プリキュアオールスターズ×仮面ライダー~bの復活とsの暴走 ~   作:鈴木遥

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各世界ごとに、シリーズ終了からの経過年数が異なります。
ハートキャッチ&フォーゼは四年経ち、ハヤト君はシリーズ当時12才と過程して高一、つぼみ、えりか、いつきは高3、ゆりさんは大学3年です。念のため。


ハートキャッチ×仮面ライダーフォーゼ~時空を越えて、大樹キター!~(前編)

その大樹は、上空八万キロメートルの中間圏内を浮遊する、小さな大地に生えていた。

『ラ○ュタ』とも『スカイ○ア』とも違う、小さく飾り気ない大地に根を張り、大樹は、もう何百年も世界を見守っていた。

 

 

人はそれを、心の大樹と呼ぶ。

 

 

 

シャドームーンにとって、そこへ到達するのは造作もない事だった。

本来、人間がそこへ到達するには、莫大な技術と予算、何よりも、大樹にストレスを感じさせない、ある種の才能が必要なのだが......。

 

彼はその全てを得る事なく、そこへたどり着ける。

 

全身に力を込め、緑の玉が埋め込まれたベルトと、銀の鎧を発生させる。

 

地上の何もないさら地で変身を完了した彼は、もはやその場を支配したと言える。

 

道を空けるかの様に分厚い雲には大穴が開き、雲の糸の様な緑色の光線が、目的地への道を示している。

 

(この上だな......我らの“切り札”となりうる、大樹の在り処は......。)

 

思いきり地面を踏ん張ると、あり得ない高度へ上がり、

そのまま雲の中を駆け抜けた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

8月某日:希望ヶ花中央病院

 

その日の夕方、ハヤトは大急ぎでナースステーションに駆け込んだ。

高校生といえど、定時の夕方六時を過ぎると身内以外の人間は見舞いに行けないからだ。

 

「......あの、ハァ、ハァ、月影春菜の見舞いに......。」

 

「ああ、ハイハイ。ちょっと待ってね。」

 

そう言って年配の看護師から名札を受け取る。

月影ゆきの娘、ゆりと付き合い始めた頃から、ハヤトをよく知る看護師だ。

 

「いつもご苦労様。ゆりちゃんは元気かい?」

 

「はい、なんとか......。」

 

「あの娘も気の毒にねぇ、仕事中の事故でお父様を亡くしたと思ったら......お母さんまで倒れるなんて......アンタ!ゆりちゃんを、しっかり支えておやりよ!?」

 

ハヤトの背中を力強く叩く看護師。

 

「ありがとうございます!頑張ります!」

 

こちらも力強く挨拶を返し、ゆりの母、春菜の病室に向かった。

 

(仕事中に事故で......か。ちょっと前まで、オレもあの程度の認識だったんだな......。)

 

自分と、交際者のゆりをあそこまで心配してくれた看護師を、なぜ心の中で皮肉ったのか、ハヤト自身、一瞬分からなかった。

 

そして気がついた。

 

今の皮肉は、ほんの少し前までの、何も知らなかった自分への皮肉と重なるのだ。

 

世界を砂漠に変えようと暗躍していた組織『砂漠の使徒』。

使徒から『心の大樹』と人々の『心の花』を守り戦う存在、ハートキャッチプリキュア。

 

ハヤトとて、その存在を知ったのはつい最近の事だった。

ゆりの父、月影博士が、“砂漠の王デューン”に殺された事も......。

 

それは、凡人には理解できない、常軌を逸した話なのかも知れない。だが、ゆりが一人で戦ってきた事、一人で苦しんで来た事を知らないでいるのは、やはり罪だ。

 

ハヤトは、恐らくプリキュアメンバーよりもゆりと一緒にいただろう。にも拘らず、ずっと一人寂しく泣いていたゆりの力になれなかった自分が、ハヤトはどうしても許せなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

病室に入ると、ゆりのプリキュア講師の花咲薫子と孫娘のつぼみ、来海えりか、明堂院いつきと、ゆりを除くプリキュアメンバーが揃っていた。

 

「あれ!?何で皆......。」

 

「ゆりちゃんが用事で来れない自分の代わりにお見舞いしてくれって、あなたに電話を寄越したでしょう?あれを、たまたまつぼみが聞いてたみたいで、心配だから見にきたのよ。」

 

「あ!ハヤト君来ました、心配してたんですよ?」

 

「じゃ、この賭けは私の勝ちね!はいつぼみ、フルーツ牛乳宜しくっしゆ!」

 

「え~!アレはえりかが強引に......。」

 

「まぁまぁ二人とも、ハヤト君も無事にきた事だし、帰りにボクが奢るよ。」

 

と、いつきが太っ腹な仲裁をした。

 

 

(流石大人は......それも金持ちは違うな。それに引き換え、この二人は何年経ってもやっぱお子ちゃまだ......)

