Fate/Apocrypha 灰の陣営   作:ピークA

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前回のあらすじ

ダーニック「三億ユーロPON☆とくれたぜ!」



二話 二周目のサ-ヴァント

テムとの交渉から一月後、ダーニックは聖杯所持とともにユグドミレニアの立ち上げを宣言。

 

それから2日と経たない間に時計塔から五十人の魔術師の精鋭がユグドミレニアを殲滅するために派遣され一人を残し皆殺しにされた。

 

生き残りの一人が言うには、

 

「自分達討伐隊が城に向かおうとすると、一番先頭にいた男に槍が刺さった。青系のタイツ姿の男(・・・・・・・・・)が刺さった槍を引き抜いたので、その男に攻撃しようと魔術を行使しようとしたら物の一分で自分以外が殺害された」

 

と、言う話を聞いたロッコ・フェルヘヴァンは少なくとも一騎サーヴァントがユグドミレニア陣営に召喚させていると認識した。

 

しかし彼が持ち帰った話しはそれだけでなかった。

 

なんと彼は聖杯の予備システムを起動させ、時計塔側にもサーヴァントを召喚することが出来るようにしたのだ。

 

通常の聖杯聖杯は七騎が最後の一騎になるまで殺し会うものだ。しかし今回はその七騎が一つの陣営に組みしてしまっている。その場合追加で七騎がもう一つの陣営に召喚されるようになっている・・・それが今回の聖杯戦争が通常と異なっているところだ

 

「と、言うわけでこの聖杯戦争・・・いや聖杯大戦に参加してサーヴァントを使役しユグドミレニアを倒し聖杯を手にして見ないか?」

 

ダーニックの離反の四日後、そんな話をロッコは自身が呼んだフリーランスの魔術師、獅子劫界離に話した。

 

「本当にその生き残り、予備システム起動させたのか?」

 

「ああ、予備システムは起動してるさ。その生き残りが起動させた訳じゃないだろう。おそらくダーニックが起動させた。あの男の事だ、我々に倒されるべき七騎を召喚させる魂胆だろう。」

 

「あんたらもまんまとユグドミレニア(やつら)に乗せらせている訳か」

 

「で参加する気はあるか?」

 

「させる気で呼んだんだろ?」

 

「触媒も用意してある、これだ」

 

ロッコは木箱からある木片を取り出す。

 

「円卓の破片だ」

 

「そりゃすごい(このジジイ完全に逃げ道塞ぎにきてやがる。参加させる気満々じゃねえか!)」

 

そんな感じで獅子劫界離は聖杯大戦参加を承諾した(押しきられたと言ってもいい)

 

「ああ、そうだ他のマスターに関する情報をくれ」

 

「そうだな。まず、フィーンド・ヴォル・センベルン。かのロード・エルメロイの旧友の男。ランサーを召喚予定だ。次にロットウェル・ベルジンスキー。彼はアーチャー。それからペンテル兄弟。兄はキャスター、弟はライダーを召喚予定だ。この四人はすでにルーマニアに入っている」

 

「俺がセイバーを召喚するとして後はアサシン、バーサーカーか」

 

「聖堂教会から監督役としてシロウという神父が派遣されている。アサシンを召喚するだろう」

 

「もう一人は?」

 

「メアリー・ベール。フリーランスの女魔術師で『生還者(サバイバー)』の異名持つ。バーサーカーを召喚して貰う。こいつに関しては数時間前に連絡がきて今飛行機でイギリスに来ている途中だ」

 

ロッコはニヤニヤ笑いながら最後の一人を言った。

 

「なんで笑ってんだ?」

 

「なにせ奴に召喚して貰うのは―――」

 

その英雄の話を聞いて獅子劫はメアリー・ベールに心底同情した。

 

獅子劫が前金としてヒュドラの幼体をもって部屋から出ようとした時、ロッコは携帯電話を渡してきた。

 

