そんな話です。
どこまで行けるのやら。
「ねえねえ・・・・あの人だれ?」
「あんな人この学院にいたかしら?」
「うわあぁ・・・・・・・綺麗・・・・」
食堂に入ってきた私を見た生徒たちはひっそりとそういう会話をしていた。私は二年生の中央テーブルへと座る。
テーブルの上にはフルーツが積み上げられ、そして豪華な食事が並べられていた。聖域で修行していた時には到底もう食べることができないであろう食事だ。無論、黄金聖闘士になってからはこれに近い食事はできるようになったが。
「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうた事を感謝いたします。」
本来はアテナに仕える身ではあるもののここは故郷、郷に入っては郷に従え、始祖ブリミルに祈って食事を始める。
「・・・・・・・・・」
周りの食事を見ながら私は改めて個々の生徒の大半が食事のマナーがなっていないと感じた。
(あのマナーが悪そうなアルデバランすら食事のマナーにはうるさいのに・・・・・ここの男子生徒はマナーがなってないな・・・)
そう思いながらも私は食事を終え、厨房の方まで礼を言いに行った。そこの厨房を仕切っていたコック長は何事かと驚かれてしまったが。
食事を終えた私は、教室へと向かった。教室に入り席に座った私を周りの生徒は「えっ?あの人同じ学年なの!?」とか「あの人が教師かと思った。」ということが出ていた。
ちなみにミスタ・コルベールの話によると私が消息を絶ったせいで学園の教師が総出で捜索することになり、授業のスケージュールが大幅に遅れてしまったらしい。
正直言ってしまうと申し訳ないと思った。
しばらくすると今回の講義を担当するミセス・シュヴルーズまたの名を赤土のシュヴルーズが入ってきた。
「おはようございます、皆さん。早速本日の授業に入ろうと思いますがその前に重要なお知らせがあります。先週、サモン・サーヴァントで消息を断ったミス・ヴァリエールが先日、アンリエッタ姫殿下のサモン・サーヴァントの儀式中に戻られ、本日から授業に加わることになりました。」
「えっ!?あの『ゼロのルイズ』が!?」
シュヴルーズの言葉を聞いて教室は騒がしくなる。私はシュヴルーズのところへと歩き全員の方を見る。かつての同級生たちは何事かと私に注目する。
「えぇ・・・・皆さんは信じられないと思われますが・・・・・彼女がミス・ヴァリエールです。」
「「「・・・・・・・・・・えっ?」」」
「いやいや、『ゼロのルイズ』があんなお姉さんの筈がないでしょ!?」
「何かの聞き間違いでは!?」
まあ、信じられないのも無理はないな。
私が聖域に飛ばされて、聖闘士として修行して体を鍛えたからこうなったのだけど・・・・・・
全員が私を本人だと信じられないと思いながらも授業は始まった。
『火』『水』『土』『風』の4大属性からなる魔法、失われた系統である『虚無』、複数の属性を組み合わせる事によって強力に、または別の効果を持つ事、魔法使いの位ドット、ライン、トライアングル、スクウェア・・・・・・どれも十数年前、死に物狂いで頭に叩き込んだ内容だ。今聞くとそう言えばそんなことをやったなと懐かしく感じさせられた。
ミス・シュヴルーズは石粉を錬金し金属にするのを生徒たちに披露する。
「ゴールドですか!?ミス・シュブルーズ!」
キュルケは瞬時に反応している。
「いいえ、ただの真鍮です、私はトライアングルですから。金を錬金するにはスクウェア以上である必要があります。」
それを聞くなりキュルケは残念そうに言う。まあ、私からすれば授業で金品を錬金するのはよくないというのではもっともだと思う。
「では、今日はこの『錬金』を・・・・・・・そうですね、ミス・ヴァリエールにやって頂きましょうか。」
ミス・シュヴルーズは私を指定した。すると生徒たちは騒ぎ始める。
「えっ!?あのゼロのルイズに!?」
「いや、数日であんなに急成長したとしたというのなら実力も上がっているのでは!?」
「待て待て!逆に失敗魔法の破壊力が上がって教室そのものを破壊してしまうかもしれんぞ!?」
「ミス・シュヴルーズ、ルイズ(?)にやらせるのならこの私に!」
・・・・・・・なんかイラついてくる。黄金聖闘士になったこととナーガに鍛えられたところもあってそれなりに言われても我慢はできるが流石にこの言い様は怒りを感じて来る。
「・・・・・分かりました。」
私は前に出る。それを聞いた瞬間、生徒たちはオドオドと私を見る。
「危険だ!ゼロのルイズにやらせるなんて!」
「このままでは・・・・・教室が破壊尽くされてしまう!」
「みんな・・・・・逃げるんだ。」
「・・・・・・・・十数年ぶりのこともあるから全員自分の身を守る準備をした方がいいぞ?」
私は敢えて忠告する。聖闘士になった影響で失敗魔法の威力も上がっていたら怪我人を出すかもしれない。
「ミス・シュヴルーズも私の後ろに居てください。少なくとも怪我はしないで済みます。」
「ですが私は貴方が努力家ということは聞いています。気にしないでやってごらんなさい。得手不得手は誰に出もあるのですから失敗を恐れていてはいけません。」
「・・・・・そのお気遣いには感謝します。」
「さあ、錬金したい金属を強く心に浮かべるのです。」
私は石粉に短くルーンを唱え、杖を振り下ろす。
結果はやはり大爆発だった。
教室は見事に大破、忠告はしていたので怪我人はいなかった。
ミス・シュヴルーズは、特に私を責めはせず教室の後片付けはしておくようにと言われた。
周りには「魅力的になってもやっぱり『ゼロのルイズ』か。」やら「一応自覚するぐらいには成長したんだな(一応褒め言葉)」と散々。
「ふっ、黄金聖闘士になったとはいえ魔法の才能は全くないようだな・・・・・・」
皮肉にも私はそう思った。そう言えば一年の時もこんなふうによく掃除をしていた気がする。しかし、これから先もこういう風にしていたら黄金聖闘士として恥をかいているようにも感じた。
「あの・・・・・」
そのとき、聞き覚えのある声が私の耳に入った教室の出入り口を見るとあのメイド、シエスタが立っていた。
「シエスタか。何かあったのか?」
「お手伝いしましょうか?ミス・ヴァリエール。」
「気持ちはありがたいが君には他に仕事があるのではないか?」
彼女は飽くまで学院で働いている身だ。個人の仕事をやらせるわけにはいかない。するとシエスタはにっこりと答えた。
「少し余裕がありますので、お掃除くらいでしたら手伝えます。」
「すまないな。」
「メイドですので。」
流石メイドと言ったところか。
彼女が手伝ってくれたおかげで思ってたよりも早く進んでいた。
「すまなかったな。」
「いえ、これくらいのことは。それにしても随分雰囲気とか変わられたのですね。」
「・・・・・色々経験したのでな。」
「経験ですか・・・・・・あっ!もうすぐお昼ですので私は・・・・」
「あぁ、私のことは気にしないで戻りなさい。」
そう言うと彼女は「すみません」と頭を下げて教室を去って行った。
「さて、残りも早く片付けるか。」
私はさっさと掃除を終わらせる。
しかし、いくら聖闘士とは言え魔法が全く使えないというのもあまり良くないかもしれんな。
今度自主でフライとかできるように練習するか。
次回はギ―シュと決闘?
君は小宇宙を感じたことはあるか?