 

「ごめんなさいね、ハヤト君......。」

 

春菜がハヤトを見て言った。

 

「え?」

 

「私が腑甲斐無いばかりに、ゆりに心配かけて......その上あなたにも迷惑を......。」

 

胸が痛んだ。ハヤトは、これまで孤独だったゆりの、何の助けにもなれなかった。恐らくこれからもそうなのだろう。悔しく、自分が情けない......。

 

       だから......せめて......!

 

「迷惑とか、思わないでください。オレ、まだ子供だけど、何の役にも立たないかも知れないけど、精一杯頑張りますから、おとうさんの事も......ゆりさんのこれからも、ゆりさんとお付き合いしてる以上、一緒に抱え込ませて下さい!」

 

その台詞が何処から出てきたのか、ハヤト自身も一瞬分からなかった。

 

ただ、花を丁寧に飾り直すと、春菜に一礼し、顔を真っ赤にして病室から出て行った。

 

「あらら、咄嗟に言っちゃったは良いけど、口に出した直後恥ずかしくなってきたパターンね。」

 

「えりか、言わないであげて。ハヤト君必死だったんだと思うから......。」

 

「心配ですね。様子見に行きましょう。お祖母ちゃん、春菜さんお願いしますね。」

 

「あら、つぼみ、もう行くの?」

 

「シプレ達によると、久しぶりにプリキュアの仕事がありそうで、2時にJAXAで待ち合わせしてるんです。春菜さん、また来ますね。」

 

「ありがとうね、皆......。」

 

嬉しそうに手を降る春菜。

 

病室から出て行くつぼみ達の背中を見送りながら、薫子は首をかしげる。

 

(何かしら?プリキュアの仕事?何でJAXAに......?)

 

「ごめんなさいね、あわただしくて......。」

 

「いえいえ、それより私もゆりも幸せ者ですわ......。」

 

「え?」

 

「沢山のお友達や、あんなに自分を大切に思ってくれる男の子と出会えたんですから......。」

 

 

春菜は、不器用ながら誠実な青年の姿を思い浮かべて言った。

 

病弱ながら、心は希望に満ちたゆきを照らす様に、真夏の昼過ぎの太陽はカンカンと照り輝いていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ハヤトはロビーで頭を抱えていた。

 

ふと、右ほほに冷たい感触を覚え、顔を上げると、フルーツ牛乳を持ったいつきが立っていた。

 

「いつき姉ちゃんも案外しょーもない事すんな。」

 

「ハハ......まぁまぁ。飲みなよ、今日はボクの奢り。」

 

この人のボクっ娘は生涯抜けないんだろうな......そんな事を考えながら、パックにストローを刺した。

 

「さっきの話だけど......。」

 

いつきが遠くを見るような目で切り出した。

 

「ボク等と、JAXAに来ないかい?」

 

「......何でオレが?プリキュアじゃないし、役に立たないよ?」

 

「実は、今回の『プリキュアの仕事』が何なのか、ボク等も妖精からまだ詳しく聞いて無いんだ。もしかしたら、危険が伴うかも知れない。けど、プリキュアとしてのボク等と関わるって事は、プリキュアとしてのゆりさんに近づくチャンスだと思うんだ。」

 

「......うん。」

 

ハヤトは煮え切らない反応を見せた。

確かに、プリキュアとしてのゆりに近づくまたとないチャンスだ。

 

だが、今更自分に、しれっとプリキュアに協力する資格など有るのだろうか。

 

う~んう~んと不自然に唸る内、ハヤトは腹を決めた。

 

「行く!」

 

「言うと思った。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

つぼみ達と合流し、ハートキャッチの三人とハヤトは、JAXAに到着した。

待ち人の朔田流星(さくたりゅうせい)という人物に会う為である。

 