「なんだこりゃ」

 

「実はユグドミレニアにスパイを二人潜り込ませていてな。その片方との連絡用だ」

 

「そいつら信用できるのか?」

 

「一人はやつらの拠点、ミレニア城塞周辺の防衛システムを担当していた男だ。もう一人はあのロード・エルメロイ二世に秘密裏に魔術を教えさせた。それにそいつはマスターに選ばれる可能性が高い。一族の中ではあまり目立たないかもしれんが」

 

「そんな奴らがいるのに、精鋭部隊は全滅したのか」

 

「二人ともまさかサーヴァントを召喚して迎撃させるとは考えてなかったようだ。いや我々の襲撃直前に召喚したのだろう。だから連絡できなかった」

 

「この携帯はそいつらとの連絡用か?」

 

「防衛システム担当の男とはもう連絡がとれん。おそらく奴らにばれたのだろう。この携帯はもう一人との連絡用だ」

 

「そうかい。じゃあルーマニアに行くわ」

 

そうして、獅子劫界離はルーマニアに渡り、今まさにサーヴァントを召喚の儀式を準備した。

 

同時刻 ミレニア城塞 大広間

 

そこでは今まさに、サーヴァントを召喚するマスターが集められていた 。

 

ゴルド・ムジーク・ユグドミレニアと言う肥満体型の錬金術師。

 

セレニケ・アイスコル・ユグドミレニアと言う女黒魔術師。

 

フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアという極めて優秀な魔術師。

 

カウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニアと言う凡庸な魔術師。

 

彼らは令呪を宿したユグドミレニアのマスターである。

 

「ランサー。彼らがお前と共に戦う者を召喚するマスターだ」

 

「ふーん。ま、いいんじゃねぇの」

 

ランサーは彼らを見ながら呟く。

 

「サーヴァントの召喚なんてそうそう見れるものじゃないし、楽しみですね先生(・・)

 

「あぁ、そうだね。ロシェ」

 

ロシェ・フレイン・ユグドミレニアの隣には画面に青いマントにボディスーツを着た男が立っていた

 

彼はロシェに召喚されたサーヴァントである。

 

彼らは自身が用意した触媒を祭壇にセットしたあとサーヴァントを召喚するための呪文を唱えた

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。手向ける色は『黒』

 

降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

「―――告げる」

 

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に

 

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

 

誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。」

 

そこでカウレスを除く全員の詠唱がとまる。

 

「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。」

 

カウレスは自身のサーヴァントに狂化の特性を付与する詠唱を唱える。

 

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

詠唱が終わると同時に彼らの前に濃密な神秘を纏った4騎のサーヴァントが現れた

 

アーチャー―――広大な森のような清冽な気配を持った青年。

 

バーサーカー―――白いドレスを着た虚ろな瞳の少女。

 

ライダー―――美少女と見紛う、派手に着飾った中性的な美少年。

 

そしてセイバー―――白銀の甲冑を纏った騎士。(・・・・・・・・・・・・)

 

彼らは召喚されたのち、言い放つ。

 

「召喚の招きに従い参上した、我ら黒のサーヴァント。我らの運命は千界樹(ユグドミレニア)と共にあり。我らの剣はあなた方の剣である」

 

黒の陣営に新たに四騎のサーヴァントが召喚された。

 

「見よ、ランサー。彼らこそ君と共に戦う一騎当千の戦士達だ」

 

「ハッ!良いじゃねえか!漸く聖杯戦争・・・いや聖杯大戦らしくなってきた!ああ速く戦いてぇな!!」

 

「まあ待てランサー。我らの今の敵は赤の陣営。」

 

「あぁ、そうだったな。」

 

ランサーは一息ついて宣言する。

 

「今回のこの聖杯大戦、黒の陣営のランサーとして召喚されたクー・フーリン(・・・・・・・)だ!いずれお前達と戦う事になるだろうが、今は赤の陣営を倒す事に集中して欲しい!」

