様の電池であることを目的として造られています。その為寿命を削ったのでしょう。これが赤子なら同情しますが、君はホムンクルスだ。ある意味生まれながら完璧な存在です。ならば君は考えるべきだ。どうやって生きていくのかを」

 

ケイローンの意見は厳しいと思えるが正論でもあった。

 

「僕は命があるだけ儲けものだと思うけど」

 

「それでは駄目です。ですが君にはライダーがついている、彼に歩き方等を教えてもらいなさい」

 

するとアーチャーにマスターからの念話があった。

 

(アーチャー。今から私の部屋に来れますか?)

 

(ええ大丈夫です)

 

「それからライダー、暫く部屋を開けますが、誰も中に入れないように」

 

「はーい」

 

それからアーチャーは霊体化して部屋から出た。

 

フィオレの部屋

 

そこにはフィオレだけでなくカウレスとフランもいた。

 

「それで何の用でしょうマスター?」

 

「実はバーサーカーに貴方の力を授ける事ができないかとバーサーカーが・・・」

 

「力・・・つまりバーサーカーに我がスキル、神授の知慧を使えという事でしょうか?」

 

「はい、その通りです」

 

神授の知慧

 

それはケイローンがギリシアの神々から授かった様々な知慧を一纏めにしたスキルである

 

マスターとの合意が有れば他のサーヴァントにスキルを与える事が出来るスキルである

 

「別に構いませんが・・・マスターはいいのですか?」

 

「大丈夫です」

 

フィオレは首を縦に振る。

 

「分かりました。やってみましょう」

 

「ありがとう、アーチャー、姉さん」

 

「いえいえ」

 

それから中庭に移動し、ケイローンのフランにスキルを与えるため実戦的な教育が始まった。

 

「では私はダーニック叔父様にこのことを話して来ます」

 

「いや俺も行くよ」

 

二人はダーニックにこの事を話に行った。

 

午後1時頃 シギショアラ テムside

 

とある一軒家のリビングに5人の人間が集まって集まっていた。

 

彼らはカルナと正体不明のセイバーの戦いの一部始終を録画していた物を見ていた。

 

「おいおいおいおい、マジかよ冗談じゃねぇぞ。なんだよあの化け物どもは」

 

ライダーは早速ぼやいていた。

 

「しかしセイバーは凄いですね、あのカルナの槍を捌けるなんて」

 

アーチャーはセイバーに感心していた。

 

「いやいや、どう考えてもヤバイのはカルナでしょ。何であいつ見えない剣を捌けるんだよ。意味わかんねぇよ」

 

ランサーはカルナのぶっ壊れた性能に不満たらたらだった。

 

「わくわくしますねぇ。あんな方々が14騎もいる聖杯大戦。早く暴れたいですねぇ」

 

セイバーはテンションが上がっていた。

するとライダーは、

 

「いやいや。あんな性能してんのたぶん三騎士位だからな。あの性能の奴が14騎もいるなんて考えたくねぇよ。ルーマニアが地図から消えるわ。どこの終末戦争(ラグナロク)だよ。ルーラーにイエス・キリストが喚ばれるレベルだろ、それ」

 

とセイバーに突っ込みをいれる。

 

「ん?構いませんが?」

 

「お前がよくても俺の精神が持たんわそんな状況」

 

そんな感じで話していると

 

「さっきキャスターから連絡があった。あと数時間でこっちに来るそうだ」

 

クロが携帯を片手に話す。

 

「そうか、ありがとう。あ、旗を持った女で、ルーラーとして召喚されそうな英霊ってわかるか?」

 

「多分、ジャンヌ・ダルクじゃないか?」

 

「ああ、やっぱり。あれを相手にすんのはダルそうだなぁ。そういやクロは神とか信じてた?」

 

「私は神は信じないよ。というか嫌いだ。それを妄信的に信じる者も。『信じれば救われる』などと教えている者も」

 

「やっぱりねぇ。俺もだわ。結局人を救うのは人だ。神なんているかいないかわからん物を信じて死ぬなんてごめんだ。いや神代(むかし)はいたのかもな。でも今や神なんて金儲けや人を都合のいいように操るための道具だ。そんな奴らでさえ救おうと考えるなんて、ルーラーは随分優しいねぇ。まったくヘドが出る」

