「って訳で、俺も悪魔と契約してるんだよ」
「いやいやまてまて」
「なんだよ古市?」
昼休みに、屋上で俺の秘密、悪魔と契約してる事と、その経緯を男鹿と古市に話した。
「なんだよじゃねーよ!いきなり過ぎるだろ!信じられるか!て言うか、男鹿は何でそんな平然としてんだよ!」
「古市、お前やっぱアホだな。魔王がこの世界にいるくらいならいてもおかしくないだろ?」
「男鹿にはアホとか言われたくねーよ!」
「まあ、そういうことだから。これは証拠」
制服を脱いで上半身を露出する。紋章使いの俺は蛇王紋を消せるので基本は消しているため、再出現させる。俺の右胸に蛇のような模様が浮かび上がる。
「これは『コントラクトスペル』っていってだな、悪魔と正式に契約した証だな。いつか男鹿にもでる」
「冗談じゃねえ!」
「うわっ、ビックリした」
「急に大声出すんじゃねーよ」
魔王との契約なんて名誉なことだろうに。それで死んでしまえばもとも子もないけど。
「でも、15m以上離れているじゃん」
「俺とレヴィの場合は範囲広すぎて分からんが、少くとも20km以上だな」
実際、俺の場合は離れるより構ってやらない事の方が危ないんだよな。凍ってしまう。
「これで俺の秘密は明かしたぜ。ちょっとトイレ行ってくる」
男鹿たちに背を向け、屋上から去る。とっさにトイレに行くと嘘をついたが、しょうがない。先程からからずっと殺気を向けてくるやつがいるんだから。
**
「ここでいいか」
やって来たのは校舎の中庭。人気はないから、殺気を向けてくるやつが出てくる筈だが…。
「貴様は、何者だ?」
「あんたか…俺に殺気を向けてきてたのは」
俺の目の前に現れたのは、金髪ゴスロリという格好の女だった。一瞬女だったことに落胆したが、どうやら彼女は悪魔のようだ。
「七大罪の一つ、嫉妬の罪のレヴィアタンと契約したただの一般人だよ。侍女悪魔さん」
「七大罪だと!?坊っちゃまの邪魔をする気か?」
「あ?人類滅亡的なやつの事?別に邪魔はしないよ。
「なるほど、今のところは、か…。ならば今のうちに排除するに限るな!」
女が叫ぶと同時に俺の視界から消え、背後に回り込む。俺はとっさに振り返り構えをとって女がどこからか取り出した剣が制空圏に侵入すると同時に弾いた。
「速いな、レヴィの力を使わないとまずいか?」
「さすが、七大罪の契約者だな。今のを防ぐとは」
「お褒めに預かり光栄です。次はこっちから行くぜ」
自身の最速のスピードで女に近づく。今の俺の全力を試すいい機会だ。レヴィの力に頼らずやってやろうじゃねえか。
「なっ!?」
初手は単純な掌打。意外と速かった事に驚いたのか、俺の掌打は女の腹に当たる。が、いかんせん悪魔相手には効果が薄い。そこまで苦しい様子はない。だから…
「『天王托塔』」
突き出した右手と同じ方の足、つまり右足を強く踏み込んで掌打の威力を底上げする。女は数メートル吹き飛ばされながらも、踏みとどまる。
「やるな…」
「あんたはそうでもないな」
「(武術の心得があるのか…。足運びや先程の掌打、単純なものではあったが完璧だった。あれは達人クラスだぞ。現時点では、悪魔の力を使わない戦闘なら男鹿以上だ)」
そうでもないとはいったがヤバイな。全力でやられるとまずい。さて、どうしようか…。
**
「た、ただいま…」
あの後、女が全力を出してやられそうな時にベル坊、大魔王の子息の雄叫びっぽい叫びが聞こえ、女はそっちに向かった。あのまま続いてたら、どうなっていたことやら。
「おかえりーーー!って、パパどうしたの!?」
「ゴメン、ちょっとケンカで怪我しちまった。けど、大丈夫だ」
「大丈夫じゃないよ!」
いつもの如く俺に突っ込んできたレヴィに傷について説明する。レヴィは俺がケンカで怪我をするのが珍しいからか、かなり心配している。
「明日から私も一緒に学校行く!」
「え?いや、ちょっと待て!どうしてそうなった!」
「パパが怪我しないように付いていくの!」
頑固なレヴィには何を言っても無駄かな…。今回のは自業自得だし。
ハア…憂鬱だ。