「それにしても、ゆりさんの用事って、一体何なんでしょうか?」

 

「ハヤト君、あんたゆりさんの彼氏でしょ?なんか聞いてないワケ?」

 

「えりか、あんまり詰め寄らないの。」

 

ハヤトに詰め寄るえりかを、いつきが短く叱った。

 

「友達の、墓参りだって......。」

 

「え?」

 

「共に戦ってくれた誰かが、六年前の今日死んだって、ゆり姉ちゃんが言ってた。」

 

「コロンだ......。」

 

えりかは思わず声に出した。

 

「えりか姉ちゃん、何か知ってるのか?」

 

彼女の脳裏に、紫の尾と耳を持つ妖精が浮かぶ。

 

「......いつか、ゆりさんに直接聞いた方がいいよ。」

 

どこか納得できないハヤトだが、めったにないえりかの真面目な表情に、それ以上問う気がしなくなってしまった。

 

ロケット展示のコーナーに差し掛かった時、なぜかつぼみのテンションが上がった。

 

「凄い!世界で始めて宇宙の住人(プレゼンター)との交流を試みた宇宙ステーションですって!どんな方なんでしょう、設計者の江本博士って......!」

 

「極悪人......かな。」

 

つぼみ達の背後から声がした。茶短髪の若い男が立っていた。

背は低いが、がっしりした体格に黒スーツを着込んでおり、どことなく近寄り難い雰囲気が出ている。

 

「極悪人......ですか?」

 

「ああ、ごめん。それじゃ説明不足だな。極悪人で臆病者で、友達想いで......オレの大恩人、かな。」

 

首をかしげるつぼみ。空気が変わったのを察してか、えりかがツッコミを入れた。

 

「......ってか、何でつぼみがテンションあげてんのよ!」

 

「ロマンチックじゃないですか。私キュアハッピーとも仲良いんですよ?」

 

「関係あるのかなぁ、たしかにハッピー『星空さん』だけど......。」

 

「ハハ......まぁ、珍しいよね。でも、興味を示してくれて、オレは嬉しいよ?......初めまして、プリキュアの皆さん。朔田流星(さくたりゅうせい)です。」

 

「プリキュア!?何で私らがプリキュアって知ってるワケ!?」

 

「待ち合わせたのが君達だってのは、あの妖精さん達が教えてくれたよ。」

 

朔田は、表のカフェを指差した。

 

シプレ、コフレ、ポプリが、パラソルの下で『キュアフルミックス』を飲んでいた。

口をあんぐり開けるえりかを見かね、朔田は言った。

 

「取り敢えず、座って話そうか......。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

同時刻、心の大樹

 

ゆりは、銀の体の戦士と対峙していた。

目の前にいる男の存在そのものを、ゆりは憎んだ。

亡き友の為に祈る自分の気も知らず、いびつな足音を立て、花畑を踏み荒らし、挙げ句手に持つサーベルで花を切り刻んだ。

 

これほど怒りを覚えたのは初めてだが、全力で睨んでもその無機質で虚ろな緑色の瞳は、まるで意に介さない。

 

「この場所をどこか知っての狼藉かしら?」

 

「世界の心の花を見守る、大樹の生ける大地......無論、

敬意は持ち合わせている。我等の思想を妨げる脅威、又我等の切り札としてな......。」

 

「何の話を......あなた一体何者!?」

 

「答える義理はない。私の目的は大樹の確保だ、そこを退いて貰おうか?」

 

「どこまでも勝手な事を......!大樹の強奪など、このキュアムーンライトが許さないわ!」

 

ゆりは立ちあがり、ココロポットを構えた。

 

『プリキュア!オープンマイハート!!』

 

そう叫び、ゆりはココロポットに紫の『心の種』をセット。

 

キュアムーンライトへと変身し、高らかに叫んだ。

 

『月光に冴える一輪の花、キュアムーンライト!!』

 

「ほう......プリキュアか。」

 

「ご存じなら話は早いわ。心の大樹を手に入れたければ、私を倒してみせなさい!」

 

 

 

戦いの花、まず天空に、舞い散らん......。




弦太朗~~い!お前、何してんだ!?
授業なんかほっぽって早く来ないと、出番に間に合わないぞ~~!!

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