 

ライダーは不愉快そうに愚痴る。がすぐに切り替え、

 

「ま、そんな事よりだ。このルーラーなんかおかしくないか?」

 

とその場にいる全員に聞いた。

 

「そうですか?」

 

セイバーとアーチャーは首を傾げ、

 

「それよりあのルーラーのおっぱいを揉みしだきたいわ」

 

ランサーは早くも脱線した

 

「おい三騎士、ふざけんなよ。おいクロ、この脳筋どもに何がおかしいか言ってやれ」

 

「確かに聖女と言うわりにはあまりにもプロポーションを強調する服装だ。正直目のやり場に困るな。これは性女と改名すべきだ」

 

「お前もかよ!おいアサシン、何がおかしいか言ってやれ。このバカどもに」

 

話をふられたアサシンは、

 

「そうだな。サーヴァントなのに霊体化してないところか?」

 

「それだ。それがおかしい。普通サーヴァントなら霊体化するはずだ。なのに戦闘が終わっても霊体化しない?いや、霊体化できないのか?だとしたら聖杯のバグか?」

 

するとクロは、

 

「聖杯に異常はないはずだ。ダーニックは骨の髄まで魔術師だ。そんな奴がバグを起こすようなヘマはしない」

 

「だとすりゃ大戦形式になったから起こったものでもない・・・」

 

「もしかしたら、ルーラーはこの外見の少女に憑依しているのかもしれない」

 

「憑依?英霊を?そんなもん肉体が持たんだろ。それ用に調整されたホムンクルスでも成功率はかなり低いはずだ」

 

「普通ならそうだ。でもこの少女が英霊ジャンヌ・ダルクとの適合率が高く受け入れる意志があったのなら・・・」

 

「いくら適合率が高いからといって普通受け入れるか?」

 

「彼女が敬虔な信徒だとしたらあり得るかもね」

 

「なるほどねぇ・・・肉体があるのか・・・」

 

するとライダーはニヤリと笑い別の部屋に移動する

 

そこには幾つかのパソコンの画面があり、一つのキーボードとマウスで使える様な形になっており、所謂個人投資家のトレーディングルームのような部屋だった。

 

それから数時間、部屋であることを調べ続けそれが一段落したら携帯である場所に連絡した。

 

午後7時頃 ミレニア城塞

 

黒のキャスター・・・アヴィケブロンの監視用ゴーレムが街の外からマスターとサーヴァントが来たのを感知した。

 

「昨日に続き今日もか」

 

アヴィケブロンは嘆息した。

 

「すまないな、キャスター。奴らも、我々を潰そうと必死なのだろう」

 

ダーニックはホムンクルスとゴーレムを差し向ける様に手配した。

 

「さて、お手並み拝見だ」

 

メアリーside

 

「うわーすっご。こんなゴーレムみたことないんですけど」

 

「おそらくゴーレム使いが敵のキャスターなのだろう」

 

ダーニックがホムンクルス6人とゴーレム5機を差し向けて数分後、メアリー達の前に彼等は出現した。

 

「しかし自身を囮に敵を誘き寄せるとは、マスターはよほど戦闘に自信があるのだな」

 

「敵の戦力の確認は当然ですし、貴方もそのつもりでこの街に入ってから実体化したんですよね?」

 

「まあその通りだな。あとは余自身の試運転を兼ねて戦うのもあり、と考えだけだ」

 

「まあ、ウォーミングアップは大切ですからねぇ」

 

「・・・しかしこのような木偶を街に配置するとはな。神秘の秘匿を忘れたのか?」

 

「多分大丈夫だと思いますよ。人払いの結界が機能してますし」

 

「左様か。ならばホムンクルスは任せてよいか?」

 

「はい。任せて下さい。ではゴーレムはお願いします」

 

「承知したマスター」

 

彼等のは双方の相手と戦う。

 

ゴーレムはまず持っている剣で彼を切り裂こうとする。

しかしゴーレムの鈍重な動きではヴラド三世をとらえられない。

一気に懐まで入り込むと彼はゴーレムを力任せにぶん殴る。

するとゴーレムは粉々に砕け散った。

続く形で彼は手に銀色の槍のような物を出現させ、別のゴーレムの腕を切り裂き足を掴み筋力に物を言わせ別のゴーレムにぶつけて破壊する。

残り2機のゴーレムはヴラド三世の前後から襲いかかるも片方には槍で核を切り裂かれ、もう片方は彼の右腕で胴を捕まれ、彼の右手から飛び出した杭で貫かれた。

 

