聖女がなんでもするので
31年前 オーストラリア タスマニア州
「ハァ・・・ハァ・・・」
そこには二つの影があった。一つは地に倒れ伏した男。もう一つは満身創痍の少年。
少年は左腕を失いその体にはいくつもの傷を作っていた
少年は男に近づき剣を振り上げた
「これで終わりだ・・・ライダー・・・!!」
剣を降り下ろしライダーと呼んだ男の首を斬ろうとして。
「な・・・に・・・?」
「悪いなぁ・・・セイバー・・・」
セイバーの後ろには彼がライダーと呼ぶ男が自分に剣を突き刺していた。
ぐりっとセイバーの傷口を開く様にして剣を引き抜く。
同時にセイバーの体を
しばらくするとセイバーの体は粒子となって消え、その場に聖杯が現れた。
男はそれに手を伸ばしそして―――
31年後 ルーマニア首都 ブカレスト
そこには中世を思わせる建築物や近代的な建築物立ち並んでいた。
その中の一つ、十五階建てのビルの地下駐車場に一台の車が入った。車内から出てきたのは青い長髪の二十代位の男性。もう一人は三十代後半の肥満体型の男性だ。
暫く待っていると、三十代位の黒髪の男と二十代後半の男がやって来た
「始めまして、ミスターダーニック。我が社へようこそ」
ダーニックと呼ばれた青髪の男はにこやかに笑い
「始めまして、ミスターテム。お会いできて光栄です」
二人は握手をする。
「立ち話もなんですから、こちらへどうぞ」
とテムは地下駐車場から社内に入り三つあるエレベーターを素通りし壁に取り付けてある災害用の懐中電灯の入っているケースを開ける。
中にカードをスキャンする装置と電子パネルがありそれにカードを通した後7桁のパスワードを入れた。
すると何もなかった筈の壁が開き奥に続く通路が姿を表した。
「こちらにどうぞ」
少し歩くとエレベーターがあり中に入るとテムはパネルの下ボタンを3秒押しパネルに備え付けられていたカメラに顔を近づける。
するとようやくエレベーターが動きさらに下へと移動した。
「随分手の込んだ仕掛けですね」
ダーニックは若干訝しんだ。
するとテムは、
「申し訳ない。上の応接室でも良かったのですが、どうもあちらの近くの職場には協会側の魔術師がいると連絡が入ったので。別に消しても構わないのですが、流石にこのタイミングでそれをやると協会に殺されかねないので避けたい。それにこちらにある部屋の方が科学的、魔術的な盗聴や襲撃の心配はないので」
「そうですか・・・」
ダーニックそのように返した。
ダーニックと共に来た肥満体型の男性・・・ゴルドは、
(やはりこの男は《怪物》だ)
と、テムに対して畏怖の感情を抱いた。
テム・ウォン。
それが彼の本名である。彼は元経営コンサルタントで中国・台湾などを拠点にしていたが、18年前にこのルーマニアにやって来た。
元々貯めていた資金を元に警備会社を設立した。当初は誰にも相手にされなかったが徐々に依頼は増えていき今ではかなり大きな会社に成長した。
更に彼は数年前にヘッドハンティングしたとされるとある天才を、ヨーロッパ中に支店を持っているある大手電気機器メーカーと手を組ませ、防犯カメラと映像を受信するシステムなどの開発に着手した。潤沢な資金によって、従来の性能を遥かに凌駕したカメラと映像受信システムが完成。それをブカレストの街中に試験的に配備した結果、幾つかの犯罪の検挙に成功し、それによってブカレストだけでなくヨーロッパ内の防犯カメラは、全てその電気機器メーカー製のカメラと天才の作った受信システムを使った物になった。
更にテムは、その天才の作った幾つかのアイデアをルーマニアやヨーロッパだけでなくアメリカやアジアの大手企業に秘密裏に売り付け多額の金を得た。
結果としてこの世界の科学水準は数年前から飛躍的に進歩した。
しかし彼には黒い噂があった。
曰く、彼はマフィアと関わり大量の武器や兵器を所持している。
曰く、彼は警備システムを使って政財界、警察、大企業の幹部と関係者の犯罪を隠蔽してその見返りに大金を得ている。
曰く、彼は魔術師と関わりがある。
曰く、このルーマニアの裏社会を本当の意味で牛耳っているのは、この男である。
これらは、全て事実である。
しかしそれを裏付ける証拠が一切ない。
関係をもった魔術師などを使い、事件などとは関係のないチンピラや半グレの若者に暗示をかけ「自分が犯人である」と思わせ、その人物が現場にいた様に偽装する。防犯カメラに関しても同様の偽装をして警察に逮捕させる。