 

その宣言の後、黒のライダーは、

 

「かのクー・フーリンと共に戦えるなんて、嬉しいなぁ!!僕はアストルフォ!君は?」

 

彼はアーチャーに近づきながら問う。

 

アーチャー自身のマスター―――フィオレを見る。フィオレが頷いたのを見て、

 

「私はケイローン、よろしくお願いします」

 

「よろしく!ケイローン!で、君は?」

 

アーチャーに礼を言った後、彼はバーサーカーに近づく。

 

バーサーカーはカウレスをジッと見つめていた。ライダーの事など意に介さず。

 

故にライダーはカウレスに近づきバーサーカーの真名を聞いた。

 

「・・・フランケンシュタイン」

 

「フランちゃんだね!」

 

「ウゥ・・・」

 

バーサーカーは少し不機嫌そうに唸った。

 

「じゃあ君は」

 

最後にライダーはセイバーに聞いた。

 

「私は・・・」

 

ジークフリート(・・・・・・・)だ!」

 

セイバーのマスター―――ゴルドがセイバーの言葉を遮り真名を告げた

 

ゴルドはセイバーの前に立ちセイバーを見る。

 

するとセイバーは、

 

「ええ、私はジークフリートです」

 

と告げた。

 

その後マスター達は己の召喚したサーヴァントと共に自身の部屋へと戻った

 

カウレスの部屋

 

「悪い、いつか敵になるかも知れない奴に真名を明かしてしまって」

 

部屋に着いた直後、カウレスは己がサーヴァントに謝った。

 

するとバーサーカーは、

 

「べつに・・・いいよ」

 

と、喋った。

 

「お前、喋れるのか!?」

 

「うん・・・すごく・・・つかれる・・・でも・・・すこしなら・・・しゃべ・・・れるよ」

 

「そうだったのか・・・で、お前を呼ぶときはなんて呼べばいい?」

 

「バー・・・サー・・・カー・・・が・・・いい」

 

「そうか、じゃあ宜しくな、バーサーカー」

 

「よろ・・・しく」

 

「あぁ、じゃあ俺は疲れたから寝るわ」

 

「うん」

 

そうしてカウレスは眠りに着いた

 

ブカレスト 教会墓地

 

黒の陣営がサーヴァントを召喚したと同時に獅子劫界離もサーヴァントを呼び出した

 

「サーヴァント・セイバー、モードレッドだ。つーか、やっぱり(・・・・)あんたか!しかも前と同じ墓地だし!」

 

「やっぱり?どういう・・・」

 

「あぁ、別に。なんでもないさ獅子劫界離(・・・・・)

 

「俺の名前を・・・!?」

 

「あぁ、あんたの名前だけでなくあんたの願いも知ってるよ。なんせオレはここと良く似た世界で(・・・・・・・・・・)あんたのサーヴァントとして(・・・・・・・・・・・・・)召喚されたからな(・・・・・・・・)

 

「良く似た世界・・・平行世界ってことか」

 

「そんな所だ。しかしオレもビックリだな。ここで満足して散ったと思ったら第四特異点(ロンドン)に呼び出されて、第六特異点(キャメロット)に父上に召喚させて、終局特異点(じかんしんでん)にカチコミ仕掛け終わったと思ったらまた聖杯大戦(これ)かよ!」

 

「なんか小説数冊かけそうな大冒険だな」

 

「全くだよ」

 

そこでモードレッドは言葉を切って、

 

「改めて、サーヴァント・セイバー、アーサー王の嫡子にして唯一の後継者、モードレッドだ!今度こそあんたに聖杯をもたらすために戦おう!」

 

「宜しくなモードレッド」

 

彼らは墓地から出ながら

 

「ところで、明日教会に行くのか」

 

「あぁ、そうだが」

 