メアリーの方は一番最初に襲いかかってきた槍を持ったホムンクルスの懐に入り左手のナイフで頸動脈を切り裂く。

別のホムンクルスが両手剣を持って襲いかかる。

しかし彼女は右手で懐から銃を取り出すとホムンクルスの足と撃つ。

ホムンクルスがバランスを崩し前のめりに倒れそうになっていると、思い切り頭部を蹴り抜いた。ホムンクルスの防御は間に合わずそのホムンクルスの頭部がまるでサッカーボールの様に飛んで行った。

3人目のホムンクルスは彼女にメイスで襲いかかる。

彼女は頭部を失った死体をそのホムンクルスに向けて投げると同時に走る。

ホムンクルスはメイスで死体を叩き落とすも後続からきた彼女に対応しきれず喉にナイフを突き刺された。

上の方向から矢が飛んで来る。

どうやら彼等と戦っている間に屋根の上に配置したらしい。

彼女は矢を避けながら一番最初に倒したホムンクルスの所まで行き、槍をつかみ狙撃主のいる建物の高さ半分位に槍を投げた。

突き刺さった槍に向かって走り魔術で補強した脚力で槍の柄に飛び、掴む。体を筋力をつかって槍の柄の上に持っていき両足で柄をふみ跳躍する。

まるでハリウッド映画のアクションシーンのような事をやってのけ彼女は狙撃主たちのいる場所たどり着く。

3人の狙撃主は弓を構えるも一人目は心臓をナイフで刺され、二人目は回し蹴りで首を折られ、三人目は足払いをされて屋根から落とされ、逃げようともがいているところを銃で頭を撃たれ絶命した。

 

戦闘終了後、メアリーは屋根から降りヴラド三世と合流した。

 

「やっぱりお強いんですね」

 

「王となる前は兵士としても戦っていたからな。マスターも随分と強いな」

 

「まぁ私の場合は遠距離からチマチマ戦ったり呪いとかつかうのが苦手で接近戦に特化したんですよ」

 

「・・・まさか遠距離から戦うような術式を習得してないわけではなかろうな・・・?」

 

「ガントなら・・・ギリギリ・・・できないこともない・・・ですかね、呪術は・・・できません・・・」

 

「おい・・・」

 

「だって拳銃やライフルがあるのにガントや呪術なんて必要ないじゃないですか!」

 

「法律で銃が規制されている国ではどうするつもりなのだ?」

 

「そういう国にも裏社会ってあるんですよ?」

 

「なるほど現地調達か。要するに違法行為だな」

 

「魔術師なんて四捨五入したらみんなサイコな犯罪者ですよ?」

 

「もうよい。この話題は触れないことにしよう」

 

彼女たちは赤のセイバー陣営との合流を目指していた。

 

ユグドミレニアside

 

「中々の強さだな」

 

クー・フーリンは感心していた。

 

「ええ、あの異常に高いステータスは脅威ですね」

 

ケイローンは分析する。

 

「ねぇ、あれってバーサーカーなのかな?」

 

アストルフォはケイローンに聞いた

 

「おそらくそうでしょう。セイバーは昨日確認しました。ランサーもこちらのセイバーが確認しています。あの戦闘スタイルからアーチャーではない。騎乗物に乗っていたわけでもないからライダーでもない。あのステータスですからアサシンやキャスターでもない。ならバーサーカーが妥当な候補でしょう」

 

「明らかに喋ってたけど?」

 

「そういう例外もあるでしょう」

 

ケイローンはフランを見る。

 

「む・・・?」

 

キャスターが別の監視用ゴーレムが別のサーヴァントの反応を感知した。

 

「ダーニック。またサーヴァントだ。数は二騎。森の付近にいる」

 

「やれやれ、今夜は来客が多いな」

 

「おい、マスター。俺に行かせてくれ」

 

クー・フーリンはダーニックに進言する。

 

「そういえば、ランサーは魔術師と戦っていてもサーヴァントとは戦ってはいなかったな」

 