こうすることで政財界の人間の幹部や関係者を守りその口止め料として多額の金を貰い、彼は政財界の人間とのコネクションを築いてきた。表向きは警備会社の社長と依頼者だが、実際はテムに弱みを握られてしまった犯罪者である。彼らも何度かテムを消そうとしたが、どういう訳か全て失敗に終わり逆に襲われた事を口実にさらに金を搾取されることとなった。
そのような事が一度や二度でなく彼は、この18年間そのような事を繰り返し大きくなっていった。
魔術師界隈でもこの事はほとんどの人間は知らない。ルーマニアに居を置いているダーニック率いるユクドミレニアだからこそ手にいれる事ができた情報であった。ゴルドは「そのような男は殺してしまうべきだ」とダーニックに進言した。
たった18年でこの国の闇その物へと成長した怪物だ。さらに言うなら彼のせいで魔術師という人種はさらに追い詰められた。彼が科学技術の水準を進めたせいで幾つかの魔術師の家の神秘が零落してしまったからだ。
しかしダーニックは彼と交渉することに決めた。彼の持っているコネクションから生まれる多額の金の一部を自分達の物にできればより多くのゴーレムやホムンクルスを作る材料を手にいれる事ができると踏んだからだ。
地下3階 応接室
「それで、今日はどのようなご用件でしょう」
テムはクロと呼んだ秘書の男にお茶を入れるよう命じた後、このように切り出した。
ダーニックは、
「ご存じかと思いますが、我々は魔術協会を脱退し聖杯を旗印にユグドミレニアという新たな組織を立ち上げると宣言する予定です」
「成る程」
「しかし我々は新興の組織。魔術師としての腕は確かな者もいますが、ゴーレムにしろホムンクルスにしろ大量
に作り出すには資金が足りません」
「つまり私に金を寄越せと言うことですか」
「我々の未来に対する投資、と言う形ではダメでしょうか。我々が協会に変わる新たな組織となった暁にはあなたの邪魔となる人物や害をなす人物を抹殺することも容易ですし、それに・・・」
ダーニックはここで言葉を切り、
「聖杯を作ることもできます」
そこでテムはピクリと反応した
「聖杯を新たに作る・・・そんな事が可能なのですか?」
「この60年間で聖杯に関しては解析済みです。協会との戦争に勝ち、1000年に及ぶ繁栄が叶えばそれも可能と言うことです」
「・・・・・・」
テムは暫く黙りそれから、
「いいでしょう。新しい組織の誕生、その未来に対しての投資という形であれば幾らか出しましょう」
テムはニヤリと笑いながら言った。
それから幾つか雑談をした後、城に戻るダーニックを見送った。
見送った後、テムは自身の秘書のクロに国外の幾つかの金融機関を経由してユグドミレニアの口座に3億ユーロ(日本円で約390億円)振り込むよう命令した。
夜 ブカレスト 何処かのバー
ダーニックとの交渉後幾つかの案件を済ませテムとクロはブカレスト内にある隠れ家的な会員制のバーに来ていた。
裏路地から地下に下る階段を降りて店内に入り、ウェイターに会員証をみせVIPルームに案内させる。一番奥の部屋に案内され扉を開く。
そこにはすでに三人の人間がいた。
赤髪の少女。
黒髪の日本人の青年。
金髪に猿顔の男。
「随分とご無沙汰だったな。
するとランサーと呼ばれた猿顔の男は、
「
「ああ、キャスターならほらここにいるぜ」
テムはクロに言ってパソコンを取りださせアプリを起動させた。するとパソコンのから機械的な声が聞こえてきた。
『久しいな、諸君。そしてこんな形で会話に参加する無礼を許してくれ』
「いえ、別に気にしません」
アーチャーと呼ばれた少女は澄んだ声で答えた。
「そうそう、いつものことです。ところで
セイバーと呼ばれた青年はテムに聞いた
「アサシンならユグドミレニアを張ってるよ」
と、テムは答えた。
「それで俺らを呼び寄せた理由はなんだ、
テム、いやライダーは普段人前で見せる笑顔とは別種の凶悪な笑顔を浮かべ、
「もうすぐ、俺たちの大願が叶う。さぁ、終わらせようじゃないか。俺達の聖杯戦争を」
隣にいたクロも口に笑みを浮かべていた。
いろいろ原作から外れて完全にifの世界となっております。原作キャラに新しい設定やら加えます。赤黒どちらの陣営も召喚サーヴァントを一部変更します。
終わりまで頑張りたいと思います。
ランサーの真名とか分かりやすいと思います
どうしよう。
アニメ版Apocrypha。略してアニクリファ面白過ぎる。フランちゃん可愛すぎる