「じゃあシロウ・コトミネには気を付けろ、奴はルーラーのサーヴァントだ」

 

「何!?サーヴァントだと!?」

 

「あぁ、詳しく知らねぇが第三次の時に受肉して、そんまま生きているらしい。真名は天草四郎時貞」

 

「まて、確か奴がアサシンを召喚するとか聞いたが・・・」

 

「そのアサシン・・・セミラミスっつーカメムシババァだな」

 

「クソッ!サーヴァントがサーヴァント呼び出すとか反則もいいとこだろ!?」

 

「しかもそいつ、あんた以外の赤のマスターに毒もってあやつり人形にしてるはずだ」

 

「マジかよ・・・。てか思わず聞き流したが、人類最古の毒殺女帝をカメムシ呼ばわりとかどうなんだよ」

 

「いいんだよ」

 

「そうか・・・。でも多分俺以外にも毒盛られないマスターがいるな」

 

「どういう事だよ?」

 

「メアリー・ベールっつー魔術師がいるんだが、まだルーマニアにきてないはずだ」

 

「マジか?」

 

「実はな、まだバーサーカーが召喚させてない」

 

「マジかよ?でもバーサーカー呼ぶんだろ?スパなんとかっていう反逆系ド変態マッスルだろ」

 

「それスパルタクスだろ・・・反逆の英雄を変態扱いとかどういう事だよ?」

 

「でもマジやばいよアイツ・・・」

 

「マジかよ・・・まあ今回召喚させるのはそいつじゃない」

 

「誰だよ」

 

「実はな―――」

 

その真名を聞いてモードレッドは「マジかよ・・・」と言った。

 

 

ミレニア城塞 カウレスの部屋

 

カウレスが寝た後、フランは思考する。

 

やはり自分はこの聖杯大戦を知っている。そして自身の結末を。

 

だからこそこのマスターにあのような選択をさせまいと。

 

今度こそあのガングロ神父と作劇家に遅れをとらないと。

 

しかし、と彼女はある疑問に行き当たる。

 

あのランサーとセイバーだ。

 

確か自身が参加した聖杯大戦ではランサーはヴラド三世、セイバーはジークフリートだったはずだ。

 

しかし今回はランサーがクー・フーリンとなっている。

 

いやそこはいい。しかしセイバーは、ジークフリートと名乗ったあの剣士は何者なのだろう?

 

 

ブカレスト 警備会社屋上

 

ライダーはトゥリファスの方角を見ながらクロに話しかける。

 

「いいねぇ、この濃密な神秘の気配。聖杯戦争がいよいよ始まるってわかる。あぁ・・・楽しみだ!そう思わねぇか、クロよぉ」

 

「そんなに楽しみなのか?」

 

「ああ、楽しみだね!英雄達(やつら)の誉れある戦いに横槍入れて、滅茶苦茶に引っ掻き回して台無しに出来るんだぜ!最っっっ高に楽しみだよ!!」

 

「酷いやつだな」

 

クロは苦笑しながら言った。

 

「ああ、そうだよ。俺は極悪人だしそれは否定しない。必要なら人道に反する行いだって平気でやるよ。澄まし顔で人殺しも行える。要はどれだけ犠牲を出しても最終的に勝てばいいんだ。そこに誇りや誉れや良心なんて必要ない。そんな下らないものに囚われて勝ちを逃がすなんて、ただの馬鹿だ」

 

ライダーは真顔でそんな事を嘯く。

 

クロは思う。

 

この男についてきて正解だったと。

 

財力・名声・カリスマ。常識に囚われない柔軟な思考。そして、目的達成の為ならどんな悪事も行い犠牲を出すことを躊躇わない冷徹さ。

 

この男ならどんな事でも可能だろうと。

 

そんな事を思いながらクロは笑った。

 

 




あああああああああフランちゃんかっわいいいいいいいいい!!

次回

スパイはだれだ?

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