「おうよ。だから俺が行く」

 

「まずいと判断したら撤退するようにな」

 

「安心しろマスター、俺が敗けるなどあり得んさ」

 

「わかった。一応セイバーも出そう」

 

「応。行ってくらぁ!!」

 

ランサーは外へ飛び出し、敵サーヴァントのいる方向に走る。

 

セイバーも後に続く。

 

 

二時間前 シギショアラ 教会

 

「やあやあお二人ともお揃いで!」

 

「相変わらず騒がしいなお主は」

 

セミラミスは赤のキャスター・・・シェイクスピアに嘆息した

 

「おやおやすみません!実はお知らせしたい事がありまして!」

 

「なんです?」

 

シロウはシェイクスピアに問う。

 

「実はライダーが黒の陣営に殴り込みに行きました」

 

「なっ・・・!?」

 

「それは本当ですか?」

 

セミラミスは動揺しシロウは訝しんだ。

 

「ええ!敵の戦力を確認するといって戦車に乗ってミレニア城塞に飛んで行きました。ついでにアーチャーも彼を追って外に出ました」

 

「あの馬鹿者どもめ!!」

 

「いえセミラミス。むしろ相手の戦力を確認出来るのは行幸です。至急鳩を飛ばして監視出来るようにして下さい」

 

「それでよいのか?シロウよ」

 

「ええ向こうのランサーの真名が分かるかもしれません」

 

「わかったやってみよう」

 

 

現在 ミレニア城塞付近の森

 

その男は槍を携えランサーの到着を待っていた。

 

「よお、待たせて悪かったな」

 

「おお。これ以上またされたら城に殴り込みにいくところだったよ」

 

「そいつは困るな。あそこには俺のマスターとその一族がいるし、そんな早く勝負を決めに来るなんて面白くねぇ」

 

「ああ、全くだ。だからこうして待った。そして待った甲斐があった。あんたとなら対等の殺し合いができそうだ(・・・・・・・・・・・・・)。」

 

「まるで俺以外だと殺し合いが出来ないとでも言ってる様に聞こえるが?」

 

「その通りだ。俺を殺したければその資格がないとな」

 

「資格・・・ねぇ・・・。まあいいや。いい加減始めよう。こっちも戦いたくてウズウズしてたんだ。昨日のセイバーとランサーの戦いを観てからな!お前もそうだろ?ライダー君よ」

 

「!俺をライダーと気付いたのか」

 

「バーサーカーとセイバーとランサーは見たしな。こんな前線に出てくるなんてアサシンでもキャスターでもねぇ。槍を使うアーチャーなんているわけない。で、残ったのはライダーだけってわけさ」

 

「そうか。わかった。なら始めよう」

 

クー・フーリンと赤のライダーが槍を構える。

 

そして両者は激突した。

 

互いに槍を打ち合う両者。

 

その顔には自身と対等に殺し合える猛者と戦える事への喜びがあった。

 

防御は必要最低限、致命となる傷のみ避けるという形をとっていた。

 

「ははっ!黒のランサーよ!この俺の体に傷を付けるとは!やはりお前は最高だ!相手にとって不足はない!」

 

「赤のライダーよ!てめぇも中々の猛者だな!だがまだこんな物ではないだろ!?」

 

「ああ!まだ上げるぞ!」

 

その瞬間、赤のライダーの攻撃のスピードが上がる。

 

しかし、クー・フーリンはそのスピードにも追いつく。

 

アタランテもランスロットも彼らを援護するためにその戦いをみていたが、

 

(下手な援護は出来ないな)

 

と考えていた。

 

「そらそらそらそら!!」

 

クー・フーリンは赤のライダーに、猛攻を行う。対するライダーもその猛攻をいなし、反撃する。

 

「どうした!?黒のランサーよ!こんなものか!?」

 

「はっ!まだだよ!」

 

彼等のスピードはさらに上がる。

 

数十、数百の攻撃の応酬のあとクー・フーリンは一度距離をとり空中に何かを描く。

 

赤のライダーはクー・フーリンに突貫する。次の瞬間、赤のライダーの視界はオレンジに染まる。

 

(魔術だと!?)

 

彼はわずかに驚く。しかし、

 

「そんなもので俺を仕留められるか!!」

 

彼は構わず突貫して、炎を突き抜ける。しかしクー・フーリンはそこにいない。

 

すると真後ろに気配を感じる。彼は身をよじり無理やり回避する。

 

「へえ。これを避けるか」

 

「当たり前だ。この程度避けられなくてなにが英雄か」

 

「だろうな。しかし一旦止めにしないか」

 

「なんだよ。せっかく楽しくなってきたのに」

 

「このまま打ち合っても埒が明かねえしな。それにお前も、もともと宝具を使うほど大規模な戦いをしに来た訳じゃないだろ」

 

「まあな」

 

「だったら次の戦いまで待とう。その時は互いに手加減抜きで戦おう」

 

「・・・そうだな。黒のランサーよ。マスターからも撤退せよと命令された」

 

「そうか、ならば次こそ必ず全力で戦おう」

 

「ああ。お前は俺の獲物だ!次は必ず仕留めよう!」

 

赤のライダーは戦車を召喚し、それに乗る。

 

「オリンポスの神々よ!この戦いに栄光と名誉を与えたまえ!」

 

そんな事を大声で叫んで帰還していった。

 

(オリンポス・・・てことはギリシア関連の英雄か・・・)

 

赤のライダーについて考えているとマスターから念話が届く

 

(ランサーよ。ケイローンがあのライダーの真名を知っていたらしい)

 

(へぇ。何て言うんだ?)

 

(奴の真名はアキレウスだ。トロイア戦争において、かのヘクトールを仕留めたギリシア最速の英雄だ)

 

(なるほど。奴がアキレウスだとすると対抗出来るのはケイローンか俺ぐらいか?)

 

(そうなるな・・・待て、ランサー。お前はセイバーと共に城に帰らずこれから言うところにいってくれ)

 

(なんかあったのか?)

 

(ライダーがホムンクルスを一体連れ出そうとしている。捕縛してくれ)

 

(はぁ?ホムンクルス位どうだっていいだろ)

 

(ああ。だがそのホムンクルスは戦力として改良する。それにライダーがどこまで行くのかわからん。まだ赤のサーヴァントが隠れているかも知れない)

 

(そうかい。ま、マスターの命令とあれば従わない訳にもいかねぇか。行くぞセイバー)

 

(ええわかりました)

 

彼らはアストルフォの捕縛に向かった。

 

 

同時刻 シギショアラ 教会

 

シロウはセミラミスの鳩を通して黒のランサーと赤のライダーの激突を見た。

 

「なるほど。あちらのランサーの真名(・・)はクー・フーリンですか」

 

「クー・フーリン・・・ケルトの大英雄か?セイバーはどうだった?」

 

「やはりわかりませんでした。真名はおろかステータスすら」

 

「セイバークラスでそこまでの隠蔽スキル・・・いや宝具か。そんなものを保持しているとはな」

 

「ええ、しかしランサーの真名がわかっただけよしとしましょう。アサシン、あなたの宝具は?」

 

「あと2日ほどと言った所か」

 

「そうですか」

 

シロウは微笑む。そして、

 

「なら2日後ミレニア城塞に攻撃を仕掛けましょう」

 

といい、教会の地下に向かった。

 

 

ミレニア城塞付近の森

 

「こっちこっち!」

 

アストルフォはホムンクルスと一緒に森を歩いていた。

 

何度か魔術罠が発動したがアストルフォの宝具魔術万能攻略書(ルナ・ブレイクマニュアル)によって完全に無効化していた。

 

「なぁ、ライダー。俺は逃げて大丈夫なのか?」

 

「当たり前じゃないか!こんな魔窟にいたらどんなひどい目に合うかわかったもんじゃないし、何より君は『助けて』って僕に願ったんだ!だったら僕は絶対に助けるよ?」

 

「そうなのか」

 

「うん!」

 

それから数分ホムンクルスを連れて歩いていると目の前にクー・フーリンが現れた。

 

アストルフォはホムンクルスを庇うように前に立つ。

 

「あれ?クー・フーリンじゃん?どうしたの?」

 

「そのホムンクルスを回収しろと命じられてな。そいつを渡しな」

 

「え?嫌だよ?」

 

「即答かよ・・・じゃあお前はそいつを逃がす事がマスターの一族に対する裏切りだと言ったら?」

 

「うーん。例え裏切り者って罵られても、僕は彼に『助けて』って願われた。なら納得いくまで助けるだけだよ」

 

「そうか・・・じゃああれだ。ホムンクルスは頼むわ、セイバー」

 

その時、アストルフォは後ろで何かが倒れる音を聞いた。

 

思わず振り向くと見えない何かにホムンクルスの少年が抱えられ城に帰っていく。

 

「待っ・・・」

 

アストルフォはセイバーに言おうとするも、肩を槍で貫かれた。

 

「ぐあっ・・・」

 

「悪いな。裏切り者には罰を与えろとも命じられていてな。まあ死なない程度に痛めつけるけど我慢しろ」

 

数十分後 ミレニア城塞 大広間

 

そこにはユグドミレニアのマスターとサーヴァントが一部を除いて全員いた。

 

「帰ったぜマスター」

 

ランサーはボロボロに傷を付けられたアストルフォを抱えて帰ってきた。

 

「そうか、ご苦労」

 

ダーニックは若干疲れていた。

 

「どうした?マスター。そういやセイバーとライダーのマスターは?」

 

そこにはセレニケとゴルドとセイバーがいなかった。

 

「ゴルドはホムンクルスの再調整。セイバーはその護衛。セレニケは・・・地下に幽閉した」

 

「あ?何でだ?」

 

「あの愚か者め。こちらにとって多少の戦力となるあのホムンクルスを呪い殺そうとした。それを諌めようとしたら私を殺そうとした。自制心のない獣を相手にしている気分だったよ。どのような環境で育てばあのような女になるのかわからん」

 

「そりゃまあ、大変だったな」

 

「当分ホムンクルスもセレニケに近づけないようにしなければな。替えがきくとはいえ何体使い物にならなくなるかわからん」

 

「そんな爆弾、爆発する前に捨てた方がいいんじゃねえか?」

 

「マスターに選ばれている以上、奴もそれなりの魔術師だったのだろう」

 

ダーニックはこめかみに指を当てる。

 

「まあこんな下らぬ些事で令呪を使わなかっただけマシだ。令呪を使おうとしたらそれこそ手首を切り落とし他の魔術師かあのホムンクルスに移した方が幾分マシだろう」

 

「そうかい、ところで昼間アーチャーとバーサーカーのマスターが来てたけどなんだったんだ?」

 

「アーチャーのスキル『神授の知慧』をバーサーカーに使っていいか、と聞いてきた」

 

「なんだそのスキル」

 

「アーチャーの神々から授かった技術を扱うスキルでフィオレの許可があれば他のサーヴァントにもその技術の一部を伝授することができる」

 

「ほう、出なんと答えたんだ?」

 

「あのバーサーカーにはもともと期待はしていない。だが戦力として使い物になるなら良いといった」

 

「そうか」

 

そうして聖杯大戦三日目は終了した

 




というわけで四話終了です

ダーニックとかクー・フーリンとかのキャラってこんなんであってますか?

描写し忘れてましたが黒のセイバーの真名についてはランサーとダーニックは知っています。

そして赤のセイバーの真名をダーニックとランサーには教えている、ということでお願いします

ボロボロのアストルフォですが大丈夫です生きてます。
怪我の具合はバンクラチオンされたモーさんより少し酷い位です。東京◯種のカ◯キくんみたいに腹貫かれたり四肢切断されたり真後ろから眼球貫かれたりしてませんよ。安心してください

あとメアリーは格闘専門の魔術師として魔術界隈で名が通っているため、基本的に「封印指定の魔術師の工房を襲撃しろ」という荒っぽい依頼しかこないので、暗殺の依頼とかは来ません。切嗣みたいな暗殺に特化した魔術師と違って「こいつに暗殺を依頼すると多分デカい騒ぎになりそう」とみんなわかっているので。信用ねぇな、メアリー。

あとアヴィ先生はホムンクルス君をそんなに重要視してません。

フランには心眼(偽):Bが追加されました。え?狂化があるのにできるわけないだろって?出来るということで一つお願いします。

戦闘描写難しいです。自分の頭の中で思い描いた戦闘イメージを文章化するのが一番辛い。でも頑張りたいです。精進せねば

水着フランちゃん可愛すぎる。なんだあの天使

次回 黒のアサシン

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